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防災評論 第54号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第54号)【平成27年1月号】

 

【目次】

〔政治行政の動向概観〕       
〔個別の動き〕

 1、被災者に家賃給付を(内閣府)
 2、「想定外」豪雨に対策(国土交通省)
 3、救急データベース構築(厚生労働省)
 4、登山届義務化(岐阜県)
 5、「電源、揺れで喪失」否定(原子力規制委員会)
 6、液状化、住民側が敗訴(東京地裁)
 7、土砂警戒 国が是正要求(国土交通省)
 8、火山観測の強化(気象庁)
 9、監視47火山に避難計画(内閣府、地方自治体)
10、水門閉鎖に退避ルール(国土交通省)
11、河川の氾濫防ぐ調節池 224施設 管理不適切(会計検査院)
12、公立学校幼稚園2860校 津波浸水の恐れ(文部科学省)
13、盛り土で住宅地 地滑り恐れ 公表自治体8.7%(国土交通省)
14、防災 時間割で先手(国土交通省)
15、NPOに信用保証(経済産業省)

 

 

〔政治行政の動向概観〕

 今年は阪神・淡路大震災発生から20年の節目だが、同時に地下鉄サリン事件からも20年となる。地下鉄内にサリンをばらまき、霞ヶ関界隈に通勤する人々を無差別に殺傷しようとしたこのテロ事件は日本史上他に例をみない特異事案として国民に与えた衝撃は大きく、今なお一部元信者の裁判が続いているように未だにわが国の社会に暗い影を落としている。
 世界に目を転じると、テロ災害は日を追うごとに深刻化している。1月初めにはフランス・パリでイスラム教祖の風刺画を掲載していた雑誌社にイエメン系アルカイダと思われる一団が襲撃、さらに逃亡中立てこもり事件を誘発して20人近くの市民が犠牲になるテロがあった。その記憶も生々しい中、20日過ぎには首相訪問中の中東で、日本人人質2人を「イスラム国」に盾に取られ身代金そして人質の交換を要求される事件が勃発した。
 いずれもイスラム教の絡むテロで、同教関係集団はナイジェリアでも虐殺などのテロを引き起こしている。地下鉄サリン事件でもそうであったが、最近のテロはほとんどといっていいほど宗教が背後にある。しかし、本質的にテロや暴力等を肯定する宗教ではなく、イスラム教は世界三大宗教の一角を占め、その教徒は仏教をしのいで全世界人口の20%を超えるといわれる。したがって、イスラム教をひとくくりにしてその危険性を論じることは事態を見誤ることにつながる。ただ、少なくともイスラムを敵に回すような物の言い方や見方は慎み、イスラムがらみのテロ標的の口実を作らないようにふるまうことは、その脅威から身を遠ざけるための有効策である。

 

〔個別の動き〕

1、被災者に家賃給付を(内閣府)

 内閣府は災害で住宅を失った被災者の住まい確保のため、民間賃貸住宅を「みなし仮設住宅」として積極的に活用し、被災者に家賃分の現金を直接給付することを検討するよう求める中間報告をまとめた。首都直下地震や南海トラフ地震では甚大な家屋被害が想定され、自治体が建設する仮設住宅だけでは対応に限界があると指摘。内閣府は2015年度以降の災害救助法改正も検討する。
 災害救助法や内閣府告示では、自治体による被災者への住居提供は「現物支給」が原則。新設するプレハブの仮設住宅や公営住宅の空室の提供が中心だった。
 東日本大震災では自治体が民間賃貸住宅を借り上げ、「みなし仮設住宅」として被災者を入居させる方式がようやく増えた。
 報告は民間賃貸住宅の一層の活用を提言。自治体が大家と契約する方式では自治体職員の事務負担が重く手続きが遅れ、被災者の入居が遅れる一因となったため、被災者が契約主体となって賃貸住宅を早急に確保し、家賃分を現金給付することも検討すべきだとした。使途を家賃に限定した「バウチャー」給付の検討も求めた。
 東日本大震災では仮設住宅の用地取得の難航から建設が遅れ、被災者の避難所生活が長引いた。また、震災から3年半近くが経過してもプレハブ仮設住宅暮らしが続く人が9万人以上に及び、住宅が傷んで生活環境が悪化している。
 家賃分の現金給付には災害救助法改正や新法が必要となる。内閣府は自治体などの意見も聴取し、法改正も含めた制度の見直しを進める。

