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防災評論 第65号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第65号)【平成27年12月号】

 

【目次】
〔政治行政の動向概観〕
〔個別の動き〕
1、水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)
2、鬼怒川決壊 浸水地域、下流に拡大(国土地理院)
3、相次ぎ緊急防火策(JR東日本)
4、土石流対策の砂防ダムなど692カ所で未整備(会計検査院)
5、感震ブレーカーに助成(東京都足立区)
6、水害医療班 円滑に連携(茨城県・常総市)
7、防火対策認定 導入10年目(東京消防庁)
8、被災者に負担ずしり(国税庁)
9、自治体庁舎 全国で見直し機運(総務省・消防庁)
10、堤防決壊の危険 全国に(国土交通省)
11、「タイムライン防災」広がる(国土交通省・地方自治体)
12、ガス管 3大都市圏接続(経済産業省)
13、有床診療所等スプリンクラー 補助金の件数・交付額が内示(厚生労働省)
14、ポケットにライター 着火で死亡事故も(消費者庁)
15、消防本部の女性職員の活用を提言(消防庁)
16、噴火5分以内に「速報」(気象庁)
17、30火山 シェルター検討(気象庁・地方自治体)

 

〔政治行政の動向概観〕

 昨年は臨時国会は開かれず、代わって年明けの通常国会は異例の正月4日招集・開会となった。暮れの税制改正大綱においては2019年からの消費税率アップ(8→10%)の際に導入すると公約していた軽減税率について、食料品(外食を除く)と新聞(朝刊発行紙)等の一部書籍類に決定したが、この過程でも政府(官邸)が与党を抑え込むという構図が鮮明となった。すべての政治軸は夏の参議院通常選挙と同時実施が想定されている衆議院総選挙へと向いており、これに反発できない政治構造が続く見通しである。
 強いリーダーシップのもとに国民が一つの方向性に進むことは国力発揚にとって悪いことばかりではない。しかし、隣国中国のように「米国に比肩する世界大国になる」との明確な方針のもと突き進むと、それに伴う副作用が台頭し、国民生活の安全を脅かすことになる。8月の天津における危険物倉庫群の大爆発、12月初めからの北京・天津におけるPM2.5赤色警報(健康基準値からみて約90倍の濃度)の頻発に続き、12月中旬には深圳(シンセン)において建設残土とみられる大量の土砂が一気に崩れ落ち、政府発表で70人以上の犠牲者が出る事態となっている。おそらく中国人民はいかに自国が世界大国になろうが、この社会状況下では幸せを実感できないであろう。
 一つの政策や求心力しかない国家運営にはその無理からくる負の作用が必ず現れる。防災・減災は国民の安全・安心にとってもっとも重要な行政作用であるが、社会秩序・安全保障(防衛)費用の増大に軽減税率による減収が追い打ちをかける財政状況では、南海トラフ、首都直下地震への備えはもとより日常使用するインフラ等の老朽化対策等の安全対策にも不安が生じることになる。これらの対応を怠っていると笹子トンネル事故(2012年)に対し下された司法判断のように国や公共機関は手痛い打撃を被ることになる。
 防災士取得者10万人達成を迎えた2015年は防災士のより一層の地域貢献、活動充実へと飛躍する「防災士元年」としなければならないだろう。

 

〔個別の動き〕

1、水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)
 台風18号の影響による関東・東北地方の水害の被災地に対し、東京都内の自治体が物資提供などの支援を始めた。大規模災害時に自治体間で相互応援する協定に沿った措置も目立ち、今後も自治体による連携の輪が広がりそうだ。
被災地では水をせき止める土のう用の袋が不足している。東京都は茨城県の要請を受け、1,600袋を送った。足立区も相互協定を結ぶ栃木県鹿沼市に約9,000袋を届けた。
 人的支援も広がっている。東京消防庁や稲城市消防本部は救援などのために職員を派遣。被害が広がった10日以降で延べ100人以上の消防関係者が被災地入りしている。都の災害派遣医療チーム「東京DMAT」に指定された医療機関は11日、医師や看護師らによる50人規模の医療救護班を送り込み、現地で支援活動に取り組んだ。

