防災士について 防災士になるには 防災士の登録状況 研修機関のご案内 よくある質問
TOP  > 防災評論 第37号

防災評論 第37号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第37号)【平成25年8月号】

 

【目次】

〔政治行政の動向概観〕       

〔個別の動き〕 

1、災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)
2、激しい竜巻発生数激増予想(気象庁気象研究所)
3、救急搬送に係る対策と課題(消防庁、地方自治体)
4、大規模噴火、47火山広域避難計画策定(内閣府)
5、復興予算、流用を調査(復興庁、財務省)
6、東日本大震災における危険業務による死亡(地方公務危災委補償基金)
7、自治体の空き家対策(国土交通省、地方公共団体)
8、子供への防災検定(防災検定協会)
9、活断層60キロで建築規制(徳島県)
10、遭難位置情報、消防への提供ルール化(総務省)
11、地震被害素早く推定(防災科研)
12、首都直下地震対応の行動計画(防衛省)
13、共通番号法が成立(総務省ほか)

 

 

〔政治行政の動向概観〕

 ねじれ解消を訴えて参議院の安定多数を確保した与党は、今後の強力な政権運営が可能となり、東日本大震災、リーマンショックなどにより低迷していた日本復権の呼び声も高い。しかし院構成のための臨時国会以降の政治情勢を見ると、ねじれ解消により展望されていた”決める政治”の強力な推進が必ずしも図られない状況となっている。与党勝利の原動力となった「異次元緩和」を始めとするアベノミクス効果が剥げ落ちてきていることに加え、政局の関心が集団的安全保障、対アジア外交、憲法改正等の防衛、外交面にシフトし、経済に比べより国論の統一が難しい分野へと移行していること、さらには自、公、民三党での難産の末、合意したはずの消費税増税について政権内にためらう風潮が浮き彫りになっていることが大きな影を落としている。
 とりわけ消費税については①既に国際公約(財政健全化の一環)として認知されており、これを実行できない時には好調となりつつある日本経済の信認失墜につながりかねないこと、②防災や国土強靭化、社会保障の充実安定など国政の課題山積みのための財源確保は不可欠の要請であることなどからぜひとも実施しなければならない政策課題である。この点速やかに適正な判断により日本の進むべき方向を確立してゆく姿勢が求められる。
 足元の事故・事件に目を移してみると、連日の猛暑により、日中40度を超える地点が続出し、大量の熱中症患者が搬送治療される一方、列島各地でゲリラ豪雨、集中豪雨が多発し、気象庁が「これまで経験したことのない」豪雨であるとの見解を多発するなど異常な降雨が続き、秋田では発生した大規模土石流により5名が死亡・行方不明となる惨事となった。また、8月15日には京都府福知山では花火大会の直前、露店のガソリンからの引火により爆発、死者を含む十数名が負傷し、急遽大会が中止となるなど規模は小さいながら特異な災害が多発している。また桜島も大噴火を起こした。防災士の使命はなにを置いても自らと身の回りの安全、人命確保にある。少しでも異常を見逃さず、的確な避難や防御措置など、咄嗟の対応力をより磨き上げてゆくことが望まれる。

 

〔個別の動き〕

1、災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)

 高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦、外国人など災害発生時に自力で避難できない人たちについては災害対策基本法が改正され、名簿作成と地域の協力団体への提供が義務付けられた。官民で個々の避難計画を作り、災害時に支援できる者が駆けつける態勢を目指す。

 しかし、避難行動要支援者の名簿を、都道府県庁所在地など主要自治体(74市区)の 大半で作ったものの、支援を必要とする住民の掲載率が半分に届かない自治体が27市区あり、大阪、千葉など8市区では1割未満だったことがわかった。 名簿への掲載に「本人同意」を求める個人情報保護条例を意識し、及び腰の自治体が多いためだが、本来の目的である災害時の有効性が危ぶまれる実態が明らかになった。