 

2、「想定外」豪雨に対策(国土交通省)

 多数の犠牲者が出た広島市の土砂災害など豪雨被害が激甚化していることを受け、国土交通省は、従来の想定を上回る大雨や高潮に備えた防災対策を検討する方針を固めた。
 国交省は比較的頻度が高い雨や高潮を想定して、砂防ダムや防潮堤といった施設整備やハザードマップなどソフト対策に取り組んできた。しかし、近年は想定外の大雨や局所的な豪雨が頻発しており、対策を強化する必要があると判断した。
 施設整備時の想定を上回る豪雨になった場合は、速やかに避難するといったハードに頼り過ぎない考え方も重視し、災害発生時に行政や住民が取るべき対応をあらかじめ決めておく事前行動計画の作成などを議論する。激甚化する自然災害に備えた防災施設や避難施設の整備の在り方や、気象観測や予測に関する技術開発も検討する。
 国交省によると、1983~92年の10年間で、年平均で1時間当たり50ミリ以上の雨は全国の地域気象観測システム(アメダス)千地点当たり174回、土砂災害発生数は736件だった。だが、2003~12年では雨236回、土砂災害発生数1179件といずれも増加した。
 降り始めからの総雨量が千ミリを超す記録的大雨も頻発している。

 

3、救急データベース構築(厚生労働省)

 救急患者を運ぶ病院がなかなか見つからない「受け入れ困難」が起こる要因を分析し、効果的な対策を講じようと、厚生労働省は来年度から、全国の救命救急センターに搬送された患者の入院前後の経過を含む情報を一括管理するデータベースを新たに構築する。
 救急患者の中には、生活習慣病などの持病があり、十分治療しておけば急変が防げた例や、終末期の見取り段階で必ずしも高度な救命治療が必要なかった例もあるとみられる。これまでも救急搬送時間や搬送時の重症度判定などは総務省消防庁が記録してきたが、前後の経過などのデータはなく、救急医療の使い方や処置が適切だったかどうか、検証できる資料が不足していた。
 新たに作るデータベースは、救急医療の中でも重症者に対応する救命救急センター(全国271か所)で受け入れた患者の確定診断名、治療内容と結果、転院先などの情報を入力、事務局で一元管理し分析する。救急患者の全体像を把握し、不要な搬送を避けるための日頃の健康対策、在宅医も含めた適切な連絡先選びなどの対策作りに生かす。
 2012年の救急搬送患者は520万人超。重症患者は55万人おり、うち搬送先が見つからず救急車が30分以上現場に滞在したケースは約2万3000件に上った。

 

4、登山届義務化(岐阜県)

 岐阜県は御嶽山の登山届について、提出を義務化する条例制定を含め、長野県と協議して検討する。
 登山届提出の義務化は、遭難者の多い群馬県の谷川岳や富山県の剱岳で、すでに行われている。岐阜県では、北アルプスの登山者を対象に、登山者の氏名や行程、緊急連絡先などを記入した登山届の提出を義務付ける罰則付き条例が、12月1日に施行される。
 吉田知事は6日の臨時幹部会議で、北アルプス以外の登山者にも提出を周知するよう求めた。

 

5、「電源、揺れで喪失」否定(原子力規制委員会)

