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防災評論 第68号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第68号)【平成28年3月号】

 

【目次】
〔政治行政の動向概観〕
〔個別の動き〕

01、市民標的テロ対策強化(警察庁)
02、洪水予報 スマホに発信(国土交通省)
03、火山対策シェルター設置促進を(内閣府)
04、登山届義務づけ条例可決(長野県)
05、防災拠点の公共施設 耐震化率上昇88%(消防庁)
06、危険空き家28軒に勧告(地方公共団体)
07、突風強さ推定 新基準(気象庁)
08、笹子トンネル訴訟 中日本高速に賠償命令(横浜地裁)
09、2016年度予算、暮らしの不安に備え(財務省)
10、消防団での活動 就活でアピール(消防庁)
11、復興住宅 入居しやすく(復興庁・国土交通省)
12、南海トラフ 超高層ビルの揺れ、東京3メートル大阪6メートル(内閣府)
13、福島原発事故時緊急事態宣言 把握16.5%(内閣府)
14、復興工事、ITで効率化(国土交通省)
15、自主避難者に家賃補助(福島県)
16、復興基金 2年後枯渇(兵庫県)
17、宿泊所からの転居支援(厚生労働省)

〔政治行政の動向概観〕
 国内では3月下旬に民主党と維新の党が民主党への吸収という形で合同し、「民進党」が誕生した。自民党と対決できる二大政党制を目指すとしている。来たる参議院議員選挙では、与野党がしっかりした政策ビジョンを提示して、日本の政治経済を立てなおしてほしい。
 海外に目を転じるとEU圏のベルギーで再び同時多発テロが起き、多くの犠牲者が出た。今回のテロは前回のパリにおける同時多発テロと犯行組織に共通性があり、その一味がブリュッセルに潜伏していることが明らかであった中での事件であり、改めてヨーロッパにおける治安体制の脆弱さが露呈された。EUは多くの国から構成されるにも関わらず域内の移動が自由であるという自己矛盾がある限り、きちっとした危機管理体制を確保することは至難の業である。欧州がテロを未然に防止するためには難民流入を含む国境管理を国家主義を前提として再度厳格化するか、あるいは今のような域内自由移動原則を死守するためにより強い政治統合(連邦制)を進めるしかないことを当事者は理解すべきである。
 東日本大震災から5年が過ぎ、まだ原子力発電所周辺をはじめ被災地は復興していないのに早くも震災の風化が進んでおり、マスコミが被災地の現状を伝える機会もすっかり減ってしまった。たまに伝える場合にも“明るい絆を育むイベント”や“前に向かって進む地場産業”“復興が進まない中で絶望する住民”などワンパターンのスポット的報道しか見受けられない。防災、とりわけ復興においては何が進展し、何が遅れているのか、その社会的原因や制度的隘路(あいろ)はどこにあるのかを体系的客観的に網羅する報道や情報収集であり、それはニュースとして面白味はなくても次世代の防災対策につなぐ重要な素材となるのである。防災士もそのような使命感に立脚して地味ながら着実な防災や復旧・復興の取り組みが求められる。

〔個別の動き〕
1、市民標的テロ対策強化(警察庁)
 パリの同時テロを受け、警察庁はテロ対策の強化を全国の警察に通達した。大規模商業施設など多数の市民が集まり警備が緩やかな「ソフトターゲット」の警戒を強めるよう指示。爆発物の原材料になる化学物質を取り扱う事業者との連携なども強め、官民一体でテロ対策を進めたい考えだ。
 警察庁は同時テロ発生直後、国内の情報収集や集客施設の警戒強化など同様の指示をした。今回は内容を追加し、改めて対策の徹底を図る。
 今回のテロでは、スタジアムや劇場、レストランが狙われた。こうしたソフトターゲットは施設管理者による自主警備が基本で、警察当局の警戒警備は手薄になりやすい。通達ではスタジアムやショッピングモールなどを例示し対策の強化を求めた。
 具体的には、各地の警察が①警備員らの巡回、防犯カメラの整備、手荷物検査などの防止策②避難誘導の訓練③不審者や不審物の通報――を施設管理者に働きかけるよう指示。警察の対策として、施設周辺で機動隊や制服姿の警察官、パトカーが巡回するなど「見せる警戒」を展開することを求めた。
 爆発物の原材料となる化学物質については、取り扱う店舗に管理の徹底を促すとともに、不審者による大量購入などがないかをチェックするなど警察との連携体制も強化する。テロ防止には「住民の協力が不可欠」として、公開訓練を含め積極的な広報活動も推進する。
 このほか、政府機関など重要施設の警戒警備や銃器の取り締まり、テロリストの入国を阻止する水際対策も徹底する。

