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防災評論 第76号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第76号)【平成28年11月号】

 

【目次】
〔政治行政の動向概観〕
〔個別の動き〕
01、全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)
02、パソコンバッテリーからの火災が多発(消防庁)
03、在宅酸素療法に「火の用心」(厚生労働省)
04、避難、施設任せに限界(内閣府)
05、孤立集落残る人々 岩手で救出ヘリ拒否続出(岩手県)
06、福祉避難所 震災前の5倍(東北3県)
07、大震法 抜本見直し 「可能性」段階の減災 議論(中央防災会議)
08、山岳遭難最多 7~8月660件(警察庁)
09、元の場所で街再建 遅れ(復興庁)
10、民泊 2泊3日からOK(門真市など特区)
11、大地震 水道復旧早く(東京都)
12、雨量予報で土砂崩れ予測(阪大)
13、近海の観測強化(政府地震調査本部)
14、大地震など災害時 道路に「不安」50%超

〔政治行政の動向概観〕
 11月の米大統領選挙では大方の予想を裏切って、共和党のD.トランプが本命と見られていた民主党のH.クリントンを破って当選した。連邦制を採る米国では州ごとの選挙人を総取りする方法で代議員を選出する、いわゆる間接選挙が建国以来踏襲されており、有権者の有効投票数ではクリントンが大きく勝っているところから、その勝利を疑問視する意見もある。しかし、現行制度のもと戦われた選挙戦の結果は正当といえる。トランプは民主党が絶対勝利すると言われてきたカリフォルニア州などの大都会を抱える州をほとんど無視して、勝ち目のある(逆に言えば勝負どころの)オハイオやフロリダ等にその選挙戦略の重点を置いていたからだ。
 このように戦略の重要性は別に政治だけの話ではない。防災でも戦略をどう設定するかは極めて大切で、見誤った戦略は不適当な防災対策を強いることとなり、結果として税金のムダや安全性の低下につながりかねない。例えば今政府が進めようとしている南海トラフ地震への対応についても戦略の誤りがないよう細心の検討が必要であろう。1つは東海地震の予知と発生を目的に制定された「大震法」の見直し問題であり、さらにはM9.0級の巨大地震発生を当然視した対策の推進である。予知を前提とした大震法は、まず「いつ起こっても不思議ではない」とされた制定当時から半世紀を経過し、その間予知能力そのものにも疑問符がつけられる状況下、法律の適用範囲を拡大して南海トラフ全域に広げることには大いに慎重にならなければならず、地震災害の予防と発生後対策に主軸を置く対策へと転換しなければならないのではないのか、ということが指摘される。さらに、11月5日の国連津波防災デー制定1年を契機にイベントが行われた高地県黒潮町では、襲来する南海トラフ地震による沖波で30メートルを超える破壊波をかぶると当たり前のようにいわれるが、想定外を視野に入れることは大事だが、一方で有史上M9.0以上の大地震が一度も起きていないのにそれを前提とした戦略を練ること自体に問題はないのか、かつて寺田寅彦博士は「災害は忘れたことにやってくる。災害は正しく恐れるもの」との全書を残したが、防災士にとって地域や自分を守る上で尊い指摘と受け止め、正しい戦略を練る柱としなければならないのではないだろうか。

〔個別の動き〕
1、全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)
 内閣府はこのほど、火山の避難計画を周辺自治体と協力し、検討していく対象として、雲仙岳(長崎県)など全国17の火山を選定した。市街地に近い火山や離島など4タイプに分けて、課題を検討。計画をつくるノウハウが乏しい自治体の取り組みを国が支援し、来年3月までに計画案の策定を終えることにしている。なお、関係する自治体は12道県・51市町村で、計画策定に国の支援を求め声が上がっていた。
 対象12火山のなかで、八甲田山(青森県)など5火山は、火口付近まで登山者や観光客が近づけるため、遊歩道閉鎖の判断基準、突発的な噴火時の緊急避難所や避難路を検討する。また、市街地に近い岩手山(岩手県)など4火山は、避難する住民が多くなる場合に備え、火砕流や融雪型火山泥流への対応をまとめることにしている。
 さらに、複数の火山や噴火シナリオが想定されるアトサヌプリ(北海道)など5火山は、立ち入り規制の範囲などを考える。そして、薩摩硫黄島など鹿児島県の離島の3火山は港の避難施設や島外への避難手段を検討することにしている。
 政府は2014年の御嶽山(長野・岐阜県)の噴火災害を教訓に、火山対策を大幅に見直し、今年2月には活動火山対策特別措置法に基づく警戒地域に、全国49火山周辺の23都道県と140市町村を初指定、自治体の避難計画の作成を義務づけた。
 しかし、噴火が数百年間観測されていない火山もあり、実際の災害経験が乏しいことから、一部自治体は避難対策のノウハウや専門職員が不足。計画を策定済みなのは延べ155市町村のうち延べ22自治体にとどまっている。