 原子力規制委員会は、東京電力福島第1原子力発電所事故について検証した中間報告書をまとめた。事故の拡大を招いた電源喪失について「津波による浸水が原因」との見解を示し、地震の揺れが関与していたとする一部の見方を否定した。
 原発事故の原因については、政府や国会がそれぞれ事故調査委員会を設けて検証。政府事故調は津波が主因と判断したのに対し、国会事故調は一部で地震がかかわったと示唆していた。規制委は今回、独自の調査や分析を踏まえて7つの事象について報告した。
 1号機の電源喪失の原因について国会事故調は、津波が到達する前に非常用電源が機能を停止したとし、「津波によるものではない可能性がある」と言及していた。
 しかし、規制委は電源喪失と津波による浸水の時刻は一致するなどと指摘し、津波が原因と結論づけた。
 1号機建屋の4階で水が出ているのを見たという作業員の証言については、建屋上部で使用済み核燃料を貯蔵しているプールの水があふれたためとの見方を示した。
 国会事故調は原子炉を冷やす非常用復水器(IC)が地震の揺れで破損して水が漏れた可能性を指摘していたが、これを否定した。このほか、停止中だった4号機の建屋が水素爆発を起こした原因も分析。炉心溶融を起こした3号機から配管などを通じて水素が流れ込んだと考えることが「合理的」とした。
 事故原因が重要な意味を持つのは、それによって今後の再発防止策が変わってくるため。仮に地震が原因なら他の原発でも地震への新たな対応が必要になる可能性があるが、規制委としては今回の中間報告で、津波が事故の原因だったとの見解を示したことになる。

 

6、液状化、住民側が敗訴(東京地裁)

 東日本大震災による地盤の液状化現象で被害が出た千葉県浦安市の分譲住宅地の住民ら36人が、三井不動産などに約8億4200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、東京地裁であった。裁判長は「三井不動産は被害の発生を予測できなかった」として、住民側の請求を棄却した。
 裁判長は判決理由で、市内で液状化が起きた1987年の千葉県東方沖地震の際には分譲地に被害がなかったことを指摘。「(三井不動産が行った)基礎工事は当時の知見で合理性があり、東日本大震災の長周期地震動による被害は当時は想定されていなかった」と判断した。
 問題になったのは、浦安市の埋め立て地に造られ、三井不動産が1981年に販売を始めた「パークシティ・タウンハウスⅢ」。大震災の液状化で地面が陥没し、建物が傾いたり上下水道管やガス管が寸断されたりした。
 住民側は「別業者が販売した隣接分譲地は対策工事によって液状化が起きていない」とし、「被害を想定できたのに地盤改良工事を施さなかったのは不法行為に当たる」と主張していた。三井不動産側は「大震災は予測できなかった」などと反論していた。

 

7、土砂警戒 国が是正要求(国土交通省)

 広島市北部で74人が死亡した8月の土砂災害を受け、臨時国会で土砂災害防止法が改正された。土砂災害警戒区域の指定を促進して住民に危険を伝えるため、指定が遅れている都道府県に対して国土交通相が是正要求を行う規定を盛り込むほか、自治体の対策推進のため国が助言や援助を行う努力義務を定める。
 都道府県は2001年に施行された同法に基づき、約52万5000か所ある土砂災害危険箇所などの地形や地質の基礎調査を行い、避難体制を整備する警戒区域を指定し、さらにその中から住宅建設の規制もある特別警戒区域を指定する。しかし、資産価値の低下を心配する住民の反対や予算不足などで、指定は危険箇所の約7割にあたる約35万6000か所(8月末現在)にとどまっている。
 広島県には全国最多の約3万2000の危険箇所があるが、指定率は4割に満たない。8月に土石流とがけ崩れが起きた166か所のうち、7割超の126か所は警戒区域に指定されていなかった。
 改正法では、未指定地区の住民にも危険を認識してもらうため、都道府県に基礎調査の結果を公表することを義務づける。
 国交相が「基礎調査が適正に行われていない」と判断した場合に是正要求できる規定を盛り込むことで、指定率の底上げを図る。

 

8、火山観測の強化(気象庁)

 戦後最悪の被害となった御嶽山噴火を受け、気象庁は、全国の活火山の観測体制を強化した。火山噴火予知連絡会の検討会で、常時監視する対象の拡大や登山者への情報提供の方法などを議論。2015年3月末までに最終報告を出す。
 また気象庁は、同庁のホームページで登山者向けの火山情報の提供を始める。
 気象庁によると、検討会では①現在常時監視の対象としている47の活火山の見直し②火口付近の観測施設の増強③予知が難しい水蒸気爆発による噴火を早期に把握する手法――などを協議する。
 御嶽山の噴火では、気象庁が2014年9月11日に火山性の地震の増加を知らせる情報を発表。地殻変動などが確認されなかったことから噴火警戒レベルの「1(平常)」は引き上げず、新たな立ち入り規制などの対応は取っていなかった。登山者への情報提供が不十分だったことも問題視されていた。