2、洪水予報 スマホに発信(国土交通省)
 2015年9月の関東・東北豪雨を受け、国土交通省は住民の迅速な避難につなげるため、洪水予報をスマートフォン(スマホ)に発信する方針を固めた。全地球測位システム(GPS)を使い、利用者の位置を特定。近くの川の水位のほか、堤防から水があふれる「越水」の危険性をリアルタイムで伝える。
 関東・東北豪雨では、茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊して約40平方キロメートルが浸水、多数の孤立者が出た。越水によって堤防が削られたことが決壊の一因とされている。
 川の水位は国交省のホームページで確認できるが、地域を自ら選択して水位観測所を探す必要があった。GPSを活用することで、近くの観測所を自動検索し、川の水位情報をリアルタイムに取得できるようになる。
 国交省は水位が堤防の上部にどれだけ迫っているかを把握する技術開発も進める。「少なくとも200メートルごとに算出が可能」(担当者)といい、越水の切迫度を近くにいる利用者に通知することができる。さらに、浸水想定区域を地図上に示したハザードマップも利用者の位置に応じて提供。これによって浸水にかかる時間や水深などが分かるという。
 国交省はこのほか、財源不足などを理由にかさ上げ工事などの本格的な整備が遅れている堤防を対象に、堤防上部や底部をアスファルトやブロックで補強する応急工事も始める。用地買収が不要のため、低コストで短期間に実施できるという。

3、火山対策シェルター設置促進を(内閣府)
 内閣府は、火山の噴石から登山者や観光客が身を守るシェルターの設置手引をまとめた。気象庁が常時観測する全国50火山(追加予定の3火山を含む)で頻度が高い、突発的な小噴火の被害を減らすことを優先課題とし、自治体や観光業者に設置促進を呼び掛ける。防弾チョッキに使われる繊維で山小屋の屋根を補強し、噴石の貫通を防ぐといった技術指針も盛り込んだ。主に噴石の直撃によって58人が亡くなった昨年の御嶽山(長野、岐阜県)噴火災害を受け、作成を進めていた。
 手引によると、火口に近く、人が集まりやすい登山道や観光地で、身を隠す建物のない場所がシェルターの優先的な設置対象になる。
山小屋などがある場合も、最も飛散例が多いこぶし大(10センチ程度)の噴石に耐えられるよう屋根を補強する必要がある。

4、登山届義務づけ条例可決(長野県)
 長野県内の山を登る際に登山届の提出を義務づける登山安全条例が、県議会で可決した。2014年の御嶽山噴火災害で、届の提出が少なく行方不明者数の把握が難航したことなどを受け、義務化に踏み出した。登山での規制を最小限にする立場から出さなかった場合の罰則はない。
 県によると、里山を除く「広範囲な山岳」で提出を求める。施行は2016年7月1日。北アルプスと御嶽山を提出対象とした岐阜県の条例などがすでに制定されているが、山域を限定しないのは全国で初めて。

5、防災拠点の公共施設 耐震化率上昇88%(消防庁)
 消防庁は、災害時に避難所や災害対策本部といった防災拠点として使われる地方自治体の公共施設の耐震化率が、2015年3月末時点で88.3%になったと発表した。2014年3月末から2.9ポイント上昇した。全国19万212棟のうち、16万7,952棟で震度6強程度の地震でも倒壊しない耐震性が確保されていた。
 都道府県別で耐震化率が最も高かったのは東京の97.9%。静岡が95.6%、三重が94.8%と続いた。低い順は広島の73.4%、北海道の78.6%、愛媛79.1%だった。
 施設別では校舎・体育館の94.6%が最高で、次いで消防本部・消防署の86.1%、診療施設の85.2%だった。
 市役所や町村役場の庁舎は74.8%と低く、消防庁は「子供が使う学校などを優先している自治体が多い」と分析。ただ、市役所や町村役場は対策本部が置かれるなど災害時に司令塔の役割を担うため、耐震化を急ぐよう自治体に求めている。

