防災士について 防災士になるには 防災士の登録状況 研修機関のご案内 よくある質問
TOP  > 防災評論 第29号

防災評論 第29号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

第29号

 

【目次】

〔政治行政の動向概観〕       

〔個別の動き〕

1、震災関連死66歳以上9割(復興庁)
2、大学生にも防災教育(静岡大学ほか)
3、仮設用地の事前確保(国土交通省、厚生労働省)
4、学校で津波対策不十分(文部科学省)
5、深層崩壊空中より探査(香川大学)
6、地震保険の支払い迅速化(日本損害保険協会)
7、噴火警報対応別に(気象庁)
8、防火設備の調査(総務省消防庁、国土交通省)
9、道の駅 防災拠点(国土交通省)
10、つり天井の地震対策(国土交通省)
11、住宅全壊「盛り土」の危険性(東北大学)
12、「遠地津波」予測法を改善(気象庁)
13、地域のきめ細かい防災対策(品川区)
14、富士山直下に活断層(東京大学地震研究所)

 

〔防災短信〕

 

 

〔政治行政の動向概観〕

 平成24〔2012〕年9月1日には、恒例の総合防災訓練が総理大臣官邸ほか地方も含めた各会場で大々的に実施された。言うまでもなくこの9月1日の「防災の日」は、関東大震災が発生した日を記念して制定された。更に、9月11日は、ニューヨークなどを襲った同時多発テロの発生から10周年、東日本大震災から1年半の節目となる。また、リーマンショックや中国が国恥記念日としている柳条湖事件も9月に起こっている。これらのことから、台風シーズンと相まって9月は災害や事故が多発する傾向にある時季と言える。
 防災週間(8月30日~9月5日)を前に政府中央防災会議の検討部会は、初めて南海トラフ位置連動型の巨大地震と、それに伴って発生する津波による被害想定を発表した。南海トラフは駿河湾から南西諸島に向かって伸びる長大海溝で、今回の想定域は、これまで最悪と言われてきた「東海~東南海~南海」の3連動型震源域より更に広大である。想定によると最大震度は7、最大津波高は35メートルに達し、最も被害が甚大になると思われる冬季深夜において死者は32万人に達すると予測している。これまでの各種地震による被害想定で示されたに死者等の数字の実に10倍以上の破滅的被害である。
 もちろん被害想定は最悪のケースを考えておく方が良いが、今回の理論的予測レベルは桁はずれである。その割には政府中央防災会議としての明確な地震津波対策は殆ど示されず、主には自助、共助による早期避難の呼び掛け程度である。この想定に加えて、一部では、これら巨大地震の発生により富士山も大噴火を起こし東京を含む関東地方も破滅するのではないかという「想定」も流されている。
 東日本大震災の発生以降、この大災害が人々の想像をはるかに超えていたこともあり、特に地震・津波災害の被害想定の規模に歯止めがきかない。悪く言えば何でもいいから最悪の姿を出しておけば良いといった傾向が非常に強まっている。そしてそれが確実な防災力強化に担保されているのならいいが、常識を超えている災害規模を前にして、むしろ中途半端な防災対策ならば示さなくとも構わない(=免責)と考えているように受け止めかねない。例えは変だが、尖閣諸島問題を餌に、日本に対してならどんな暴虐を働いても免責(愛国無罪)と考える中国人の考え方に類似する危険もあると言える。巨大災害だからと言って諦める対応ではなく、識者も指摘するように、官民を問わず常に地道な安全対策と実効ある防災施策が不断に必要であり、それでこそ被害想定が活きてくるのである。
 防災士の日常活動にもそのような視点が必要である。
 内憂外患の状勢をよそに政局の季節が訪れるようとしているが、防災対策に一刻の猶予もないという姿勢で、政治・行政が推進されていくことが望まれる。

 

〔個別の動き〕

1、震災関連死66歳以上9割(復興庁)

