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防災評論 第48号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第48号)【平成26年7月号】

 

【目次】

〔政治行政の動向概観〕       

〔個別の動き〕

 1、避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)
 2、「30年内のM8」最大5%相模トラフ確率を上方修正(地震調査委)
 3、避難所の新・地図記号(国土地理院)
 4、登山届、遭難、8割提出なく(警察庁)
 5、災害備え、歯の記録統一(警察庁、厚生労働省)
 6、政府「空き家」解体促す(国土交通省、総務省)
 7、防災教育を充実(文部科学省)
 8、盛り土造成地マップに(東京都)
 9、防災訓練年4回(東京都)
10、65歳以上初の25%超え(総務省)
11、原発事故の避難計画作り、周辺自治体の半数(内閣府)
12、悪質運転厳罰化法施行(警察庁)
13、企業の地震保険料上げ(損保協会)
14、災害危険区域地権者意向で除外(陸前高田市)

 

 

〔政治行政の動向概観〕

 集団的自衛権の行使を認めた閣議決定後、初めての国会論戦(予算委員会での閉会中審査)が7月14日から始まった。議論では、集団的自衛権の発動が可能となる8事例はすべて行使するとする一方、国民が被る犠牲の深刻さなど5つの判断基準を新たな「歯止め」とするなどの見解が政府から示され、野党などの質問者からはこの点について追及、問いただす場面に終始している。既に触れた点であるが、集団的自衛権の“担い手”である自衛隊の機能、装備、訓練などをどうあるべきかという指摘は殆ど無かったが、防災行政にとってはこの点が最も重要である。集団的自衛権容認により、自衛隊そのものの機能が本来の武力行使に傾くことは明らかであり、一方現在自衛隊が現実に大宗を担っている大災害への実働対処という行政機能を今後どう確保してゆくのか。新たな「災害救援隊」を設置する方向で議論するのか。災害大国である日本にとり避けては通れない課題である。
 一方、7月初旬に本邦を襲った台風8号は事前に“戦後最大級”と騒がれていた面もあり、気象庁の特別警報発令に課題を残す結果となった。即ち沖縄本島に出ていた特別警報は一度すべて解除(9日未明)、しかし同じ日の朝再び特別警報を同じ本島に出すという事態に至ったが、「特別警報は数十年に一度の大災害の恐れがあるとき出すもの」という話が耳に残る住民にとっては、発表と解除を乱発する同庁の姿勢に疑問を生じた向きも多かったと報じられている。「異常性の日常化」という言葉が市民権を得つつあるように、行政に限らず一般に事柄の恐ろしさを伝えたいがため、ドンドン過激な方向へと発信の表現をエスカレートさせ、その挙句、どんな重大発表にも慣れて十分な反応をしなくなる危険性がこの特別警報の創設を機に益々増えている。防災士はじめ地域防災を担う受け手はいろいろな情報や環境変化を冷静かつ客観的に受け止め、被害を未然に防ぐための適切な行動を取ることが求められる。

 

〔個別の動き〕

1、避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)

