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防災評論 第36号

 山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

防災評論(第36号)【平成25年7月号】

 

【目次】

〔政治行政の動向概観〕       

〔個別の動き〕 

1、水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)
2、「東日本」級の揺れ再現(防災科技研)
3、降灰予測の開発研究(気象庁)
4、活断層対策の課題(東大地震研、地方自治体、JR、国土交通省)
5、救急救命士の処置拡大(厚生労働省)
6、地下街に避難指針(国土交通省)
7、ゲリラ豪雨の短期予測手法開発(文部科学省)
8、原発事故の風評被害防止(消費者庁)
9、地球温暖化による洪水リスク拡大(環境省等)
10、防災・減災に先端IT(総務省)
11、救援物質発送ルール化(国土交通省)
12、仮設入居期間4年間に延長(復興庁)
13、竜巻、雷などの被害防止解決策を自治体に配布(気象庁)
14、海の緊急情報全国で(海上保安庁)
15、被災マンションの復旧・避難対策(法務省、国土交通省、東京消防庁)
16、津波避難ビル各地で指定(内閣府)

〔防災短信〕

 

 

〔政治行政の動向概観〕

 二院制を採るわが国ではあるが、第二院である参議院の存在感は最近ますます薄れつつある。憲法上参議院独自の権限として唯一規定されているのは衆議院が解散等により存在していない場合に、大災害や大規模事故・テロなどの不測事態が発生した際緊急集会を開くことにより、参議院の議決をもって国会の議決とする、という事項のみである。確かに切迫性が指摘される首都直下型地震や被害規模において群を抜く(想定)南海トラフ地震などに対し国家として適切に緊急対処する必要性はある。しかしそうであっても、それが今のように参議院にしかできないことなのかという大きな疑問は残る。例えば予備費の執行のように内閣の責任において緊急的な措置を決定し、衆議院構成後にその承認を得るという方策も選択として考えられるではないか。現に、前通常国会では司法(最高裁)から強く指摘されていた衆議院議員の”一票の格差是正”のための公職選挙法改正案、東日本大震災の教訓を踏まえた電気事業法改正案、国民生活上の不公平是正を図る生活保護法改正案など重要法案が参議院で審議・採決されず一部廃案となる事態を招いてしまった。緊急集会が開かれる時は一般には衆議院の総選挙期間中となる。このような時期に果たして参議院が正常に機能し、国民の期待に応える行動を示すことが可能なのだろうか。さらに、今回与党の勝利に終わった参議院議員候補者のかなりの部分は衆議員議員落選者であった。参議院は衆議院に対する”良議の府”であって、”救済の府”ではない。国土強じん化策を始めとして国土・国民の安全安心の確保は憲政上も重要課題である(憲法第14条)が、盛んになりつつある憲法改正論議の重要項目として「二院制の在り方」にもっと目を向け真剣に検討すべきではないだろうか。

 7月初旬には関東で梅雨明けとなり、列島全域でも7月以降本格的な猛暑となっている。例年に比べて風水害の被害が比較的少なかった今梅雨季であったが、7月下旬に入り中国、北陸、東北などを中心に記録的豪雨が発生。多くの土砂災害や河川氾濫が報告されたが、幸い犠牲者は少なく、日常の防災対策が一定程度功を奏したといえる。しかし、代わって熱中症の被害が高齢者を中心に全国的に深刻さを増している。災害はその種類、態様が多岐にわたり、防災対策もすべての災害に共通する決め手はない。防災士としては周辺にある様々なリスク要因に常に的確に対応できるよう、日ごろから研修と訓練を積んでゆくことが益々大切になってきている。

 

 

〔個別の動き〕

1、水、食料備蓄 学校の「3割」(文部科学省)

 全国の学校で大規模災害を想定して飲料水や非常食を備蓄しているのは約3割にとどまることが文部科学省の学校安全調査で分かった。津波の浸水予想区域にある学校のうち、避難訓練などを実施しているのも7割程度と判明。災害時、児童・生徒の待機拠点となる学校の対策が、東日本大震災後も進んでいない現状が鮮明になった。