6、危険空き家28軒に勧告(地方公共団体)
 2015年5月に全面施行された空き家対策特別措置法を活用し、全国の11市町村が倒壊の恐れがある危険な空き家28軒の所有者に撤去や修繕を行うよう勧告したことが、国土交通省と総務省の調査で分かった。
 同法は、人口減少や過疎化の進展で増加傾向にある空き家が放置され、防災や衛生面で周囲に悪影響を及ぼしている場合、市区町村が所有者に撤去や修繕を指導・助言できると規定。改善されなければ勧告、命令を経て、最終的には行政代執行で撤去できると定めた。
 その結果、177自治体が2,512軒の所有者に指導・助言を実施。このうち北海道長万部町、同沼田町、福島県南会津町、栃木県高根沢町、神奈川県横須賀市、新潟県関川村、長野県飯山市、京都市、長崎県平戸市、同東彼杵町、大分県別府市が勧告を行った。命令に至った自治体はなかった。
 これとは別に、長崎県新上五島町が2015年7月に約70万円をかけ、所有者不明の空き家を略式代執行で撤去していた。略式代執行による撤去は、横須賀市も10月26日に行った。

7、突風強さ推定 新基準(気象庁)
 気象庁は、竜巻など突風の強さを推定するための新たな基準を導入する。従来の基準は米国発祥で、住宅など風速推定のための指標が日本の状況にそぐわず、風速を細かく割り出すことが難しかった。新基準では木造家屋や軽自動車、墓石などを加え指標を約30種類に拡充。風速を秒速5メートル単位で推定する。同庁は「分析の精度を高め、突風の予測にもつなげたい」としている。
 2015年9月6日夜に千葉県で発生した竜巻や突風では、県内の92棟に全半壊や一部損壊の被害が生じた。現場に赴いた東京管区気象台の担当者は複数の民家の屋根瓦が飛ばされていたことを確認。千葉市では突風の強さを「F1」と推定した。
 F1は風速を推定する基準「藤田スケール」の6段階のうち弱い方から2番目で、風速は約10秒間平均で秒速33~49メートル。
 藤田スケールは故藤田哲也・米シカゴ大名誉教授が米国で考案。推定するために被害を調べる対象が「住家」「自動車」など9種類と少なく、風速を細かく推定できなかった。
 こうした課題を解消しようと、気象庁は2016年度から新たな評価基準を導入する。最新の風工学研究を基に、風速推定に使う対象を約30種類に広げる。風速を3秒平均で5メートル単位で推定できるようになり、精度が大幅に向上する見込みだ。
 藤田スケールは米国発祥のため、日本の建物に対応していなかった。例えば沖縄は台風に備えたコンクリート製の住宅が多く、豪雪地帯では頑丈な屋根が多いなど、日本は地域によって家の特徴が異なるが、藤田スケールはいずれも「住家」として扱い、家の強度などが反映されていなかった。
 新基準では、住家だけでも「木造」「鉄筋コンクリート」「プレハブ」などに分け、軽自動車や墓石など日本特有の指標も用いる。電柱、ゴルフ場のネット、自動販売機なども加える。

8、笹子トンネル訴訟 中日本高速に賠償命令(横浜地裁)
 2012年12月の中央自動車道笹子トンネル事故で死亡した9人のうち5人の遺族12人が、中日本高速道路(名古屋市)と点検業務を担当した子会社に計約9億1,300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は22日、総額4億4千万円余りの賠償を命じた。裁判長は「目視だけの点検を選択した過失があり、天井板の崩落を予測し回避することは可能だった」と認定した。
 笹子トンネル(山梨県)は1977年に供用開始。判決は天井板のつり金具を固定するトンネル最頂部のアンカーボルトが、経年劣化で天井板の重さを支えられなくなり脱落したのが事故原因と指摘。「2012年9月の点検で双眼鏡による目視だけという方法を採用した過失があった。適切な点検をして抜本的対策を開始すれば事故は避けられた」と判断した。
 事故は2012年12月2日午前8時3分ごろ、笹子トンネルの天井板が約140メートルにわたり崩落。通行中の車3台が下敷きになり、男女9人が死亡、女性2人が重軽傷を負った。

