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防災評論 第88号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第88号)【平成29年11月号】

 

【目次】
〔政治行政の動向概観〕
〔個別の動き〕
01、防災情報 まとめサイト(国土交通省)
02、非常用トイレ 避難所指定校半数「なし」(文部科学省)
03、震災時の住宅修理支援(内閣府)
04、自主避難3世帯 提訴へ(福島県)
05、GPSで水蒸気量観測(気象庁)
06、大雨や雪 交通へ影響把握(ヤフー・東大)
07、水害の救助力強化(消防庁)
08、津波防災の支援策検討(国土交通省)
09、復興交付金5,346億円未着手(復興庁)
10、予知前提の防災 転換(内閣府・気象庁)
11、震災関連死 9割持病あり(熊本県)
12、山頂にシェルター 命守る対策広がる(地方公共団体)
13、災害被災地に職員派遣要請(総務省)
14、津波跡地、利用か放置か(復興庁)
15、ドローンで被災査定(損保ジャパン)

 

〔政治行政の動向概観〕
 10月22日、慌ただしく実施された衆議院議員総選挙は、政府与党側の思惑通り圧倒的な勝利をもって現政権の枠組みが維持されることとなった。
 このような中、10月には焦点の南海トラフ地震対応と東海地震に偏った大震法運用の見直しについて動きがあった。

 マグニチュード(M)9クラスの南海トラフ巨大地震対策で、気象庁は、前震や異常現象など4つのケースが起きれば巨大地震発生の可能性が高まっていると判断し「南海トラフ地震関連情報」を臨時発信する(臨時情報を出す)と発表、11月から運用を始めた。現象の確認後、30分~2時間程度で同情報を出す。政府は住民に避難場所や備蓄の確認、家具の固定など警戒を呼びかける。

 東海地震について予知ができないことを認めた中央防災会議の報告に基づく措置だが、数々の疑問がある。

臨時情報が発表されるケースは大きく分けて2通りある。
 1つは、想定震源域で比較的大きな地震が起きた場合だ。これは、大きな地震の直後は別の大地震が続けて起きやすいという世界的な統計に基づく。数日以内が目立つものの、2年後に起きた例もある。実際、東日本大震災発生時の2日前にM7クラスの“前震”が起きたのに何ら具体的な行動も注意呼びかけもなかった。このような体制下、しっかりした情報が発表できるのか。
 もう1つは、地下の異常をとらえた場合で、東海地震の予知で前提にしてきた枠組みを受け継いだ形だ。しかし、大地震につながるのか確実なことは言えないからこそ、予知の体制が見直された経緯がある。なのに、それの反省もなく同じようなスキームを踏襲して大丈夫なのか。

 何よりもどういう根拠をもって南海トラフ域にM9(東日本大震災並み)の地震が起きることを当たり前にするのか、という検証が不足していることである。周期的に発生してきた南海トラフ地震域では、長い長い歴史を見ても1回もM9 超の地震は起きていないのである。
 地震学は残念ながら学問としての完成形に程遠い状況だ。これらの“対策”はそういう状況下有効なのか、また、関係住民の安全に確実に結びつくものなのか、不安は多い。防災士活動に見られるような、いかなる災害があってもその被害を最小限にくい止める官民あげての努力が先決であり、膨大な予算を不確実な仕事につぎ込み続ける余力は日本にはないことも十分認識しなければならない。(参考:日本経済新聞10月13日付記事及び解説)

 

〔個別の動き〕


1、防災情報 まとめサイト(国土交通省)
 国土交通省は、首都直下地震に備えて防災情報をまとめて把握できるポータルサイトを開設した。被害状況の想定や避難所の検索、交通情報など従来、関係機関が個別に提供していた75のサイトを集約した。2020年の東京五輪・パラリンピックに伴い訪日外国人の増加が見込まれており、日本語のほか英語、中国語、韓国語にも対応している。
 サイト名は「防災ポータル」(http://www.mlit.go.jp/river/bousai/olympic/)。内容を「今から知っておくべき情報」と「災害時に見るべき情報」の2つに分類。身の守り方などの防災情報のほか、近くの避難所や医療機関の所在地などを一括して調べることができる。観光庁が外国人旅行者向けに災害情報を提供しているアプリもダウンロードできる。
 75サイト中29サイトは英語、中国語、韓国語でも閲覧でき、随時対応範囲を広げる。同省防災課は「いざという時に必要な情報を迅速に把握できるよう内容を充実させたい」としている。