 今回の調査は、全国の国公私立の小中高校や幼稚園など計5万329校を対象に、昨年3月末時点の防災対策状況を調べた。

 備蓄状況は飲料水が34%、非常食が30%、毛布・寝袋が29%、医薬品は55%、3割の学校は水・非常食や防災用品などを一切備蓄していなかった。公立校よりも私立校の方が備蓄率が高くなる傾向があった。

 公立校を都道府県別にみると、飲料水の備蓄が最も高かったのは東京の78%、神奈川の75%、静岡の70%が続いた。整備が最も進んでいないのは長崎と島根で、ともに4%だった。

 津波の浸水予想区域にある学校7712校のうち、津波を想定した危機管理マニュアルを策定したり、避難訓練を実施したりしていたのは77%にあたる約5900校だった。

 緊急地震速報の受信システムを設置しているのは1万2604校で、全学校の25%にとどまった。災害発生時に子どもを保護者に引き渡したり、学校に待機させたりする際のルールをあらかじめ決めているのは3万5652校で、全体の71%に上った。

 学校施設が避難所になった場合の対応について、自治体の防災担当部局や地域住民との連携体制を整備しているのは2万5207校と50%、東日本大震災の被災地の学校では、備蓄倉庫の鍵の所在が避難してきた住民に分からないなどの混乱もあったという。

 今回の文部科学省の学校安全調査では、大規模災害で避難生活が長期に及ぶことを見据えた対策の欠如が浮き彫りになった。後者の耐震化だけに目が向きがちだった施策の見直しが必要だ。また、各学校に防災士資格を持つ教員を計画的に配置することが望まれる。

 備蓄状況の地域差も顕著で、自治体の財政状況や自然災害に対する危機意識の差が反映されていると見られる。資金面で有利な私立校が公立校を上回っており、学校間の格差の解消も課題だ。

 

 

2、「東日本」級の揺れ再現(防災科技研)

 防災科学技術研究所は、改良工事を終えた巨大震動台「E―ディフェンス」(兵庫県三木市)を公開した。人が感じにくい2~6秒の周期でゆっくり揺れる「長周期地震動」を含む東日本大震災級の巨大地震の揺れも再現できるようにした。4月以降、耐震技術の研究開発に活用する。

 E―ディフェンスは縦15メートル、横20メートルの震動台を巨大な油圧装置で水平方向と垂直方向に揺らし地震の揺れを再現する。周期が短く短時間に激しく揺れる直下型地震の再現には適していたが、長周期で長時間揺れる海溝型の巨大地震には対応できなかった。

 油圧装置や制御方法を2012年4月から40億円をかけて改造した。

 

 

3、降灰予測の開発研究(気象庁)

 気象庁の検討会は、火山噴火で広範囲に火山灰や噴石が降ると予想される場合に出す「降灰予報」の改善案について提言をまとめた。現在噴火後原則1回のみの予報を、噴火前から3回に分けて発表し、予想降灰量を「多量」「やや多量」「少量」の3段階で表示することが柱で、段階に応じて住民がとるべき行動も示すことで迅速な対応を促す狙いがある。

 同庁は2014年度末に新たな降灰予報の運用を開始する予定である。

 提言によると、「噴火前の予報」では風向きなどから降灰範囲を示す。噴火後5~10分程度を目安にした「噴火直後の速報」は、降灰が予想される市町村名や、降灰量が最大の地域名と降灰量を予想。噴火後20~30分の「噴火後の詳細な予報」では、各市町村の降灰量などを6時間先まで1時間ごとに予測する。

 降灰量予想は▽多量(1ミリ以上)▽やや多量(0.1ミリ以上1ミリ未満)▽少量(0.1ミリ未満)の3段階で提示。やや多量の地域はマスクをしないと呼吸器疾患を抱える人などは症状が悪化するおそれがあるといわれる。

 

 

4、活断層対策の課題(東大地震研、地方自治体、JR、国土交通省)

 立川断層帯の堀削調査を行ってきた東大地震研究所などのチームが明らかにした断層の誤認は、防災や原発立地など多くの分野に影響を及ぼす活断層調査の信頼性に疑問符を投げかける結果となった。実際活断層調査は開発などの影響で確認が難しく、専門家でも判断に迷うケースがあるのが実情だ。