新指針のポイント

・津波警報・注意報が出された場合、直ちに避難指示を発令する

・津波注意報では、堤防より海側の地域を主な対象とする。津波警報、大津波警報では陸側に拡大

・土砂災害警戒情報が出された場合、土砂崩れの危険性の高い地域に避難勧告を発令

・夜間・早朝の避難が必要となる際は、昼間のうちに避難準備情報をだすことも検討する。

 内閣府は、災害時に市町村が避難勧告や指示を出す際の目安となる新指針を決定した。地震発生後に津波警報・注意報が出された場合は直ちに避難指示を発令するなど、早めの対応を徹底するよう求めている。避難指示や勧告は、結果的に災害が発生しない「空振り」を恐れずに出すべきだとも指摘した。
 市町村には、指針を踏まえた避難勧告や指示の発令基準を2015年度末ごろまでにつくるよう要請する。
 従来の指針には、避難情報の発令に関し明確な基準がなかった。2013年10月の伊豆大島の土石流災害では、地元の東京都大島町が避難勧告などを出さなかったために被害が拡大したと指摘され、見直しを進めていた。
 新指針によると、津波注意報が出された際の避難指示は、漁業・港湾関係者、海水浴客らのいる海岸堤防より海側の地域を主な対象とする。津波警報、大津波警報と危険性が高まるのに応じて対象を陸側に広げる。
 一方、消防庁は、土砂災害発生の恐れがある1603市区町村のうち22.6%に当たる363市区町村が昨年11月時点で、避難勧告や指示などを出すかどうかの判断基準を定めていなかったと発表した。適切なタイミングで住民に避難を呼びかけられない可能性があり、内閣府の新指針を参考に2015年度までにつくるよう求める。
 内訳は策定中が271で、未着手が92。「職員が少ない」(北海道遠別町)「地形が複雑で統一的な基準を纏めることが困難」(岩手県岩手町)といった理由で着手できない自治体がある一方、「現場を確認し、判断している」(福島県天栄村)と必要性を感じていないケースもあった。大規模な土石流被害のあった伊豆大島の東京都大島町(伊豆大島)は「土砂災害警報情報が出されたら避難指示を出す」との基準をまとめた。
 土砂災害以外で基準が未策定の市区町村の割合は水害が21.8%、高潮が36.7%、津波が19.9%。内閣府が発表した新指針は4種類の災害ごとに基準の策定方法を示している。

 

2、「30年内のM8」最大5%相模トラフ確率を上方修正(地震調査委)

 政府の地震調査委員会は相模湾から房総半島沖にかけて延びる相模トラフ(海底のくぼみ)で起きるマグニチュード(M)8級の地震が、30年以内に発生する確率は「最大5%」と発表した。東日本大震災(M9.0)を教訓に、震源域がより広くなる可能性を考慮し、2004年の予測で最大2%とした確率をわずかに上方修正した。M7級の首都直下地震の発生確率は従来と同じ70%程度と評価した。今回は想定震源域を過去の震源域を含む4万平方キロ・メートルに広げ、最大級の地震規模はM8.6と推定。相模トラフの別エリアが震源域になる可能性も考慮した。
 政府の中央防災会議は2013年12月、関東大震災型の地震が発生した場合、神奈川県や千葉県の沿岸を最大10メートルの津波が襲い、死者は最大7万人、被害額は約160兆円に上ると想定している。

 

3、避難所の新・地図記号(国土地理院)

 国土地理院は、災害時に備えて避難所などを示す新しい地図記号を発表した。
 今後、自治体から「避難所を定めた」との報告があり次第、国土地理院が提供するインターネット上の地図「地理院地図」などで使用していく。
 新たな記号は、災害時に真っ先に駆け込む「緊急避難場所」と、被災者が一定期間滞在する「避難所」、両方の役割を兼ねた施設の3種類。「洪水・浸水」「高潮・地震・津波」「崖崩れ・土石流・地滑り」「地震・大規模火災」を意味する4種類の記号と組み合わせて地図上に記載することで、それぞれの施設でどんな災害に対応するのか示す。
 2014年4月施行の改正災害対策基本法で、市町村が災害時に備え避難所などを指定することになったのに合わせて作られた。市町村が作成するハザードマップでの使用も想定しているという。

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4、登山届、遭難、8割提出なく(警察庁)

 ゴールデンウイーク(GW)に、全国の警察が把握した山岳遭難事故495件のうち、80%の400件で登山届が提出されていなかった。
 登山届の提出は一部の自治体で義務化が進むが、大半は登山者の任意。遭難時に救助の可能性が高まるため「命を守るザイル」とも呼ばれており、山岳関係者は積極的な提出を訴えている。
 警察庁によると、GWとなった10年4月29日~5月9日の遭難事故は121件で、うち102件(84%)で登山届が未提出だった。11年4月29日~5月8日は129件のうち105件(81%)、12年4月28日~5月6日は104件のうち85件(82%)、13年4月27日~5月6日は141件のうち108件(77%)で、それぞれ登山届が提出されていなかった。
 昨年4月に長野・白馬岳で雪崩に巻き込まれ、1人が死亡したパーティーは、メンバーが親族宅に登山計画書を残していたが、警察へは登山届を出していなかった。
 日本山岳協会などによると、登山届に決まった書式はないが、名前や連絡先、歩行ルート、緊急時の対策、下山予定などを記入。目的地の山を管轄する警察に出したり、登山口に設けられたポストに入れたりするのが主な方法という。
 近年、若者らを中心に登山が人気で、気軽に楽しむ人が増える一方、十分な計画や装備がないまま遭難することも少なくない。登山届についても、「提出する意義が浸透しきっていない」。
 また、個人情報保護への意識から、名前や住所、連絡先などを記載することを避ける人もおり、提出が増えない背景になっているとみられる。