9、2016年度予算、暮らしの不安に備え(財務省)
 2016年度の当初予算には、人々の暮らしを脅かす災害などに備える施策が盛り込まれた。今年列島各地で火山噴火が相次いだことから、新たな監視システムの開発に乗り出すほか、研究者など人材育成も強化する。
 2015年は5月に鹿児島県の口永良部島で爆発的な噴火が発生し、気象庁が噴火警戒レベルを導入後初めて5(避難)に引き上げた。その後、6月に浅間山(長野・群馬両県)と箱根山(神奈川県)、9月に阿蘇山(熊本県)で噴火が相次いだ。
 監視強化のため、気象庁は火山対策として4億2千万円を盛り込んだ。新たな監視システムの開発費が中心で、観測データや過去の噴火活動をもとに、地下のマグマの動きをコンピューターで可視化する。担当者は「活動を評価する時間を短くし、レベルの判定を早めたい」と強調する。
 火山を担当する職員を現在の160人から280人に大幅に増やし、現地に派遣して火山の状況を詳しく調べる「機動観測班」などを充実させる。
 火山防災には人材育成も欠かせない。文部科学省は研究者の育成のため、新規に7億円を計上した。観測だけでなく、物理学の専門家らと連携して噴火確率を算出するなど、予測や地域での安全対策につなげられる研究者を育てる。
 水害対策では、2015年9月の関東・東北豪雨などを教訓に、国土交通省が減災対策を打ち出した。氾濫した場合の影響が大きい70水系を対象に、決壊時にその場から避難する必要がある「危険区域」を設定する。堤防の整備が遅れている河川ではアスファルトで補強するなどし、水があふれてもすぐに決壊しないようにする。

10、消防団での活動 就活でアピール(消防庁)
 消防審議会(室崎益輝会長)は、大学生らの消防団加入を促すため、学生が一定期間団員として活動すれば証明書が受け取れ、就職活動でアピールできる仕組みの普及を求める答申をまとめた。
 消防庁は2014年、全国の自治体に導入を求めたが、一部にとどまっている。答申を受け、あらためて働き掛け、企業にも選考時の資料として活用するよう重ねて要請することを検討する。
 証明書は、消防団員として一定期間活動した大学生や大学院生、専門学校生らを対象に、団長が推薦し、自治体が審査、発行する。

11、復興住宅 入居しやすく(復興庁・国土交通省)
 東日本大震災や東京電力福島第1原子力発電所事故の被災者が仮設住宅などから移り住む災害公営住宅(復興住宅)の入居条件を緩和する動きが広がり始めた。これまでは住民税の滞納や連帯保証人がいない場合は入居を認めない自治体が多かったが、条例改正などで被災者の住宅確保を優先するケースが増えている。復興庁も同様の対策を進めるよう各自治体に通知を出した。
 岩手、宮城、福島の被災3県の自治体などが建設している復興住宅は、計画されている約3万戸のうち、2015年10月末までに約1万3,000戸が完成している。
 自宅が津波で流失した被災者向けの復興住宅410戸の整備が終わった福島県相馬市では、市議会が、「市営住宅の設置及び管理に関する条例」を改正した。
 市営住宅の入居希望者に求める条件のうち、①住民税を滞納していない②連帯保証人を確保する――の2つについて、復興住宅に限り免除した。
 震災で仕事や財産を失ったり、親族を亡くしたりするなどして、復興住宅への入居条件をクリアできない被災者も少なくない。このため、仮設住宅の解消を急ぐ各自治体では入居条件を緩和し、復興住宅への転居を後押ししている。原発事故の避難者向けの復興住宅約4,400戸を整備する計画の福島県も2015年6月、入居希望者に対し、近隣に住む連帯保証人の確保を求める条例の解釈を変更し、入居条件を緩和した。
 入居条件緩和の動きを広げようと、復興庁と国土交通省は、岩手、宮城、福島の3県で復興住宅を運営する各自治体に、連帯保証人を不要とするよう通知を出している。

