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防災評論(第145号)

山口明の防災評論(第142号)【2022年9月号】

山口明氏による最新の防災動向の解説です。
〈解説〉とあるのは山口氏執筆による解説文、〈関連記事〉はそのテーマに関連する新聞記事の紹介です(出典は文末に記載)。防災士の皆様が、引用、活用される場合はご留意の上、出典を明示するようお願いします。

1、盛土規正法の公布 

〈解説〉
「宅地造成等規制法の一部を改正する法律」(令和4年法律第55号)が5月27日に公布され、1年以内に施行されることとなった。従来から一部の盛土・切土について規制していた「宅地造成等規制法」の一部を改正する形式にはなっているが、法律の名称を「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規正法」)と変更、長い日本憲政史においても一部改正法で法律名称まで変える事態に至ったのは滅多にない。それほど令和3年7月に発生した熱海土石流における災害発生要因として盛土の存在が大きかったということである。確かに熱海伊豆山における土石流災害は死者・行方不明者28名、住宅被害98棟等大きな被害をもたらしたが、土石流による被害という意味では飛び抜けて甚大な規模ではない。しかし何といっても盛土(人工物)の存在が絡む都市型土石流であったこと、そしてその模様が当時リアルタイムでTVで全国放映されたことの衝撃が政治・行政を突き動かしたといえよう。「都市型」であるという証左に、今回の盛土規正法は国土交通省都市局(旧法を所管)が他省庁所掌分野を巻き込んで一体的・総合的に検討が進められたということからも明らかである。
 今回の盛土規制法制定の意義の第一はその点にある。これまでは宅地造成については国交省、森林保全については林野庁、農地については農水省と、盛土規制を様々な省庁で所掌していた。この発想は盛土という「モノ」をどう保全、規制するかという観点に立つ法制度であるが、盛土災害から「ヒト」をどう守るかという観点での規制が必ずしも十分ではなく、このため省庁間のタテ割り行政の狭間にあって盛土危険が一部見落とされてきた。このため新盛土規正法では盛土をその様態、立地に係わらず全国一律で包括的に規制することとなった。このため「盛土」の概念も拡大し、単なる土捨て行為や一時堆積についても行政の許可、規制の対象とすることとされ、こうして法に基づく規制区域は「宅地造成等工事規制区域」に加え、「特定盛土等規制区域」が新設された。
 その他の特徴として盛土規正法では盛土の許可基準を国が明示し、知事等が許可権者になることとされ、ずさんな盛土工事を防ぐため工事主の資力や施行者の能力についても審査、周辺住民への周知(説明会の開催等)も必要要件とされた。
 近いうちに盛土規正法の安全基準について国から地方自治体にガイドラインが示される。どの法律もそうだが法条文は整ってもその後の施行実施に向け換骨奪胎することのないよう、各地防災士会でも目を光らせていくことが肝要である。









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