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防災評論 第59号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第59号)【平成27年6月号】

 

【目次】
〔政治行政の動向概観〕
〔個別の動き〕

1、医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)
2、復興、職員不足が深刻(被災3県の市町村)
3、原子力防災の支援拡充(内閣府)
4、救急出動最多598万件(消防庁)
5、不燃化特区、13地区追加(東京都)
6、災害がれき 国が処理(環境省)
7、直下地震時、都心への救援路 48時間で8ルート(国土交通省)
8、労災死76人 震災後最悪(厚生労働省)
9、広域BCPを策定(国土交通省)
10、御嶽山 遺族会結成へ(内閣府)
11、住宅ポイント 耐震化で加算(国土交通省)
12、噴火時 降灰量も予想(気象庁)
13、日本 さらに暑く(気象庁)
14、大災害時に無料相談(法務省)
15、首都直下地震で政府基本計画(中央防災会議)
16、地震速報観測67地点を追加(気象庁)
17、南海トラフ巨大地震、最大14万人応援部隊派遣(中央防災会議)
18、被災地の企業支援1.5倍(復興庁)

 

〔政治行政の動向概観〕

 通常国会は9月まで大幅延長され、「盆には地元周り」という慣例を覆す異例の事態となっている。いうまでもなく現内閣が憲法解釈を変えてでも取り組んでいる安全保障関連法案の今国会での成立を何が何でも図るという姿勢の表れであろう。
 そのような中、6月24日には政府は集中復興期間後の2016~2020年の東日本大震災関連復興予算の歳出総額を6.5兆円と決定、これで10年間に32兆円を東日本地域の復興に投入することとなる。ただ、このうち被災自治体の負担を220億円新たに見込むことについて議論が分かれている。総額からみればわずか1~3%程度の地域負担が一部の復興事業に導入されるが、それでもマスコミ等からは「被災地復興 遅れ心配」、「商店街に人戻る日いつ」、「命の道路(病人搬送のための道路)は大丈夫か」などと悲観的な視点が強調され、あたかも“復興に地方負担なし”と言わんばかりの論調が目につく。しかし、このような論説は全く見当違いであることは多数の識者から寄せられている意見で明らかだ。
 即ち、
① 地方自治体が行う事業である以上、復興関連といえども地方負担があるのは当然であり、

 もしそれを忌避し続けるなら地方が事業を返上し、国が直接執行するほうが効率的である。
② 地方負担がゼロだと事業の選択にハザードが生じ、必要の薄い事業にまでどんどん国費が

 浪費される。
③ 地方負担というといかにも地方税(住民負担)で全て賄うかのような錯覚を与えるが、

 「3割自治」という言葉があるように地方財源の大半は(財政力にもよるが)、実は国が負

 担している。
  東日本大震災復興では阪神・淡路大震災時にはなかった復興特別税が長期にわたって国民

 負担となっている。大都市が多かったとはいえ阪神・淡路大震災の被災自治体は、当初から

 地方負担を受容していた。
  これらのことから分かるように、防災士など防災の専門家は情緒的なマスコミ報道に惑わ

 されることなく、事実の本質を見抜く力が望まれる。


〔個別の動き〕
1、医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)
 大地震など大規模災害が発生した際の医療拠点となる災害拠点病院と救命救急センターの耐震化は着実に進んでいる。
厚生労働省が全国の災害拠点病院と救命救急センターを持つ病院について建物の耐震化率を調べたところ、2013年は回答した計683施設の78.8%となり、2005年の43.3%から上昇した。
 災害拠点病院は阪神・淡路大震災(1995年)を受けて1996年から整備が始まった。全国に676施設ある(うち基幹災害拠点病院60施設)。災害時に患者を受け入れ、重症患者はヘリコプターなどで被災地外の医療機関へ搬送する。
 重症の救急患者を24時間態勢で受け入れ治療する救命救急センターは271施設ある。
 医療や建築の専門家らでつくる日本医療福祉建築協会(東京)は2013年、病院が取るべき震災対策「東日本大震災からの10の提言」を発表。①インフラ設備の耐震対策②地域の組織との連携強化③患者の避難・籠城の判断と方法の検討――などを求めた。
 南海トラフ地震や首都直下地震など大地震の発生が懸念されており、提言をもとに医療関係者、医療機器メーカー、建築家などに病院の防災について考えてもらいたい。これ等の機関は防災士の養成にも取り組む必要があるだろう。

