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防災評論 第4号

 山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

第4号

 

 

〔政治行政の動向概観〕

 3月末(平成22年)には平成22年度予算及び関連法案が成立し、既報のとおり子ども手当や高校授業料無償化関連の法律も国会を通過し、一見民主党他連立内閣の政局運営は順調なように見える。しかし、その当初予算では、税収見積りを上回る国債発行を組み込まざるを得ず、このままでは日本は確実に財政破綻の途を歩むことになる。この問題に対する処方箋として、①増税、②いわゆる「ムダ遣い」の排除、③税外収入の確保、④NPOなどの活用による政府機能スリム化などが挙げられるが、①は選挙対策のため事実上封印され、②についても、昨年(平成21年)11月、今年(平成22年)4月と大々的に「事業仕分け」が行われているが、政治ショーとしての効果はともかく、財源捻出にはほど遠いことがもはやハッキリしてきている。公共事業の確保を目的とした揮発油税率などの維持に加えた③高速道路無料化の事実上の撤回は公約違反であることに加え、党と政府との確執を招き、先行き不透明となっている。防災士制度に関し最も期待できる④については、「新しい公共」の名のもと官邸直々に懇話会を設置し、税制上の優遇措置などが話し合われている(〔個別の動き〕参照)が、鳩山首相らがリーダーシップを発揮するとしていたこのテーマも、首相が自主的に公約した、普天間米軍へリポート基地の5月末までの移設先決着(現行案=辺野古埋立案の撤回)問題に手足を取られ、実質的には殆ど動けない状況が続いている。こうした中、郵政改革法案の審議入りが待たれるところであるが、郵政資金の自主性増大のメニューとして防災教育の徹底や市民防災への寄与などを盛り込むことにより、実効的な「新しい公共」推進への途をさぐるなどの政策提言も必要かもしれない。

 世界を見ると、ハイチ大地震(平成22年1月12日)、チリ大地震と関連する津波(平成22年2月28日)に加え、4月14日には前回の四川大地震(平成20年5月12日)に近い中国青海省で再び大地震(M7.1)が起き、現地チベット族を中心に推定10,000人以上の死者・行方不明者(中国発表から実際値を推計)を出すなど、地震災害を中心とした大災害が勃発している。また、5月に始まる長丁場の上海万博についても、運営上のテロなどへの対応が心配される。チリ津波を除き日本は大災害直撃の事態を今のところ免れているが、世界の動向を見る限り、確率的には我が国周辺での大災害発生の危険度は増大していると考えるべきであろう。防災士制度の重要性と実効性にますます期待が高まっている。

 

〔個別の動き〕

1、新しい公共・NPO法人への寄付(内閣官房)

 鳩山首相は、特定非営利活動法人(NPO法人)に寄付した人の税金の軽減を早く検討するよう指示している。国が認めたNPO法人であれば、税額から、寄付した金額の一定割合を差し引ける「税額控除方式」の導入などが検討の柱で、政府の「新しい公共」円卓会議や税制調査会などで話し合い、5月にも結論をまとめる見込みである。
 鳩山首相は、これまで官が担ってきた、市民が行う(防災士などの)教育や医療などの公共サービスを、NPO法人や市民活動に委ねる「新しい公共」を広めたい考えである。
 現在の優遇策は、所得から、寄付した金額を差し引いたうえで税を課す「所得控除方式」が中心だが、所得控除と税額控除のどちらか税金が軽くなる方を、寄付した人が選べるしくみなどを検討する。
 また、認定NPO法人の法人税を軽くするしくみについても議論する。収益事業による所得は、20%まで非収益事業への寄付金とみなして課税所得から差し引けるが、この比率の引き上げが焦点となる。更に、寄付金優遇の対象の要件を緩める案も浮上している。
 日本防災士機構(NPO法人)や日本防災士会(任意団体)は、これらの動きを十分に注視し、「新しい公共」の認知度向上を活動の柱に据えてゆく必要がある。

 

2、エレベーター部会の設置(国土交通省)

