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防災評論 第55号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第55号)【平成27年2月号】

 

【目次】

〔政治行政の動向概観〕       
〔個別の動き〕

1、住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)
2、防災・安全教育 体系的に学習(文部科学省)
3、災害時 放置車撤去認める(内閣府)
4、気温高いと強い雨増加(気象庁)
5、「津波防災の日」普及に力(内閣府)
6、登山届義務 国が要請へ(内閣府)
7、被災3県労災6割増(厚生労働省)
8、危険空き家 税優遇廃止(総務省)
9、14活火山に防災協議会(内閣府・気象庁)
10、日本中どこでも災害時避難誘導(消防庁)
11、南海トラフ沿い 津波地震発生の恐れ(東京大学)
12、豪雨の土砂崩れ 30分前に予測(大阪大学・神戸大学)
13、防災・減災に森林活用(環境省)
14、急患搬送 データで速く(厚生労働省・消防庁)
15、9火山重点観測に追加(文部科学省)
16、新耐震住宅でも倒壊恐れ8割 2000年5月以前の木造(木耐協)
17、土砂警戒区域の指定促進(国土交通省)

 

 

〔政治行政の動向概観〕

 例年通り年初より通常国会が開かれ27年度予算案を巡って論戦が展開されているが、その議論の内味は低調である。というのも慣例というべきなのか、閣僚等への政治献金を巡る違法性云々の話が主要テーマになっているからである。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の妥結を間近に控え、また、東日本大震災からの復興集中期間が終了に向かおうとするこの時期、国政上の課題は山積みしているが、専ら「政治とカネ」の問題に終始している感がある。
 「政治とカネ」の問題はもとより重要であるが、野党の攻撃がこのことばかりに集中すると、ほかの国政課題はないがしろとなり、結果として重要政策の是非に関する民主的なコントロールが及ばなくなり、国民が損失を被ることになる。
 防災の分野では、東日本大震災以来災害対策基本法、土砂災害防止法など多くの制度改正が行われているが、国会運営の稚拙さもあり、十分に国民、被害者に周知されているとは言い難い。市民防災を網羅する防災士教育を一層普及させることはこのような状況下ますます重要になってきており、政府も具体的な支援策をさぐっていく必要がある時期に来ていると考えられる。

 

〔個別の動き〕

1、住宅用火災警報器の設置率79.6%(消防庁)

 消防庁はこのほど、消防法 により設置が義務付けられている 「住宅用火災警報器」の設置率などについてまとめた。それによれば、住宅用火災警報器の設置率は79.6%となっている。2012年6月1日の時点では設置率が77.5%、そして、2013年6月1日の時点では 79.8%となっていることから、前年よりやや設置率が低下したことになる。
 設置率とは、市町村の火災予防条例において設置が義務付けられている住宅の部分のうち、1箇所以上設置されている世帯の全世帯に占める割合をいう。
 全国の都道府県をみると、設置率が高いのは、①福井県=94.5%、②鹿児島県=89.1%、③宮城県=88.3%の順となっている。逆に設置率が低いのは、①岡山県=60.7%、②栃木県=6 7.2%、③佐賀県=67.5%となっている。

 

2、防災・安全教育 体系的に学習(文部科学省)

 防災・安全教育のあり方を議論する中央教育審議会(中教審)の部会は2014年10月31日、避難や応急処置の方法など、幼小中高の各段階で学ぶ内容を体系的に示した報告書をまとめた。文部科学省は年内に改訂作業を始める学習指導要領に反映させる。
 報告書は、現状の防災教育は「各教科で指導すべき事項などが整理されておらず、十分な時間が確保されていない」と指摘し、社会科や体育科などの授業での指導を充実させるよう求めた。

 

3、災害時 放置車撤去認める(内閣府)