2、復興、職員不足が深刻(被災3県の市町村)
 東日本大震災から2015年3月11日で4年が経過した。被害が大きかった東北沿岸部では災害公営住宅の建設など復興事業の本格化とともに市町村の業務が増え、職員の不足が深刻となっている。岩手、宮城、福島3県で足りない職員数は3月上旬時点で計276人に上り、必要な人数の1割に相当する。2015年度はさらに不足数が膨らむ見通しで、まちづくりなど復興事業が滞る懸念も浮上している。職員の不足数は、自治体が必要と見込む人数から、確保できた人数を差し引いたもの。宮城県の沿岸15市町村は3月時点で1,528人の職員が必要だが、手当てできたのは1,310人で218人不足している。岩手県は10市町村で40人不足。福島県は原子力発電所事故の影響で復興事業に着手できない自治体もあるため、職員不足は9市町村で18人にとどまる。
 被災市町村は公務員OBの採用や、他の自治体や民間企業から応援職員の派遣を受けるなどして、不足を補っている。こうして被災市町村に採用された職員は現在約2,000人いるが、人材を送り出す自治体や企業は派遣の長期化に慎重な姿勢だ。
 これまで応援職員を派遣していた自治体の中にも、職員の引き揚げを検討する動きもあるという。
 被災市町村では職員不足の状態で復興事業を進めるため、事業期間が長引く恐れも出ている。また、1人当たりの仕事負担が増え、職員が心身の健康を損なった例もある。
 2015年度は復興事業の進展で、被災市町村の職員不足がさらに拡大しそうだ。岩手県の10市町村では2015年度の職員不足が現在の2倍強の88人になると予測する。津波で職員が犠牲となった同県大槌町では、2015年度の不足数が現在の約4倍の65人に膨らむ見通しだ。同県は任期付き職員を採用して沿岸部の市町村に派遣するほか、被害が小さかった内陸部の自治体に応援を要請する。

3、原子力防災の支援拡充(内閣府)
 政府は、原子力発電所の事故発生に備えた防災支援体制を拡充する。内閣府の担当部門の対応要員を増強し、原発を抱える自治体の職員も研修生として受け入れる。経済協力開発機構(OECD)が実施している国際的な訓練にも参加する。停止中の原発の再稼働が見込まれているのをにらみ、事故に対する周辺住民の不安を払拭する狙いだ。
 内閣府に2014年10月に設置した原子力防災部門の人員を2015年4月から増強する。これまで50人だった職員数は57人に増える。国土交通省や警察庁などからの異動者に加え、原発が立地する鹿児島県と愛媛県の職員も受け入れて連携を強める。事故に備えた地方自治体の避難計画づくりなどの支援体制を充実させる狙い。
 また、全国の原発立地地域ごとに、自治体と国の関係省庁が加わる「地域原子力防災協議会」も設置し、避難計画づくりや防災訓練の実施などを国が後押ししやすい体制に改める。
 原子力防災に関する国際協力体制も整備する。すでに米政府と定期対話を実施しているが、英国やフランスとも同様の枠組みの構築を目指す。OECDが提唱している国際訓練にも、2015年度から日本政府として初めて参加する予定だ。

4、救急出動最多598万件(消防庁)
 2014年の全国の救急出動件数は前年比1.2%増の598万2,849件だったことが、総務省消防庁の速報値で分かった。搬送人数は1.1%増の539万9,618人で件数、人数ともに5年連続で過去最多を更新した。消防庁は高齢化に伴い、お年寄りのけが人や病人が増えたことが要因とみている。
 都道府県別で出動件数の増加率が最も高かったのは山梨の4.9%で、沖縄の4.1%が続いた。減少したのは秋田、三重、鳥取、山口の4県だけだった。
 出動件数が増えた470消防本部に複数回答で理由を聞いたところ、高齢の傷病者の増加が76.8%、急病人の増加が65.7%だった。19.8%は明らかに軽症なのに救急車を呼ぶ不適正利用が増えたことを挙げた。
 一方、出動件数の減った278本部のうち、42.1%が、市民に適正な救急車利用を広報したことを減少の理由とした。