 主要自治体の9割に当たる67市区が既に名簿を作成していた。震災直後の2011年4月には7割(消防庁調べ)だったため、対策を急ぐ傾向が明らかになった。

 ところが、名簿は作ったものの肝心の住民掲載率が低い自治体が多いことも判明。避難行動要支援者のうち同意して掲載された住民が5割未満だった自治体は、川崎(23%)、京都(13%)、熊本(12%)など27市区と、主要自治体の3分の1に上った。なかでも最低だった0.4%の大阪や相模原(1%)、千葉(4%)など1割未満が8市区あった。こうした背景に、個人情報保護条例で、自治体が住民情報を名簿にして外部提供できるのは「本人の同意がある場合」と規定していることがある。自治体の多くは、条例に抵触しないよう、避難支援が必要な住民に広報誌や郵送通知などで名簿掲載への同意を呼びかけ、申し出を待つ方法を取っていた。その結果、掲載率が低迷し名簿の意義が疑われる状況が生じていた。

 一方、民生委員らが個別訪問し同意を求めた長野市は97%と高掲載率だった。

 また、同意なしに名簿や外部提供ができるよう新たに条例制定などを講じ、必要な住民を原則すべて掲載した自治体も長野、福岡など17市区あった。民生委員の中に防災士資格を持つ人が増加することが期待される。

 

2、激しい竜巻発生数激増予想(気象庁気象研究所)

 地球温暖化が進行した2075~99年の日本では、激しい竜巻の発生しやすい気象条件が現在から倍増するとの予測を、気象庁気象研究所(茨城県つくば市)がスーパーコンピューターを用いた実験でまとめた。春(3~5月)は西日本と関東を中心に2~3倍、夏(6~8月)は日本海側を中心にほぼ倍になると予測している。

 温暖化に伴い日本の南海上の海面水温が上昇するため、大気中の水蒸気量も増え、大気の不安定度が高まるのが原因とみられる。秋冬は目立った増加がなかった。

 突風の強さを示す「藤田スケール」6段階のうち、下から3番目の「F2」(約7秒間の平均風速50~69メートル)以上の竜巻が発生しやすい気象条件の出現頻度を調べた。

 それによると、F2以上の竜巻は、多い年で年に5~6回発生。気象条件を満たしても必ずしも竜巻が発生するわけではないが、地域によって春夏は倍増する可能性があるとしている。

 さらに、現在の気候では激しい竜巻が発生しにくいと考えられる春の北日本でも、将来は発生する恐れがあることも分かったという。

 

3、救急搬送に係る対策と課題(消防庁、地方自治体)

 救急搬送患者の受け入れ先の病院がなかなか見つからないケースが後を絶たない。医師不足に加え、高齢者を中心とした救急搬送要請の高まりで、患者の受け入れに対応できなくなっていることが要因にある。

 一刻を争う治療が必要な救急患者が医療機関に受け入れを断られるケースは全国各地で起きている。

 消防庁によると、2011年に重症患者の救急搬送で医療機関から20回以上受け入れを拒否されたのは47件で、全体に占める割合は0.01%。10回以上拒否されたのは753件(同0.2%)だった。搬送先が決まらず、現場で30分以上待機したケースは2万1794件(同4.9%)に上った。

 全国の救急車の出動件数は増え、12年(速報値)は前年と比べ、1.7%増の約580万2千件。搬送人数も同1.3%増の524万9千人で、いずれも3年連続で過去最多を更新した。

 こうした状況に対し、救急患者のスムーズな搬送のための対策に動き出す自治体も相次ぐ。

 東京都は09年、搬送先が見つからなかった場合の独自ルールを定めた。都内を12地域に分け、それぞれに都が地域救急医療センターを指定。救急隊が搬送先を20分以上見つけられなかったり、5病院に断られた場合、同センターが地域で受け入れ可能な病院を探す。それでも見つからなければ、東京消防庁に常駐するコーディネーターが隣接する地域の病院と調整する仕組みだ。

 佐賀県は11年度から、県内の救急車約50台と一部の病院にタブレット端末を配備。現場で患者の受け入れ可能な病院を検索できるシステムを全国で初めて導入した。これまでの救急搬送現場では、隊員が各病院に電話で逐一、搬送可能かどうかを確認。端末を使うことで、各病院の受け入れ可否や専門医の有無などの情報を瞬時に知ることができるため、速やかな搬送活動につながるという。