 災害時に道路上の放置車両を強制撤去する権限を国土交通省などの道路管理者に与える改正災害対策基本法が成立した。
 2014年2月の記録的な大雪では、山梨県や長野県などで立ち往生した車両の移動に手間取り、除雪ができず孤立する集落もあった。首都直下地震でも、放置車両などによる大規模渋滞が想定され、対策が求められていた。
 改正法は、緊急支援ルートを迅速に確保するため、災害発生後に指定した区間で、道路上に放置された車両を強制的に撤去する権限を国交省や都道府県などの道路管理者に与える。
 政府は災害対策基本法を改正し、首都直下地震などの大規模災害で救助活動の障害となる放置車両の撤去権限を拡大したが、現場での備えはまだ不十分だ。
 東日本大震災では、国土交通省東北地方整備局が車両を処分して緊急輸送ルートを確保したが、当時、路上にあった車両の大半は津波で被災しており、財産的価値のないがれきとして処分することが可能だった。一方、首都圏が被災した場合、山手線外側の木造住宅の密集地域などで火災が発生して運転手が避難、施錠された無傷の車が大量に放置される恐れがある。
 また、緊急時に車両を移動させるレッカー車などを十分に確保する見通しもたっていない。同省関東地方整備局はレッカー事業者や重機を保有する建設業界などと協定締結を始めたが、作業員確保の難航も予想される。空き地の少ない都心部では、放置車両を保管する場所も限られ、克服するべき課題は多い。

 

4、気温高いと強い雨増加(気象庁)

 日本で気温や海面水温が高い年には、激しい雨の回数も増加するとの研究結果を気象庁気象研究所がまとめた。地球温暖化に伴って激しい雨が増えるとの懸念を裏付ける結果で、大気中に含まれる水蒸気量が増えることが要因とみている。
 長期的には気温の上昇傾向とともに激しい雨が増加していることは知られていたが、年ごとの変化にも関係があることを示している。
 1時間雨量の年最大値の増減が、平均気温や平均海面水温の変動と似た傾向を示すことが判明。気温が1度上がると、雨量は4~13%程度、海面水温が1度上がると7~19%程度増えていた。
 ただ、夏の西日本や南西諸島に限ると、気温が高い年に1時間雨量の年最大値は小さくなる傾向も見られた。
 年ごとのばらつきをならして長期的傾向を調べた結果では、1時間雨量の年最大値は10年当たり3.6%増加していた。

 

5、「津波防災の日」普及に力(内閣府)

 2014年11月5日「津波防災の日」、万一の際に自らの身を守るための訓練が、東日本大震災の被災地など各地で行われた。迅速な避難で大勢の人々が津波被害を免れた江戸時代の安政南海地震での逸話にちなみ、この日に制定された津波防災の日だが、3年たった現在も知名度はいまひとつ。内閣府は今年から、全国の自治体や企業に訓練を呼びかけるなどして、懸命に普及を図っている。各地の防災士もこの日に合わせた行事を開くなどの取り組みが求められる。

 

6、登山届義務 国が要請へ(内閣府)

 戦後最悪の噴火災害となった御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火を教訓に、政府が、常時監視の対象となっている47火山の地元自治体に対し、登山届の提出義務化を検討するよう求める方針を決めた。御嶽山の噴火では未提出の登山者が多く、行方不明者の把握に手間取って捜索に支障が出た。一部火山で独自に条例制定を模索する動きも広がっており、今年度中にも対象の自治体に要請する。
 登山届は、ルートや下山予定日、食料・防寒具などの装備量、緊急連絡先などを記し、登山口の専用ポストやインターネットを通じて警察などに提出する。
 長野県警によると御嶽山で死亡または行方不明となった計63人のうち、登山届が提出されていたのは11人だった。
 これを受け、岐阜県は御嶽山と焼岳を対象に、登山届の提出を義務化する条例案を提出することを明らかにした。新潟県は1974年の水蒸気噴火で3人が死亡した新潟焼山について検討中。静岡県も富士山噴火を想定して検討を始めている。
 政府は、登山届の義務化は、①万が一のとき、警察が捜索対象や規模などを決める手がかりになる②計画を綿密に立てることで無謀な登山を防ぐ――として、対象自治体に条例制定を含めた火山対策を進めるよう求めることを決めた。
 ただ、47火山には、年間約150万人の観光客が訪れる阿蘇山や、ロープウェイや車で簡単に火口に接近できる箱根山や草津白根山など、一律規制が難しいと見られる山もあり、政府は、中央防災会議に設置する有識者会議での議論をふまえて対象を見極める。
 登山届が義務化されているのは、剱岳周辺を対象とする富山県、谷川岳の急峻な岩場を対象とした群馬県。さらに北アルプスを対象とした岐阜県条例が12月に施行された。

 

7、被災3県労災6割増(厚生労働省)