 それでも国や自治体などでは、都市基盤の整備や、重要施設の防災など多方面で活断層対策を講じている。

 活断層の「中央構造線断層帯」が東西に走る徳島県では4月から、活断層直上の建設を規制する条例を施行した。地盤のずれで建物が崩れ、被害が大きくなるのを避けるためだ。高い安全性が求められる学校やホテル、可燃性ガスや毒物など危険な物を保管する施設の建設が規制されることになる。

 鉄道網のうち、JR各社は、活断層の有無に関わらず全線の耐震性を高めている。特に真下に活断層が確認されているJR西日本・山陽新幹線新神戸駅の駅舎は、上りと下りホームと、線路部分の三つのブロックに分け、活断層の揺れを吸収する設計を採用している。
洪水防止などのため全国に設置されたダムは、いったん決壊すれば、下流域に甚大な被害を及ぼす可能性が高い。国土交通省は、建設予定地に活断層が確認されれば、計画を変更する基準を設けている。

 東京電力福島第一原発事故で多くの避難者を生み出した教訓から、原発の安全対策強化を進める原子力規制委員会は、原発の重要施設の真下に活断層が確認されれば、稼動を認めない厳しい基準を設定した。

 しかし、活断層が動くのは1000年に一回のレベルで、通常、海溝型の地震に比べれば発生頻度は低く、地震の規模も小さい。活断層が近くにあるから直ちに危ないと考えるのではなく、施設の重要度に合わせて、適切な対策を取ることが重要とされる。

 

 

 

5、救急救命士の処置拡大(厚生労働省)

 厚生労働省は、救急救命士の業務を拡大し、「低血糖患者へのブドウ糖投与」と「心肺停止前の点滴」の2つの処置を認めるべきだとする意見をまとめた。厚労省は救急救命士法の省令を改正。病院に搬送する前に施せる処置を増やし、救命率の向上を目指す。

 検討会は(1)低血糖が疑われる患者の血糖測定と低血糖患者へのブドウ糖溶液の投与(2)心肺停止前の静脈点滴(3)重症ぜんそく患者への処方吸入薬の使用――の3つの処置について業務に追加すべきかどうかを検討したが(3)は見送られた。

 救急救命士の業務はこれまで、血圧や心音の検査、酸素マスクの装着など基本的な応急処置に限られ、患者が心肺停止状態で搬送先などの医師から指示がある場合には、静脈点滴などが例外的に認められているに過ぎなかった。

 

 

6、地下街に避難指針(国土交通省)

 国土交通省は大規模な地震を想定し、地下街からの避難対策のガイドラインを2013年度中に策定する。地下は揺れの影響を受けにくいとされるが、全国の地下街の8割超は開業から30年以上経過し、設備の老朽化も懸念される。同省は天井設備などの保守・管理状況を確認したうえで、ハード、ソフト両面の対策を管理者に促していく。

 国交省によると、2012年3月末時点の全国の地下街は78カ所。一部は休業しているとみられるが、うち68カ所が開業から30年以上経過している。

 地下街には消防法や建築基準法などが適用されるが、つり天井や照明などの保守・点検について詳しく定めた法令はない。管理する民間会社などがメンテナンスの結果を報告する義務はなく、国として実態を把握できていない。

 つり天井や照明、排気ダクトなど、チェックすべき天井付近の設備の点検項目をリストアップしたうえで、各地下街に建築士などを派遣して保守・管理状況を点検する。結果は公表する。

 このほか、東京や大阪、名古屋などの大規模な地下街で実地調査を行い、大規模地震が起きた場合に避難する人が殺到しそうな通路や階段などをチェックする。

 そのうえで地下街の管理者など向けに避難対策の指針を策定。ハード面では確保すべき通路や階段の幅などを示し、ソフト面でもテナントの店員らによる避難誘導、近隣施設での避難者受け入れなどの体制整備を促していく。

 1995年に起きた直下型地震の阪神大震災では一部の地下街で照明などが落下しており、パニックになった人が狭い通路などに殺到して将棋倒し事故が起きる恐れもあるとして、対策の必要性を強調している。

 

 

7、ゲリラ豪雨の短期予測手法開発(文部科学省)