2、鬼怒川決壊 浸水地域、下流に拡大(国土地理院)
 茨城県常総市の鬼怒川沿いで浸水した地域が、堤防が決壊した9月10日に比べ、11日午前10時には下流側へ大幅に拡大していたことが国土地理院の調査で分かった。
 国土地理院は上空から撮影した画像を分析して10日午後6時と11日午前10時時点、それぞれの浸水地域を推定し、地図を作製。ホームページに公表した。10日には鬼怒川と小貝川に挟まれた南北約9キロ、東西約4キロだった浸水地域が、11日午前10時には南北約16キロまで拡大したのがうかがえる。上流側では水が引いた地域もあった。
 10日と11日に小型無人機「ドローン」で撮影した動画も公開。鬼怒川の堤防決壊現場を10日午後5時半すぎに撮影した動画には、茶色く濁った水が住宅地に流れ込む様子が映っている。また、茨城県常総市の鬼怒川で水が堤防を越える「越水」が発生した部分を2014年春、土地を所有する民間事業者が太陽光パネル設置のため掘削していたことが分かった。
 国土交通省によると、現場は堤防が決壊した同市三坂町から上流約4キロに位置する自然堤防。高さ2メートル超、幅約150メートルにわたって掘削されていた。「洪水の恐れがあるのでは」と市民からの通報を受けて、国交省は2014年7月までに約2メートルの土のうを積む応急処置をしていた。

3、相次ぎ緊急防火策(JR東日本)
 東京都内のJR東日本施設で不審火が相次いだことを受け、同社は沿線施設の防火対策の強化などに追われた。
 都内のJR施設では2015年8月以降、7件の不審火が確認された。8月27日には渋谷区内の線路脇のケーブル2カ所から出火し、山手線や埼京線などが約1時間にわたり運転を見合わせ、約5万1千人に影響が出た。
 一連の不審火では、駅や信号機に電力を送るケーブルのカバーなどが燃えた。ケーブルは保守・点検をしやすいよう地上に敷かれることが多く、外部から火をつけるのが容易な状況だった。
 一方、こうした設備はいずれも損傷すれば鉄道の運行に大きな影響が出ることから、JR東日本は緊急の対策に着手した。
 同社は山手線内の75カ所と東京駅から30キロメートル圏内の638カ所で、送電用ケーブルを防火シートで覆うなどの対策を終えた。さらに沿線の施設を巡回する頻度を増やし、重要施設に防犯カメラも増設する。

4、土石流対策の砂防ダムなど692カ所で未整備(会計検査院)
 土石流の被害が発生する恐れがあり、付近に市街地を抱える区域で、砂防ダムなどが未整備となっている場所が2014年末時点で計692カ所あることが16日、会計検査院の調査で分かった。市街地に影響が及べば大きな被害が出る可能性があり、検査院は優先順位をつけて整備を行うよう国土交通省に要望した。
 2014年8月の広島市の土砂災害を巡り、犠牲者が多かった安佐南区八木地区で建設を計画していた砂防ダムが未完成だったことが指摘されている。これらを受け検査院は今回、27都道府県を抽出、土砂災害のハード対策の状況を調べた。
 検査院によると、土石流により住民に危険が及ぶ恐れのある計3万カ所の「特別警戒区域」のうち、区域内や周辺に人口集中地区があり、砂防ダムなどが整備されていないのは16都道府県で692カ所。長崎県が281カ所で最多で、東京都の148カ所、愛媛県の59カ所が続いた。
 都道府県は砂防法に基づき、設備の位置などを記した「砂防設備台帳」の作成が義務づけられているが、11都府県では一部が整備されていないなどの不備が見つかった。


土石流対策の未整備の場所が多い自治体(会計検査院調べ)