 復旧・復興工事が本格化する東日本大震災の被災3県で、建設工事関連の労災事故が2013年、震災前の2010年に比べて62%増加していたことが、3県の労働局のまとめでわかった。
全国的にみても増加ぶりが際立ち、厚生労働省は、背景に建設作業員の不足に伴う作業の負担増や、経験の浅い作業員の増加があるとみて、現場指導の強化などを進めている。
 各労働局によると、岩手、宮城、福島の被災3県での建設工事で死傷者が出た労災事故の合計は、2010年が762件だったのに対し、震災があった2011年は1084件(42%増)、翌2012年は1264件(66%増)と推移し、2013年も1231件で62%増。県別では、2013年で岩手54%、宮城72%、福島は57%、それぞれ増加した。
 一方、全国的にみると、労災件数は2010年(1万6143件)に比べて、2011年が4%、2012年6%、2013年7%と若干の増加にとどまる。
 増加の要因には、2011年以降に3県が発注した公共工事の入札件数が、2010年に比べて10~20%増加するなど工事件数自体が急増していることがある。加えて、被災地で復旧・復興工事が進展していることで建設需要が高まり、建設技術者や作業員の不足が深刻化。人手不足で作業員1人あたりの負担が重くなっていることや、作業に習熟していない作業員が増えている。
 労災急増を受け、厚生労働省は、復旧・復興工事の現場を対象に巡回指導を行うなどの対策に乗り出した。

 

8、危険空き家 税優遇廃止(総務省)

 全国で放置空き家が増えている問題で、政府は、倒壊の恐れなどが顕著な場合、税制優遇措置の対象から除外する方針を固めた。住宅が立っていれば土地の固定資産税が減額されるため、空き家放置の要因になっていた。成立した空家対策特別措置法(空き家法)では、周辺に危険や迷惑が及ぶ恐れが高いものを特定空き家と規定。これを除外対象とすることを軸に早ければ2016年からの実施を目指す。
 総務省によると、全国の空き家数は2013年で820万戸。このうち、賃貸・売却用や別荘を除く「放置された空き家」は318万戸で、5年前より50万戸(18.7%)増えた。地方の人口減少や、高齢者が亡くなった後、誰も住まない家が増えたためだ。
 現行制度では、住宅が立つ土地の固定資産税は、敷地が200平方メートル以下の場合は6分の1などと減額され、空き家になっても変わらない。解体して更地にすると税率が元に戻るため、所有者が老朽家屋を放置する要因と指摘されていた。
 空き家法では、近隣に危険や迷惑を及ぼす、特定空き家について、市区町村に立ち入り調査、解体の指導や命令、行政代執行を行うことが認められた。
 国土交通省はこれらの措置に加え、特定空き家には地方税法上の優遇措置をやめることで、修理や賃貸住宅としての活用、土地の転売などを促し、危険な空き家を減らしたい考えだ。
 所有者には増税となるため、同省は今後、特定空き家と判断する際のガイドラインを作成し、除外対象を適切に選定するよう市区町村に求めていく。
 政府は、与党の税制調査会が年明けに取りまとめる2015年度税制改正大綱に盛りこみ、その後、関係省令の改正など必要な措置を検討する。

特定空き家
臨時国会で2014年10月19日に成立した空き家法で、①倒壊や屋根の落下などの恐れ②ゴミの不法投棄や害虫やネズミが発生して不衛生③景観を損なう――などで、近隣に危険や迷惑を及ぼすおそれが特に高いと市区町村が判断した建物。修繕や取り壊しの命令に従わなかった場合は行政代執行も出来る。

総住宅数に占める「放置された空き家」率

(都道府県別)

鹿児島県

11.0% 

高知県

10.6% 

和歌山県

10.1% 

徳島県

9.9% 

香川県

9.7% 

全国

5.3% 

※賃貸・売却用や別荘を除く

 

9、14活火山に防災協議会(内閣府・気象庁)

 多数の死傷者が出た御嶽山(長野・岐阜県)の噴火を受け、政府は2014年10日、火山防災対策が整っていない14活火山の地元9都道県に対し、噴火時の避難計画などを検討する「火山防災協議会」の設置を求めた。14活火山には大雪山(北海道)や蔵王山(山形・宮城)など観光客に人気のスポットも含まれている。
 火山防災協議会は、地元の自治体や気象台、警察、消防、専門家らで構成。
避難計画や住民向けハザードマップの作成、避難訓練の内容を検討するのが役目だ。
 気象庁が24時間態勢で監視する47活火山のうち、大雪山や蔵王山のほか、鳥海山(秋田・山形)、新島(東京)、神津島(同)、乗鞍岳(長野・岐阜)など14活火山は協議会が未設置だった。
 御嶽山噴火後、火山の地元自治体は噴火対策の見直しを始めており、蔵王山などで協議会を設ける準備が進んでいる。
 ただ、協議会がある33活火山の周辺自治体でも、防災体制が未整備のところは少なくない。周辺自治体が具体的な避難計画を定めていない活火山は18カ所。噴火時に火砕流や噴石被害の恐れがある全国130市町村のうち、避難計画を定めているのは20市町村にとどまる。
 47の活火山は、2009年、気象庁の火山噴火予知連絡会が今後100年程度の噴火の可能性などを踏まえて選定した。予知連は御嶽山噴火後、常時監視対象の拡大についても議論している。
 火山対策をめぐっては、ほかに国の中央防災会議が火山防災について議論する作業部会を設けることを決定。部会では噴火時の適切な避難誘導方法などの検討を進める。