5、不燃化特区、13地区追加(東京都)
 東京都は災害時に延焼の危険性が高い木造住宅密集地域の建物の建て替えを支援する「不燃化特区」として新たに13地区を追加指定した。2015年度からは特区内の助成対象も広げるなど、制度設計も見直した。首都直下地震などに備え、災害に強い都市づくりを進めていく。
 不燃化特区は耐火性の高い建物に建て替える際に補助金や税制優遇を受けられる制度で、2013年にスタート。追加指定したのは品川、大田、世田谷の各区などが新たに申請した13地区(計約1,030ヘクタール)。これにより、指定地区は52地区(計約3,020ヘクタール)になり、目標の50地区を上回った。
 助成対象では建て替え後の建物用途について、延べ床面積の半分以上は住宅としていた従来要件を撤廃。店舗専用物件など全ての建物に補助金を支給する。
 補助金の支給手続きで必要だった建て替えの設計費の見積書は提出を求めないようにした。

6、災害がれき 国が処理(環境省)
 環境省は、巨大災害で発生する廃棄物について、市町村の責任とされている処理を国が代行できるようにする関連法改正案を今国会に提出した。東日本大震災でがれきなどの処理に時間がかかったことを教訓に、南海トラフ巨大地震などに備える。
 地震によるがれきは、市町村の責任で処分すると現行法が定めている。だが、東日本大震災では、13都県で計約3,120万トンのがれきなどの廃棄物が発生。津波を受けた市町村を中心に処理能力を超える例が続出した。2011年8月に国が処理を代行できる特措法を定めて広域処理などで対応したものの、原発事故の影響がないものでも処理終了に2014年3月までかかった。
 将来に発生が想定される南海トラフ巨大地震では東日本大震災の11倍の約3億5千万トン、首都直下地震でも3倍超の約1億1千万トンの廃棄物が出ることが見込まれており、環境省は恒久的な法整備を行うとした。
 具体的には、災害対策基本法や廃棄物処理法を改正する。震災や巨大な土砂災害などの被災地域のうち、処理の困難さなどの要件を満たした場合に、廃棄物処理を国が代行できるようにする。

7、直下地震時、都心への救援路 48時間で8ルート(国土交通省)
 国土交通省関東地方整備局は、首都直下地震の際、都心へ向かう8つのルートに人員や資機材を集中投入し、48時間以内に通行を可能にする計画を発表した。道をふさぐ放置車両や、がれきを取り除き、救助隊や支援物資の通行経路を早急に確保する。災害発生後72時間で生存率が大きく下がることを念頭に、迅速な救援につなげる。
 首都圏から放射状に延びる東北自動車道、常磐道、東関東道、東京湾アクアライン、東名高速、中央道、関越道の各方面などからの救援受け入れを想定している。例えば東名高速方面では、最大3,200台の車が道路をふさぎ、10トンのダンプカー30台分のがれきが発生すると想定。地震発生後3~6時間で重機などを川崎市の国交省出先機関に集め、職員らが作業を始める。
 各方面では、高速道優先や一般道との組み合わせなど事前に複数の経路を決めておき、災害時には実際の被害状況に応じて選択する。今後、車を撤去する訓練などを重ねる。時系列で整理した詳細な行動計画も作る。

8、労災死76人 震災後最悪(厚生労働省)
 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県で、労災による2014年1~12月の死亡者は少なくとも計76人に上り、年間では震災のあった2011年以降で最悪となったことが、分かった。死傷者の合計は2010年に比べ13%増え、建設業に限ると56%多かった。
 復興工事の本格化で経験の浅い作業員が増えたのに対し、事故防止策が追いついていないのが要因。3県内の労働局が2014年12月に立ち入り検査した建設現場では、過半数に安全上の法令違反があり、是正を求めている。
 各労働局へ届け出のあった昨年の労災件数(2015年1月末時点の速報値)によると、岩手では震災後で最も多い26人が死亡し、宮城は20人、福島では30人が亡くなった。計76人は2010年の確定値より31%多く、産業別では建設業が2倍を超す27人に達し、運輸交通業(17人)、製造業(9人)が続いた。