1

長崎県

281カ所

2

東京都

148カ所

3

愛媛県

59カ所

4

和歌山県

58カ所

5

京都府

42カ所



5、感震ブレーカーに助成(東京都足立区)

 東京都足立区は大きな地震があると自動的に電気を止める「感震ブレーカー」の普及を進める。東日本大震災や阪神・淡路大震災後の出火原因のうち、6割以上にのぼった電気火災を減らすのが狙い。機器購入と工事にかかった費用の補助申請を受け付ける。

同区中南部には木造密集地域など安全対策が必要な「特定地域」約1,400ヘクタールが広がる。特定地域内の旧耐震基準の木造住宅に住む人を対象に上限5万円を助成。70歳以上の単身者家庭や要介護者が住む世帯などは上限を8万円に引き上げる。50件の助成を予定する。

 ブレーカーは設定値以上の震度の地震が発生したときに自動的に電気の供給を遮断する仕組み。電気が復旧した際に発生する「通電火災」対策に有効とされる。

 

6、水害医療班 円滑に連携(茨城県・常総市)

 関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市では、初期の医療対応で東日本大震災の教訓を生かし、医療関係の団体がそれぞれ連携して支援活動に当たった。一方で、医療機関は浸水被害などに遭って打撃を受け、復旧後も見据えた支援が求められている。

 今回は県の医師会、歯科医師会、看護協会、薬剤師会の4団体で構成された医療チームが避難所を巡回し、診察や薬の処方を担った。茨城県つくば市に置かれた現地本部には、医療チームや日本赤十字社が派遣した救護班のほか、避難所でのリハビリや心のケア、栄養管理に関わる団体が連日集合。災害医療コーディネーターの調整の下、朝夕の会議で活動報告を行い、課題を整理した。

 背景には、東日本大震災で被災した県内で各団体がばらばらに動き、それぞれの避難所の情報を共有できなかった反省があった。県はコーディネーターの制度を新たに設けて、医師に委嘱していた。

 今後の課題も山積みだ。大量のごみで衛生面が悪化することによる感染症の流行、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症も懸念される。水没して車が使えなくなった被災者が、市内の医療機関へ通えるように移動手段を確保するなど長い目でみた行政の支援が必要とされる。

 

7、防火対策認定 導入10年目(東京消防庁)

 防火安全対策が優れたホテルなどで掲示できる東京消防庁の「優マーク」が導入10年目を迎えたが、周知不足のため普及が進んでいない。都内の対象ホテルの取得率は8%にとどまる。2020年東京五輪・パラリンピックに向け外国人観光客の宿泊増も見込まれるなか、同庁は優マークをホテルなどの安全性PRに活用してほしいとアピールしている。

 優マークは2001年に44人が死亡した歌舞伎町雑居ビル火災などを教訓に、防火安全性の高い建物を認定する制度で2006年から導入された。消防法や建築基準法の基準だけでなく、防火対策に積極的に取り組んでいるかどうかなどを基に判定される。

 しかし、事業者の申請に基づく取得に加え、未取得でも罰則がないため、普及が進んでいない。

 東京消防庁によると、優マークを申請できる30人以上収容可能のホテルは都内に約1,400超あるが、取得率は約8.8%にとどまる。

 また、2012年に7人が死亡した広島県福山市のホテル火災を機に、消防庁が2014年、防火基準に適合したホテルなどに掲示できる全国統一の「適マーク」(2003年廃止)を復活させたことで、都内では2つのマークが併存している。同じようなデザインで、歴史の長い適マークに比べ、優マークの独自性が分かりにくい面がある。

 

8、被災者に負担ずしり(国税庁)

 東日本大震災の被災地の地価上昇は、生活再建を目指す被災者にとって新たなハードルとなる。

 宮城県の最高路線価で最も大きい上げ幅だったのは、前年比7.9%上昇した石巻市恵み野2の住宅街。周辺では沿岸地区からの移転が進み、震災直前と比べ路線価は2割上がった。