 

9、監視47火山に避難計画(内閣府、地方自治体)

 長野、岐阜両県境の御嶽山(3067メートル)で起きた戦後最悪の噴火災害を受け、政府は、常時監視している47活火山について、関連する全自治体に避難計画の策定を求める方針を決めた。現在は、火口周辺ののべ130市町村のうち110自治体で、避難計画が策定されていない。政府は、内閣府の防災担当職員らを派遣して計画策定を加速させる考えで、今年度の補正予算案に関連予算を盛り込むことを検討している。
 避難計画は、入山規制や危険の周知、避難の方法などを定めたもの。災害対策基本法に基づく防災基本計画で、避難計画の策定を推進するとされているが、法律上の義務はない。
内閣府によると2014年3月末現在、すべての関連市町村で策定が完了している活火山は、熊本県の阿蘇山や東京都の伊豆大島など7火山にとどまっている。御嶽山周辺の4市町村でも、避難計画があるとされたのは岐阜県高山市だけだった。
 避難計画は、県、市町村や専門家らが参加し、活火山ごとに設置される火山防災協議会で策定されるが、協議会が設置されていない活火山も14あった。
 政府は今後、火山対策に詳しい内閣府の防災担当職員らを都道府県などに派遣し、避難計画の策定や、その前提となる「噴火シナリオ」、どこが危険かを示す「火山ハザードマップ」の検討を加速させる予定だ。
 避難計画の策定加速と同時に、地震計やカメラなどの観測機器の設置の増強、更新も進める。また、火口の微細な動きを感知する新技術の開発を進めることを検討している。
 周辺住民に加え、登山客や観光客に噴火の危険を周知するため、火山活動の変化を知らせる注意喚起情報をメールなどで配信することも検討する。

 

10、水門閉鎖に退避ルール(国土交通省)

 津波発生時の水門閉鎖作業の安全を確保するため、国土交通省は、海岸沿いの全国約2万7000基の水門や防潮扉のそれぞれについて、作業の制限時間を決める「退避ルール」を策定するよう、管理する自治体などに求めることを決めた。東日本大震災では閉鎖作業中の消防団員らが多数逃げ遅れたが、退避のタイイングは、今も現場任せが多いのが実情。同省は、作業時間が確保できない場合は水門を廃止するなど、実情に応じた対策を取るように促す。
 国交省などによると、全国(岩手、宮城、福島3県を除く)の水門は計2万6771基。うち、地震を感知して自動で閉まるものや遠隔操作が可能なものは1429基(5%)で、2万102基(75%)は現場での閉鎖作業が必要。また、緊急時の避難を、自治体職員や消防団員ら「現場捜査員の判断」に委ねている自治体は全体の67%に上る。
 東日本大震災では、死亡または行方不明となり、公務災害と認定された消防団員198人のうち59人(30%)が、閉鎖作業に関わっていた。将来の発生が予想される南海トラフ巨大地震では、想定される津波高が最大34メートル。津波警報の発表基準である高さ1メートル超の津波到達までの時間は、静岡、和歌山の2県で、地震発生から最短2分とされる。
 こうした状況を踏まえ、国交省は、津波の到達予測時間を基に閉鎖作業に充てられる時間を割り出し、経過すれば直ちに避難する原則を確認。作業に割ける人員数や水門の位置など、個別の事情も踏まえた退避ルールを作るよう求める。
 国交省はこうした原則をルールの策定方針として年内に提示。閉鎖作業の安全性が確保できない場合は、廃止して防潮堤に置き換えたり、常時閉鎖したりする措置も検討するよう促す。
 東日本大震災でも、こうした退避ルールの有無が明暗を分けた。
 岩手県宮古市田老地区は、巨大な防潮堤が損壊するなど大きな被害を受けたが、水門閉鎖を担当した地区の消防団「第28分団」では25人全員が無事だった。
 同分団では、専門家の研究を基に、活動時間を15分に限定するルールを策定。震災時も担当する3水門のうち1か所で扉が閉まらなかったが、ルールに従って退避した。市内の他の分団では、水門の操作に携わった5人を含む16人が犠牲になった。
 南海トラフ巨大地震による被害が予想される徳島県では、万一の時、「水門を閉めず、逃げる」と決めた自治体もある。県は緊急時の閉鎖作業を減らそうと、水門の廃止や常時閉鎖を推進。遠隔操作や電動化のほか、地震を感知すると自動で閉まる水門も増やす方針だ。