 復興庁は、東日本大震災後の避難生活で体調を崩すなどして死亡し、「震災関連死」と認定された1都9県の1,632人(平成24〔2012〕年3月末時点)の内訳を公表した。年齢層別では66歳以上が1,460人(89.5%)で、高齢者が多数を占めた。市町村別では福島県南相馬市が282人と最多で、宮城県石巻市が178人、仙台市が143人と続いている。
 死亡時期別にみると、最も多かったのは震災から「1週間超~1か月以内」の範囲で510人、次いで「1か月超~3か月以内」の459人、「1週間以内」の355人、「3か月超~6か月以内」の235人と続き、「6か月超~1年以内」は73人だった。
 都県別の内訳は、福島県が761人、宮城県が636人、岩手県が193人、茨城県が32人だった。千葉県、長野県が各3人、山形県、埼玉県、東京都、神奈川県が各1だった。福島県が最多だったのは、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、長期の避難生活を強いられている住民が多いことも影響したとみられる。
 復興庁は、平成24〔2012〕年9月11日、「震災関連死」の原因を究明するために、関係省庁間で組織した検討会を開催し、防止策をまとめる方針を決めた。

 

2、大学生にも防災教育(静岡大学ほか)

 東日本大震災の発生により防災意識が高まっていることを受け、大学で学生に防災教育を実施する動きが広がっている。災害に対するより専門的な知識や技術を学び、卒業後の職場などでも災害時のリーダーとして活躍することも期待される。
 国士舘大学多摩キャンパス(東京都多摩市)で開かれた「総合危機管理」の授業では、体育学部の学生らが手近なものを使って、骨折した人の手足を固定する練習をした。平成25〔2013〕年度から全学部の学生が毎年学ぶ必修科目にする。地震などの災害発生メカニズムや「帰宅困難になったら無理に帰らずにその場にとどまる」等の緊急時の対応を学習するほか、けが人の運び方などの実習もする。
 静岡大学では、平成25年度から、防災に関連する科目の12単位以上を卒業までに取得すれば「防災マスター」として認定する制度を導入した。「地震防災」、「地域社会と災害」などの必修科目と、「自然災害と現代社会」(教育・人文・人文社会科学学部)、「放射線管理実習」(理学部)など、学部ごとに開講される選択科目を学び、修了レポートを提出する。
 教員や保育士を養成する神戸親和女子大学(神戸市北区)では、今秋(平成24〔2012〕年)から「防災安全教育」を教職科目に導入する。これまでは保健体育の1テーマとして「安全」が扱われるだけだったが、半年にわたり避難訓練や災害後の子供の心のケアの方法などを教える。
 これらの防災教育と防災士養成事業を組み合わせることにより、より防災効果を発揮できる態勢が整うといえる。関係者の努力が期待される。

 

3、仮設用地の事前確保(国土交通省・厚生労働省)

 東日本大震災後に仮設住宅の建設が遅れた反省から、国土交通、厚生労働の両省は、仮設住宅の整備方法などのマニュアルを初めて作成し、全国の自治体に配布する。首都直下地震や南海トラフの巨大地震の発生が想定される中、がれき置き場などとの競合を避けるため、事前に多くの用地を選定することなどを求め、自治体に事前準備を促す。
 東日本大震災では、被災地が広範囲にわたって津波で浸水したことに加え、少ない平地を巡り、がれきの仮置き場や自衛隊の待機場所と競合したためと分析し、あらかじめ必要戸数を多く見積もり、私有地も含めて事前に適地をリストアップしたり、がれき置き場を別に選定したりするよう求める。
 仮設住宅は災害救助法などで、1戸当たり約30平方メートルが基準であり、今回の震災で、トイレやバス、キッチンなどのメーカーは基準に合わせるため、市販品よりも規格の小さい「特注品」を作らざるを得ず、調達が遅れた面もあった。マニュアルでは、市販品も使えるように基準より広い仮設住宅の発注を検討すべきだと記述している。地元の木材などの積極的な活用も提言する。
 仮設住宅の大半は、玄関やバス、トイレなどに段差があり、被災者から「手すりを付けてほしい」などの要望や苦情が自治体に多く寄せられた。このため、あらかじめバリアフリーの仕様を考えておくよう自治体や住宅メーカーに促す。