  国土交通省は、エレベーター事故の原因を詳しく調べ、再発防止策に活かすため、運輸安全委員会にエレベーター事故調査の専門部会を設ける。
 平成23年度の通常国会に関連法の改正案を提出する。また、調査に当たる人材を育成するため、同省の研究機関「国土交通大学校」に研修コースを設ける。
 運輸安全委員会は、現在、航空、鉄道、船舶の各事故を調査対象としているが、これに作業用を含むエレベーターの事故を加え、4部会とする。エレベーター事故の調査については、これまで同省の「昇降機等事故対策委員会」が担当していた。
 この部会設置の発端となったのは、平成18年の港区マンション内で起きた不可解なエレベーター事故であった。防災士にとっても、エレベーターなど日常使用する生活用具の安全性に目を向けてゆくことが望まれる。

 

3、耐震工事の実態(内閣府)

  内閣府が平成21年11月に実施した「防災に関する特別世論調査」によると、自分が住む住宅の耐震補強工事を「実施するつもりがない」と答えた人が39.8%に達した。平成19年の前回調査からは7.4ポイント低下したものの、経済的な理由などから中々工事に踏み切れない実態が浮き彫りとなった。
 「実施するつもりがない」、「予定はない」と答えた人に理由を複数回答可で尋ねると、「お金がかかる」が50.6%で最も多く、前回調査と比べても8.7ポイント上昇した。「必要性を実感できない」という回答も22.1%あった。
 「既に耐震性がある」と答えた人は23.0%だった。内閣府は、「耐震補強のための助成金の拡充も含め自治体や関係省庁と連繋する」と話している。
耐震工事の普及や家具固定化の推進は、防災士にとっても重要なテーマである。

 

4、大雨や洪水などの気象警報・注意報の改善実施日(気象庁)

  今年(平成22年)1月26日に気象庁が発表した「大雨や洪水などの気象警報・注意報の改善について」において、確定後改めて通知することとしていた改善実施日時については、5月27日(木)13時からと確定した。

(参考)気象庁ホームページ

「大雨や洪水などの気象情報・注意報の改善について」

 

(参考)気象庁ホームページ

「大雨や洪水などの気象情報・注意報の改善実施日について」

 

 

 

5、避難に関する問題点(内閣府、総務省消防庁)

 内閣府が発表した平成21年の「避難に関する特別世論調査」によると、局地的な大雨や大型台風などで避難する際に参考にする情報で最も多かったのは、天気予報や注意報などの気象情報(75.2%)で、自治体による避難勧告(60.1%)の発令情報を上回った。

 望ましい避難勧告の伝達手段としては、テレビ(73.5%)がトップだった。

 避難行動を開始するタイミングとしては、「避難準備情報」(26.3%)、「避難勧告」(34.8%)、「避難指示」(16.2%)と、何らかの避難勧告を頼りにしている人が77.3%いた。「自分で判断する」との回答も20%あった。

 充実して欲しい対策で最も多かったのは、「近隣で安全な避難場所の整備」(47%)であった。「気象情報の充実」(43.6%)が平成17年の前回調査に比べて11.2ポイント、「市町村長からの適切な避難勧告などの発令」(41.7%)も15.5ポイント増えた。

 望ましい避難勧告の伝達手段では、「テレビ」に続いて「広報車」が50.8%、「ラジオ」が46.6%、「携帯メール」は32.6%、「インターネット」は19.8%、「防災行政無線」は29.3%だった。

 また、内閣府と総務省消防庁は、今年(平成22年)2月のチリ地震で発生した津波に関するアンケート調査の結果をまとめた。

 大津波警報と避難指示・勧告が出た東北3県で、「避難した」と答えた住民は37.5%に止まり、57.3%が「避難しなかった」と回答した。このように避難率の低さが浮き彫りにされた。

 このアンケート調査は3月、大津波警報が出た青森・岩手・宮城の3県の36市町村のうち、避難指示と避難勧告が発令された地域の住民を対象に実施し、約2千人が回答した。

 「避難の必要性は認識していた」にもかかわらず、避難しなかった住民は26.3%いた。そもそも「避難しようとは思わなかった」のは31.0%に上った。

 

〔図〕

 

 避難しなかった理由は、「高台など、浸水のおそれがない地域だと思った」が52.7%と最多で、「他地域に到達した津波が大きくなかった」(19.2%)、「大津波警報だったが、小さな津波しか来ないと思った」(16.5%)が続いた。

 一方、避難した住民に動機を3つまで聞いたところ、「市町村が避難を呼びかけていた」が47.1%で最も多く、次いで「昭和35年のチリ地震・津波を体験した」が44.0%で続いた。大津波警報については、全回答者の98.4%が「見聞きした」としながら、避難の動機に挙げたのは41.3%に止まった。