 

11、河川の氾濫防ぐ調節池 224施設 管理不適切(会計検査院)
 局地的豪雨による河川の氾濫を防ぐ目的で流域に設置された調節池などを会計検査院が調べた結果、12都道府県と26市区町(10都道府県)が管理する224施設(事業費計約3842億円)で、破損や損傷を確認できないなど適切な維持管理がされていないことが分かった。マニュアルに基づく点検表がないなどの不備が原因という。
 調節池は増水した水を一時的にためることができる施設で、検査院は「維持管理の重要性を管理者が十分理解していない」と指摘。全国的に浸水被害が多発している状況を踏まえ、国土交通省に「適切に管理するよう各自治体に周知徹底すべきだ」と要請した。
 検査院によると、2008年9月に国庫補助金で整備した調節池の不適切な管理が判明したことを受け、国交省は2009年1月、管理マニュアルを作成し全国に通知した。
 検査院はその後の状況を調べるため、全国501の調節池や流域貯留浸透施設の管理実態を検査した。

 

12、公立学校幼稚園2860校 津波浸水の恐れ(文部科学省)
 大規模な津波で校舎などへの浸水被害が想定される公立学校・幼稚園が全国で2860あり、うち4割近くの1066校で施設面の対策が取られておらず「検討中」としていることが、文部科学省が初めて行った調査で分かった。
 文科省は都道府県教委に対し、防災担当部署などと連携し早急に対応するよう促した。
 調査は実態を把握し、対策の事例集を作成・配布することが目的。全国の公立幼稚園、小中高校、特別支援学校など約4万校を対象に、対策実施状況を都道府県教委を通じて聞いた。知事が設けた津波浸水想定や、市区町村のハザードマップなどを参考に、浸水が校庭の一部にとどまるようなケースも含めた。
 その結果、浸水が想定されるのは全体の約7%で、大阪府250校、沖縄県215校、北海道205校、広島県196校など39都道府県。学校別では小学校1442校、中学校671校、幼稚園417園、高校276校、特別支援学校52校、中等教育学校2校だった。
 このうち、校舎屋上への避難階段や周辺高台への避難路の整備、建て替えに伴う高層化などの対策を実施済みが306校(約11%)で、こうした対策を具体的に予定しているのは169校(約6%)。また、特に施設整備で対策はしていないが安全性が十分確保されているとされたのが最多の1290校(約45%)あった。
 一方、施設整備による対策を「検討中」としたのは、大阪府で180校(浸水が想定される学校の72%)、広島県で137校(同70%)、沖縄県83校(同39%)、鹿児島県79校(同79%)、北海道76校(同37%)など1066校あった。
耐震化を優先し、津波対策が後回しになっているケースや、防災教育に力を入れているものの、財政負担がかかるハード面の対策が遅れているケースなどがある。こうした自治体の中には、津波発生時の対応マニュアルを学校に配布するなどソフト面の対策を講じている所もある。
 2011年3月の東日本大震災では岩手、宮城、福島の3県で、国公私立の幼稚園、小中高校計131校に津波が到達した。また、全国の公立小中高などのうち、災害の際に避難し一時生活を送る避難所に指定されているのは約9割を占める。
 文科省は、南海トラフ巨大地震対策の特別措置法を受け、学校が高台移転する場合に費用の半額を補助しているが、費用や用地確保の面で課題が大きい。

 