 奈良県や大阪府などでも同様に情報通信端末を使った取り組みを開始。埼玉県も導入の方向で検討中だ。タブレット端末の導入が進めば、患者の受け入れ可能な病院が検索できるだけでなく、情報共有で病院間の協力体制構築も期待できる。

 

4、大規模噴火、47火山広域避難計画策定(内閣府)

 内閣府の有識者検討会は、火山の大規模噴火に備えるため、都道府県を越えた広域避難計画をつくる必要があるとの提言をまとめた。現在は自治体の判断で出している避難指示について、国の関与を強め、緊急時は政府が首長に発令を指示できるようにすることも求めた。対象は富士山や桜島など47の活火山。政府は提言を受け、防災基本計画を見直す。検討会は東日本大震災後に国内の火山活動が一時的に活発になったことなどから備えの強化が必要と判断している。

 現行の防災基本計画は火山災害として、数十~数百人の避難者が出る規模しか想定していないが、提言は、噴出量が数十億立方メートルになる大規模噴火や、小規模でも長期の噴火では、火砕流や降灰などで数千人規模の避難者が出ると指摘。

 規模に応じた複数の火山ハザードマップを作るとともに、広域避難を想定し、都道府県や市町村の間で住民の受け入れ先をあらかじめ決めておく「広域一時滞在協定」を結ぶ必要があるとした。

 火山灰が数センチ積もると車での移動が難しくなるとして、自治体に、鉄道やバス、船などの事業者と住民を移送する協定を事前に結ぶよう求めた。

 小規模な噴火が続くなど大噴火の懸念が出た時点で、政府は現地連絡対策室を設置して地元自治体と合同会議を開催。大噴火の可能性が強まった場合は、国が知事や市町村長に避難指示を出すよう命じられるような法的整備の検討も求めた。

 検討会は、43人が犠牲になり避難者が約3600人に上った1991年の雲仙・普賢岳(長崎県)の大火砕流や、関東まで火山灰が降った1707年の富士山噴火などを念頭に対策をまとめたものである。

 

5、復興予算、流用を調査(復興庁、財務省)

 東日本大震災の復興予算から全国の自治体や公益法人の約20基金に配分された約1兆2000億円について、復興庁と財務省は、被災地の再建と関連が薄い事業に使われている可能性があるとして実態調査を行った。返還請求なども検討する。

 復興予算を巡っては、昨年、国の出先機関の庁舎耐震改修費や反捕鯨団体対策費などに流用されていたことなどから発覚。昨年11月、被災地との関連が薄く、未執行だった35事業168億円の予算執行を停止した。一方、この時点で自治体などに配られ、基金として積まれていた約1兆2000億円分については、既に国庫から払い出されていたため、執行停止の対象から外れていた。

  今回、調査対象となったのは、経済産業省所管の「環境対応普及促進基金」(3000億円)などで計上され、被災地以外でも使用可能な基金である。

 復興庁と財務省はこうした基金事業を洗い出し、実態把握を図る。ただ、自治体の基金は議会の議決を経て積み立てているケースが殆どで、国が自治体に対し、執行停止や返還を求めることができるかどうか大きな問題となっている。

 

6、東日本大震災における危険業務による死亡(地方公務危災委補償基金)

 東日本大震災で死亡した岩手、宮城、福島県の自治体職員のうち、危険な業務にあたっていたとして、通常の公務災害より補償額が大きい「特殊公務災害」に認定されたのは、申請142件に対し24件と、17%にとどまっている。

 認定には、危険な業務をしていたと判断できる目撃証言や、危険な場所で働いていたことを示す客観的な事実などが必要。住民を避難誘導していた市役所や町村役場の職員らの場合、その「危険な業務」と判断できる目撃証言があるかどうかなどが、壁となっている。