 近くの仮設住宅に住む人は、自宅があった沿岸部は災害危険区域に指定され、周辺の移転地で再建を考えていた。しかし市から提示されたのは坪17万~20万円で「仙台市内でも土地が買える」価格。津波で船が流され、漁師を廃業した身には「負担が重すぎる」という。

 岩手県大船渡市のJR盛駅周辺の路線価も4.7%の上昇。災害公営住宅の家賃は周辺の地価に連動しており、昨夏から同駅近くの住宅に入居している女性は「震災前に住んでいた借家と比べて広さは半分だが、家賃はほとんど変わらない」とこぼす。

 防災士の中で税理士等税務に明るい人は、被災と税負担の関係についても住民に周知していく必要がある。

 

9、自治体庁舎 全国で見直し機運(総務省・消防庁)

 東日本大震災は東北の被災地だけでなく全国の地方自治体に庁舎の防災機能の強化を促す契機となった。首都直下地震や南海トラフ地震などに備え庁舎の建て替え、改修の事例が増えている。

 消防庁によると災害時の防災拠点となる全国の自治体庁舎の耐震率は震災前の2009年度末が62.4%。直近の2013年度末には71.8%と10ポイント近く上昇した。

 東京都新宿区は震災で庁舎の窓ガラスが100枚以上割れる被害が出たことを受け免震工事などを実施し、2015年秋に工事を終えた。新庁舎建設を検討する渋谷区は敷地の一部を民間にマンション用地として貸し出し、賃料による「財政負担ゼロ」を計画、首都直下地震などに備える。和歌山県海南市は南海トラフ地震を想定し、庁舎を高台に移す方針を決めた。

 一方、建設資材高騰などで庁舎建設を延期する自治体も多い。千葉県木更津市は2014年、本庁舎の建設計画を延期。コスト増が落ち着くとみる東京五輪の2020年前後に改めて建て替えを検討する。愛知県新城市も新庁舎の建設事業費が想定より2~3割増えることが判明。2015年5月に住民投票を実施し庁舎の規模を縮小する案が過半数を得た。

 庁舎新築には国の支援があるうえ、総務省は2011年に防災施設の耐震改修にかかる資金を地方債で全額調達できる制度を導入し、耐震化を後押しする。ただ、防災を名目に過大な投資につながらないようチェックは必要。学校など他の公共施設の耐震化と優先順位をつけるのが難しい面もある。

 大阪府枚方市は市庁舎と老朽化した税務署、府民センターを合わせた合同庁舎建設の検討を国、大阪府と始めた。人口減で税収が減る中、庁舎建設にお金をかける余裕はない。既存の施設での機能分散や改修など様々な工夫で支出を抑え、高齢化で増える行政経費などに充てるべきだとの指摘もある。

 

10、堤防決壊の危険 全国に(国土交通省)

 関東・東北豪雨では、茨城県常総市の鬼怒川などで堤防の決壊が発生した。鬼怒川の決壊場所は堤防かさ上げ工事が計画され、用地買収が始まったところだった。全国でも河川ごとに堤防整備計画があるが全流域で完了した河川はほとんどない。予算の制約もあり全河川の堤防をすぐに強化するのは現実的ではなく、災害時の行動計画などソフト対策の充実も求められる。

 関東・東北豪雨から2週間。国土交通省関東地方整備局は24日、常総市三坂町で進めていた決壊現場の応急復旧工事を終了した。整備局によると、高さ約4メートルの堤防が決壊し幅約200メートルにわたって流された。国土地理院によると、浸水面積は約40平方キロメートルに及んだ。

 決壊場所周辺は短期的に定めた「10年に1度」の大雨への増強計画も未完成で、国交省幹部も「堤防が弱いことは分かっていた」と認める。

 他の地域もよそ事ではない。河川法に基づき、全国の河川ごとに「200年に1度」「100年に1度」などの豪雨を想定した河川整備基本方針があり、さらに短期的な整備計画もあるがほとんどの河川では未完成だ。