2、パソコンバッテリーからの火災が多発(消防庁)
 消防庁では、消費者の安全・安心を確保するため、火災を起こす危険な製品の流通防止を目的として、その発生件数や製品の不具合により発生したと判断される火災の製品情報を毎年まとめているが、2015年1月~12月の調査結果がこのほどまとまり、発表した。
 それによると、件数が多かったのは上位から、①ノートパソコン用バッテリー=13件、②トーチバーナー=4件、リチウムイオン電池内蔵充電器(スマートフォン用)=4件、④電子レンジ=2件、電気ストーブ=2件、電気こんろ=2件などとなっている。
 なお、製品の不具合で発生した火災による死者はなかった。

3、在宅酸素療法に「火の用心」(厚生労働省)
 肺の病気のために酸素吸入をする在宅酸素療法が原因とみられる火災が、この5年間に計24件あり、患者22人が死亡したことが分かった。吸入中の喫煙が原因となるケースも多く、厚生労働省では近くで火を使わないように呼びかけている。
 在宅酸素療法では主に、酸素濃縮装置から鼻につないだチューブを通して酸素を吸入する。長年の喫煙が原因で肺が酸素を取り込みにくくなる慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺結核の後遺症の患者ら約16万人が、この療法を受けている。
 同協会のまとめでは、2012~2016年に患者宅で起きた火災は2014年の7件を最多に計24件。集計を始めた2003年以降の61件を対象にした分析では、原因の43%は喫煙。口にくわえたたばこが鼻から漏れた酸素の影響で燃え上がったり、灰皿上のたばこの火が、床に置いたチューブから漏れた酸素で広がったりするケースがあるという。
 チューブには、空気の4倍以上の酸素が通っており、たばこの他、ストーブやろうそく、コンロを使う際にも十分な注意が必要だという。
 防災士にとっても身近な問題として理解しておきたい。

4、避難、施設任せに限界(内閣府)
 台風10号による大雨災害で、岩手県岩泉町の高齢者施設に暮らす9人が犠牲になった。自力での避難が難しい災害弱者への対応は施設任せが実情で、特に人手が少ない夜間は避難が難しくなる。専門家は「行政や地域と連携して避難対応すべきだ」と指摘している。
 岩手県などによると、9人の遺体が見つかったグループホーム「楽ん楽ん(らんらん)」は昨年8月時点で定員9人、入居者の平均年齢は83.2歳。木造平屋の建物に認知症の高齢者らが共同生活するのが特徴で、職員は10人。県内陸部にある同町は台風接近を受けて30日午前9時に町内全域に避難準備情報を発令。午後2時には一部地域に避難勧告も出したが、施設周辺は勧告の範囲外だった。
 災害対策基本法は自力での避難が難しい高齢者や障害者ら「避難行動要支援者」について市町村が名簿を作り、避難支援策を具体的に定めるよう求めている。ただ一般世帯で暮らす高齢者らが対象で、施設入所者は含まない。「施設が責任を持って避難誘導するのが前提」(内閣府)のためだ。
 介護保険法に基づく施設基準では、施設側に防災計画作りや避難訓練などを求めているが、自治体への報告義務はない。施設で暮らす災害弱者への対応は施設側に委ねられている。
 特に夜間は限られた人員しかいない施設も多い。非常時には地域住民に協力してもらうなどの対策をとっている施設もあるが、今回のように豪雨の中、認知症を抱えた高齢者を少ない人員で別の場所に避難させるのは容易ではない。
 防災士にとってもこれら制度のあり方を注視していくとともに、実践活動も怠れない。