 

5、災害備え、歯の記録統一(警察庁、厚生労働省)

 治療痕など歯の状態を統一様式で記録する「標準化」が、東日本大震災を機に注目されている。大規模災害時に、遺体の身元を迅速に確認する狙いだ。
南海トラフ地震でも大きな被害が想定され、国も全国共通のフォーマット作りを目指す考えだ。日本人が海外でテロ災害に巻き込まれたようなケースにも活用できる可能性を秘めている。
 東日本大震災の被災地では、手がかりの少ない遺体の身元特定が難航した。
変化しにくい歯の情報は、身元を調べる有力手段のひとつとして注目された。
しかし、生前記録の基になるカルテの入手は難しく、記載様式も医院によってバラバラ。
 現地の歯科医は「やみくもに一件ずつ突き合わせることは、現実的ではなかった」と振り返る。
 ハードな作業に心身の不調を訴える歯科医も続出した。
 そこで、東北大学の青木教授の研究グループが震災2か月後、専用ソフトを開発し、宮城県警によると、約500人の身元不明遺体について、検索ソフトで「候補」を絞り込み、DNA鑑定などと組み合わせて特定作業をスピードアップした。
震災後、南海トラフ地震で被害が予想される静岡や高知などからも問い合わせがあり、同大はソフトを100セット以上配布した。厚生労働省も「標準化」に注目。3月まで新潟県で実証事業を行った。厚労省では「高い確率で本人を絞り込めた」と評価、どこの災害でも対応できるよう、全国共通フォーマットを整備したい考えだ。
さらに、厚労省も今年度の実証事業で、標準化したデータを海外のデータと連携させる可能性を検討する。
 国が念頭に置くのは、国際刑事警察機構(ICPO)の「災害犠牲者の身元確認システム」。治療痕などをアルファベット3文字の略語で表記する。
「来日中に死亡した外国人の身元特定にも活用できる」と指摘する専門家も多い。20年の東京五輪・パラリンピックを控えて訪日外国人の増加は必至で、活用の幅が広がる可能性もありそうだ。
 しかし、「標準化」でデータの記録様式を統一しても、それを集約して蓄積しなければ、大規模災害の発生時に有効に生かせないという意見も多い。また関係省庁は、データベース化にまで踏み込むことには慎重だ。
 最大のネックとなるのが個人情報の問題だ。歯の状態を「プライバシー」と感じる人から反発を受けることを懸念している。データベース化にあたり、全ての患者から同意を得るのは難しいとの意見も強い。
 災害時に身元確認に係る警察は「生前の患者情報は厚労省が管理すべきだ」と主張する。一方、厚労省では「国民の健康増進が自分達の仕事で、死者の身元確認を前提としたデータ収集は所管事項ではない」とする意見がある。
 国が2012年に公表した南海トラフ地震の想定では、最悪の場合、30都府県で32万人が死亡する。「標準化」のあり方を話し合う厚労省の有識者検討会は「次の大規模災害に備えて、標準化とデータベース化を一体的に議論し、導入を急ぐべきだ」としている。

 

6、政府「空き家」解体促す(国土交通省、総務省)

 政府は、人が住まずに放置されている空き家の解体や修繕を持ち主に促す方針だ。
 固定資産税の納税情報を基に、空き家の所有者を調査したり、地方自治体が敷地内に立ち入ることができるようにしたりする。
 国土交通省によると、空き家は全国に2008年時点で約757万戸あり、所有者の約1割は郵便物の管理や防犯措置などを行っていない。老朽化による倒壊やごみの不法投棄、放火などが増える恐れがある。
 法案では、所有者を特定してデータベースに登録し、管理不十分な場合は市町村が立ち入り調査を行えるほか、修繕や撤去も命令できるようにする。
 空き家の増加は、税制上の優遇措置も背景にある。現在の制度では、家屋が立っていれば、固定資産税が軽減される。家屋を撤去して更地にすると、税金が6倍に増える。

 

7、防災教育を充実(文部科学省)

 文部科学省が検定合格を発表し、2015年春から小学校で使われる教科書では、東日本大震災や原発事故の記述に加え、イラストや写真を使い、災害時に自ら考えて避難する教育や自炊の方法など、防災意識を高める内容が教科書点数で28点から51点に増えた。取り上げた教科も社会や理科、体育(保健)など、9教科中7教科にのぼった。