 

2、非常用トイレ 避難所指定校半数「なし」(文部科学省)
 災害時の避難所に指定されている全国の公立学校のうち、断水でも使えるトイレや停電時の電力確保の備えをしているのは約50%にとどまることが、文部科学省の調査で分かった。耐震性の貯水槽などがあり飲料水が確保できるのは66%、非常用物資の備蓄をしているのは72%、防災無線などの通信手段を確保しているのは77%だった。
 避難所に指定されている小中高校と特別支援学校の計約3万校を対象に、4月1日時点で調査した。
 断水時でも使えるトイレは、下水道のマンホールに置いて使うトイレや携帯型のものなど。改修や備蓄をしている学校は50%だった。対応済みの学校の割合は秋田、島根、長崎は10%未満だった。

 

3、震災時の住宅修理支援(内閣府)
 南海トラフ巨大地震などの大災害が発生した際の住宅問題について、個人が所有する空き家を被災者の住まいとして活用することや、自宅を応急修理して住み続ける住民への支援策のあり方について、内閣府は具体的な仕組みづくりの検討に入る。
 内閣府の試算などによると、南海トラフ巨大地震で全壊する建物は最大239万棟に上り、最大205万戸の仮設住宅が必要になると想定。首都直下地震では最大61万棟が全壊、仮設住宅は最大94万戸が必要になる見込みで、住まいの大幅な不足が懸念されている。
 東日本大震災の際に被災者が親族から物件を借りて入居するケースがあったことなどから、個人所有の空き家を災害時に活用できる可能性が高いと評価。「空き家・空き室を活用し、応急借り上げ住宅として積極的に供給していくことが必要」としている。
 空き家を災害時に素早く提供するため、自治体が必要な手続きのマニュアルを定め、業務の進め方について、官民で訓練を実施する必要があると強調。自治体が「空き家バンク」に登録された物件の状態を平時から確認する必要性も訴えた。
 被災者が可能な限り自宅での生活を続けられるよう、災害救助法に基づく住宅の応急修理を促す必要があると指摘。都道府県が相談体制を整備したうえで、被災者が事業者選びの参考にできるよう、対応できる工事の種類などを記した指定業者のリストを整えることを求めた。
 災害時は、被災者が一時的な住まいで長期間の避難生活を余儀なくされる恐れもある。仮設住宅の有効活用策にも言及。住みやすいように改修したり、個人の敷地内に建設したりする案や、長期間の居住に耐えられるよう、住宅の基礎を鉄筋コンクリートでつくるなど、最初から強固な構造で建設する案を提示した。

 

4、自主避難3世帯 提訴へ(福島県)
 東京電力福島第1原子力発電所事故の避難指示が出ていない地域から避難している自主避難者のうち福島県内に住む3世帯が、住宅の無償提供が終了したのに家賃を払わず借り続けているとして、県は住宅明け渡しと家賃の支払いを求め今秋にも福島地裁に提訴する方針を決めた。居住の実態を確認できない世帯もあるという。
 県によると、提訴する避難者の住宅ではガスや電気が使用されていなかったり、荷物が放置されたままだったりしたという。自主避難者への住宅無償提供が今年3月末で打ち切られた後の家賃も支払われておらず、県がたびたび電話や訪問をしても避難者と連絡が取れないため、悪質と判断した。県は支援策として、無償提供終了後は、所得が一定以下の避難者に家賃を一部補助している。

 