 

4、学校で津波対策不十分(文部科学省)

 文部科学省が、平成24〔2012〕年5月29日に、岩手、宮城、福島3県の小・中・高等学校など3,160校について、東日本大震災に際しての被害や避難状況などについて調査した結果を発表した。震災前から津波による浸水が予測されていた海岸に近い71校のうち、あらかじめ避難方法などをマニュアルに定めていたのは約6割にとどまっていた。地震への備えに比べ、津波対策が遅れていた学校現場の実態が浮き彫りになった。
 報告書によると、自治体などのハザードマップで津波による浸水が想定されていた71校のうち、実際に津波が到達したのは53校、浸水が予測されていなかったのに津波が来たのが69校、浸水想定地域だったか不明の9校を含め、合わせて131校が津波被害に遭った。
 津波によって児童・生徒に死亡・行方不明者が出たのは30校、教職員に死亡・行方不明者が出たのは9校だった。
 全回答のうち、避難訓練は火災については98%、地震については94%が実施されていた。地震発生時に児童・生徒が在校していたのは2,052校あり、このうち約9割が危機管理マニュアルで地震が発生した時の避難方法を規定していた。
 「地震の規模が大きく、既存のマニュアルでは対応が難しかった」、「停電に対応できなかった」などの問題点を挙げた学校もあったが、地震については殆どの学校が何らかの準備をしていた。
 一方、津波による浸水が想定されていたり、実際に津波によって被災したりした149校のうち、津波からの避難方法をマニュアルに規定していたのは約5割だった。浸水想定地域の学校でも62%、それ以外の地域では36.2%にとどまった。
 震災発生時に在校していた児童や生徒が帰宅困難になったのは26.2%で、通学圏が広い高校は約5割、中学は約3割、小学校は約2割だった。帰宅困難となった理由は「保護者との連絡がとれなくなった」、「道路や交通手段が被災した」などが多かった。一方、児童生徒が帰宅困難になった場合の備蓄品を用意していたのは全回答の16.1%だった。
 学校教育現場における防災士の養成が急がれる。

 

 

5、深層崩壊空中より探査(香川大学)

 地震で深層崩壊(※参照)が発生する危険性の高い地点を、上空から電磁波を当てて発見する手法を、香川大学の研究チームが開発した。従来は地盤を深くまで堀削しないと分らなかったが、新手法は広い範囲を高い精度で効率よく探査できる。このため自治体による対策の強化が期待される。  深層崩壊の現場は、斜面の岩盤が多数の深い割れ目で細い板状に破砕されていて、脆い岩盤が地震でドミノ倒しのように崩れたことが分かっている。

 高知県室戸市の山地で実際に探査し、危険地域を抽出してその場所を現地調査すると、もろい岩盤が確認できた。 研究チームは、南海トラフ沿いの、巨大地震で強い揺れが予測される地域などの自治体に、この手法での調査を提案し、住宅や道路に近い斜面を重点的に調べ、監視の強化や避難計画の作成、住民への注意喚起などを進めることにしている。

 ※ 厚さ0.5~2メートルの表土だけが滑り落ちる表層崩壊に対して、その下の岩盤からごっそり崩れる現象をいう。東海・東南海・南海の3連動地震だった宝永地震(1707年)では四国の各地で発生。平成20〔2008〕年の岩手・宮城内陸地震でも大規模な崩壊が起きた。豪雨や融雪が原因で発生することもある。

 

 

6、地震保険の支払い迅速化(日本損害保険協会)