 

8、盛り土造成地マップに(東京都)

 大地震や大雨災害に備えるため、東京都は、傾斜地に盛り土をして宅地造成した場所や規模を示す「大規模盛り土造成地マップ」を初めて公表した。
 対象地は都内の13区18市町の計約1500か所で約37平方キロ・メートルあることが判明。多摩ニュータウンを抱える八王子、町田、多摩の3市で全体の8割を占めている。
 都内では、昭和30年代以降、急激な人口増加に伴い、多摩地区を中心に丘陵地の谷や沢に盛り土して、宅地開発が進められた。国土交通省によると、阪神大震災や新潟県中越沖地震では、盛り土造成地の一部で地滑りなどの被害が出ていた。
 大規模盛り土造成地は、「盛り土の面積が3000平方メートル以上」か、「傾斜面(20度以上)に高さ5メートル以上の盛り土をした」造成地が対象。
 最多は八王子市の503か所(11.4平方キロ)で、町田市の481か所(10.7平方キロ)、多摩市の192か所(6.5平方キロ)が続いた。区部は、板橋の0.4平方キロが最多だった。都は、「盛り土を支える擁壁の変形やヒビを確認し、不具合があれば自治体に連絡してほしい」としている。
 マップは、東京都都市整備局のホームページ(http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/takuzou/takuzou02.html)で見ることができる。

 

9、防災訓練年4回(東京都)

 東京都は、毎秋一回行われてきた住民参加型の大規模防災訓練を、今年から季節ごとに年4回実施する。訓練ごとに風水害や津波など特定のテーマを設けることで、より実践的な内容にしていく。
 都によると、台風シーズンを前にした春は浸水被害に備える土のう作り体験など、夏には首都直下地震を想定した避難生活体験など、秋は南海トラフ巨大地震を想定した島嶼部での津波避難訓練、冬は帰宅困難者対策をテーマに各企業の水や食糧の備蓄状況などを確認するという。多様な訓練を実施することで、家庭や企業に備蓄の重要性などを再認識してもらい、都民の防災に対する意識啓発を図っていく。

 

10、65歳以上初の25%超え(総務省)

 総務省は、2013年10月1日現在の日本の総人口(外国人を含む)が前年より21万7000人減り、1億2729万8000人(前年比0.17%減)になったとする人口推計を発表した。
 人口減は3年連続。働き手の中心である15~64歳の生産年齢人口が32年ぶりに8000万人を下回る一方、65歳以上の高齢者の割合が比較可能な統計がある1950年以降、初めて総人口の4分の1を超えた。少子高齢化が進み、人口減による労働力不足が深刻化している実態が浮き彫りになった。
 一方、外国人(日本在住3か月以上)の1年間の入国者数から出国者数を差し引いた「社会増減」は、09年以来4年連続で減少していたが、東日本大震災からの復興の本格化や景気回復などにより、5年ぶりに増加に転じて3万7000人の増となった。外国人の増加が、総人口の減少を緩和した。
都道府県別では、東京、沖縄、愛知、埼玉、神奈川、宮城、滋賀、福岡の8都県で人口が増加し、残る39道府県で減少した。

 

11、原発事故の避難計画作り、周辺自治体の半数(内閣府)

 全国の原子力発電所から半径30キロ圏内にある135市町村のうち、半数強の71市町村が事故に備えた住民の避難計画を定めた。九州電力川内原発(鹿児島県)など再稼働が近いとみられる原発の周辺ではおおむね策定作業が完了する一方、周辺人口が多い地域では遅れている。
 電力会社が再稼働を申請した原発では、川内原発のほか北海道電力泊原発(北海道)や四国電力伊方原発(愛媛県)、関西電力大飯原発(福井県)などの周辺自治体では計画策定は終わっているが、中部電力浜岡原発(静岡県)と東北電力女川原発(宮城県)、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)では進んでいない。
 人口が多い日本原子力発電東海第2原発(茨城県)の周辺でも、避難計画を定めた自治体はゼロだった。

 

12、悪質運転厳罰化法施行(警察庁)