5、孤立集落残る人々 岩手で救出ヘリ拒否続出(岩手県)
 台風10号で大きな被害を受けた岩手県岩泉町などが、ヘリコプターで行った孤立集落の住民救出作戦。台風12号の接近に伴って避難指示が出された4日から始まったが、5日は前日に意向を示した113人のうち、実際に避難したのは3人だけ。一度避難したが、家畜などを世話するために自宅にヘリで戻った人も3人いたという。町の担当者は「今は問題がなくても更なる被害の可能性もあるので、避難をお願いしたい」と話し、意向があればヘリを飛ばして対応する構えだ。
 台風12号の接近を受け、県や町はヘリによる避難計画を立案。町は意向調査を実施し、4日朝には避難指示を出して住民が移動する環境を整えた。約210人が希望し、約150人を陸上自衛隊のヘリで町中心部のホテルなどに避難させた。5日も作戦を続行したが、前日に避難を希望した113人のうち実際にヘリに乗ったのは3人だけだった。
 住民が心変わりした理由について、町は、高齢者を中心に地元への愛着から離れられない人が多く、ヘリに乗る前に断る人が相次いだとした。電気や水道は使えないが、食料の蓄えはあり、沢水やプロパンガスも利用できるため、一定期間は困らないという。道路が寸断され、集落を出たら簡単には戻れない状態で、町は「一度出たら戻れないと考えている人が少なくない」ともいう。天候悪化が予想されていたが、実際には青空が広がったことも一因となった。
 現地対応した職員によると、住民は「床下浸水はしたが、ここから逃げるより少しでも家の片づけをしたい」「孤立といっても物資の輸送があり、私たちは食べるものがあれば大丈夫」「田舎だから暗くなれば寝るだけだ」などと話したという。
 県は「避難指示を出しても自治体側に強制力はない。住民の判断ということだ」と難しさを打ち明けた。再び住民から要請があればヘリを飛ばすことも検討するが、「急病時や2次災害が心配。説得を続けるしかない」と話している。

6、福祉避難所 震災前の5倍(東北3県)
 東日本大震災で甚大な被害が出た岩手、宮城、福島3県で、災害時に高齢者や障害者らを受け入れる福祉避難所の指定が震災前と比べ約5倍に増えたことが分かった。災害弱者への対応が不十分だった反省から自治体が積極的に指定を進めたのが理由。一方、多くは民間施設で「人手不足の中で十分に対応できるのか」と不安の声が出ている。
 3県に震災前と最新の2015年度の指定数を尋ねた。岩手県は29か所から269か所へと指定が進み、宮城県は177か所だったのが582か所になった。震災前に37か所だった福島県は359か所に増え、3県を合わせると4.98倍になる。
 指定が広がった背景について、福島県は「震災を機に各市町村が災害弱者対策の重要性を実感した」、岩手県は「震災時は、後からの指定も認められたが、避難を円滑に進めるためには事前指定が大切と痛感した」とした。
 2013年の災害対策基本法改正も指定拡大につながったとみられる。法改正で市町村に指定が義務づけられた。

7、大震法 抜本見直し 「可能性」段階の減災 議論(中央防災会議)
 政府の中央防災会議は、東海地震に備えた大規模地震対策特別措置法(大震法)の約40年ぶりの抜本見直しに向けた議論を始めた。発生が確実とはいえない段階での住民の事前避難や鉄道の運行停止のあり方など、減災対策を検討する。「確実な予知はあり得ない」との前提に立ち、東南海、南海地震と連動した南海トラフ巨大地震への対応も含め、年度内に報告書をまとめる。
 大震法では東海地震が予測される場合は警戒宣言を出し、対象地域で鉄道の運行停止などが可能になる。今後、発生確実といえないものの「可能性が高まっている」とみられる場合、津波が数分で到達する沿岸部の住民や高齢者などの避難の必要性について検討する。
 大規模地震については2013年に中央防災会議の調査部会が「現在の科学的知見からは確度の高い地震の予測は難しい」とする報告をまとめた。今回はこの前提に基づき、対策の対象範囲を東海地震だけでなく南海トラフ全域に広げる方向だ。
 会合では大震法は地震を確実に予測できるといった誤解を招く恐れがあるため、「撤廃も考える必要がある」という指摘もあった。今後、調査部会を設けて大地震が発生する可能性があるときに確率を示せるかどうかを検討。その結果を踏まえ、住民への伝え方を含めて年度内に大震法の見直しに向けた報告書をまとめる。
 大震法は駿河湾を震源とする東海地震を想定して1978年に制定された。その後に1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災など想定外の大地震が相次いで発生。東海地震についても、静岡から九州沖まで震源域が広がる南海トラフ地震と連動する恐れがあり、東海地震を想定した大震法の見直しの必要性が求められていた。