 損害保険業界は個人向け地震保険の損害認定基準を見直す。将来予想される首都直下地震などに備えるためで、一度に多量の保険金請求が来ても短期間で適切な支払いに応じられるようにする。
 個人向け地震保険は地震で建物の時価の50%以上が損害を受けた場合に「全損」、20%以上50%未満の場合は「半損」、3%以上20%未満の場合は「一部損」として、それぞれ契約金額の100%、50%、5%が保険金として支払われる。損保業界が今回見直すのは、時価に対する損害割合を認定する際の共通指針である。例えば、大都市部で増える高層マンションは独自の免震装置などを備え、建物の損傷具合も低層住宅などとは異なるのに専用基準がない。東日本大震災では長期の冠水で建物の傷みが徐々に進んだり、建物自体は無傷でも地盤が崩壊して安全な生活ができなくなったりする事例が発生した。
防災士は地震保険の現状と制度について精通していることが望ましい。

 

地震保険で損害認定基準が見直される主な建物

①超高層マンションなど高機能・大規模な建築物

②長期冠水や地盤が崩壊した建物

③コンクリートに鉄骨を組み合わせるなど新しい造りの建物

 

 

7、噴火警報対応別に(気象庁)

 気象庁は、火山活動が活発化し、周辺住民や登山客らの生命に危険が及ぶ恐れがある際に発令する「噴火警報」を、平成25〔2013〕年3月から改善する。警報示達の対象となる周辺市町村ごとに、警戒が必要な場所が「火口周辺」なのか「居住地域」なのかを明確にする。
 「噴火警報」が発令された市町村の中には、噴石や火砕流などの発生の恐れのある範囲が居住地域にかかり避難が必要な自治体と、居住地域が含まれず入山規制だけが必要な自治体がある。現在は、周辺市町村を一律に警報示達の対象とし、明確な区別をしていない。
 改善後は市町村ごとに「当該居住地域で厳重な警戒をしてください」などと具体的な行動を呼び掛ける警報文を発表する。それ以外の市町村に対しては、「火口周辺で警戒してください」と呼び掛ける。
 平成23〔2011〕年の霧島連山・新燃岳(鹿児島、宮城県)の噴火で、関係自治体から警報が分かりにくいなどと指摘されたのを受け、気象庁が改善を進めていた。

 

8、防火設備の調査(総務省消防庁、国土交通省)

 全国の大規模なホテルや旅館のうち54%が、建築基準法で義務づけられている防火設備の調査と自治体への報告を怠っていたことが、国土交通省のまとめで分かった。
平成22〔2010〕年3月末時点で調査・報告義務のあった大規模な旅館やホテルは1万4669施設あり、これらの施設では防火扉や避難経路、排煙設備などについて1級建築士などに調査を依頼し、自治体が定める期間ごとに報告しなければならないが、報告があったのは6,706施設だった。
 総務省消防庁は、平成24〔2012〕年5月14日、各都道府県と政令市に対し、宿泊施設が防火管理や避難訓練実施などを徹底するよう文書で通知した。

 

9、道の駅 防災拠点(国土交通省)

 ドライバーの休憩施設として全国各地の主要一般道に設けられている「道の駅」を、災害時の防災拠点にしようと、各自治体が発電設備や備蓄倉庫の設置を進めている。東日本大震災では、広大な駐車場やトイレを備える道の駅が避難場所や自衛隊の活動拠点になるケースが多かった。水や電力などを供給できるようにすることで、防災機能を強化する。
 道の駅は、現在、全国に987か所あり、休憩のほか土産物の販売などでも利用されている。岐阜県の揖斐川町にある道の駅「星のふる里ふじはし」では、太陽光発電や蓄電池を組み合わせたエネルギーシステムの実験を始める。トイレなどの屋根に太陽光パネルを設置し、発電した電力を各施設や駐車場の照明に使う。災害などで電力会社からの電力の供給がストップした際は、通信機器や電気自動車にも利用する。事業費は約5千万円で年内(平成24〔2012〕年)に工事を終えて、年明けに実験を始める。
 福井県は高浜町の「シーサイド高浜」など県内2か所の道の駅に、太陽光発電とリチウムイオン蓄電池を組み合わせた充電システムを導入した。通常は電気自動車の急速充電に利用するが、停電時などには照明やコンセントに転用できる。
 長野県も、県内の道の駅を防災拠点化する計画に着手する。平成24〔2012〕年度中に阿南町の「信州新野千石平」に備蓄倉庫などを建設し、仮設トイレや発電機を備蓄する。
 福岡県は平成24〔2012〕年度中に県が管理する県内の道の駅7か所に災害状況を伝える情報機器を設置する。このうち「みやま」(みやま市)と「おおとう桜街道」(大任町)の2か所には非常用電源と防災倉庫を設置する。事業費は2億3800万円である。
 道の駅は広い範囲でカーナビに位置情報が表示されるため、震災時には避難所としてのほか、支援物資の集積拠点としても機能した。国土交通省も、全国の国道に設置した駅を防災拠点として機能を強化する方針で、市町村の地域防災計画などに基づいて、自家発電装置などの設置を進める。