9、広域BCPを策定(国土交通省)
 北陸地方整備局や北陸信越運輸局、学識者、港湾関係企業、建設企業などで構成する北陸地域港湾の事業継続計画検討会が発足した。
 新潟、富山、石川、福井各県の重要港湾で策定しているBCP(事業継続計画)の実効性をより高めるため、2016年度内に広域BCPをまとめることを申し合わせた。
 会合では、災害対応力の強化に向けて、▽緊急物資輸送▽一般貨物の代替輸送▽復旧資機材などの支援――体制の構築を検討項目に設定。各港の連携を強化するため、港湾管理者と企業間、港湾管理者間(官官)、企業間(民民)で災害協定などを促進する。

10、御嶽山 遺族会結成へ(内閣府)
 57人が死亡、6人が行方不明となった御嶽山の噴火災害で、長野県の遺族がほかの犠牲者の家族に呼び掛けて、遺族会「山びこの会」を結成する。犠牲者の慰霊行事をしたり、防災について提言したりすることを検討している。
 今後、各地の遺族に手紙を送り、参加を呼び掛ける。

11、住宅ポイント 耐震化で加算(国土交通省)
 省エネ住宅の普及を促す国の「省エネ住宅ポイント」の申請受付が始まった。過去の「住宅エコポイント」に比べると対象が完成済みの新築住宅や水回りなど設備単独のリフォームにも広がり、住宅・住宅設備各社の販売促進が熱を帯びている。消費増税の影響で受注が低迷するなか、各社は自前のサービス上乗せで受注拡大を目指す。
 今回の制度は基準を満たした住宅の新築やリフォームに対し、商品券などと交換できるポイントを1戸当たり最大30万ポイント(1ポイント1円相当)提供する。住宅関連各社は耐震工事の別途加算枠を加えると最大45万ポイントになるリフォームでの恩恵が大きいとみている。

12、噴火時 降灰量も予想(気象庁)
 気象庁は、火山の噴火時に火山灰が降る範囲を示す「降灰予報」について、新たに降灰量の予想を加えた。灰が路面などに積もる量を3段階で表現し、段階に応じて住民らが取るべき行動も知らせる。
 現在の降灰予報は噴火から20~30分後に発表され、灰が降る範囲だけを予想している。新たな予報では、多量(1ミリ以上)、やや多量(0.1ミリ以上1ミリ未満)、少量(0.1ミリ未満)の3段階で降灰量を示す。
 ほかに、噴石や火山灰が及ぶ範囲を噴火後5~10分で発表する「速報」を新たに設ける。火山活動が活発な桜島(鹿児島県)などを対象とした3時間ごとの定時予報も始め、火山灰に関する情報提供を拡充する。

13、日本 さらに暑く(気象庁)
 気象庁は、異常気象や気候変動に関する分析と予測をまとめた「異常気象レポート」を発表した。21世紀末の日本の年平均気温は20世紀末と比べて最大3.5度上昇する可能性があると予測した。
 レポートは1974年に初めて刊行され、今回が8回目。
 レポートによると、日本の年平均気温は、19世紀末から21世紀初めにかけては100年当たり約1.14度のペースで上昇した。21世紀半ばごろまで温暖化ガスの排出量が増え続けた場合、21世紀末(2076~95年)までには、20世紀末よりさらに2.5~3.5度上がるとの見通しを示した。
 地域別では、北日本の太平洋側で平均3.3度、関東甲信や北陸地方で同3.0度上昇するとした。
 20世紀初めから約100年間では、1日に計100ミリ以上の大雨となる日数が増え、1ミリ以下の無降水日数も増加した。21世紀末は年間の降水量が今より5%増える一方、1年で最も深いときの積雪は全国平均で20センチ減少すると予測した。
 日本沿岸の海面水位は1971~2010年に年平均で1.1ミリ上昇し、1993年以降ではペースが2.8ミリに加速。今後も上がり続けるという。

14、大災害時に無料相談(法務省)
 日本司法支援センター(法テラス)が所得を問わずに実施している無料法律相談の対象を、東日本大震災だけでなく、全ての大規模災害の被災者に広げることを柱とする総合法律支援法改正案が今国会で成立した。
 法テラスは、原則として「事前の資力審査」で所得の状況を調べ、低所得者に限って無料相談を行う。ただ、大規模災害の被災者が法律トラブルを抱えた場合、災害によって所得審査に必要な資料が失われている例も多い。
 このため、特例として無料相談の対象を広げることで、大災害からの復興を後押しする狙いがある。
 改正案は、政府が指定する「著しく異常かつ激甚な非常災害」の発生から1年以内で、被災者から民事トラブルの無料法律相談を受け付ける。
 東日本大震災の被災者については、既に議員立法の特例法に基づき、法テラスが無料法律相談を実施している。