協議会で検討する主な内容
・避難計画やハザードマップの策定
・噴火時の被害想定
・シェルター(退避ごう)や避難小屋の設置
・避難訓練の実施

 

10、日本中どこでも災害時避難誘導(消防庁)

 消防庁は、どこで災害にあっても多言語で避難誘導してくれるスマートフォン(スマホ)向け無料アプリを開発する。国土交通省や国土地理院と連携し、早ければ2016年度に運用を始める。地震や津波、豪雨・豪雪災害などの緊急時の備えとする。旅行先でも利用できるため、20年東京五輪を前に、外国人観光客の不安を和らげる効果も期待している。
 アプリを起動すると、現在地から最も適切な避難場所への経路を示した地図が表示される。画面だけでなく、音声での案内も検討する。当初は日本語のみのサービスとし、機能を向上したうえで、英語、中国語、韓国語など5~6言語に広げる計画だ。有識者や地方自治体関係者を交えた検討会を2015年春にも設け、アプリを設計し、2015年度中に実証実験に取り組む。
 避難誘導するアプリは、一部の自治体が域内限定で導入した例があるが、消防庁は全国どこでも利用できるものが必要と判断した。南海トラフ巨大地震の発生が予想されるなかで本格運用を急ぐ。

 

11、南海トラフ沿い 津波地震発生の恐れ(東京大学)
 巨大地震が想定される南海トラフ沿いで、地震の規模の割に大きな津波を引き起こす「津波地震」が発生しかねないとの研究成果を東京大学などのチームがまとめた。海底下の構造から震源となり得る領域が2カ所見つかった。
 2領域はそれぞれ紀伊水道沖と熊野沖の南海トラフ沿いで、いずれも東西60~50キロ、南北30キロの大きさ。和歌山、徳島、高知各県から近い。
 南海トラフは東海沖から九州沖へと延びている溝状の海底地形。この場所から、日本列島が載る陸側のプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込んでいる。2つのプレートの境目に蓄積するひずみは約100~200年間隔で解放され、大地震を起こしてきた。

 

12、豪雨の土砂崩れ 30分前に予測(大阪大学・神戸大学)
 昨年8月に広島市で多数の犠牲者を出した大規模な土砂災害が起きたのを受け、発生予測に関する技術に注目が集まっている。大阪大学と防災科学技術研究所(防災科研)はそれぞれ、豪雨時に土が含む水分量から土砂崩れの予兆を約30分前にとらえる技術を開発した。神戸大学は広い範囲を監視し危険を知らせるセンサーを試作した。いずれも1~3年後の実用化を目指す。
 防災科研と高知大学の技術は地下水位の上昇をとらえて土砂崩れを約30分前に予測する。今後、様々な種類の土で実験する。
 神戸大学は安い光ファイバーを斜面の広範囲に張り巡らせて、細かい土の動きを監視するセンサーを試作した。ファイバーの先端から光を放ち、砂粒に反射した光を分析して、わずかな砂粒の動きから土砂崩れの予兆をとらえる。

 

13、防災・減災に森林活用(環境省)
 環境省は国立公園などが防災に果たす役割を評価するため、国際自然保護連合(IUCN)と共同で公園管理者向けの指針を作成する方針を明らかにした。森林などを活用した防災・減災対策の優良事例や技術を各国で共有し、自然保護地域の保全や管理に役立てる狙い。2015年3月に仙台市で開く第3回国連防災世界会議で公表する。
 森林が土砂崩れを防止したり、海岸の防災林が津波の力を弱めたり、マングローブ林やサンゴ礁が高潮の被害を軽減したりするなど、生態系を生かした防災や減災対策への関心は各国で高まっている。堤防などインフラを整備するよりコストが低いとされる。
 環境省はIUCNと共同で、東日本大震災の経験やその後の取り組みをもとにした指針をまとめる。大規模災害が頻発するアジアの途上国などに伝えていく考えだ。