 警察庁は、悪質な運転や持病などが原因の死傷事故の罰則を引き上げた自動車運転死傷行為処罰法の施行日を5月20日に決定した。
 また、対象となる持病を、一定の症状を伴うてんかんや統合失調症などの6項目とすることも決めた。
 同法は、持病や飲酒などが影響した事故について、最高で懲役7年の自動車運転過失致死傷罪ではなく、危険運転致死傷罪を適用して懲役15年以下にすることができるとした。対象の病気は同法の施行令で、統合失調症と低血糖症、そううつ病でそれぞれ運転に必要な判断を欠くようなケースのほか、再発性の失神、重度の睡眠障害、意識や運動の障害を伴うてんかんとすることを定めた。
 同法は、運転手のてんかん発作が原因で小学生6人が亡くなった2011年の栃木県鹿沼市の事故や、無免許運転の車により児童ら10人が死傷した12年の京都府亀岡市の事故などをきっかけにして、昨年11月に成立した。死傷事故を起こした時に無免許だった場合は、法定刑を引き上げる規定も盛り込まれている。

 

13、企業の地震保険料上げ(損保協会)

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 7月から、企業向け地震保険の保険料を引き上げる。将来、南海トラフ地震のような大地震が起きた場合の被害想定額が従来よりも膨らんでいる。東京海上日動の値上げ幅は平均17%、最大で7割弱となる。東日本大震災後の2012年度に続く大幅な引き上げとなり、企業にとってはコストが増える一因となる。
 企業向けの地震保険はオフィスや工場、店舗、設備が地震で被害を受けた場合に保険金を支払う商品。火災保険に特約として付けるのが一般的で、大企業や中堅企業が払う保険料は年間で1000億円規模に上る。東日本大震災後は未加入だった中小企業などでも契約を検討する企業が増えている。
 大手損保が地震保険を値上げするのは、東日本大震災を踏まえて巨大地震の発生確率や被害想定を以前より大きく見積もる試算が相次いでいるためだ。内閣府の専門家作業部会は昨年、太平洋の「南海トラフ」を震源域とする巨大地震が起きた場合、被害額が最大220兆円に上るとの報告をまとめた。そのうち民間部門の被害は148兆円を占める。
 大手損保は東日本大震災の際に、企業に約6000億円の保険金を支払った。翌年の12年度には保険料を平均で1割超値上げしていた。当時は過去最大の引き上げ幅だったが、7月の値上げはそれを上回る水準となる。
 政府が運営する家庭向けの地震保険の保険料も7月から、平均で15.5%上がることが決まっている。地震保険への加入を希望する企業や個人は増えているが、負担が重いと感じる契約者・企業は多い。損保各社には、値上げ後も地震保険離れが起きないように、丁寧に説明する姿勢が求められる。

 

14、災害危険区域地権者意向で除外(陸前高田市)

 東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田(りくぜんたかた)市が、再浸水の可能性を理由に住居などの建築を制限する「災害危険区域」の指定に際し、移転を希望しない地権者の土地を対象から外している。同じ被災状況のエリアで危険区域と区域外が入り交じる異例の状況になっている。宮城、福島を含む3県の他の自治体はいずれも住民の意向に関わらず一律に指定しており、岩手県は昨年、「安全に計画しているとは受け取れない」と同市に指摘した。
 危険区域は土地に利用制限をかけるため、同市は住民の反発を考慮して独自の対応をしたといい、個人の財産権や居住権に行政が踏み込む難しさが露呈した。
 陸前高田市は2012年3月、条例で災害危険区域を「市長が指定した区域」とだけ定め、「やむを得ないと認める場合」を適用除外にした。同市では津波で約1300ヘクタールが浸水。このうち危険区域指定の検討対象となるのは、住宅地だけでも5地区142.5ヘクタール。しかし3月現在、指定は約58ヘクタールにとどまり、自力再建を目指す地権者らの土地は指定しないため、既に住宅を再建したケースもある。
 陸前高田市は、浸水した地域でも現地での再建を望む地権者の土地は危険区域から除外した。住み続けたいと願う住民の気持ちを行政が縛っていいのだろうか。(高台移転か現地での再建かなど)個人の選択肢も広がると正当性を主張する。安全性については「自己責任」の立場だ。
 住民が移転を敬遠する理由には、移転先の整備の遅れもある。高台の山を切り開いたり更地に盛り土をしたりしての土地区画整理事業300ヘクタールが認可されたのは2013年2月。地権者が全国に分散して用地の取得交渉が遅れており、4年先まで住宅着工を待たされる被災者も少なくない。
 一方、陸前高田市の対応について、「津波の危険を取り除くために災害危険区域を一律に指定すべきだ。『点』での指定は逆に指定外の広範囲が『安全な場所』とみなされる恐れもある。移転に同意した住民を中心に集団移転事業を迅速に進めようとする苦肉の策だろうが、同様のリスクがある住民に異なる規制をかけるのは安全面から見て合理性を欠く」と専門家が指摘している。