 

10、つり天井の地震対策(国土交通省)

 国土交通省は、大規模地震の際に大勢の人が出入りする施設の天井の崩落による被害を防止する対策を、平成24〔2012〕年度中にまとめる。東日本大震災では、東北や関東地方のコンサートホールなど少なくとも2千か所で被害が発生したため、有識者の検討委員会に調査を依頼し、全国で数万か所とも言われる対象施設の安全性向上を目指す。
 天井崩落事故が東日本で相次で発生したため、国土交通省は一般社団法人建築性能基準推進協会に調査と落下防止策の検討を依頼した結果、事務所やホールなど約2千か所で被害があったことがわかった。
 同協会の調査は、天井パネルを取り付けている格子状の骨組みと、この骨組みを天井からつり下げる固定具「つりボルト」の接続金具などの強度不足を指摘し、1平方メートル当たり6~20キロ未満の天井では、つりボルトを1平方メートルにつき1本以上取り付けることや、同20キロ以上の天井では従来行わない構造計算を実施する強化策を提案した。水平方向の揺れでは従来の最大2.2倍の強さに耐えられる強度が必要との認識も示した。
 同協会が対策を講じるべきだとみる対象は、天井の高さ6メートル以上、面積が200平方メートル以上の大型施設で、こうした施設は「全国に数万単位で存在する」(建築指導課)といい、その大半で強度不足が見込まれる。
 西日本でも大規模な地震の発生が想定されるなか、国土国交省は同協会の提案を基に、天井脱落対策のガイドライン作成や法規制などに向けた作業に着手したうえ、その内容を年度内に公表し、災害時の避難場所などに優先順位をつけたうえで施設管理者向けに対策を求める方針である。

 

11、住宅全壊「盛り土」の危険性(東北大学)

 東日本大震災で震度6クラスの揺れに襲われた仙台市の造成宅地で、斜面に土を盛って平らに整地した「盛り土」地盤に建つ住宅が全壊した割合は、斜面を切り崩してならした「切り土」の住宅の26倍超に及んだことが分かった。切り土や盛り土など造成宅地の地盤の種類を知るには、仙台市のように自治体が公開しているケースがあるほか、造成前後の地図で等高線の変化を見比べる方法がある。

 

12、「遠地津波」予測法を改善(気象庁)

 気象庁は6月12日(平成24〔2012〕年)、警報の津波予想が課題だった平成12〔2000〕年のチリ地震(マグニチュード(M)8.8)を教訓に、遠くで発生して日本まで押し寄せる「遠地津波」の予測手法を改善し運用を始めた。
 遠地津波予測は、大地震が頻発する場所と日本への津波の影響をあらかじめデータベース化し、海外で大地震が発生すると、その中から最も近いケースを選んでコンピューターでシミュレーションし、実際に観測された津波データを加味して修正するなどの手法を用いる。主な改善点は、①データベース化する想定地震を260通りから1,488通りに増やす、②予測の修正に用いる海外の検潮所や沖合のブイなどの観測点を31点から391点に増やす、③日本近海での海底地形データを詳細に反映する、などである。

 