 

14、急患搬送 データで速く(厚生労働省・消防庁)
 救急車で搬送された患者が受け入れを拒否される「たらい回し」を防ごうと、厚生労働省は来年度にも、過去に運ばれた患者の情報を集めた全国規模のデータベースを整備する。症状や診断結果などを消防と各地の救命救急センターの間で共有。緊急の治療が必要なケースかどうかの判断に生かすことで、救命率の向上といった適切な医療体制づくりにつなげる。
 全国に271カ所ある救命救急センターは、重症患者や重傷のけが人などを24時間体制で受け入れている。ただ、自宅での安静で十分症状が改善する程度の人が受診を求めることも多く、救急治療が必要な患者の搬送先が見つからない事態につながっている。
 総務省消防庁によると、2012年に搬送された約525万人の救急患者のうち、1度でも受け入れを断られた人は約2万9千人を占めた。

 

15、9火山重点観測に追加(文部科学省)
 文部科学省の地震火山部会は、重点的に観測研究に取り組む火山の対象に御嶽山など9火山を加える案をまとめた。観測機器などを整備するとともに研究者間の連携を強化して水蒸気爆発などの観測体制を整える。観測データを蓄積して噴火メカニズムの解明などに役立てる。
 文科省はこれまでは16火山を重点対象と指定し、観測研究をしていた。課題となっている火山研究者の不足については、地震研究者など他分野を含めた研究者間の連携強化などで当面は対応する。一方、気象庁も火山の監視体制の強化策を検討している。

 

16、新耐震住宅でも倒壊恐れ8割 2000年5月以前の木造(木耐協)

 震度6強~7程度の大地震でも倒壊しないとされる「新耐震住宅」でも、建築基準法が再改正される2000年5月以前に建った木造住宅の約8割に十分な耐震性がないことが、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)の全国調査で分かった。国は1981年6月以降に建てられた住宅は安全基準を満たしているとして、耐震化の対象外としている。
 木耐協が2006~2013年に耐震診断した全国1万8870戸を分析した。
 その結果、建築基準法の安全基準を数値化した「耐震評点」が、震度6強で「倒壊する可能性が高い」とされる0・7未満だったのは61%。「倒壊する可能性がある」(同0・7以上~1・0未満)も23%あった。
 一方、「倒壊しない」(同1・5以上)は2.6%、「一応倒壊しない」(同1・0以上~1・5未満)は13%だった。
 1981年5月以前の基準で建てられた「旧耐震住宅」に比べ、「倒壊しない」は26倍、「一応倒壊しない」は7倍と高かったものの、新耐震住宅でも耐震性が足りない住宅が多数あることが浮き彫りになった。
 国は、阪神・淡路大震災後の1995年12月、耐震改修促進法を施行。旧耐震住宅について、耐震診断や改修工事の補助事業を進めるが、1981~2000年の新耐震住宅は耐震性があることが前提になっているため補助の対象外。
 国土交通省建築指導課は「課題は認識しているが、旧耐震住宅の耐震化を優先して進めている」とする。

 

17、土砂警戒区域の指定促進(国土交通省)

 広島市北部で74人が死亡した2014年8月の土砂災害を教訓に、土砂災害警戒区域の指定促進を図ることを柱とした改正土砂災害防止法が成立した。指定前に土砂災害危険箇所で行う地形や地質の基礎調査の結果公表を都道府県に義務づけ、調査が遅れている場合は国土交通相が是正を要求する。
 同法では、都道府県が、土石流やがけ崩れなど土砂災害発生の恐れがある全国約52万5000の危険箇所の基礎調査を実施し、住民に危険性を周知して避難体制を整備する「警戒区域」、住宅建設などを規制する「特別警戒区域」を指定すると定めている。
 ただ、国土交通省によると、資産価値の低下を懸念する住民の反対や予算不足などにより、指定済みは7割弱の35万6380か所(8月末現在)にとどまる。基礎調査を終えながら、未指定の区域も約3万2000か所ある。
 改正法は、都道府県に基礎調査の結果公表を義務づけることで、未指定の区域でも危険性を早期に周知し、住民の防災意識を高める効果を狙う。また、基礎調査の進捗度や取り組みに都道府県間で大きな差が出ていることから、国交相の是正要求によって調査のスピードアップを図るとともに、国にも自治体を援助する努力義務を課した。
 このほか、災害発生の危険が高まったときに気象庁と都道府県が共同で出す土砂災害警戒情報を市区町村と住民に確実に伝達するよう、都道府県に義務づけた。
 土砂災害警戒区域の指定を促進する改正土砂災害防止法は、指定前の基礎調査をおおむね5年以内で完了することを目指している。調査結果を速やかに公表することで住民の防災意識を高める一方、調査が遅れている都道府県には国土交通相が是正を要求するなど国の関与を強める内容で、都道府県からは財政面の支援を求める声が強まっている。
 広島県の危険地点は最多の3万1987か所。指定率は37%で、全国の68%を下回る。大きな被害を出した広島市の被災地の多くも未指定だった。
 2013年10月の土石流で39人が死亡・行方不明となった伊豆大島(東京都大島町)では、今も指定はない。