 同基金などによると、震災で死亡し、公務災害が認められた3県の自治体職員は281人。このうち142人の遺族が特殊公務災害を申請したが、4月末時点で認められたのは24人。14人は審査中で、残る104人は認められなかった。

 特殊公務災害による死亡は、警察官や消防士の「殉職」にあたる。建物ごと津波に飲まれた石巻市北上総合支所や同市雄勝病院などで避難誘導をしていた職員も含まれる。多くは、「被災時の職務状況が分からない」「庁舎や病院は避難場所に指定されていて、危険性は予測できなかった」などの理由で認められていない。

  3県の基金支部は本部に対し、震災による犠牲は①目撃証言が得られる状況にない②自治体が示している浸水予測区域は今回の津波を予測したものでない③職員は危険を知っていながらも職務に従事していた――などとして、広く認定するよう求めている。

 

7、自治体の空き家対策(国土交通省、地方公共団体)

 国や自治体による空き家対策が始まっている。国土交通省は過疎や人口減などの市町村に限って認めていた「空き家再生等推進事業」による家屋の撤去対象を全国に広げ、市町村が解体費用の最大5分の4を補助、国がその半分を負担する。

  一方、東京都足立区は空き家対策の条例を2011年に施行。解体を促すと同時に木造家屋の解体費用の9割(上限100万円)を補助する。これまでに30棟解体を終えた。

 2010年に条例を施行した埼玉県所沢市は、命令に応じない所有者の氏名を公表する規定をいれた。福岡県宗像市も同様の条例を2012年に施行している。京都市は、2013年度中の制定を目指す条例と連動して、空き家が撤去された後の土地を、隣接地の住民が取得するのを支援する事業を検討している。国交省の調査では、2013年1月時点で138自治体が秋や対策の条例を施行していた。

 ただ、行政の取り組みには限界もある。私有財産である空き家の解体には所有者の同意が必要。行政代執行による解体は訴訟のリスクもあり、慎重にならざるを得ないという。

 こうした中、解体以外の取り組みも行われている。

 神奈川県横須賀市の汐入町5丁目は丘陵に位置し、通路に階段が多い。今では287戸のうち53戸が空き家だ。

 同市は、空き家をリフォームして大学生に貸し出す事業を昨年10月から始めた。学生は、高齢世帯の安否確認など地域貢献をするのが条件。明かりがともる家が1軒増えるだけで安心感が増すとされ、好評である。

 

8、子供への防災検定(防災検定協会)

 検定を通じて災害時に命を落とさないための的確な行動が取れる子供を育てようと、防災検定協会は、11月から「ジュニア防災検定」を実施すると発表した。東日本大震災後も全国に広がっていない防災教育の浸透を図るのが目的という。

 検定は、小学5年生までが対象の初級、小学6年生と中学1年生向けの中級、中学2、3年生向けの上級の3段階。初回は東京と大阪で予定しており、11月24日に初・中級で実施する。来年以降は全国の主要都市を中心に6月と10月の年2回行われる。

 元NHKキャスターで同協会の平野啓子理事長は「問題を解くことが行動につながる。『語り』と同じように人から人へ伝わっていくことが一番重要」と話している。

 

9、活断層60キロで建築規制(徳島県)

 徳島県は、直下型地震に備えて県北部を走る断層帯上の建築を規制する条例の施行を受け、規制対象の区域案を公表した。区域内では事業者に活断層の位置の調査を求めるほか、活断層の真上での新築・建て替えは避けることも義務付ける。

 県によると、活断層上での建築規制を盛り込んだ条例は、都道府県では初めて。断層調査費用は事業者が負担する。県は「通常50万円程度かかる」とみており、企業からは不満も出ている。

 対象区域案は、県北部を東西に走る中央構造線の活断層のうち位置が明確な長さ約60キロメートルについて、片側20メートルずつ(全幅40メートル)を基準に定めた。8月30日付で区域を指定し、同日以降の着工分から県への報告を求める。

 区域内では、学校や病院、オフィス、商業施設、ホテル、マンションなど多数の人が利用する一定規模以上の建物のほか、危険物の貯蔵施設の新築・建て替えが規制される。罰則規定はないが、従わない場合は県が事業者に勧告をしたり、勧告内容を公表したりできる。既設の建物は対象外とする。