12、南海トラフ 超高層ビルの揺れ、東京3メートル大阪6メートル(内閣府)
 内閣府は、南海トラフ巨大地震で発生する「長周期地震動」で、東京、名古屋、大阪の三大都市圏の超高層ビルがどれくらい横揺れするかを初めて推計した結果を公表した。東京23区で最大約3メートルの揺れが生じ、大阪市湾岸部では最大約6メートルに達する。
 建物の倒壊には至らないが、揺れは5~7分間続く。火災やエレベーターの閉じ込めなどの被害も懸念される。
 今回の推計を受け、国土交通省は、高さ60メートルを超えるビルやマンションを三大都市圏などで新たに建設する場合、長周期地震動の揺れを考慮した設計を義務づけることを検討している。
 長周期地震動は、1往復するのに約2秒以上かかる周期の長い揺れで、遠くまで伝わる。東日本大震災では、東京都新宿区の超高層ビルが1メートル以上揺れ、震源から約770キロ離れた大阪府の咲洲庁舎(256メートル)でも約2.7メートルの揺れを記録、防火扉などが破損した。
今回、紀伊半島沖を震源とするマグニチュード(M)9クラスの巨大地震を想定し、長周期地震動の揺れ幅や継続時間を算出した。
 東京23区や名古屋市中村区、大阪市の北区や阿倍野区などでは、高さ200~300メートル(50階建て以上)のビル最上階で最大2~3メートルの揺れが起きる。千葉、愛知、三重、滋賀、大阪、兵庫、奈良の7府県の一部では5分以上続く。ビル内では固定していない家具類などが倒れ、歩いて移動するのが難しくなる。
 現在立っている超高層ビルの安全性は「倒壊までには強度に一定の余裕がある」との見解を示した上で、ビルの管理者に対し必要に応じて制震装置を設けることを求めた。
一方、国土交通省は、南海トラフ巨大地震に伴う長周期地震動に関する内閣府の推計を受け、高層のマンションで揺れを抑える改修が必要となった場合、費用の一部を補助すると発表した。超高層のビルやマンションを新築する際は、三大都市圏の沿岸部などで2~3メートルの横揺れに見舞われるとした推計を、設計に反映させるよう義務づける。
 これまでタワーマンションや超高層ビルで設計上想定していた揺れの大きさを現行の最大2倍に、約1分としていた揺れの継続時間を約8分に厳しくする。対象地域は愛知、静岡など11都府県で、主に高さ60メートル超、おおむね20階建て以上の建物が該当する。
 マンションで改修が必要となった場合、詳細な診断や改修設計費の30%強、工事費の10%強を補助する。
新築時は今回の推計を反映させて構造計算をするよう、2017年度をめどに義務づける。

13、福島原発事故時緊急事態宣言 把握16.5%(内閣府)
 東京電力福島第1原発事故が起きた2011年3月11日に国が出した原子力緊急事態宣言や避難指示を翌日までに知った住民は20%未満にとどまっていたことが、内閣府が公表した避難実態調査で分かった。事故発生当初は情報がうまく伝わらず、指示通りに避難するのが難しい実態がデータで裏づけられた。
 この調査は、内閣府が今後の広域避難対策の検討にいかす目的で、法律に基づく統計調査として実施。1万9,535人(32.9%)から有効回答を得た。国の避難実態調査としては最大規模。
 国は2011年3月11日午後7時3分に原子力緊急事態宣言を、同9時23分に半径3キロ圏の避難指示と10キロ圏の屋内退避指示を出した。だが、翌12日までに知った住民はそれぞれ16.5%、15.6%、18.8%にとどまった。10キロ圏の浪江町の住民で緊急事態宣言を知ったのは9.7%だった。地震や津波、停電などで情報入手手段が限られていたためとみられるが、多くの住民が原発の危険な状態を知らなかったことになる。
 国は、避難指示の対象範囲を順次拡大し、3月15日には20~30キロ圏を対象に屋内退避指示を出した。だが、屋内退避指示を4月末までに知った住民は全体の63.2%。うち実際に屋内退避したのは59.9%だった。福島の事故を経て見直された各地の避難計画では、放射線量が一定水準に達するまで30キロ圏の多くの住民は屋内退避するよう求められているが、実効性をどう保つかが問われそうだ。
 調査時点で事故前と同じ仕事をしている人は45.2%。15.4%が転職し、32.6%は職がない状態だった。賠償金をのぞく収入が事故前から減った人は37.5%、収入がなくなったのは18.2%だった。各地の避難計画では避難が長期化した場合の具体的な対策は盛り込まれていない。