 愛知県の庄内川では「100年に1度」の雨量に耐えられる堤防整備が進むが、完了したのは計画の3割。中部地方整備局によると、庄内川が氾濫した場合の浸水想定は最悪約90平方キロ、約30万世帯が被害を受ける。

 大阪湾に流れ込む淀川も200年に1度の大雨を想定した堤防整備が計画されるが、完了したのは57%(2015年3月末時点)。兵庫県を流れる円山川に至っては計画の85%(同)が未整備だ。

 

11、「タイムライン防災」広がる(国土交通省・地方自治体)

 台風や豪雨時に的確に避難指示などを出せるようにするため、行政や住民があらかじめ時系列で行動計画を立てておく「タイムライン防災」と呼ばれる手法を取り入れる自治体が増えている。

 タイムライン防災は台風の進路や予想雨量などに合わせ、行動計画を作成。国土交通省は東京都北区、板橋区などと連携し、荒川下流域の災害に関して「96時間前」「24時間前」などの職員らの対応を定めている。

 茨城県常総市では鬼怒川の堤防決壊後に避難指示が出た地域もあり、台風や豪雨災害のたびに自治体の避難指示・勧告の遅れが指摘されてきた。

 タイムライン防災は評価されているが、大災害時は想定外のことが起き、行政の対応が後手に回ることはある。住民には行政の情報だけで判断せず、自主的に行動する準備をしておくことも求められる。

 

12、ガス管 3大都市圏接続(経済産業省)

 経済産業省は、東京と大阪、名古屋の3大都市圏を結ぶガス導管網の整備計画を策定する方針を固めた。都市ガスを大都市間でやり取りできるようにして、災害対策の強化や、ガス会社間の競争の促進につなげる狙いがある。民間会社の経営判断に委ねてきたガス導管網整備を国主導に転換する。

 主要なパイプラインとして具体的には、液化天然ガス(LNG)の受け入れ基地が集まる3大都市圏を結ぶ「太平洋ルート」と、新潟県を経由する「日本海ルート」を想定している。現在、太平洋側は神奈川県と静岡県の間(約80キロメートル)、日本海側は富山県と滋賀県の間(約280キロメートル)がつながっていない。

 2011年の東日本大震災では、仙台市のLNG基地が被害を受け、ガスの供給再開に1年程度かかるとみられた。だが、新潟県のLNG基地とガス導管網がつながっていたため、新潟からガスを送ることが可能となり、約1カ月でガスの供給が復旧できた。

 ガス導管網は、港に近いLNG基地を中心に民間のガス会社が整備してきた。収益性の問題などから、広域的な整備が遅れていた。都市ガスが利用できるガス導管の敷設率は国土面積全体の6%にとどまる。

 計画の実現には、建設や運営を担う都市ガス大手などの協力が必要だ。業界では整備費が大きな負担にならないことが条件、との声が上がっている。

 

13、有床診療所等スプリンクラー 補助金の件数・交付額が内示(厚生労働省)
 平成27年度医療施設等施設整備補助金(有床診療所等スプリンクラー等施設整備事業)が内示された。
 補助金を必要とする施設においては、すでに来年度申請の受付を終了しているところもある。早いうちに申請することをお勧めする。スプリンクラー等防火対策施設整備については、火災が発生した際、被害の甚大化を防ぐために必要不可欠なものだが、設置義務のない施設においては、設置率がきわめて低い状況にある。この事業は、スプリンクラー等を設置していないそうした有床診療所等に対して、スプリンクラー等を整備するための財政援助を行い、速やかに安全を確保することを目的としている。

 

補助金の内示件数と交付額

単位:千円

栃木県

21

293,152

群馬県

19

265,798

埼玉県

52

838,520

千葉県

32

604,739

東京都

31

539,743

神奈川県

63

861,542

 

14、ポケットにライター 着火で死亡事故も(消費者庁)

 使い捨てライターをポケットにしまった際に、衣服に着火する事故が相次ぎ、死亡事故も起こっていることから、消費者庁はこのほど、注意喚起を行った。事故調査によれば、着火レバーから指を離しても火がついている「残り火」が原因とみられる事例がほとんどだった。