 公表された区域は県東部の鳴門市から、阿波市、美馬市、西部の三好市まで4市3町にまたがる。県が昨年9月に公表した活断層図を基にした。

 県は活断層のずれがもたらす大きな被害を想定し、条例を昨年12月に施行。中央構造線付近の建築規制に関する規定は今年4月1日に施行された。

 

10、遭難位置情報、消防への提供ルール化(総務省)

 北海道湧別町を襲った2013年3月の地吹雪の中で父親が娘を抱いたまま亡くなった事故で、消防は父親の携帯電話の位置情報が得られず、父娘の捜索を中断していた。総務省は情報提供のしくみが整っていなかったことが原因とみて、位置情報をすみやかに伝えるルールを作り、全国の消防本部と携帯各社に通知した。

 死亡した漁師は3月2日午後3時ごろ、長女(9)と帰宅途中に軽トラックが雪にはまって立ち往生し、携帯電話で親族に助けを求めた。その後、徒歩で近くの知人宅を目指したが、途中で進めなくなり、娘の体を温めながら救助を待ったが力が尽きて死亡した。

 遠軽消防署上湧別出張所の署員3人が捜索し、午後9時34分に無人の軽トラックを見つけた。地吹雪で視界はゼロに近く、携帯電話の位置情報を入手しようと考えた。しかし、「捜査権がない消防には提供できない。警察を通して欲しい」と断られたという。

 警察がKDDIから位置情報を知らされたのは午後11時半ごろ。警察は情報提供を求めるにあたり、親族の同意を得ようとして時間がかかったとしている。

 ようやく父親の携帯電話がある可能性の高いエリアがわかり、翌朝午前6時37分に捜索を再開。父娘が発見されたのは、それから30分後の午前7時7分。軽トラックから約300メートル離れた場所だった。

 総務省と消防庁は事態を重く受け止め、緊急時は消防が携帯会社に捜索する人の携帯番号などを伝えればすみやかに位置情報を得られるルールを作り、これを全国に周知することとしている。

 

11、地震被害素早く推定(防災科研)

 地震が発生した際、強く揺れた所にいた人の数や建物の全半壊棟数をできる限り早く推定する「リアルタイム地震被害推定システム(J-RISQ)」を、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)が試作した。過去約3年間の試験運用では、約5分以内に比較的高い精度で推定できた。

 防災科研では「救助態勢を立ち上げる上で、災害の規模と被害が大きい地域を、大まかでも早く推定できれば役に立つ。精度と速度を向上させて実用化できるか見極め、行政が活用する仕組みを検討したい」としている。

 このシステムは所内の研究として試験段階にあり、推定結果は一般に公表していない。

 J-RISQは、全国を250メートル四方の地区に細分化。国勢調査や住宅地図などの情報を利用し、昼夜別の人口や建物の数と構造・耐震性、地盤の揺れやすさをデータベースにまとめた。

 

12、首都直下地震対応の行動計画(防衛省)

 東日本大震災の教訓を踏まえて防衛省が改定した首都直下地震への行動計画では、民間企業や米軍との連携を盛り込んでいるのが特色。地震発生時に投入する自衛隊部隊は、東日本大震災を上回る約11万人以上となるが、政府機能の崩壊や多数の負傷者が発生することも予想され、同省は「迅速な対応には民間や米軍との協力が欠かせない」としている。

 計画では〈1〉東京23区で震度6弱以上〈2〉23区外と神奈川、埼玉、千葉各県で震度6強以上――の場合、朝霞駐屯地(東京都など)に、陸海空自衛隊を一元的に運用する「統合任務部隊」を設置。陸上部隊だけで最大約8万5000人を投入し、約2万5000人の予備自衛官も招集する。東日本大震災の際は、最大派遣時でも陸海空自衛隊あわせて約10万7000人だった。