 突然、局地的に激しい雨が降る「ゲリラ豪雨」を1時間前に予測する技術の開発に文部科学省が乗り出す。上空の細かい水蒸気などを手がかりとして、豪雨を降らせる積乱雲の発生を素早く見つける。数年以内の実用化を目指す。

 このため、防災科学技術研究所はまず来春までに、東京23区南部や多摩地区に観測網を張り巡らせる。

 積乱雲のもとになる水蒸気を観測するマイクロ波放射計10台、風雨の流れをレーザー光線を使って観測する装置4台、積乱雲が生まれる様子を観測できる高感度雲レーダー6台をビルの屋上などに設置し、観測データを蓄積。積乱雲が生まれる際の水蒸気や気流の条件を詳細に解析し、ゲリラ豪雨の前触れを予測できるようにする。

 気象庁や防災科研が持つ気象レーダーは波長が長いため、雨粒にならないととらえられず、細かい水蒸気の様子はわからない。現在はゲリラ豪雨が降り始める前に危険性を予測するのは難しいという問題がある。

 

 

8、原発事故の風評被害防止(消費者庁)

 消費者庁は、東京電力福島第1原子力発電所事故による食品の風評被害対策をまとめた。放射性物質のリスクを消費者に理解してもらうため、正しい知識を持つ専門家を「コミュニケーター」として全国で2千人養成。子育て世代向けのミニ集会などで説明役を務める。

 コミュニケーターは、管理栄養士や保健師、保育士、食品・流通業界や消費者団体関係者らを想定し、全国で研修する。地域で数人~十数人規模の説明会や意見交換会を開き、食品に含まれる放射性物質の基準値や検査態勢などを伝え、誤った認識による買い控えなどの風評被害を防ぐ。

 被災地では、外部被曝(ひばく)や農産物の自家消費など、地域のニーズに沿ったきめ細かい説明を工夫し、必要な資料やDVDなどは消費者庁が無償提供する。

 消費者庁は25年1月、庁内に対策チームを設置。消費者や被災地の生産者、流通業者らから聞き取り調査した結果、風評被害をなくす取り組みの強化が必要と判断した。これらコミュニケーターには防災士の資格を持つ人の多数応募と登用が望まれる。

 

 

9、地球温暖化による洪水リスク拡大(環境省等)

 地球温暖化が今のまま進むと、今世紀末には大雨が増加し、河川の洪水リスクが現在と比べると1.8~4.4倍になると予測した報告書を環境省と文部科学省、気象庁が12日、公表した。東京、大阪、伊勢湾沿岸では海抜ゼロメートル地帯の面積が1.5倍に広がり、高潮被害の危険性が高まるとも指摘。日本の気候や水環境、生態系などに深刻な影響が懸念されるとしている。

 3省庁が共同で温暖化に関する報告書をまとめたのは2009年以来2度目。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測モデルなどを利用し、国立環境研究所、気象研究所、海洋研究開発機構などの専門家で構成する委員会が分析した。

 日本の今世紀末の平均気温は20世紀末に比べ2.1~4.0度上がる。温暖化が続くと、全国では真夏日(最高気温30度以上)が現在より年間25日増えると予測した。

 

 

10、防災・減災に先端IT(総務省)

 総務省は25年度から、防災や減災に役立つ先端IT(情報技術)を南海トラフ巨大地震の想定地域に導入する。NTTデータなどと共同で開発した通信の途絶防止や災害情報の一斉配信といった技術を、東海や西日本の太平洋岸の自治体を中心に供給する。来年度には新たに補助金やモデル地区も設け、普及を加速する。最大220兆円とされる被害額を最小限に抑える。

 東日本大震災では住民に避難誘導が伝わらなかったり電話や無線が通じず安否を確認できなかったりする事態が起きた。通信の機能不全が避難の遅れや不安の増幅につながったとの指摘もある。

 総務省はこうした教訓から約130億円を拠出し、NTTデータやスカパーJSAT、三菱電機、東北大学などと災害に強い情報通信技術の開発を推進。技術確立にメドが立ったため、自治体に一斉に普及させる。