 同庁の事故情報データバンクによれば、2010年4月以降、44件の情報が寄せられ、うち22件で衣服が燃えてライター使用者がやけどを負っていた。2015年6月には、兵庫県で重度のやけどで亡くなる事故も発生している。

 残り火は、着火レバーやノズル周辺に異物が挟まり、微量のガスが漏れるなどして発生すると考えられる。同庁は、ライター使用後は、完全に火が消えていることをよく確認してほしい、と呼びかけている。

 

15、消防本部の女性職員の活用を提言(消防庁)

 消防庁は、「消防本部における女性職員のさらなる活躍に向けた検討会」の報告書を発表した。消防本部や消防署は、女性が働く職場というイメージが希薄だが、警察や自衛隊、海上保安庁では女性の活躍の場が増えている。消防・防災力の向上を目指す意味でも、女性の活躍の場を広げることが課題となっている。

 消防本部の女性職員は昭和44年に初めて採用され、以後、少しずつ増加しているが、2015年4月1日現在でも約2.4%に過ぎない。報告書では、女性の活躍は国の成長戦略の重要な柱であり、消防分野でも女性の力を最大限に活用するため、必要な取り組みの強化に速やかに着手すべき、と提言している。

 具体的には、①数値目標の設定により2026年度までに5%に引き上げる、②固定的な見方にとらわれず、女性の職域拡大の推進、③仕事と家庭の両立支援の検討、④消防本部のトップや幹部の意識改革、⑤施設・装備の改善、⑥女性の活躍に向けた取り組みや先進的な事例のホームページでの紹介など女性の活躍情報の「見える化」を推進――などを掲げている。

 

16、噴火5分以内に「速報」(気象庁)

 気象庁は2015年8月から、24時間体制で監視している47火山を対象に、噴火を即時に伝える「噴火速報」を開始した。夏山登山がピークを迎えるこの時期、火口が見えない場所にいる登山者や観光客らに避難を促し、噴石や火砕流などに襲われる危険を減らすのが狙い。具体的には、登山者らが持つ携帯電話や山中の防災無線スピーカーへ、噴火から5分以内の情報伝達を行うものである。

 噴火速報の必要性は、2014年9月に 63人の死者・行方不明者を出した御嶽山の噴火被害を受け、専門家を集めた気象庁の検討会で創設を提言していた。従来、噴火の第一報として発表していた「火山観測報」は、上空の航空機に対する注意喚起が主目的であったため、噴煙の高さを調べる必要があり、発表まで5~10分程度かかっていた。

 新たな噴火速報は、噴煙の調査を待たず、火山名と日時だけをなるべく早く伝えることにしている。携帯電話で速報を受信するには、気象情報会社が配信する専用アプリをあらかじめダウンロードしておいたり、メール登録などが必要となる。

 気象庁は、爆発の衝撃波を検知する空振計、監視カメラなどで噴火を捉えると、自治体や報道機関、民間の気象情報会社などに速報を送る。登山者らの携帯電話へは、気象庁から情報を受けたヤフーと日本気象株式会社の民間2社から配信される。山中には、携帯電話が通じない場所も少なくないため、自治体の防災行政無線での速報システムも整備することにしている。

 

17、30火山 シェルター検討(気象庁・地方自治体)

 気象庁が常時監視する47活火山のうち、約6割が噴火に備えた退避壕(シェルター)の新設や増設を検討していることが地元の22都道県への調査で分かった。1年前の御嶽山(長野・岐阜両県)の噴火を受けてハード整備の重要性に目が向けられるようになっているが、設置費用に加えて景観への影響を懸念する声も出ている。

 47火山のうち、噴石から身を守るためのシェルターが設置されているのは草津白根山(群馬・長野両県)や阿蘇山(熊本県)など11火山。30火山が「設置を検討中」「今後増設を検討する」と回答した。5段階の噴火警戒レベル2(火口周辺規制)の雌阿寒岳(北海道)や箱根山(神奈川県)なども含まれていた。

