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防災評論 第32号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

第32号

 

【目次】

〔政治行政の動向概観〕

〔個別の動き〕

1、津波「巨大」すぐに避難を ~新警報7日開始~(気象庁)

2、土砂災害警戒の表記を5段階に ~分かりにくい表現改善へ~(国土交通省・気象庁)

3、円滑な避難勧告の発令できる市町村は75.3%(総務省消防庁)

4、浸水3メートル未満、2階待機(国土交通省)

5、平成25〔2013〕年7月地震保険15%上げ(金融庁、日本損害保険協会)

 

〔政治行政の動向概観〕

 このたび防災士制度発足10周年を記念して、日本防災士機構ホームページが全面的にリニューアル・拡充され、防災士を始めとする我が国の防災関係者にとってより親しみやすく、使いやすい内容へと大きく進化することとなった。旧ホームページにおいて連載を重ねてきたこの評論についても、これを機にさらに読者にとっての魅力向上が図られるよう防災士にとって必須と考えられる、最近の防災情報を的確に伝える事の出来るツールとして充実強化していこうと考えている。

 平成23〔2011〕年3月の東日本大震災から2年が経過し、被災地の復興も徐々に進みつつあるものの、その歩みは遅く、他方マスコミの報道頻度も低下して人々の脳内から震災への記憶が風化しつつある危惧を覚える。そのような中、平成25〔2013〕年3月18日の中央防災会議作業部会(主査 河田恵昭、関西大学教授)は、M9級の「南海トラフ巨大地震」についてその被害推計を発表した。それによると最悪の場合、経済被害は約220兆円(年間国家予算の3~4倍)に達し、避難者総数は最大950万人に上るなど被害想定の全体像が明らかにされている。

 巨大地震については平成24〔2012〕年3月にその震度と津波高、平成24〔2012〕年8月に死者及び建物全壊棟数などの推計が公表されており、今回が推計として最後となる。今後、対策を盛り込んだ部会の最終報告とそれを受けた政府の対策大綱が策定される予定だが、「西日本大震災」とも呼ぶことのできる、この巨大地震への「対策」をまとめるといっても容易なことではない。東日本大震災以降、巨大災害が来襲することは必然で、我々はそれに打ち克てないのではという「異常性の日常化」が国民常識として蔓延しつつあるが、これら南海トラフ巨大地震に関する一連の作者はそれをいたずらに助長する危険性すらはらんでおり、他方において防災士の養成拡充などの国民の防災力の向上、底上げを図る等の地道な努力はより一層不可欠なものとなっている。

 防災士は、“狼少年”になってはいけないが一方で災害に関する知見、対策を正しく伝播、実践してゆく主体として活動しなければならないという難しい立場にある。防災士、そして防災士を目指す者はこのような基本認識に立ち、今後とも日本の防災力の向上のため努力を重ねてゆく必要がある。

 幸い、政権交代により政府は防災、減災を強力に推進することを目指し、「国土強靭化政策」を掲げて、公共インフラの老朽化対策、新たな防災施設の、建物などの耐震化等を総合経済対策(アベノミクス)と絡めて加速化している。防災士及び各地防災士会はこの国の動きと呼応し、各地域や企業でより存在感を高め、強靭化実行のための担い手として活発な行動を展開してゆくべきであろう。

 

〔個別の動き〕

 

1、津波「巨大」すぐに避難を ~新警報7日開始~(気象庁)

 気象庁は平成25〔2013〕年3月7日正午、表現を改めた新しい津波警報の運用を開始する。東日本大震災では、直前まで避難しなかった犠牲者も多かったことから、最初の警報では予想津波高を示さず、『巨大』『高い』と表現して迅速な避難を促す。同庁は新警報にいち早くなじんでもらおうとポスターを作製するなどPRに力を入れている。

 「『巨大』と発表されたら、非常事態」。気象庁は平成25〔2013〕年2月、新しい津波警報をPRするポスターを約3万枚作製し、全国の小中学校や鉄道駅構内、高速道路のパーキングエリア内などに掲示している。また、気象庁職員が自らラジオ番組に出演して説明するなど普及に力を入れている。

 新しい津波警報は危険性を強調することに重点を置いており、すぐに正確な地震の規模が把握しにくいマグニチュード8.0超の巨大地震の場合は、予断をもたせないよう最初の発表では予想津波高の数値を示さずに、大津波警報(3メートル超)は『巨大』、津波警報(1メートル超~3メートル以下)は『高い』との表現にする。

 その後の警報で予想津波高を示す際も、「10メートル超」、「10メートル(5メートル超~10メートル)」、「5メートル(3メートル超~5メートル)」などと、上限の数値を示すことで迅速な避難を呼びかける。

 東日本大震災で気象庁が出した最初の津波警報は岩手、福島両県が3メートル、宮城県が6メートルと実際より大幅に低いものだった。

 

 

 2、土砂災害警戒の表記を5段階に ~分かりにくい表現改善へ~(国土交通省・気象庁)