14、復興工事、ITで効率化(国土交通省)
 東日本大震災の復興事業で人手不足が続く中、国土交通省は、工事の効率化と生産性向上を図るため、小型無人機「ドローン」などのIT(情報技術)を全面的に導入する方針を明らかにした。国と岩手、宮城、福島各県や建設業者などによる連絡会議を立ち上げ、来年度の早い時期から現場での運用を始める。
 同省は、国が発注する全国の土木工事でITを導入する方針だが、東北で先進的に進める。ドローンによる3次元測量に始まり、設計、重機の自動制御、検査に至るまで全工程での活用を目指す。国直轄のみならず、県や市町村発注の復興工事も対象とする。
 一方、被災3県での重機や人手不足に伴う費用増大に関し、同省は工事の予定価格に実態を反映させる「復興係数」の適用を来年度も継続する方針を明らかにした。

15、自主避難者に家賃補助(福島県)
 福島県が東京電力福島第1原子力発電所事故の避難指示区域外から避難する「自主避難者」への住宅無償提供を2016年度末で打ち切る方針をめぐり、同県は2017年度以降も避難を続ける低所得世帯や母子避難世帯に、家賃月6万円を目安に1年目は2分の1(月最大3万円)、2年目は3分の1(同2万円)を補助すると発表した。
 住宅無償提供の打ち切りに伴い、住宅の契約者が自治体から個人に切り替わる際に発生する礼金や手数料の負担を軽くするため、別に10万円を補助する。県によると、対象は約2千世帯、予算額は全体で20億円前後となる見込み。
 補助の対象に該当しない自主避難者には、福島県の県営住宅や東日本の一部の雇用促進住宅の空き室に優先的に入居できるよう調整する。
 県は2015年6月、自主避難者に対し、災害救助法に基づく住宅の無償提供を2016年度末で打ち切ると発表した。帰還する世帯には引っ越し費用の補助を今月から始めている。
 総務省が2015年10月に実施した国勢調査の速報値を発表した。これによると、福島県の人口は2010年の前回調査に比べ11万5,458人(5.7%)減の191万3,606人で、戦後最少となり、減少幅も過去最大だった。
 原発事故で全域が避難区域となっている浪江、双葉、大熊、富岡の4町の人口はゼロだった。ほかに全域が避難区域の飯舘村は特別養護老人ホームに入所する41人、葛尾村は避難解除に向け村内で長期宿泊する18人だった。2015年9月5日に避難指示が解除された楢葉町は976人で、前回の調査に比べ6,724人(87.3%)減少した。
 一方、原発事故の避難者のほか、廃炉や除染の作業員を受け入れている自治体は人口が増加。いわき市では前回より2.1%、相馬市で2.0%それぞれ増えた。

16、復興基金 2年後枯渇(兵庫県)
 阪神・淡路大震災の被災者の生活再建や市街地の再生を目的に、兵庫県と神戸市が設けた「阪神・淡路大震災復興基金」が、2年後の2017年度に底をつく見通しであることが県への取材でわかった。阪神・淡路大震災復興基金は、兵庫県と神戸市から無利子で借り入れた運用財産8,800億円の運用益などを住宅再建の利子補給や企業支援に充てる手法で、新潟県中越地震などにも受け継がれた。2004年度までに大半の事業を終え2005年度に借入金を県と市に償還したが、高齢者の生活支援や市街地再生などの事業は継続している。県は、復興住宅で暮らす高齢者の見守り活動など、基金事業の一部は県の一般施策として存続させる方針を示した。
 県によると、2014年度末の基金残高は14億円。2015年度は災害復興公営住宅での高齢者の見守り活動や自主防災組織の活性化支援などに7億円を支出。2015年度末の残高は県からの交付金4億円(今年度で終了)を含めても11億円に減少する見込みで、事業規模を縮小しても2017年度には底をつくという。

17、宿泊所からの転居支援(厚生労働省)
 厚生労働省は、簡易宿泊所などに住む生活保護受給者が、安心して暮らせる民間アパートなどへ転居できるよう支援を強化する。受給者を受け入れる良質の住宅確保や、転居後の見守りなどに取り組む自治体への補助を2016年度から拡充する。
 川崎市で2015年5月、11人が死亡した簡易宿泊所火災では、宿泊者の大半が生活保護を受給していた。低収入の高齢者らの安定した住まい確保が課題となっている。
 2014年度は福岡市など8自治体、2015年度は新たに京都市など9自治体が事業を始めており、さらに多くの自治体に実施を呼び掛ける。2014年度は約1,200世帯の転居につながった。
 支援に当たる社会福祉士らは、受給者受け入れに協力的な不動産業者を探し、家賃が安く安心して住める物件をリストアップ。現地で住環境を確認するほか、契約時も同行し、家賃を保護費から直接振り込む手続きを取るよう促す。
 また介護や障害福祉サービスを利用している受給者には、引っ越しても引き続き利用できるよう手助けするなどし、転居後の生活も見守る。
 生活保護を受けている世帯は2015年9月時点で過去最多の約162万に上る。このうち65歳以上の世帯は初めて80万世帯を超え、全体の約49%。多くが単身者だ。
 高齢の受給者がアパートを借りようとしても、家賃滞納や孤独死を懸念して断られるケースもある。行き場がなく生活環境の悪い簡易宿泊所などに身を寄せる人も多い。