 具体的には、NTTデータは自治体が被災状況や避難場所などの情報を住民に瞬時に伝えるシステムを開発した。通信衛星やセンサーなどで情報を集め、携帯電話やテレビなどに一斉配信する。スカパーJSATは持ち運びでき、ハイブリッド車などから給電する衛星基地局を開発した。停電しても電子メールや電話で域外と連絡を取れる。

 26年度以降は資金面でも導入を後押しする。

 静岡県や和歌山県など甚大な被害が予想される地域には先行的に導入するモデル地区も設ける。

 自治体もそれぞれ防災・減災対策を取る方向だが、財源の確保やどんな技術を導入するかなど課題も多い。

 内閣府の試算では、太平洋の「南海トラフ」を震源域とする巨大地震が起きた場合、避難者は1週間後に950万人に達し、建物の損壊や従業員の喪失などによる被害額は最大220兆円に達する見通し。ただ、早期避難などの対策を徹底することで被害額を半減させられるとも試算している。

 

 

11、救援物質発送ルール化(国土交通省・消防庁)

 国土交通省は、大規模な震災の発生時に、個人が食料や衣類などの救援物資を送る場合のルール作りに乗り出した。

 物資はなるべく品目別に箱詰めするよう求め、被災地には直接送らず、周辺自治体などを経由させるなどして、救援物資殺到による混乱を防ぐ。

 同省などによると、東日本大震災では宮城県に発生から1か月で約75万9000箱の物資が届いた。個人から届いた物資の中には、食料品と下着類を一つの箱に詰めてあるものなどが多く、現地で仕分けしきれず、保管場所で山積みになった。県内自治体では、現在も物資が配布されずに保管されていたり、一部を破棄したりした例もあるという。

 具体的には、①なるべく1箱に詰める品目は1種類に限る②被災を免れた近隣自治体やNPOが引き受け窓口になる③引き受けた団体が仕分け、被災自治体から要望のあった物資を送る――などをルール化する方向だ。

 震災時の個人による救援物資を巡っては、2004年の新潟県中越地震の被災地、長岡市は07年に地域防災計画を改定し、原則として個人からの物資の支援を受け付けないことにした。その代わりに、震災発生72時間以内は被災者自身で食料などを確保することとし、市は協定を結ぶ大手スーパーや飲料水メーカーなどから必要物質を調達することにしている。

 消防庁が2005年度に策定した物質の備蓄や調達に関する指針でも、都道府県が被災市町村と協議し、必要な物資の種類や数量などを管理する仕組みづくりを促している。

 

 

12、仮設入居期間4年間に延長(復興庁)

 東日本大震災の被災者向けの仮設住宅について、政府は入居期間を1年間再延長し、4年間の入居を認めると正式に発表した。被災自治体が建設する仮設住宅や民間アパートなどを借り上げたみなし仮設住宅の入居期間は災害救助法で原則2年間と決められているが、災害公営住宅(復興住宅)の整備の遅れなどにより。昨年4月に1年間延長されていた。

 厚生労働省によると、仮設住宅は宮城、岩手、福島、千葉など7件に計4万8102戸(25年3月末現在)あり、11万582人が入居。「みなし仮設」は全国に6万9572戸(同)あり、17万8037人が暮らしている。

 

 

13、竜巻、雷などの被害防止解決策を自治体に配布(気象庁)

 竜巻や落雷、急な激しい雨など発達した積乱雲による災害を防ぐため、気象庁は、小学校高学年ら向けの啓発ビデオや、自治体が住民に危険性を伝えるガイドラインを作成した。昨年5月、茨城県などであった竜巻被害を受けたもので、全国の自治体や小中学校に配布する。

 啓発ビデオは約18分。「雷鳴が聞こえたので木の下で雨宿りした」「金属を身につけていないので雷は大丈夫」「雨が降ってきたので、川に架かる橋の下で雨宿りした」など、誤った知識から子供が被害に遭う様子を紹介し、どう行動すれば避けられるのか示した。

 ガイドラインは竜巻などの起きる仕組みや被害の実例を掲載。気象庁が発表する情報の解説や、住民への注意呼びかけの例文も載せた。

 気象庁はさらに、的中率の低さが指摘される「竜巻注意情報」の情報文の表現を見直した。従来の「竜巻発生の恐れ」を「竜巻などの激しい突風が発生しやすい気象状況になっている」に改め「空の様子に注意してください」と対応を明示する。