13、地域のきめ細かい防災対策(品川区)

①  津波避難マップを区民と共同製作
 品川区は、区民と共同で、津波から避難する道筋などを示した「津波自主避難マップ」製作に乗り出した。住民が主体的に参 加することで、地域の防災力を高めることが狙いである。平成24〔2012〕年度は区内の3か所でマップ作りを進め、他地域に も順次広げていく。住民参加型の津波避難マップの作成は23区で初めてである。
②  商店街に防災無線
 品川区は、地震の時に避難情報などを伝える防災行政無線を、区内108の商店街のうち、放送設備がある商店街の放送に接続 する試みを始める。いざという時、聞こえないと困る防災行政無線を、人が集まる場所にきめ細かく伝達する。
 防災行政無線は災害時に行政機関が情報収集に使うほか、市区町村の場合、一斉放送の形で住民に避難を呼び掛けるなど、防災 情報を広く知らせる手段になる。東日本大震災の時も、津波の避難の呼び掛けに大きな役割を果たした。しかし、都区部では、 ビルの谷間で音が反響するほか、車などの騒音や雨風に影響されやすく「何を言っているのかわからない 」という苦情が寄せ られていた。
平成24〔2012〕年度は3つの商店街をモデルに選んで、放送設備に防災行政無線の受信機を取り付ける。ただ、同区内の108の商店街のうち、放送設備を持つのは20程度である。このうち、放送設備の使用を休止している商店街もあり、実際に活用できるのは10商店街程度だという。品川区は、「東日本大震災で情報伝達の重要性が改めて分った。できる限り商店街と協力して、導入を進めていきたい」と言っている。
 防災士も大いに協力できる事象であろう。

 

14、富士山直下に活断層(東京大学地震研究所)

 東京大学地震所究所の調査によれば、富士山東麓の地下に長さ約30キロにわたり活断層がある可能性が高いことが明らかになった。この断層が動けば、マグニチュード7級の地震が発生する恐れがあり、また、山の一部が崩れる山体崩壊の引き金となる可能性もある。
 今回、見つかった活断層は富士山東麓の静岡県御殿場市付近にあり、陸側のプレートに伊豆半島を乗せたフィリピン海プレートが南側からぶつかる境界とみられる場所で、これまでに確認された活断層「神縄・国府津-松田断層帯」の西側に続いている。
 同研究所では、地面を振動させて地下構造を調べた結果、北東-南西に約30キロの断層が両側から押し合う力が働く「逆断層」タイプで、富士山頂の方向に深くなり、最近100万年の間に動いた形跡が見られることが分かった。
 富士山は約2900年前、東斜面にあった古い峰の部分が山体崩壊し、約15キロ流れ下り、現在の御殿場市付近を埋め尽くした。

 

 

【参考文献】

 

1、平成24〔2012〕年5月14日  『日本経済新聞』朝刊
2、平成24〔2012〕年5月18日  『日本経済新聞』朝刊
3、平成24〔2012〕年5月21日  『読売新聞』朝刊
4、平成24〔2012〕年5月30日  『日本経済新聞』朝刊
5、平成24〔2012〕年5月29日  『読売新聞』朝刊
6、平成24〔2012〕年5月27日  『日本経済新聞』朝刊
7、平成24〔2012〕年6月14日  『日本経済新聞』朝刊
8、平成24〔2012〕年5月15日  『読売新聞』朝刊
9、平成24〔2012〕年5月29日  『日本経済新聞』朝刊
10、平成24〔2012〕年6月11日  『日本経済新聞』夕刊
11、平成24〔2012〕年6月23日  『日本経済新聞』夕刊
12、平成24〔2012〕年6月12日  『日本経済新聞』朝刊
13、平成24〔2012〕年6月15日  『日本経済新聞』朝刊
    平成24〔2012〕年6月16日  『読売新聞』朝刊
14、平成24〔2012〕年7月号   『UGM NEWS』

 防災短信~各見出しを参照

 

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第84号1平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
「防災情報」トップページへ戻る