15、首都直下地震で政府基本計画(中央防災会議)
 政府が閣議決定した首都直下地震対策の基本計画では、被害半減のために、木造住宅密集地などでの火災防止策と建物の耐震化に重点が置かれた。しかし、これまでも指摘されてきた課題をいかにクリアしていくか、目標達成の具体策は明確になっていないのが現実だ。
 首都直下地震では火災による死者が全体の7割を占めるとされ、死者数半減を目指すには火災対策が不可欠となる。
 今回改定された計画で木造住宅密集地における数値目標が示された「感震ブレーカー」は、電気器具などからの出火を防ぐ有効な対策として期待されている。
 ただ、感震ブレーカーの設置率は「現状ではほぼゼロ」。認知不足や工事費負担が足かせとなり、今後実際にどこまで普及が進むかは未知数だ。
 延焼の危険性が高い木造住宅密集地の解消は以前から防災上の課題となっているものの、土地建物の所有権が複雑で建て替えや移転はなかなか進んでいない。
 計画では、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県にある「著しく危険な密集市街地」約2,500ヘクタールについて2020年度までに100%解消に近づけるとされたが、実現のハードルは高い。具体策として記載されたのは、避難路整備や建築物の不燃化など、「最低限の安全確保」の方策にとどまっている。
 住宅の耐震化率も最新となる2008年の全国推計では79%。国土交通省によると、近く2013年分が公表されるが大幅な向上は見込めないという。
 命を守るためとはいえ、費用のかかる耐震改修や建て替えに踏み切れない所有者も少なくない。自治体の多くは耐震改修費の補助を求めており、国交省の担当者は「財源の捻出が課題になる」と話している。

16、地震速報観測67地点を追加(気象庁)
 気象庁などは、海洋研究開発機構、防災科学技術研究所がそれぞれ紀伊半島沖や南関東の地下に設置している地震や津波の観測点など全国67カ所のデータを、緊急地震速報用の観測網へ新たに組み込むと発表した。
 地震波をより早期に検知するのが狙いで、南海トラフ地震で最大数秒、首都直下地震では最大1秒早く、緊急地震速報を発表できるようになるとみている。

17、南海トラフ巨大地震、最大14万人応援部隊派遣(中央防災会議)
 将来予想される南海トラフ巨大地震について、発生直後に国や自治体が行う救助活動や物資輸送の計画が公表された。
 発生から72時間で負傷者らの生存率が大幅に低下するため、その前に、全国の警察や消防、自衛隊から最大約14万人の救助部隊を、中部から九州にかけての沿岸10県に派遣。東日本大震災の教訓を踏まえ、被災各地に必要な食料などの支援物資を、自治体の要請を待たずに輸送する「プッシュ型支援」の実施も盛り込んだ。
 国や自治体は4月以降、計画に基づいて訓練を実施し、今後は首都直下地震に備えた計画も策定する。
 南海トラフ巨大地震は東海、東南海地震などが同時発生するマグニチュード9級の大地震で、津波などにより最悪で32万人以上の死者が出ると想定されている。地元の警察や消防だけでは救助が追いつかない地域が広範囲に及ぶと見込まれ、政府は今回、被害の少ない自治体と迅速な救援を行えるよう具体策を示した。
 応援部隊の動員計画では、津波被害が予想される静岡から宮崎にかけての沿岸10県を、巨大地震の際に必ず応援を要する地域と定め、残る37都道府県から最優先で応援部隊を派遣する。最大で警察約1万6,000人、消防約1万6,600人のほか、自衛隊は10県の部隊も含めて約11万人を投入。想定される被害規模に応じ、中部に4割、四国に3割、近畿に2割、九州に1割の割合で振り向ける。
 また、発生直後に部隊が向かう目標地点として、高速道路のサービスエリアなど48カ所を「広域進出拠点」に選定。詳しい被災状況が判明する前でも部隊が被災地に近づけるようにした。海や空での移動や輸送のため、全国の警察や自衛隊などから最大でヘリコプター計約480機と航空機約140機、船約470隻も出動する。