 避難率の低さの理由について、高さ3メートルに達する恐れがあるとした大津波警報に対し、避難指示・勧告の範囲は過去最大級の10メートルを想定したハザードマップに基くことを住民が知っていたため、と指摘する向きもある。このため内閣府では、防波堤の高さなど各地の状況に応じた「実際的なハザードマップ」への見直しを全国に要請する一方、大津波警報(高さ3メートル以上)と津波警報(同1メートル以上)の基準見直しを含め、きめ細かい警報や予報のあり方についても検討してゆく方針である。

 

 

6、土砂災害防災法の一部改正案(国土交通省)

 国土交通省は、2月23日(平成22年)、土砂災害防止法の一部改正案を、閣議決定を経て国会に提出した。  法改正の背景としては、平成16年の新潟県中越地震、平成20年の岩手・宮城内陸地震において、河道閉塞(天然ダム)による甚大な被害が懸念された点が挙げられる。こうした大規模な土砂災害が急迫している場合に、住民の生命又は身体を保護するためには、住民に対し避難指示をする役割を担う市町村において、避難指示の判断の根拠となる災害の想定される区域や発生時期に関する情報を入手することができるようにすることが喫緊の課題となっている。

 このことから、次の措置を改正法に規定する。

(1)緊急調査

 重大な土砂災害の急迫した危険があるときにおいて、特に高度な専門的知識及び技術が必要である場合は国土交通大臣が、その他の場合は都道府県知事が、緊急調査を行う。

(2)土砂災害緊急情報の通知及び周知

 都道府県知事又は国土交通大臣は、市町村長による避難指示の判断に資するため、緊急調査の結果に基き、土砂災害が想定される土地の区域及び時期に関する情報を、市町村長に通知するとともに、一般に周知させるため必要な措置を講じる。

 同法は今国会において成立が予想され、これにより土砂災害に対するより機動的な対応が図られることとなる。

(参考)国土交通省ホームページ 土砂災害防止法

 

 

7、災害時要援護者の避難対策(内閣府、総務省消防庁)

 消防庁では、内閣府と共同で、学識経験者等からなる「災害時要援護者の避難対策に関する検討会」を開催し、検討を進めてきたが、その検討結果を踏まえ、各市町村、地域の活動主体、事業者等にヒアリング調査を行い、全国の88の取組について、「災害時要援護者の避難対策事例集」としてとりまとめ公表した。

 「事例集」の概要は以下のとおりである。防災士の緊急時対応としても非常に参考になるので確認しておきたい。また、「事例集」の詳細については総務省消防庁のホームページを参照されたい。

 

「災害時要援護者の避難対策事例集」 (概要)

  本事例集には、全国の市町村や、自主防災組織など防災活動を行う地域住民の参考となるよう、災害時要援護者の避難対策の具体的な88の事例を掲載している。

 消防庁と内閣府が全国13 箇所で開催した市町村職員との意見交換会で出された現場での課題や、本検討会で出された課題など、代表的な20の課題に関し、参考事例を紹介している。

 以下に本事例集の目次を掲げる。

〔目 次〕

1 被災地からのメッセージ

近年、大規模な風水害を経験した新潟県見附市の久住時男市長、長野県岡谷市の今井竜五市長、兵庫県豊岡市の中貝宗治市長からのメッセージを巻頭に掲載している。

2 避難支援に係る課題

(1)体制づくり

①要援護者の情報を関係者間でどのように共有すればよいか?

 千葉県野田市、新潟県三条市などの事例を紹介

②要援護者の最新の情報をどのように維持していくのか?

  兵庫県豊岡市、兵庫県西宮市など

③支援者の協力をどのように得るのか?

  埼玉県川口市、ソフィアステイシア自主防災会(神奈川県横須賀市)など

④過疎高齢化が進むなどにより支援者の協力を得ることが難しい地域では、どのように避難支援を行うのか?

 石川県小松市

⑤要援護者の支援にあたって、事業者等の協力を得るにはどうすればよいか?

 神奈川県横浜市、大東文化大学(東京都板橋区)など

(2)情報の収集・伝達

①要援護者に災害情報をどのように伝達すればよいか?

 福島県西郷村、新潟県見附市など

②要援護者の緊急事態をどのように把握すればよいか?

 大阪府豊中市、愛媛県松山市など

③実際の災害時の情報伝達はどのように行われたのか?