改正土砂災害防止法のポイント
▽土砂災害警戒区域を指定するための基礎調査の結果公表を都道府県に義務づける
▽基礎調査が遅れている都道府県に国交相が是正要求を行う
▽土砂災害警戒情報を市区町村と住民に伝えることを都道府県に義務づける
▽警戒区域がある市区町村の地域防災計画に避難場所やルートの明記を求める

 

 

【防災短信】
1、送迎バスの園児 津波で死亡 和解成立へ
 ~宮城県石巻市、仙台高裁~ 2014年11月15日付 日本経済新聞
2、噴火対策 原発も見直しを
 ~火山学会 規制委の基準巡り~ 2014年11月3日付 日本経済新聞
3、NPO元幹部実刑
 ~震災事業費横領 盛岡地裁~ 2014年11月4日付 日本経済新聞(夕刊)
4、住民一時移転を訓練
 ~滋賀原発 内閣府日程終了~ 2014年11月4日付 日本経済新聞
5、木造撤去費 荒川区が負担
 ~町屋駅周辺 災害に強い街に~ 2014年11月5日付 日本経済新聞
6、風速30メートルで特急運行
 ~「中止」基準超え、JR北海道~ 2014年11月4日付 読売新聞
7、自衛隊が地震防災訓練
 ~東北で、米・豪両軍と合同~ 2014年11月6日付 日本経済新聞
8、老舗料亭ほぼ全焼
 ~名古屋市長と建物保存巡り対立~ 2014年11月27日付 日本経済新聞(夕刊)
9、東北災害訓練にオスプレイ
 ~宮城、気仙沼 離島で支援物資など搬送~ 2014年11月8日付 読売新聞
10、DIOジャパン破綻
 ~国の復興緊急事業(コールセンター) 負債4億円~ 2014年11月12日付 読売新聞(夕刊)
11、消防無線 談合の疑い
 ~公取委5社に立入り~ 2014年11月18日付 日本経済新聞
12、敦賀「活断層」と結論
 ~原子力規制委 原電は反発~ 2014年11月20日付 読売新聞
13、雪崩事故 再発をどう防ぐ
 ~北アルプス7人死亡から1年~ 2014年11月21日付 日本経済新聞(夕刊)
14、天気から売れ筋予報
 ~変動大きい豆腐や鍋つゆ 気象協会がサービス~ 2014年11月17日付 日本経済新聞(夕刊)
15、三セク移管に30億円
 ~被災のJR山田線支援拡充、JR東日本~ 2014年11月25日付 日本経済新聞(夕刊)

 

 

 

【参考文献】

1、 2014年09月 『UGMニュース』
2、 2014年11月03日 『日本経済新聞』
3、 2014年11月04日 『読売新聞』
4、 2014年11月04日 『日本経済新聞』(夕刊)
5、 2014年11月05日 『読売新聞』(夕刊)
6、 2014年11月04日 『読売新聞』
7、 2014年11月07日 『読売新聞』(夕刊)
8、 2014年11月02日 『読売新聞』
9、 2014年11月11日 『日本経済新聞』
10、 2014年10月23日 『日本経済新聞』
11、 2014年11月13日 『日本経済新聞』
12、 2014年11月14日 『日本経済新聞』
13、 2014年11月26日 『日本経済新聞』(夕刊)
14、 2014年11月14日 『日本経済新聞』
15、 2014年11月21日 『日本経済新聞』
16、 2014年09月03日 『神戸新聞NEXT』
17、 2014年11月12日~13日 『読売新聞』(12日は夕刊)

 

 

 

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第84号1平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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