8、山岳遭難最多 7~8月660件(警察庁)
 今年7~8月に全国で発生した山岳遭難は660件(前年同期比13件増)で、統計を取り始めた1968年以降で最多となったことが、警察庁のまとめで分かった。5年連続で過去最多を更新。遭難者は29人減の753人で、死者・行方不明者は17人減の48人だった。
 遭難者を年代別に見ると、60代が197人、70代が130人などと中高年の遭難が目立った。警察庁の担当者は「原因の多くは経験や体力などの不足。装備に気を配り、余裕を持った計画を立ててほしい」と呼びかけている。
 7~8月の海や川での水難事故は614件で37件増えた。水難者は735人で62人の増加。死者・行方不明者は37人増の304人だった。

9、元の場所で街再建 遅れ(復興庁)
 東日本大震災の被災地で、ふるさとの再建が縮小されつつある。震災から5年6か月。復興の遅れが人口減を招いている。
 復興庁によると、元の場所で街を再建する「土地区画整理事業」による宅地造成は岩手、宮城、福島3県(6月時点)で現計画の18%(1,836戸)しか終わっていない。一方、高台移転の宅地造成は78%(6,896戸)が完了した。
 1995年の阪神・淡路大震災でも神戸市など20地区で土地区画整理事業が行われ、最長16年がかかった。大槌町には神戸の区画整理を手がけた元神戸市職員も派遣されたが、復興工事の集中で人手が不足し、完成予定は1年以上延びて2018年3月になっている。
 この間、市街地にあった県立病院や小学校、高齢者施設は高台などに移転。国交省まちづくり推進課は「国や県の方針で、津波で被災した市街地に公共施設が再建されなかったことも街の魅力を下げたのでは」と指摘する。
 宮城県名取市の閖上地区は、地元出身の当時の佐々木一十郎市長の強い思い入れもあり、区画整理による盛り土で再建をめざす。
 しかし計画をまとめるのに時間がかかり、着工は2014年。当初3,000人としていた計画人口は2,400人に減少。その後も「工事終了まで待てない」という人が絶えず、昨年に2,100人に改めた。工事完了は2018年3月の予定だ。
 人口流出による街の衰退を防ごうと、市は隣接する区域に水産加工団地を整備した。すでに、県外を含む全9社の進出が決定。雇用の場をつくって、移住しやすい環境を整える。
 復興庁によると、被災3県の県外避難者は8月現在で4万7,999人にのぼる。

10、民泊 2泊3日からOK(門真市など特区)
 政府の国家戦略特区諮問会議は、マンションなどの空き部屋に旅行客を泊める「民泊」の宿泊日数を、現在の最低6泊7日から、2泊3日に緩和することを決めた。短めの滞在でも民泊を利用しやすくして、訪日客増加で目立っているホテル不足の解消につなげる考えだ。近く政令を改正する。
 対象は特区の指定地域のうち、民泊事業を認めている東京都大田区や大阪府門真市など計35市区町村。これまでは感染症の予防、拡大防止を理由に最低6泊7日の宿泊が義務づけられていた。自治体から利用の壁になっていると緩和を求める声が出ていた。
 宿泊日数の緩和に合わせて、近隣住民との調整と宿泊者名簿の設置は民泊事業者の義務であることを政令で明確にする。
 安倍政権は民泊を成長戦略の1つに位置づけている。内閣府によると特区の民泊施設は現在、27施設(63部屋)で、利用者は208人(うち外国人104人)と伸び悩んでいる。最低宿泊日数の制限の緩和で、民泊の普及を加速させる狙いがある。