 

 

14、海の緊急情報全国で(海上保安庁)

 海上保安庁は、海の緊急情報を電子メールで配信する「緊急情報配信サービス」を7月から全国に拡大した。海難事故の発生や船舶への避難勧告のほか、津波警報などもリアルタイムで配信し、釣り人やマリンスポーツの愛好者らに注意喚起するのが狙い。

 海保によると、サービスは第3管区海上保安本部(横浜)を皮切りに2011年から順次開始。7月から実施するのは1管(小樽)、2管(塩釜)、8管(舞鶴)、9管(新潟)、10管(鹿児島)、11管(那覇)で、全国の海の情報を受け取れるようになる。

 9管の調査によると、漁船やヨット、モーターボートなどの約7割が専用の通信手段を持っておらず、海難事故などの情報把握が十分ではない。

 

 指定のサイトでメールアドレスを登録し、配信を希望する地域や時間を選択する。サイトのアドレスはhttp://www7.kaiho.mlit.go.jp/micsmail/reg/touroku.html

 

 

15、被災マンションの復旧・避難対策(法務省、国土交通省、東京消防庁)

 被災したマンションの取り壊しや敷地の売却要件を緩和する被災マンション法改正案と、被災地の土地利用を促進する借地借家特別措置法が成立した。

 被災マンション法は、阪神大震災の復興のため1995年に制定された。被災したマンションの取り壊しや、建物や敷地を売却する際、「所有者全員の同意が必要」とされていた。

 ただ、津波などで住民が行方不明になった場合など所有者全員の同意を取るのが困難なケースも多く、改正案は「所有者の5分の4(8割)以上の同意」があれば、取り壊しや売却が出来るようにした。政府が政令で指定した災害に適用される。

 借地借家特別措置法案は、1946年に制定された「罹災都市借地借家臨時処理法」に変わる法律となる。借地人が希望すれば、3ヶ月で契約を取り消すことができる規定や、仮設の住宅や店舗に活用する「短期借地権」の創設を盛り込んだ。政府が指定した地区に適用される。

 一方、高層マンションやビルで火災が発生した際に高齢者らが逃げ遅れるのを防ぐため、東京消防庁は、非常用エレベーターでの避難を推奨することを決めた。防火設備のある一時避難区域の近くにある非常用エレベーターについては避難誘導に活用するよう建物所有者に求める。

 東京消防庁によると、火災時は階段で避難するのが基本で、煙の流入や人が殺到する危険性が高いエレベーターでの避難は控えるのが一般的だが、同庁は防煙機能などに優れた非常用エレベーターは火災時に活用すべきだと判断した。

 非常用エレベーターは、原則高さ31メートルを超える建物に設置が義務付けられている。火災時に消防隊員が消火や救助活動で昇降するために使うことを想定している。

 高層ビルが増え、高層階での火災も増加。15階以上の階で発生した火災は2000年の6件から11年は41件に増えた。

 同庁では、一時避難のために防火設備が整った区域を各階に設けることも求めている。

 

 

16、津波避難ビル各地で指定(内閣府)

 津波が到達する前に住民が逃げ込む一時避難所「津波避難ビル」の指定が、各地で進んでいる。東日本大震災では、津波避難ビルに逃げて助かった人も少なくない。ただ、民間の建物を活用するため、防犯面や補償の問題など、普及には課題もある。

 内閣府が2005年にまとめた指針、津波が到達するまでに住民が避難するのが困難な地域に対し、「やむを得ず適用される緊急的・一時的な避難施設」と定義している。

 マンション、ホテル、公共施設など海沿いにある既存の高層建築物を活用するのが特徴で、市町村がそうした建物の管理者と協定を結んで指定する。耐震診断で安全性が確認されていることや、1981年に定められた新耐震設計基準に適合していることが条件。想定される浸水の深さが2メートルなら、3階建て以上、3メートルなら4階建て以上の鉄筋コンクリートの建物が指定される候補となる。