5、GPSで水蒸気量観測(気象庁)
 気象庁は、全地球測位システム(GPS)を使い、海上の大気中にある水蒸気量を観測する体制を整備することを目指し、9,600万円を2018年度予算の概算要求に計上した。積乱雲のもととなる水蒸気の流れを捉えることで大雨の予測に役立てる。
 今年7月の九州北部の豪雨では、九州の南西側から大量の水蒸気を含んだ空気が流れ込み、積乱雲が連続発生して線状降水帯を形成。福岡県や大分県で記録的な大雨を降らせた。
 現在は海上で定期的に水蒸気の量を測定する観測地点はない。定期運航する船舶でデータを収集、風向きと合わせてどこに水蒸気が流れ込み積乱雲が発生するかの予報精度向上を目指す。

 

6、大雨や雪 交通へ影響把握(ヤフー・東大)
 ヤフーと東京大学は大雨や雪などによる都市交通への影響を、人の移動記録から把握できる技術を開発した。大量に蓄積したスマートフォン(スマホ)利用者の移動記録などを分析する。自治体の都市計画の検討や電車の遅延予測サービスなどの実現に役立つ。
 ヤフーが災害情報をスマホなどに提供するサービスの利用者の記録を使う。全国に約900万人の利用者がいる。その個人情報を伏せた上で全地球測位システム(GPS)の位置情報を使う。
 気象条件の悪化時と通常時の利用者の移動データを分析すると、交通機関や人の移動の遅れがどの程度起きるのかが把握できる。同じ規模の積雪や降雨があった時に各都市の受ける影響を比較して対策が必要な地域を特定するのにつながる。
 従来のインフラ調査はリアルタイムで状況を把握するのは難しかった。新技術は大量のデータをすぐに分析でき調査費用も少ない。災害に強いまちづくりに利用できる。地震などからの復旧や復興の状況を定量的に把握するのにも役立つ。
 ヤフーは地方自治体や企業に情報を提供するだけでなく、個人向けにも天気予報などと合わせて翌日の交通機関の状況を予測して知らせるサービスを想定している。

 

7、水害の救助力強化(消防庁)
 消防庁は、豪雨で浸水があった場合の消防隊員による救助体制を強化する。7月の九州北部豪雨や2015年9月の関東・東北豪雨など死傷者を伴う水害が多発しているためだ。安全で効率的な救助手順や必要な機材を盛り込んだ全国統一のマニュアルを来春までに作成、対応力の底上げを目指す。水害対策車など緊急消防援助隊向けの装備も充実させる。
 浸水地域では、激流に阻まれて現場に近づけなかったり、多数の人が孤立して救出に時間がかかったりするケースがある。隊員が濁流で流される危険のほか、浮遊する障害物によるけがや低体温症などの懸念もある。ただ、独自マニュアルを作っている消防本部は少なく、同庁は全国で統一的な活動要領が必要と判断した。
 統一マニュアルは台風や集中豪雨、高潮、津波に伴う浸水を想定する。流れが急な河川や都市部の洪水といった「流水域」と、池や沼、地下空間などの「静水域」に分類。それぞれ①排水ポンプ、クレーンなどを使う陸上作業②ボートの使用③隊員の入水――の3場面に分け、救助方法や装備を有識者らの会合で検討している。
 夜間や濁流時の対応、車内から助け出す際の注意点、隊員の安全対策も明記。水害対策車や通常より浮力の大きい救命胴衣、成人男性が乗っても水に沈まない担架など、先進的な機材も整理する。
 被害が大きい場合、全国の消防本部で構成する緊急消防援助隊が出動する。消防庁は来年度予算の概算要求に計2億5千万円を計上し、援助隊として登録している消防本部に、水害対策車など車両計3台、情報収集に役立つ小型無人機「ドローン」計10機を配備する計画。

 

8、津波防災の支援策検討(国土交通省)
 国土交通省は、全国で津波に強い地域づくりを推進するため、学識経験者でつくる懇談会の初会合を開いた。懇談会は、地方自治体が堤防整備や住民の避難経路の確認を進める上での支援策などを検討し、来年夏ごろに報告をまとめる。
 会合では、堤防整備などに対する補助金支出要件の緩和を訴える意見や、いつやってくるか分からない津波に備えた持続的な取り組みを支援することが重要だとの指摘が出た。
 国は東日本大震災を受け、2011年12月に津波防災地域づくり法を施行。津波被害が想定される市町村に防災計画の作成を求めている。だが作成済みは静岡県焼津市や宮崎市など9市町にとどまっており、懇談会は同法に基づく計画作りをどう後押ししていくかを中心に議論する見通し。