[防災短信]
01、公園をかさ上げ
  ~葛飾区、水害時の避難場所に 2024年度完成目指す~ 2015年12月18日付

  日本経済新聞
02、電気暖房機器 火災で死者32人
  ~過去5年、NITE集計~ 2015年11月27日付 日本経済新聞
03、笹子トンネル事故 きょう3年
  ~老朽化対策 険しい道~ 2015年12月02日付 日本経済新聞
04、現実的な進学先、「大卒以上」被災3県低く
  ~公益社団法人調査 収入減影響~ 2015年12月02日付 日本経済新聞(夕刊)
05、災害救助ロボ 頼もしい
  ~NEDO 東京都内の国際展で披露~ 2015年12月03日付 日本経済新聞
06、556橋で溶接不良
  ~落下防止装置、12業者が“手抜き” 国土交通省調査~ 2015年12月05日付

  日本経済新聞
07、「津波の日」11月5日に設定
  ~国連総会採択、日本・チリ主導~ 2015年12月25日付 日本経済新聞
08、原発指定廃棄物処分場 福島県受入れ決定
  ~全国初、他は難航~ 2015年12月04日付 日本経済新聞
09、イオンが災害時システム
  ~花王など50社と構築・立ち上げ~ 2015年12月05日付 日本経済新聞
10、防災対策庁舎県有化
  ~南三陸町 震災遺構化~ 2015年12月20日付 読売新聞
11、EV(電気自動車)災害時の電源に
  ~練馬区 所有者に登録要請~ 2015年12月17日付 日本経済新聞
12、水源林クマ被害拡大
  ~東京都、2,000本に傷、腐食のおそれ~ 2015年12月18日付 日本経済新聞
13、「浸水困る」950人転居届
  ~常総市、鬼怒川堤防決壊から3か月~ 2015年12月10日付 日本経済新聞
14、杭打ち施工指針を策定
  ~元請立会いルール化 国土交通省~ 2015年12月21日付 日本経済新聞
15、2015年世界の気温最高更新
  ~2年連続、日本は過去4番目 気象庁~ 2015年12月22日付 日本経済新聞
16、口永良部島の避難解除
  ~7か月ぶり 住民帰島へ~ 2015年12月27日付 日本経済新聞(夕刊)
17、水道管の耐震率なお36%止まり
  ~2014年末 厚生労働省調べ~ 2015年12月25日付 日本経済新聞
18、津波被災の大川小 校舎保存に2~6億円
  ~石巻市が試算、全部保存へ~ 2015年12月30日付 日本経済新聞
19、福島県 震災関連死2,000人に
  ~原発避難の長期化影響~ 2015年12月29日付 日本経済新聞
20、損害保険金支払い11%減
  ~2015年推計 大型ハリケーンなど比較的少なく~ 215年12月28日付 日本経済新聞

 

 

 

【参考文献】

1、 2015年12月04日付 日本経済新聞
2、 2015年12月01日付 日本経済新聞
3、 2015年12月01日付 日本経済新聞(夕刊)
4、 2015年12月12日付 日本経済新聞
5、 2015年12月05日付 日本経済新聞(夕刊)
6、 2015年12月06日付 日本経済新聞
7、 2015年12月02日付 日本経済新聞(夕刊)
8、 2015年12月23日付 日本経済新聞
9、 2015年12月24日付 日本経済新聞
10、 2015年12月06日付 日本経済新聞(夕刊)
11、 2015年12月03日付 日本経済新聞
12、

2015年12月18日

及び19日付

日本経済新聞
13、 2015年12月19日付 読売新聞
14、 2015年12月20日付 日本経済新聞
15、 2015年12月25日付 日本経済新聞(夕刊)
16、 2015年12月30日付 朝日新聞
17、 2015年12月30日付 日本経済新聞

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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