 どの程度の揺れで津波避難ビルに逃げ込むかの目安は、自治体によって異なる。

 内閣府によると、東日本大震災の際、住民が逃げ込んだ津波避難ビルは、岩手、宮城、福島3県で少なくとも63施設、避難者が100人以上300人未満だったのが15施設、50人以上100人未満と10人以上30人未満がそれぞれ10施設となっている。

 実際に津波避難ビルが活用され、震災をきっかけに全国の沿岸部の自治体で「津波への備えが不十分だ」との危機感が高まったことから、指定が加速した。内閣府と国土交通省の調査によると、11年6月に全国で1876棟だった津波避難ビルの指定数は、4ヶ月後の10月末には2倍以上の3986棟に達し、今も増え続けている。

 同時点で最も多いのは静岡県で、1031棟。以下、大阪府(749棟)、神奈川県(429棟)、愛知県(302棟)などが続く。予想される東海・東南海・南海の三連動地震などで津波が想定される地域に多い。

 しかし、地域によってはそもそも高い建築物はないところもあるほか、あっても耐震性などの問題で指定できないこともある。また、高層マンションなどではオートロック式の玄関が多く、夜間や休日に津波が発生した場合でも迅速に解錠できるかという問題もある。

 さらに、外部から不特定多数の人が立ち入るため、マンションなどでは防犯上の問題が生じるほか、ガラス扉を割って避難した場合などに誰が補償するのかなどもあらかじめ決めておかなければならない。

 このような問題もあって、指定には困難があるが、この分野は防災士にとって身近な地域安全のため、取り組み易いテーマである。行政と連動して各地の防災士会で様々な活動が展開されることが期待される。

 

 

[防災短信(地方や企業の動きなど)]

1、災害避難、ペット同伴(環境省)
 ~居住空間分離も想定、自治体・飼い主に準備促す~3月30日日本経済新聞

2、防災隣組 100団体に(東京都)
 ~新たに64団体を認定、品川区戸越2丁目町会など~4月1日読売新聞

3、震災記録票を作成(消防庁)
 ~消防の救助や原発放水振り返る~4月2日日本経済新聞

4、帰宅困難者向け200施設(東京都)
 ~高校などを指定、7万人受入れ想定~4月2日日本経済新聞

5、被災者支援、途絶えさせぬ(NPO)
 ~会社設立が加速、住民も「自立」へ継承~4月3日日本経済新聞

6、災害時の物流拠点、倍増(国土交通省)
 ~民間倉庫934ヶ所確保、大震災対応~4月5日日本経済新聞夕刊

7、救急車出動、10年後がピーク(消防庁)
 ~年間619万件予測、重症者優先搬送の仕組み構築へ~4月9日日本経済新聞

8、震災義援金4123億円(岩手、宮城、福島)
 ~「阪神大震災」の2倍以上にのぼる~4月11日読売新聞

9、大雨・雷、被害・警戒度で5段階(気象庁)
 ~気象庁検討、「避難行動とり易くが狙い」、しかし分かりにくいとの指摘もある~4月23日日本経済新聞

 

 

 

【参考文献】

 

1、平成25〔2013〕年3月30日 『日本経済新聞』
2、平成25〔2013〕年3月30日 『日本経済新聞』
3、平成25〔2013〕年3月30日 『日本経済新聞』
4、平成25〔2013〕年3月29日 『読売新聞』
5、平成25〔2013〕年3月29日 『日本経済新聞』夕刊
6、平成25〔2013〕年4月 8日 『日本経済新聞』
7、平成25〔2013〕年4月 9日 『日本経済新聞』
8、平成25〔2013〕年4月26日 『日本経済新聞』
9、平成25〔2013〕年4月13日 『日本経済新聞』
10、平成25〔2013〕年4月17日 『日本経済新聞』夕刊
11、平成25〔2013〕年4月 3日 『読売新聞』
12、平成25〔2013〕年4月 3日 『読売新聞』
13、平成25〔2013〕年4月22日 『日本経済新聞』
14、平成25〔2013〕年4月27日 『日本経済新聞』夕刊
15、平成25〔2013〕年4月 9日 『読売新聞』
            4月19日 『日本経済新聞』夕刊
16、平成25〔2013〕年4月28日 『読売新聞』

 

防災短信~各見出しを参照

 

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第84号1平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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