 

9、復興交付金5,346億円未着手(復興庁)
 東日本大震災で被災した宮城、岩手、福島3県で復興交付金を使う事業の進捗を調べたところ、まだ5,346億円分が工事の契約を結べず、着手できていないことが分かった。交付金総額の19%に相当する。前例のない大規模な災害からの復興事業のため、住民合意の形成や並行する大規模工事間の工程調整に想定以上の時間がかかっている。
 復興交付金は、東日本大震災で大きな被害を受けた地域を再生する国の支援の中核的な制度で、市町村に配分される。被災者が移り住む住宅の建設や市街地再生に向けた土地区画整理など用途は幅広い。3月末時点で北海道から東北、関東、信越の11道県102市町村に交付されている。
復興交付金を使った事業は、国が定めた「復興・創生期間」が終わる2020年度末までに完了しなければならない。工事完成のメドが立たないと、事業ができなくなる懸念もある。
 復興交付金は2016年度までの6年間で総額2兆7,888億円。このうち事業が完了したか、建設会社などと契約を結んで事業が進んでいるのは81%にあたる2兆2,542億円だった。残る5,346億円は震災から6年が過ぎた段階でも工事契約を結べていない。
2万人近くが犠牲になった東日本大震災では多くの住宅やインフラが津波で流された。国や県、地元市町村が一斉に復興事業に取りかかり、工事期間などの「交通整理」に今も苦心している。
 大規模災害に対応するため、被災自治体の業務量は膨大になった。震災前に気仙沼市の一般会計予算は300億円程度だったが、2017年度は約1,000億円。震災後の最大時期には2,000億円規模のこともあった。一方で職員数に大きな変化はなく、1人あたりの仕事量は3~6倍に増えた。職員不足も復興事業を遅らせる一因だ。
 街をどんなかたちで再生するかの合意形成にも時間がかかる。岩手県釜石市は21地区の市街地を再建するため、各地区で官民の協議会を設けて議論してきた。テーマは被災者が移り住む住宅の概要から公園や小中学校の再建場所、共同ごみ置き場の位置まで幅広い。
進捗が遅れている現状は、住民参加を重視した結果でもある。
 復興交付金の期限が近づくなか、気仙沼市は工事の設計業務などで民間委託を増やし、事業を加速する。釜石市は国や岩手県の担当者も交えた調整会議を毎月開き、組織の垣根を越えて工事期間の最適化を進める。
 津波被害が小さかった地域では事業を終える自治体も出てきた。宮城県は「人手や資金、物資を被害の大きい沿岸部へ集中的に振り向け、復興事業の加速に努める」と話す。

 