 国土交通省と気象庁は、分かりにくいとの声が多くあった土砂災害への警戒を呼び掛ける情報の表記を改め、5段階のレベルで発表することを決めた。

 気象庁は現在、土砂災害で発生する危険性について、①大雨警報に先立つ気象情報②大雨警報(土砂災害)③土砂災害警戒情報の順に3段階で注意を呼び掛けている。しかし、情報の種類がバラバラで分かりにくいことから表現を整理することにした。

 新たな指針では、気象情報にあたる情報を「レベル1」、大雨警報を「レベル2」、土砂災害警戒情報を「レベル3」と規定した。さらに、記録的な大雨を観測して洪水等が発生した場合を「レベル4」、大規模な土砂崩れが起きた場合を「レベル5」と定め、それぞれのレベルごとに行政の対応例も示した。今後はレベルごとの名称や変更の時期などを決めることを検討する。

 

 

 3、円滑な避難勧告の発令できる市町村は75.3%(総務省消防庁)

 総務省消防庁はこのほど、災害が発生した際、市町村において円滑な避難勧告の発令ができるよう基準の策定を行っているかをまとめた調査結果を発表した。
 それによれば、たとえば「水害」に関する避難勧告の発令基準を「策定済み」、または、「見直し中」と回答した市町村は75.3%で、前回調査より5.4ポイント増加している。「策定中」の市町村を合わせると93.7%に上り、避難勧告の発令基準の策定が進んでいることが分かる。
「土砂災害」では、災害が想定される市町村の64%が「策定済み」で、「見直し中」を合わせると73.2%になっている。
「高潮災害」では、災害が想定される市町村の53.3%が「策定済み」で、「見直し中」を合わせ62.6%が対策が行っている。
「津波」については、災害が想定される市町村の62.6%「策定済み」で、「見直し中」を合わせ78.9%と高い割合となっている。
 平成16〔2004〕年に発生した一連の水害、土砂災害、高潮災害では、避難勧告が適切なタイミングで発令できなかったこと、住民への迅速・確実な伝達が難しかったことから、内閣府では「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」をまとめた。
 このマニュアルを踏まえて、各市町村では地域の実情に合った具体的な発令基準を定めるようになっている。

 

 

 4、浸水3メートル未満、2階待機(国土交通省)

 国土交通省は、河川の洪水による浸水区域や避難場所を示すハザードマップを市町村が作成する際の手引の改定案をまとめた。避難中に被災するケースが相次いでいるため、予想される浸水が3メートル未満なら自宅2階での待機を選べるようにしたのが特徴で、新たな手引を市町村に通知し、なるべく早くマップを作り直すよう求める。

 改定案では、避難勧告時は指定場所へ移動することが原則とした上で、浸水の深さに沿った対応を3段階に区分。①0.5メートル未満は避難が遅れたら自宅待機、②0.5メートル以上3メートル未満は避難が遅れたら自宅の2階より上に待機、③3メートル以上は速やかに避難――としている。堤防の決壊で家が倒壊する恐れがある地区は別に表示し、特に素早い避難を求める。

 

 

 5、平成25〔2013〕年7月地震保険15%上げ(金融庁、日本損害保険協会)

 政府と損害保険各社は、地震保険の新規契約の保険料を平成26〔2014〕年7月をメドに、平均で15%程度値上げする見通しである。

巨大地震発生のリスクを保険料に織り込む値上げは、昭和55〔1980〕年以来、2回目である。ただ、甚大な被害が想定される太平洋の南海トラフ地震の影響は含んでおらず、平成27(2015)年以降に再値上げを検討する。相次ぐ値上げは、地震保険の加入にブレーキをかける懸念もある。

 地震保険は、保険金を政府と民間の損保会社が分担して支払うもので、東日本大震災では、保険金の支払いが1兆2千億円を超えた。

 政府の地震調査研究推進本部が平成24〔2012〕年12月に公表した検証結果をもとに、算出機構が影響を精査し、金融庁に新しい保険料を届け出る。新規契約のほか、すでに契約している人の保険料も契約更新時に上がる。

 保険料は、国が想定した危険度に応じて都道府県ごとに決まるため、関東地方や東北地方などは、値上げ幅が大きくなる。

 地震保険の加入率は、平成7年〔1995〕年の阪神大震災以降に高まり、東日本大震災後の平成24〔2012〕年3月末には、火災保険の新規契約のうち地震保険とセットで加入する割合が初めて5割を超えた。

 一方、損保各社は、耐震化の度合いに応じて適用している10~30%の割引率を平成26〔2014〕年の値上げに合わせて拡大することを検討する。住宅の耐震化を促すと同時に、加入しやすい環境の整備が狙いで住宅建設会社や、住宅ローンを扱う銀行などと連携し、加入の必要性を訴えていく方針である。

 

 

【参考文献】

 

1、平成25〔2013〕年3月5日 『日本経済新聞』(夕刊)

2、平成25〔2013〕年3月号 『UGMニュース』

3、平成25〔2013〕年3月号 『UGMニュース』

4、平成25〔2013〕年3月5日 『日本経済新聞』

5、平成25〔2013〕年2月22日 『読売新聞』

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
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第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
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第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
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第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
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第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
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第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
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第5号「水防月間(国土交通省)」他
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第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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