18、被災地の企業支援1.5倍(復興庁)
 復興庁は被災地の企業やNPO団体の新規事業の立ち上げを支援する取り組みを拡充する。企業経営に詳しい職員らを送り込む支援先を2015年度は15件と、前年度の1.5倍に増やす。被災企業は震災前より売り上げが落ち込んでいるケースが多い。外部の目を取り入れた商品開発や販路開拓で収入増を後押しする。
 復興庁は民間企業から出向してきた職員20人に加え、外部コンサルタントからなる支援チームを持つ。岩手、宮城、福島を中心とした東北各県の支援先を公募で決め、2012年度から市場調査、販路開拓の支援、事業の広報などを手伝ってきた。過去3年の支援先は年7~10件。大震災から4年たち復旧作業から成長を見据えた動きが出つつあることから、対象を増やす。

[防災短信]
1、「防災」越境連携が多様に
 ~大田区-食料遠隔地から空路で、埼玉県-都と未接続道路解消へ~ 2015年3月10日付 日本経済新聞
2、津波の記憶 3Dで記録
 ~東北大など、全国で上映へ~ 2015年3月10日付 日本経済新聞(夕刊)
3、「震度7」でも倒壊ない
 ~免震不適合の55棟、東洋ゴム発表~ 2015年3月31日付 日本経済新聞
4、災害映像を送信 ドローンを公開
 ~警視庁~ 2015年3月31日付 日本経済新聞
5、帰宅困難者、カメラで検知
 ~豊島区 51台で群衆の動き解析~ 2015年3月11日付 日本経済新聞
6、空き家「1年不使用」目安に
 ~国土交通省など指針、市町村の対策後押し~ 2015年2月19日付 日本経済新聞
7、マンション防災 ドラマで知って
 ~中央区 DVD制作・貸し出し~ 2015年3月31日付 日本経済新聞
8、明治の「レンガ壁」新名所
 ~横浜、関東大震災の爪痕残す~ 2015年3月12日付 日本経済新聞(夕刊)
9、震度6強・津波の脅威体感
 ~国土交通省の有明施設~ 2015年3月13日付 日本経済新聞
10、災害用トイレ 私たちが開発
 ~東京と徳島の女子高生、悩み聞き工夫こらす~ 2015年3月16日付 日本経済新聞(夕刊)
11、災害時も事業継続へ対策
 ~京葉銀行は本部に免震部材~ 2015年3月16日付 日本経済新聞
12、惨劇 繰り返さない
 ~地下鉄サリン事件20年、都内でシンポ~ 2015年3月15日付 日本経済新聞
13、中野区 町会加入を促進
 ~不動産2団体と協定 防災などの一助~ 2015年3月24日付 日本経済新聞
14、日中防災相、協力で一致
 ~国連防災会議~ 2015年3月16日付 日本経済新聞
15、老朽看板、目視点検だけ
 ~札幌の落下事故 設置から30年~ 2015年3月23日付 日本経済新聞(夕刊)
16、東日本大震災でフロン大量排出
 ~断熱材やエアコンの冷媒、漏出~ 2015年4月7日付 日本経済新聞

 

 

 

 

 

【参考文献】

1、 2015年3月05日付 日本経済新聞(夕刊)
2、 2015年3月11日付 日本経済新聞
3、 2015年3月29日付 日本経済新聞
4、 2015年3月31日付 日本経済新聞(夕刊)
5、 2015年4月02日付 日本経済新聞
6、 2015年2月06日付 読売新聞
7、 2015年2月21日付 産経新聞
8、 2015年3月03日付 日本経済新聞
9、 2015年3月11日付 建設通信新聞
10、 2015年3月15日付 日本経済新聞
11、 2015年3月11日付 日本経済新聞
12、 2015年3月14日付 日本経済新聞
13、 2015年3月20日付 日本経済新聞(夕刊)
14、 2015年3月29日付 日本経済新聞(夕刊)
15、 2015年4月01日付 日本経済新聞
16、 2015年3月25日付 日本経済新聞(夕刊)
17、 2015年3月30日付 読売新聞
18、 2015年4月10日付 日本経済新聞

 

 

 

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第86号平成29年9月号支援物資の輸送を改善(中央防災会議)他
第85号平成29年8月号惨事ストレスケア2,700人(消防庁)他
第84号平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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