13、盛り土で住宅地 地滑り恐れ 公表自治体8.7%(国土交通省)
 地震などの際に地滑りが起きる可能性がある大規模盛土造成地についての調査結果を公表済みの自治体が、全国で151市区町村(8.7%)にとどまることが、国土交通省の調査でわかった。造成地の耐震化を促進するため、国は都道府県や政令市などに調査結果の周知を求めているが、風評被害を懸念し、公表を控えるケースが多いのが実情だ。
 大規模盛土造成地を巡っては、国土交通省と内閣府が2006年の通知で、都道府県や政令市、中核市などに対して、その有無を調査し、市区町村別に結果を公表するよう求めた。郊外の丘陵地などに多いこうした造成地は、大地震が起きる度に崩落や地割れなどの被害が繰り返されてきたためだ。
 阪神大震災(1995年)では、兵庫県西宮市で地滑りが発生し、34人が死亡。中越地震(2004年)や東日本大震災(2011年)でも地割れや崩落が起きた。
 だが調査は、国の思惑のようには進んでいない。国交省によると、今年7月時点で、造成地を特定する調査が完了したのは660市区町村(37.9%)。調査が法で義務づけられているものでないうえ、明らかに造成地が少ない自治体が、調査を後回しにする傾向にあるためとみられる。
 一方、調査結果の公表まで至ったのはさらに少なく、151市区町村(8.7%)。政府の「国土強靭化アクションプラン2014」で示された「2016年度に公表率約50%」との目標にもほど遠い状況となっている。
 結果の公表を控える自治体に共通するのは、風評被害への懸念だ。
 市内百数十地区に対象地がある大津市は「『造成地はどこも危険』との誤解を生みかねない」と説明。市内に316か所の該当箇所を抱える広島市も「過度の不安を与える恐れがあり、公表を望まない住民もいる」と話す。ただ、両市とも今後については、他自治体の動きなどを見ながら公表を検討する方針だという。

 

14、防災 時間割で先手(国土交通省)
 台風や豪雨に伴う災害の発生から逆算し、自治体や住民の動きをあらかじめ定めておく「タイムライン」(事前行動計画)の導入が広がりつつある。予報を基に「3日前」「1日前」などの各段階ですべきことを明確にし、後手に回るのを防ぐのが狙い。日本列島を縦断した台風19号でも一部自治体が活用し、担当者は「落ち着いて判断を下せた」と話している。
 タイムラインはハリケーンの被害軽減策として米国で始まった。米ニュージャージー州は2012年、タイムラインに基づいてハリケーン「サンディ」上陸の36時間前に住民に避難を求めた。多くの建物に全半壊の被害が出るなか、人的被害を最小限にとどめ、日本でもタイムラインが注目される契機となった。
 日本では韮崎市や紀宝町のほか、昨年10月に土石流災害が起きた伊豆大島(東京都大島町)、名古屋市、高知県大豊町などが計画を策定中。都内の荒川流域にある板橋、北、足立の3区などは2015年6月ごろまでに計画をまとめる。
 国土交通省も直轄管理する河川ごとにタイムラインの策定を進めており7月に台風8号が上陸した際に九州地方整備局などが初めて適用した。
 伊豆大島の土石流災害では、大雨警報や土砂災害警戒情報が出たにもかかわらず町が避難勧告を出さず、批判を浴びた。これに限らず、自治体による避難勧告・指示の遅れが問題になるケースは少なくない。

 

15、NPOに信用保証(経済産業省)
 政府は、中小企業が資金を借りやすくするための信用保証制度の対象に、非営利組織(NPO)法人を新たに加える方針を固めた。NPOの事業が円滑に進むよう資金面で手助けし、地域雇用の受け皿として育てる。
 経済産業省が、NPOを対象に入れるために、中小企業信用保険法の改正案を2015年の通常国会に提出する。経産省は、このほかにも創業や経営の支援で、NPOを中小企業と同等に扱うよう制度の改正を検討する。NPOの数は、2013年度時点で約4万9000法人に達し、10年間で、3倍に増えた。事業の内容も、高齢者介護や保育サービスなどの子育て支援などから、地域の特産品の開発支援など多岐にわたる。経産省は、建設業や製造業などの中小企業が衰退しつつある地方で、NPOの活性化により雇用を拡大することができるとみている。さらに、地方自治体の合併などで縮小する行政サービスを補完するNPOの役割も大きくなっている。全国の防災士会でもこの制度の活用が期待される。

 

 