10、予知前提の防災 転換(内閣府・気象庁)
 気象庁は、南海トラフ巨大地震の新しい防災対応として、異常現象が観測された場合に「南海トラフ地震関連情報」を発信し、トラフ沿いの広範囲の地域に警戒を呼びかけることを決め、11月1日から運用を始めた。予知を前提とした従来の防災対応を見直し、巨大地震の恐れがあると判断した段階で情報を発信し、住民に迅速な対応を呼びかける。
南海トラフは、静岡県沖の駿河湾から九州沖にかけて約700キロ続く海底の溝。約100~200年おきに巨大地震が繰り返し起きている。最大でマグニチュード(M)9クラスの地震が想定され、最大で死者約32万人、経済被害約215兆円が見込まれている。
 南海トラフ巨大地震の想定震源域には、駿河湾周辺を震源とする「東海地震」の想定震源域が含まれる。従来の防災対応は東海地震を予知できるとの前提だったが、政府の中央防災会議は、東海地震を含む南海トラフ巨大地震について「確度の高い予測は困難」として、予知前提の防災対応を改めるべきだとの報告書をまとめていた。
 報告書は、予知に代わり、異常現象を観測した場合に住民避難を促す仕組みを検討することや、地震・津波の観測体制強化を求めた。異常現象については①南海トラフの東側で大地震が発生②一回り小さい前震らしき地震が発生③東海地震の前兆とされるプレートすべりが発生――などのケースを想定した。
 気象庁は、観測された異常現象と南海トラフ巨大地震との関連性を調べ始めるなどした場合、地震関連情報の発信を始めることを決めた。内閣府は被害想定地域の住民に家具の固定や避難経路の確認、備蓄の点検などの警戒を呼びかける。地震関連情報は南海トラフ巨大地震の新しい防災対策が定まるまでの暫定的な措置との位置づけという。
 政府は津波被害が想定される静岡県や高知県について、具体的な防災対応を議論する「モデル地区」とし、住民避難などの課題を検証する方針だ。
 東海地震の防災対応は予知に基づく情報発信を当面取りやめる。首相が「警戒宣言」を出して鉄道の運行を停止させるなどの制度は存続するが、運用を事実上凍結する。

 

11、震災関連死 9割持病あり(熊本県)
 熊本県は、昨年4月の熊本地震の震災関連死として今年8月末までに認定された県内189人の既往症の有無や死因の分類をまとめた。何らかの持病があり、薬を服用するなどしていた人が9割弱を占めた。自殺者が16人に上ることも判明した。
 県が県議会厚生常任委員会に提出した資料によると、死亡時の年齢では60代以上が174人と9割超を占め、50代が7人、30代4人と続いた。持病があった人は165人。189人の大半が地震発生から3か月以内に亡くなっていたが、半年以降に死亡した人も6人いた。
 県は死因を8項目に分類。肺炎などの呼吸器系疾患が53人、くも膜下出血などの循環器系の疾患が50人、内因性の急死28人と続いた。
 熊本地震の犠牲者は直接死50人と、大分県由布市の3人を含む関連死計192人、昨年6月の豪雨災害で亡くなった5人の計247人。

 

12、山頂にシェルター、命守る対策広がる(地方公共団体)
 突如発生する火山噴火から登山者の命を守る取り組みが広がり始めた。噴石から身を守るシェルターの設置やスマートフォン(スマホ)を活用した火山情報の提供などソフト・ハードの両面で対策が進んでいる。
御嶽山を抱える長野県木曽町は、御嶽山山頂にシェルターを設ける検討を本格的に始めた。山頂にある山荘の解体を始めており、跡地にシェルターを建設する予定。
 シェルターのほか、荒れた登山道の整備も計画中だ。同県王滝村も9合目付近にパトロール隊の拠点を建設するほか、頂上に所有する山荘を避難所に改修するなどの対策を検討している。
 政府は2015年に活動火山対策特別措置法を改正して各自治体に避難計画の作成や避難訓練の実施を義務づけた。内閣府は昨年12月、避難計画作成のためのガイドラインを改定。
 活火山を抱える自治体では噴火時に予想される火砕流の範囲などを記したハザードマップの作成やシェルターの設置が進む。
 富士山を抱える静岡県は今年、スマホの登山用アプリ「コンパス」の情報発信を多言語化した。富士山への登山届を提出した登山者に火山の情報を発信。英語と日本語に加え、新たに中国語(繁体字と簡体字)、韓国語、ポルトガル語に対応した。
 しかし、緊急速報メールに対応していないスマホも多く、県では旅行会社に要請して外国人登山者にアプリのダウンロードを勧めている。

 

13、災害被災地に職員派遣要請(総務省)
 総務省は、大災害に見舞われた地域で復旧・復興に携わる人手が不足しているとして、全国の都道府県知事と市区町村長に職員派遣の協力を求める書簡を送った。具体的には、東日本大震災や熊本地震、今年7月に起きた九州北部の豪雨を挙げている。
 総務省によると、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の自治体からは今年8月1日時点で、同省に計1,277人の派遣要請があったが、事務職や土木職を中心に222人が不足している。震度7を2回観測した熊本県や、九州北部の豪雨で被害が出た福岡、大分両県の自治体からも支援の要望が出ている。