 

 

 

 

[防災短信(地方や企業の動きなど)]

 

 1、不燃化特区新たに20(新宿、台東など指定)
 ~東京都、建替えに補助金~平成26年4月4日日本経済新聞
 2、震災ガレキ82%再生利用、1900万t処理終了
 ~3月末、環境省~平成26年4月8日日本経済新聞(夕刊)
 3、中間貯蔵に交付金
 ~環境省方針 大熊・双葉両町は受け入れへ~平成26年4月26日読売新聞
 4、4コマ漫画で出張防災授業
 ~小・中学校で慶大生~平成26年4月26日日本経済新聞(夕刊)
 5、明石歩道橋事故、元副署長2審も免訴
 ~大阪高裁、過失否定~平成26年4月24日日本経済新聞
 6、防災アプリ開発後押し
 ~国土地理院、避難所などの地図情報公開~平成26年4月24日日本経済新聞
 7、地下水バイパス決定
 ~福島第一原発、県漁連が受け入れ~平成26年4月5日読売新聞
 8、田村市の避難指示解除
 ~準備区域で初~平成26年4月11日読売新聞
 9、「防災マンション」を認定
 ~東京都中央区、機器購入や訓練等補助~平成26年4月11日日本経済新聞
10、DJポリスを配置せよ
 ~警視庁、大規模災害に備え育成計画~平成26年4月11日日本経済新聞
11、都内自治体、採用を拡大
 ~五輪、防災で人材確保~平成26年4月11日日本経済新聞
12、復興へ震災伝承
 ~石巻に拠点開設~平成26年4月14日日本経済新聞
13、立山連峰・地獄谷立入禁止2年
 ~火山ガス噴出広がる~平成26年4月21日日本経済新聞
14、100人重機部隊、倒壊家屋から迅速救助
 ~警視庁、3年以内に創設~平成26年4月16日読売新聞
15、大雪から鉄道ポイント守れ
 ~JR東日本、180億円投入~平成26年5月9日読売新聞
16、山火事頻発、警戒強める
 ~林野庁・消防庁 焚き火やタバコ注意~平成26年5月9日日本経済新聞
17、津波、太平洋を往復
 ~東日本大震災、気象研推定~平成26年5月2日日本経済新聞
18、地震規模、3分で推定
 ~国土地理院「M8超ならほぼ正確」~平成26年5月2日日本経済新聞(夕刊)
19、都心震度5弱、東日本大震災以来の強い揺れ
 ~防災用品買い求め~平成26年5月6日読売新聞
20、日本にも影響、熱帯域の気象現象
 ~一ヶ月先まで予測、海洋研究開発機構~平成26年5月8日日本経済新聞
21、ツィッターつぶやき選別、土砂災害発見
 ~国土技術政策総合研究所、2年後実用化~平成26年5月2日読売新聞
22、鳥インフル「搬出制限区域」解除
 ~熊本県 多良木町の養鶏場で発生~平成26年5月2日読売新聞

 

 

【参考文献】

 

1、 平成26〔2014〕年4月08日 『日本経済新聞』夕刊及び9日『日本経済新聞』
2、 平成26〔2014〕年4月26日 『読売新聞』
3、 平成26〔2014〕年4月24日 『読売新聞』
4、 平成26〔2014〕年4月28日 『日本経済新聞』
5、 平成26〔2014〕年4月07日 『読売新聞』
6、 平成26〔2014〕年4月07日 『読売新聞』
7、 平成26〔2014〕年4月05日 『読売新聞』
8、 平成26〔2014〕年4月03日 『読売新聞』
9、 平成26〔2014〕年4月12日 『読売新聞』
10、 平成26〔2014〕年4月16日 『読売新聞』
11、 平成26〔2014〕年4月17日 『日本経済新聞』
12、 平成26〔2014〕年4月18日 『読売新聞』夕刊
13、 平成26〔2014〕年5月06日 『日本経済新聞』
14、 平成26〔2014〕年5月05日 『毎日新聞』

 

 

 

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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