11、大地震 水道復旧早く(東京都)
 東京都は首都直下地震に備え、政府機関やインフラ企業など首都機能を支える拠点の水道復旧を大幅に早める体制を築く。2018年春をメドに137施設に水圧測定機器を設置し、被災時に職員を優先的に派遣することで、復旧にかかる時間を短縮する。都の試算によると、対象施設の半数が被災しても、従来より4割短い40時間で復旧できるようになる。
 救急病院などで治療する患者の優先順位を判定する「トリアージ」と呼ばれる手法を水道の復旧作業に導入する。
 対象となるのは首相官邸や霞が関の中央省庁、都庁などの行政機関のほか、国会議事堂、米国など主要国の大使館、救命救急の拠点となる病院など。民間企業では電力・ガス・通信などインフラ企業の本社や銀行本店などが含まれ、全体で137施設となる。
 これらの施設に都が民間企業と共同開発した水圧測定機器を設置する。災害に強いPHS回線を通じて水圧のデータを把握し、普段より大幅に水圧が下がった施設を特定する。データは都水道局の和泉庁舎(杉並区)で収集し、被災施設へ復旧要員を派遣する。
 60人からなる水道緊急隊を同庁舎に置く。24時間体制で12人が常駐し、出動の際は3人1組で水圧が下がった施設へ急行する。緊急隊は施設周辺で漏水した箇所を特定。漏水した水道管の水を止め、対象施設への給水を確保する。
 すでに都立墨東病院(墨田区)、東京臨海病院(江戸川区)、順天堂東京江東高齢者医療センター(江東区)の3施設に水圧測定機器を設置した。2017年度末までに137施設に順次取り付ける。
 2018年度以降は東京・新宿・渋谷・池袋など1日の乗車人数が20万人を超える鉄道の主要駅や、災害時に拠点となる病院、避難所になる中学校など計約950施設に対象を広げる。事業費は計10億円程度を見込む。
 都は23区内にある115の首都中枢機関を対象に、水圧測定機器を使った新たな仕組みと、従来の方法による復旧時間の差を試算した。半数の58施設が被災した場合、回復までにかかる時間は40時間と従来より4割短くなる。約3分の1の40施設なら半分の28時間、1割の12施設なら8割短い13時間で復旧できるようになる見通しだ。

12、雨量予報で土砂崩れ予測(阪大)
 大阪大学は人工知能(AI)を使い、豪雨時の雨量予報から土砂崩れの危険性を予測するシステムを開発した。天気予報から土の中の水分量の変化を見積もって限界が近いか判断する。数時間前に土砂崩れの危険を判別できる可能性があるという。現在は直前にならないと分からず、住民を避難させる時間的な余裕がなかった。
 豪雨が続くと斜面の土砂の中に水が浸透し、水がどんどんたまっていく。限界に達したときにさらに雨が降ると、土砂崩れが発生する。
 開発したシステムは土砂崩れの危険がある斜面に水分量や傾斜を測るセンサーを設置。現在の水分量と雨量予報から、この先の水分量の変化を予測する。今後、屋外の実験を続けてデータを集め、数時間前に土砂崩れの発生を判断できるように改良する。
 国土交通省によると、土砂災害の危険がある場所は全国に53万か所ある。集中豪雨の際は実際の雨量や天気予報から、高速道路や幹線道路などを通行規制したり、住民に避難を促したりしているが、手遅れになることも多い。