 石川県小松市

(3)避難支援活動

①要援護者の避難支援に関する活動マニュアルにはどのようなものがあるのか?

 兵庫県豊岡市西花園地区防災ネット、特別養護老人ホーム百恵の郷(静岡県富士郡芝川町)など

②要援護者の避難支援の訓練はどのように行うのか?

 北浜区自主防災組織(和歌山県那智勝浦町)、島根県松江市

③子どもや青少年の意識を高めるにはどうすればよいか?

 気仙沼市立階上中学校(宮城県気仙沼市)、岩手県釜石市など

④要援護者自身の意識向上のためにはどのような取り組みがあるか?

 東京都港区、愛知県清須市など

⑤実災害において、要援護者の避難支援はどのように行われたのか?

 新潟県柏崎市北条地区、石川県金沢市、群馬県みどり市東町花輪・ 荻原地区、チリ中部沿岸地震による津波への対応など

3 避難生活支援に係る課題

(1)避難所運営

①要援護者に配慮した避難所運営についてどのような対応をとればよいか?

 新潟県山古志村(現長岡市)

②避難所での要援護者の支援を円滑に行うために、どのような訓 練をすればよいか?

 大阪府堺市、埼玉県川口市

(2)生活支援

①避難所で災害時要援護者の健康を維持するためにはどうすればよいか?

 新潟県、新潟県柏崎市、石川県輪島市

②避難所における要援護者の支援において、ボランティアの協力をどのように得るか?

 愛知県岡崎市、新潟県看護協会

③仮設住宅などで生活する要援護者にはどのような支援ができるか?

 兵庫県

4 障がい者の避難支援

①障がい者の態様に応じた避難を円滑に進めるためには、どうしたらよいか?

 長野県、山口県、茨城県土浦市など

②当事者の参画をどのように高めていけばよいか?

 静岡市千代田東地区社会福祉推進協議会、誰もがくらしやすいまちづくり実行委員会(埼玉県越谷市)など

5 災害時要援護者の避難支援の流れ

①実際の被災経験に基づいた事例

 兵庫県豊岡市、石川県金沢市、石川県輪島市

②避難支援の体制づくり

 埼玉県川口市、千葉県野田市、石川県小松市

 

 

8、コミュニティ強化による地域防災力の向上(総務省消防庁)

  消防庁では、別表に示す22地区の事例をベースに、災害対策能力の向上につながるコミュニティの基盤と機能の強化に向けた取組みについて検討してきた。その結果、次のような提言がなされている。

〔別表〕

■ 災害対応能力の向上に向けた、コミュニティの「基盤」「機能」の強化に向けた取組み

1 コミュニティの「基盤」強化に向けた取り組み

(1)活動主体の強化

コミュニティにおける災害対応能力向上を図るには、防災活動の中核となる自主防災組織の基盤強化が必要であり、住民、地域、行政の役割分担を明確にし、自主防災組織の責務や、行政の環境整備のあり方等を規定する推進法制を整備することが有効。

(2)活動の重層化

① 団体や組織のネットワーク化

コミュニティの課題を見つけ出し、課題に対応できる体制基盤づくりとして、地域内外の他団体や組織とのネットワークを構築し、活動主体の重層化を図ることが重要。このため、行政は地域内外の団体や組織のリソース発掘やマッチング、連携活動の母体となる協議会の設置、資機材の支援など側面的支援を行うことが有効。

② 民間事業所との連携強化

多くの事業所は、様々な資機材や技術、組織力を有しており、災害発生時等に重要な役割を果たすことが期待できることから、普段から地域との連携強化を図り、コミュニティと民間事業所間における災害時応援協定などの締結を進めていくことが有効。

③ 福祉関係者などとの連携強化

少子高齢化社会の進展により、災害時要援護者対策は今後、益々大きな課題となることから、民生委員、社会福祉協議会や障害者団体など福祉関係者等との連携を深め、災害時の役割や情報伝達体制について予め定めておくことなどが有効。

2 コミュニティの「機能」強化に向けた取り組み

① 地域防災リーダーの発掘・育成・派遣

地域における防災の専門知識をもった住民や勤務者などの人材を発掘し、自主防災組織のリーダー等として活用することが有効。また、地域防災リーダーの育成やスキルアップを目指し、ハザードマップ作成研修や図上訓練などの機会を提供したり、地域外からの防災リーダーの派遣・受入れを行う枠組みを構築することが有効。