【防災短信】
1、高圧ガス 保安認定厳しく
 ~経済産業省 事故急増受け~ 2014年8月12日付 日本経済新聞
2、火山防災各地で模索
 ~情報提供/シェルター検討 関係自治体~ 2014年10月4日付 日本経済新聞
3、富士山入山料 支払いは半数
 ~安全対策費 誰が負担~ 2014年10月6日付 日本経済新聞
4、豪雨・竜巻 瞬時に観測
 ~産学官連携 新型レーダー開発へ~ 2014年10月10日付 日本経済新聞(夕刊)
5、噴火情報 伝達が課題
 ~登山者にメール・小屋に電光掲示板~ 2014年10月26日付 読売新聞
6、御嶽山周辺、情報共有せず
 ~噴火前後 長野・岐阜の4市町村~ 2014年10月26日付 日本経済新聞
7、2012年つくば竜巻、黒潮に原因
 ~大量水蒸気が積乱雲に 気象研究所~ 2014年10月28日付 日本経済新聞(夕刊)
8、仮設住民「土砂災害が不安」
 ~防止法上のレッド・ゾーン 緊急措置で建設 宮城・岩手~ 2014年10月29日付 読売新聞(夕刊)
9、地滑り 100人超死亡 300人行方不明
 ~スリランカ 紅茶畑~ 2014年10月30日付 日本経済新聞(夕刊)
10、水蒸気噴火 予知に挑む
 ~気象庁 データ解析 人材育成急ぐ~ 2014年10月30日付 日本経済新聞
11、防災スピーカー未設置
 ~広島八木地区 サイレン鳴らず~ 2014年9月3日付 日本経済新聞(夕刊)
12、 車内浸水進むと脱出容易
 ~JAF 水圧差減りドア開きやすく~ 2014年8月10日付 日本経済新聞
13、津波の痕跡 ネット公開
 ~産業技術総合研究所 自治体、防災計画に反映~ 2014年10月15日付 日本経済新聞(夕刊)
14、土砂堆積 11ダム超過
 ~会計検査院 436年分に達した例も~ 2014年10月22日付 読売新聞
15、住宅密集地域に防災公園
 ~荒川区 トイレ、非常食など完備~ 2014年10月17日付 日本経済新聞
16、木造密集地域を再開発
 ~品川区大井1丁目で~ 2014年10月17日付 日本経済新聞
17、御嶽 噴火1か月前膨張
 ~山頂付近 名大が確認~ 2014年10月30日付 日本経済新聞
18、震災ガレキで詐取
 ~処理費水増し容疑の社長逮捕 宮城県警~
19、大震災追悼施設 設置へ
 ~陸前高田と石巻に 復興庁~ 2014年10月31日付 読売新聞(夕刊)
20、災害弱者「自助」へ備え
 ~子どもに護身術、障がい者支援、自ら発信 神戸市長田区など~ 2014年10月19日付 日本経済新聞
21、「津波救命艇」に指針
 ~国土交通省 ひっくり返っても元に、食料7日分~ 2014年10月22日付(夕刊)
22、移動できる手術室
 ~災害時に緊急手術可能 八戸工大など開発~ 2014年10月21日付 日本経済新聞(夕刊)
23、災害で孤立 1万5800集落
 ~読売新聞調査 衛星携帯配備わずか7%~ 2014年10月19日付 読売新聞

 

 

 

【参考文献】

1、 平成26(2014)年08月15日 『日本経済新聞』
2、 平成26(2014)年10月06日 『日本経済新聞』
3、 平成26(2014)年10月07日 『読売新聞』
4、 平成26(2014)年10月07日 『読売新聞』
5、 平成26(2014)年10月08日 日本経済新聞(夕刊)
6、 平成26(2014)年10月08日 日本経済新聞(夕刊)
7、 平成26(2014)年10月08日 読売新聞(夕刊)
8、 平成26(2014)年10月10日 『日本経済新聞』
9、 平成26(2014)年10月26日 『読売新聞』
10、 平成26(2014)年10月26日 『読売新聞』
11、 平成26(2014)年10月25日 『日本経済新聞』
12、 平成26(2014)年10月28日 『読売新聞』
13、 平成26(2014)年10月30日 『読売新聞』
14、 平成26(2014)年10月15日 『日本経済新聞』
15、 平成26(2014)年10月13日 『読売新聞』

 

 

 

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第86号平成29年9月号支援物資の輸送を改善(中央防災会議)他
第85号平成29年8月号惨事ストレスケア2,700人(消防庁)他
第84号平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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