 

14、津波跡地、利用か放置か(復興庁)
 東日本大震災の津波で浸水し、住宅が移転した跡に広がる「津波跡地」。被災3県に東京ディズニーリゾート15個分あるが、期待した企業進出は進まず、使い道が決まったのは半分にとどまる。国の復興期間は2020年度までで、今年度中に使い道が決まらないと負の遺産になりかねない。津波跡地を利用するか、放置するか。自治体は決断を迫られている。
 岩手、宮城、福島の3県では津波の被害を繰り返さないため、津波で浸水した約2万7,000戸分の土地には住宅の建設を禁じ、内陸や高台に宅地を造成した。事業費は5,000億円を超え、すべて国が負担している。
 住宅の跡地は自治体が買い上げている。跡地は3県で1,500ヘクタール超。そのうち使い道が決まったのは約5割で、多くは公園や緑地など復興の街づくりで自動的に決まった。跡地は将来の津波に備えて防潮堤を築くとともに地盤をかさ上げしているが、企業の誘致は進まない。
 理由は2つある。まず土地の「歯抜け」が多いことだ。自治体が買い上げるのは所有者が望んだ場合。住民の多くは土地を手放すが、資材置き場などに使う人もいる。広い公有地の真ん中にわずかな私有地が残るケースが多く、企業が使いやすい「きれいな形の土地」をつくるのは難しい。
 もう1つの理由は復興事業の遅れだ。大規模工事が集中し、事業間の調整に時間がかかっている。売却後に国や県が買い戻す二度手間が発生する懸念があるためだ。
 一方、進出企業が決まった土地の自治体の多くは思い切った優遇策を打ち出している。岩手県沿岸部の港町、大船渡市では整地する重機の作動音が響く。浸水した3ヘクタールの跡地を岩手県内の農業法人が賃借し、トマトの水耕栽培施設を建設する計画。5年間は建物の固定資産税を減免し、賃借料も当面は地価の2.5%に抑える優遇策の成果が出た。
 津波跡地を企業などに売却した場合、自治体が得た資金は国に返すルールになっている。それでも跡地の利用に懸命になるのは、いつでも利用可能にしておくには草刈りだけで年間数億円が必要という事情がある。
 復興・創生期間の2020年度中に整備を終えれば国の支援が得られる。間に合わなければ自治体の予算で開発することになるが、財政難の自治体には難しい。
南三陸町の津波跡地は震災前から人が少なかった。こんな土地は活用法を探さずに自然に戻すことも視野に入れる。
 津波跡地の扱いは、仮設住宅建設に始まる被災者の生活再建の総仕上げといえる。企業を誘致するにしても、自然に戻すにしても、期限は目前に迫る。5,000億円を超す国費を負の遺産にしないための賢明な選択が求められる。

 

15、ドローンで被災査定(損保ジャパン)
 災害時に小型無人機「ドローン」で被災状況を調べ、保険金を支払う取り組みが、損害保険業界で広がっている。災害後の迅速な保険金支払いを可能にするのが狙いで、損保大手の損害保険ジャパン日本興亜が、今年7月の九州北部豪雨で実施し、総額約1億円の保険金が支払われた。現地到着後、査定終了まで2週間程度かかるケースが多かったが、2日間で査定を終えたという。自然災害時に、ドローンによる査定で保険金の支払いが行われたのは、損保大手では初めてで、業界の取り組みは被災地の早期の再建につながると期待される。
 地震や豪雨などで破壊された家屋などの被害状況の調査は従来、損保会社の鑑定人が現地入りして行ってきた。しかし、二次災害の恐れから、鑑定人が被災現場に入れなかったり、入れても調査に手間取ったりするため、保険金の支払いが、小規模の火災や交通事故などと比べて遅れてしまうのが課題だった。
 ドローンの飛行について、2015年の改正航空法は、人口密集地などの上空での飛行を禁じているが、損保ジャパンでは、災害時などには、全国の人口密集地の上空でも飛ばすことができる国土交通省の許可を取得。今年4月から5人体制のドローンチームの運用を始めた。
 この映像から、鑑定人が保険に加入している家屋や店舗など6件の損壊状況を確認し、補償金額を算出。被災者に保険金を支払うことを伝達した。最終的には総額1億850万円の保険金が支払われたという。
損保業界では、あいおいニッセイ同和損害保険が今年5月から、鑑定人資格を持つ社員がドローンを操縦して災害調査を行うサービスを東京を中心に開始しており、三井住友海上火災保険も昨年4月の熊本地震で、試験的にドローンを使った調査を行っている。