② 消防団との連携・消防団の機能強化

防災訓練や防災教育の場での指導などの幅広い活動を行っている「消防団」との連携強化に加え、消防団活動に参加しやすくするための雇用者の理解促進、資機材の整備・充実、訓練の充実など、消防団の機能強化につながる取り組みを併せて行うことが必要。

③ 防災教育・防災訓練の充実

将来の防災リーダーを担う人材を育成するため、防災教育の充実や地域の防災活動等への参加、「少年消防クラブ」の活性化などを進めることなどが有効。

④ コミュニティ意識の醸成

地域住民や新規転入者への自治会等に関する積極的なPR、ボランティア活動など住民自らが地域活動に参加できる場の創出、地域住民の交流機会を増やすためのイベントや祭りの実施、防犯や環境など日常生活に関わる分野の活動強化などを通じて、住民がコミュニティ活動への関心を持ち、コミュニティ活動の効用(満足感)が高まるような工夫を行っていくことが有効。

⑤ 災害リスクの啓発

災害に強い地域づくりをするには、地域の災害リスクを認識した上での地域防災活動を進めることが重要であり、住民自らが地域の災害リスクとその対応策を考える機会となる地域防災マップの作成研修会などを開催することが有効。

 

 いずれも地域の防災リーダーを任ずる防災士にとって貴重な提言であり、この提言を踏まえ地方団体等と連携してどんどん地域防災活動に入ってゆく必要がある。

 

 

9、防災・危機管理e-カレッジの改訂(総務省消防庁)

 「防災・危機管理e-カレッジ」(http://www.e-college.fdma.go.jp/)は、防災や災害時の危機管理について学ぶことができるウェブサイトで、幼年から中学校生徒向けや消防職団員や地方公務員を対象とした様々なコンテンツを提供し、そのほかにも例えば「大災害を3日間生き延びる!」といったテーマで、事前の備えや、災害発生時にどのような行動を取れば良いかを、映像を交えてわかりやすく解説している。この「防災・危機管理e-カレッジ」は、自主防災組織や企業の社員研修等にも活用されている。

 消防庁では、子供向けのコンテンツの拡充、自然災害の映像・写真の掲載、利用頻度の高いコンテンツのさらなる充実等を内容とした改訂を平成22年3月31日に行った。

〔主な改訂内容〕

(1)自然災害の映像、写真の掲載

阪神・淡路大震災発生直後の神戸市内の映像や北海道南西沖地震により被害を受けた奥尻島の写真など、実際の災害の映像(動画)や写真を約200点掲載した。

(2)利用頻度の高いコンテンツのさらなる充実

「日本版救急蘇生ガイドライン」に沿った「(AEDを用いた)心肺蘇生の手順」、総務省消防庁の定める「消防操法の基準」並びに「消防訓練礼式の基準」に基いた「小型ポンプ操法」など、これまでも利用頻度の高かったコンテンツの内容をさらに充実した。

 

 

10、被災写真の公開(神戸市消防局)

 阪神大震災から15年が経つ今年(平成22年)、神戸市消防局が、発生直後の被災地を撮影した写真を初めて一般に公開した。保管されていた約4,500枚の中から、被災者の心情に配慮しながら、大学生らが約800枚を選び出した。
 写真は、神戸市消防局や、応援で駆けつけた近隣自治体の消防隊員が救助活動の際などに写したものである。壊れた家屋の内部や、消防ヘリから見た火災の様子など“最前線”でしか撮影できないものが多い。
 選ばれた約800枚の写真は、神戸市役所1号館2階のギャラリーに並んでいる(平成22年1月時点)。
 近隣の防災士には、是非一度見学されたい。

 

11、豪雨の危険ゲーム(高知気象台)

 「局地的集中豪雨」から身を守る方法を、子供達に楽しみながら学んで貰おうと、高知地方気象台が小学校教諭の協力を得ながら、ゲーム形式の教材を制作する。
 ゲームは、課題を解決しながら目的地を目指す「ロールプレーイング」で、パソコンを使って遊ぶ。
 試作品は、主人公の少年「てつや君」が草原や川辺などを冒険し、夕食の待つ自宅に帰るというストーリーになっている。途中で出会うイヌやネコなどから、「大雨で小川が溢れると、道路との境目が分からなくなり危険」など、豪雨から身を守るアドバイスを貰いながら進む。雷雨をもたらす積乱雲に遭遇したとき、「逃げる・戦う」のうち正しい「逃げる」を選択しなければゲームオーバーとなるなどのルールも盛り込んでいる。
 気象台では、完成品を学校などに無料で配付する。