13、近海の観測強化(政府地震調査本部)
 政府の地震調査研究推進本部は、南海トラフなどの大地震が想定される日本近海の海域で、地震や地殻変動の観測を強化すべきだとの提言をまとめた。特に、南海トラフの地震の広がり方で鍵を握るとされる紀伊半島沖での観測頻度を高めることを「喫緊の課題」と指摘している。
 陸域に比べて海域の観測は遅れているが、巨大地震が発生する仕組みの研究や発生後の早期の警報につなげるには、海底での観測網整備が課題になっていた。提言を受けて文部科学省などは予算の拡充に努める。
 南海トラフは静岡―四国沖に延びるプレート(岩板)の境界。巨大地震を繰り返しており、今後もマグニチュード(M)9級が懸念されている。
 提言は、南海トラフ沿いでは観測網のある陸側のプレートだけでなく、沖合側のプレートの動きも詳細に調べ、巨大地震の危険性を把握することを重視。紀伊半島沖では観測データを現状の「数か月に1回」よりも頻繁に集め、最終的にはリアルタイムで観測すべきだとした。
 トラフに近い高知県の沖合に海底地震・津波計を整備し、地震や津波の早期警報につなげる必要があるとした。
 日本海溝では、東日本大震災を起こした領域の北と南に当たる青森、房総沖の観測が重要と指摘。過去に大津波が起きたとされる千島海溝と南西諸島海溝については、海溝に沿って約100キロ間隔で地殻変動を観測すべきだとした。相模トラフでは陸から遠い東側の海域、日本海東縁部では断層調査の充実を求めた。

14、大地震など災害時 道路に「不安」50%超
 内閣府は、「道路に関する世論調査」を発表した。大地震や大雨などの災害時に近くの道路に「不安がある」と答えたのは合わせて53.8%。災害への備えのために必要な対策(複数回答)は「安全に避難できる避難路の整備」が44%と最も多かった。首都直下地震や台風への備えを求める声が目立った。
 自動車による大気汚染や騒音、振動などを改善するために必要な施策(複数回答)は「ハイブリッド自動車など低公害車の普及を促進する」が最多の48.7%で、次いで「渋滞を減らして自動車の走行をスムーズにする」が32.5%だった。
 外国人観光客が増加する中で、観光振興の道路施策(複数回答)については「駐車場の整備などによる渋滞や路上駐車の削減」が41.4%、「観光地への分かりやすい案内標識の設置」が41.3%でほぼ並んだ。
 高速道路の渋滞と料金の関係に関する考え方は「一部区間で渋滞が発生していても、現在の通行料金を維持すべきだ」が49.1%と最多で、「通行料金を現在より引き上げてでも、渋滞を解消した方がよい」は22.8%だった。

[防災短信]
01、「燃えない街」へ一丸
 ~品川区 木造密集地域をマンションに~ 2016年9月01日付 日本経済新聞(夕刊)
02、宮城のホヤ 大量処分
 ~韓国禁輸で余る 漁協、東電に補償要求~ 2016年9月06日付 日本経済新聞(夕刊)
03、濁流の威力、津波並みか
 ~岩泉町で現地調査 土木学会~ 2016年9月08日付 日本経済新聞
04、震災復旧談合で初の有罪
 ~東京地裁 塗装会社10社、担当11人に~ 2016年9月08日付 日本経済新聞
05、復興住宅 完成は60%
 ~東日本大震災5年半、被災東北3県~ 2016年9月11日付 日本経済新聞
06、被災地に動植物戻る
 ~国土地理院調べ 東日本沿岸部に2015年1,500種類~ 2016年9月09日付

  日本経済新聞
07、東アジアの台風 強力に
 ~海水温上昇 風速15%増 米大学チーム~ 2016年9月06日付 日本経済新聞
08、農業担い手 帰還進まず
 ~福島・楢葉 避難指示解除1年~ 2016年9月05日付 日本経済新聞(夕刊)
09、月の強い引力 大地震一押し?
 ~東大、地中の圧力変化~ 2016年9月13日付 日本経済新聞(夕刊)
10、「鬼界カルデラ」調査開始
 ~神戸大 噴火予測狙う~ 2016年9月17日付 日本経済新聞

 

 

【参考文献】

1、 2016年9月 UGMニュース
2、 2016年9月 UGMニュース
3、 2016年9月 UGMニュース
4、 2016年9月01日付 日本経済新聞(夕刊)
5、 2016年9月06日付 毎日新聞
6、 2016年9月10日付 日本経済新聞(夕刊)
7、 2016年9月08日付 日本経済新聞
8、 2016年9月08日付 日本経済新聞
9、 2016年9月11日付 朝日新聞
10、 2016年9月10日付 朝日新聞
11、 2016年9月09日付 日本経済新聞
12、 2016年9月05日付 日本経済新聞
13、 2016年9月25日付 日本経済新聞
14、 2016年9月08日付 日本経済新聞

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第84号1平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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