 

[防災短信]
01、民間資格を外部評価
~文部科学省 指針策定して質を保証~ 2017年8月28日付 日本経済新聞
02、荒川で大規模洪水発生なら
~関東地方整備局 中小企業にBCP策定促す~ 2017年8月16日付 日本経済新聞
03、世界各地で「殺人的熱波」
~航空・農作物に影響~ 2017年8月28日付 日本経済新聞
04、ミサイルでJアラート 12道県で作動
~市民生活にも影響 消防庁、文部科学省~ 2017年8月29日付 日本経済新聞
05、続く豪雨被害3.2兆円も
~米ハリケーン 製油所15%停止~ 2017年8月30日付 日本経済新聞
06、大型ハリケーン「イルマ」保険金支払い米最大級か
~大災害債券は元本毀損~ 2017年9月09日付 日本経済新聞
07、流入土砂 1,000立方メートル超
~九州北部豪雨 撤去作業急ぐ~ 2017年9月08日付 日本経済新聞(夕刊)
08、宮城の資料館 助成終了で資金難
~運営費、有料化で賄う~ 2017年9月09日付 日本経済新聞
09、Jアラート 綻び露呈
~ミサイル発信 トラブル相次ぐ~ 2017年9月08日付 日本経済新聞
10、「松田館」焼ける
~文化財など4棟 蜂の巣除去で火~ 2017年9月03日付 日本経済新聞(夕刊)
11、JR大規模停電 7路線停止
~初歩的なミスが原因の変電所トラブル~ 2017年9月06日付 日本経済新聞
12、求む、ボラティア
~九州北部豪雨2か月、70%減 生活再建に遅れ~ 2017年9月05日付 日本経済新聞
13、南三陸町庁舎 高台移転し再出発
~9月3日 旧庁舎は津波で流出~ 2017年9月04日付 日本経済新聞
14、御嶽山噴火から3年 生死分けた山頂の1分
~生還ガイド、教訓伝える~ 2017年9月27日付 日本経済新聞
15、那須雪崩事故から半年 事故予見性言及も
~第三者委員会が報告書~ 2017年9月27日付 日本経済新聞(夕刊)

 

 

【参考文献】

1、 2017年8月28日付 日本経済新聞
2、 2017年8月30日付 日本経済新聞
3、 2017年8月30日付 日本経済新聞
4、 2017年8月30日付 日本経済新聞
5、 2017年8月31日付 日本経済新聞(夕刊)
6、 2017年9月04日付 日本経済新聞
7、 2017年9月05日付 日本経済新聞
8、 2017年9月07日付 日本経済新聞
9、 2017年9月09日付 日本経済新聞
10、 2017年9月27日付 日本経済新聞
11、 2017年9月27日付 日本経済新聞
12、 2017年9月27日付 日本経済新聞
13、 2017年9月29日付 日本経済新聞(夕刊)
14、 2017年9月30日付 日本経済新聞
15、 2017年10月06日付 日本経済新聞

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第89号平成29年12月号ふるさと納税の使い道 災害支援に関心高く(総務省)他
第88号平成29年11月号防災情報 まとめサイト(国土交通省)他
第87号平成29年10月号早く精緻 予報も進化(気象庁)他
第86号平成29年9月号支援物資の輸送を改善(中央防災会議)他
第85号平成29年8月号惨事ストレスケア2,700人(消防庁)他
第84号平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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