 

12、AEDの効果(京都大学)

 心停止の人に対し、周囲の一般市民が自動体外式除細動器(AED)を使用した場合、社会復帰するほどに回復した割合は31.6%で、救急隊が手掛けた場合の2倍以上になることが、京都大学の研究チームの調査で分かった。異常の発見から使用までの時間が約3分と短いのが要因だとしている。
 心停止患者の事例を蓄積した消防庁のデータベースをもとに解析し、平成17年から同19年までの3年間に病院外で心停止を起こした患者約31万人のうち、AEDの対象となる心室細動が原因の1万2,631例について、AEDの使用の有無や回復状況などを調べた。
 市民がAEDで電気ショックを与えたのは462例に及ぶ。患者が倒れてからAEDを使うまでの時間は、市民の場合で平均約3分かかり、そのうち146件は社会復帰できるほどに回復した。一方、救助隊の場合は発見からAEDの処置までに11分半かかったうえ、回復できた割合は約14%に止まった。
 AEDは、病院以外の場所に国内で約15万台が設置されている。これをもとに計算すると、1キロメートル四方のAED設置数が1台未満の場合に比べ、4台以上あると生存率は約4倍高いということになる。
 京都大学では、研究成果を救急蘇生に関する国際ガイドラインの作成に役立てたいとしている。

 

13、小天体などの衝突による大災害(米国科学アカデミー、国土交通省)

 明治41年(1908年)にシベリア・ツングースカ上空で起きた謎の大爆発は、従来の推定より小さい、直径30キロの物が落下中に爆発した可能性があり、同様の災害が起きる確立は約300年に1回と、予想以上に早いことが分かった。米国の科学アカデミーの委員会が1月31日(平成22年)までに、議会の要請でまとめた小惑星等の「地球接近天体(NEO)」に関する報告書の中で明らかにした。

 この大爆発では、東京都の面積にほぼ匹敵する約2,000平方キロの森林がなぎ倒された。都市内落下の場合は大災害となり、海上の場合は津波を起こす可能性がある。報告書は、衝突が起きた場合の被害は甚大で、調査や対策に取り組むことを提言した。

 防災策は、まず避難が考えられるとしたうえで、ロケットや宇宙船を使う3つの方法を検討した。NEO衝突まで数10年間ある場合は、軌道を地球からそらすため、宇宙船で押したり引いたりし続けることで、重い衝突体をぶつける方法を示した。  衝突まで余裕がないか、NEOの直径が1キロ以上ある場合は、核爆弾による爆破が最終手段になるとしている。

 一方、日本の国土交通省は、平成22年2月から、航空機にとって危険な鳥の種類を、DNA鑑定等により特定するための調査を行っている。  我が国における民間航空機と鳥との衝突(バードストライク)は1,238件(平成20年報告件数)に上っているが、そのうちの約6割については鳥の種類が明らかになっていない。バードストライクによる被害を軽減するためには、航空機にとって危険な鳥の種類を特定して、その生態に応じた効果的な防除計画を策定することが肝要である。

 しかし、航空機の乗務員が、衝突した鳥の種類を運航中に判別することは困難であり、また、バードストライクの直後に地上で回収される鳥の残留物は、損傷のため外見から種類を特定できない場合が多くなっている。

 この課題を解決するため、平成21年2月に開催した鳥衝突防止対策検討会の方針に従い、近年実用化されたDNA鑑定等を用いて鳥の種類を特定する調査の準備を進めてきたが、平成22年2月26日から調査を行っている。

 具体的には、航空会社の協力を得て主要な国管理空港(当面8か所)を中心に、衝突した鳥の残留物から検体を採取した分析を行い、データを収集する。

 「衝突」による災害は従来あまり重視されなかったが、防災の所には局面として光が当てられつつある。

 

【参考資料】鳥類の生態に関する監視体制の強化(危険鳥種の特定)

国土交通省ホームページから

 

 

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第86号平成29年9月号支援物資の輸送を改善(中央防災会議)他
第85号平成29年8月号惨事ストレスケア2,700人(消防庁)他
第84号平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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