 今回、特に重視したのが民間企業との連携。陸自部隊はトラックでの派遣を想定しているが、道路の寸断や渋滞が予想される。このため、同省は高速道路を活用しようと、NEXCO東日本など3社と協定を結んだ。東北、関越道などで〈1〉通行止め区間への自衛隊車両の出入り〈2〉サービスエリア(SA)の敷地や建物の提供――などの協力を受ける。常磐道守谷SA(茨城県)には現地指揮所やヘリポートも開設する計画だ。

 このほか、NTTドコモからは携帯電話や衛星電話を借りる取り決めをかわした。部隊の輸送にフェリー会社の船を優先利用する交渉も進めている。

 東日本大震災の際、空母や海兵隊などを派遣し、「トモダチ作戦」を行った米軍との連携強化も盛り込んだ。防衛省内や東京・横田基地の在日米軍司令部に日米調整所を設置し、地震発生後すぐに支援内容などについて協議を開始。

 政府は現在、首都直下地震での被害想定の見直しを進めており、同省は結果が出れば計画の再改定を検討する。

 

13、共通番号法が成立(総務省ほか)

 国民全員に番号を割り振る共通番号制度関連法(マイナンバー法)が成立した。年金などの社会保障納税を一つの個人番号で管理する制度が2016年1月から始まる。

 同法は昨年の衆院解散でいったん廃案になったが、その後、自民、公明、民主3党による修正を経て、2013年3月に政府が関連法案を国会提出した。

 共通番号制度は、国民一人ひとりに番号を割り振り、国や市町村などがバラバラに管理している社会保障や所得の情報をまとめて管理する制度。「より公平な社会保障制度・税制の基盤になるとともに、行政の効率化に資する」と期待されている。

 関連法成立を受け、政府は15年10月をめどに全国民に12桁程度の個人番号通知。16年1月以降、I(集積回路)チップの入った顔写真付の「個人番号カード」を希望者に交付する。カードを提示すれば、失業手当などの社会保障給付を申請する際に納税証明書などの書類を提出する必要がなくなる。災害対策として避難先でも被災者の本人確認が容易に、生活支援金の支給もスムーズにできるなどの効果も期待される。

 

 

 

[防災短信(地方や企業の動きなど)]

1、大成建設社員に有罪(東京地裁)
 ~温泉施設爆発「予見できた」~5月9日付読売新聞
2、富士山避難 最大13万人(富士山防災対策協議会)
 ~はじめて広域避難計画~5月10日付読売新聞
3、津波避難、船舶にマニュアルを(国土交通省)
 ~誘導方法や食糧備蓄など~5月8日付日本経済新聞
4、違反施設の指導強化(消防庁)
 ~広島福山のホテル火災から1年~5月13日付日本経済新聞
5、笹子型トンネル。打音検査劣化見抜けず(国土交通省)
 ~天井板点検見直し~5月6日付読売新聞
6、南海トラフに地震保険(損保協会)
 ~損保各社・事業継続を支援~5月20日付日本経済新聞
7、地震速報79%が「適切」(気象庁)
 ~気象庁が自己採点~5月24日付日本経済新聞
8、震災ガレキ「処理先確保」(環境省)
 ~福島県は計画見直しへ~5月8日付読売新聞

 

 

 

【参考文献】

1、平成25〔2013〕年5月12日 『読売新聞』
2、平成25〔2013〕年5月5日 『日本経済新聞』
3、平成25〔2013〕年5月23日 『日本経済新聞』
4、平成25〔2013〕年5月17日 『日本経済新聞』
5、平成25〔2013〕年5月11日 『読売新聞』
6、平成25〔2013〕年5月11日 『読売新聞』
7、平成25〔2013〕年5月12日 『読売新聞』
8、平成25〔2013〕年5月24日 『読売新聞』
9、平成25〔2013〕年5月13日 『日本経済新聞』
10、平成25〔2013〕年5月22日 『朝日新聞』
11、平成25〔2013〕年5月21日 『日本経済新聞』
12、平成25〔2013〕年5月20日 『読売新聞』
13、平成25〔2013〕年5月29日 『読売新聞』

 

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第84号1平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
「防災情報」トップページへ戻る