 2014年9月27日に噴火した御嶽山にはシェルターがなく、噴石の直撃で多数の犠牲者が出た。国は2015年7月、防災基本計画にシェルターを充実させる方針を盛り込み、内閣府は2015年秋、効果や設置の留意点をまとめた自治体向けの指針を公表する。

 富士山(静岡、山梨両県)や大雪山(北海道)など日本百名山に数えられる火山も多く、大勢の観光客や登山者に対応できるシェルターの確保は容易ではない。費用負担への懸念に加え、むやみにシェルターを増やせば、かえって危険な山だと思われるとの声もあった。

 登山者が入山ルートなどを事前に書き記す「登山届」について、条例で提出を義務づけたのは新潟県の新潟焼山、岐阜県の焼岳と御嶽山の計3火山。ほかに7火山が義務化を検討している。御嶽山では行方不明者の把握が難航し、登山届の意義が見直されるきっかけとなったが、義務化まで踏み込む自治体は少ない。

 御嶽山噴火後、新たに山小屋に簡易無線機を置いたり、活火山であることを周知する看板を設けたりして、登山者への情報発信の方法を見直した火山は29に上った。

 

噴火警戒レベル2以上の火山の対策

(◯は整備済み、△は検討中、は検討せず)

火山

シェルター

登山届の義務化

雌阿寒岳(北海道)

吾妻山(山形・福島)

草津白根山(群馬・長野)

浅間山(長野・群馬)

△(長野)

御嶽山(長野・岐阜)

◯(岐阜)

箱根山(神奈川)

阿蘇山(熊本)

霧島山・新燃岳(宮崎・鹿児島)

桜島(鹿児島)

口永良部島(鹿児島)

諏訪之瀬島(鹿児島)

常時監視対象の47火山全体

30火山が検討

3火山が条例

(注)都道県への調査を元に作成

 

[防災短信]

1、水害見えぬ生活再建
 ~常総市長が謝罪「決壊 想定せず」~ 2015年9月14日付 日本経済新聞(夕刊)
2、大量ゴミ 復旧阻む
 ~銚子港までもが影響 撤去作業~ 2015年9月15日付 日本経済新聞
3、JR不審火 42歳男逮捕
 ~品川ほか 業務妨害の疑い~ 2015年9月16日付 日本経済新聞
4、津波、岩手で80センチ観測
 ~チリ沖地震 19都道県に到達~ 2015年9月19日付 日本経済新聞
5、自殺 一人でも減らせ
 ~厚生労働省、相談所を倍増 2014年は年間2万5千人~ 2015年9月22日付 日本経済新聞
6、救助ヘリ操縦士 自前養成に旋回
 ~各県の消防防災ヘリ、経験者確保難しく~ 2015年9月21日付 日本経済新聞
7、噴火続発、破れる静寂
 ~御岳被災から1年 噴火警戒レベル上がる~ 2015年9月27日付 日本経済新聞

 

 

 

【参考文献】

1、 2015年9月15日付 日本経済新聞
2、 2015年9月12日付 日本経済新聞(夕刊)
3、 2015年9月16日付 日本経済新聞
4、 2015年9月17日付 日本経済新聞
5、 2015年9月17日付 日本経済新聞
6、 2015年9月23日付 日本経済新聞
7、 2015年9月24日付 日本経済新聞
8、 2015年9月03日付 日本経済新聞
9、 2015年9月21日付 日本経済新聞(夕刊)
10、 2015年9月25日付 日本経済新聞(夕刊)
11、 2015年9月25日付 日本経済新聞(夕刊)
12、 2015年9月28日付 読売新聞
13、 2015年9月 UGMニュース
14、 2015年9月 UGMニュース
15、 2015年9月 UGMニュース
16、 2015年9月 UGMニュース
17、 2015年9月26日付 日本経済新聞

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第84号1平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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