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防災評論(第99号)

山口明の防災評論(第99号)【2018年10月号】

山口明氏による最新の防災動向に関する評論です。
〈解説〉とあるのは山口氏執筆による解説文、〈関連記事〉はそのテーマに関連する新聞記事の紹介です(出典は文末に記載)。
防災士の皆様が、引用、活用される場合はご留意の上、出典を明示するようお願いします。

1、内陸型地震〈地震調査委員会のあり方〉

〈解説〉
 内陸直下の地震は活断層が動くことによって生じる。活断層について、国土地理院は次のように記している。


「私たちが住んでいる街の地面を掘り下げていくと最後は固い岩の層にぶつかりますが、この岩の中にはたくさんの割れ目があります。通常、この割れ目はお互いしっかりかみ合っていますが、ここに「大きな力」が加えられると、割れ目が再び壊れてずれます。この壊れてずれる現象を「断層」活動といい、そのずれた衝撃が震動として地面に伝わったものが地震です。また地下深部で地震を発生させた断層を「震源断層」、地震時に断層のずれが地表まで到達して地表にずれが生じたものを「地表地震断層」と呼んでいます。そして「断層」のうち、特に数十万年前以降に繰り返し活動し、将来も活動すると考えられる断層のことを「活断層」と呼んでいます(第四紀(260万年前以後)中に活動した証拠のある断層すべてを「活断層」と呼ぶこともあります)。現在、日本では2千以上もの「活断層」が見つかっていますが、地下に隠れていて地表に現れていない「活断層」もたくさんあります。」(国土地理院ホームページより)

 活断層の活動による内陸直下の地震は一般的に震源が浅いため、地表は激しく揺れ、局所的ではあるが甚大な災害となることがある。
 内陸活断層の地震(内陸型地震)は発生間隔が1,000~1万年と長く、30年の発生確率で示される数値は大きくても十数%であり、海溝型地震の確率よりずっと小さい。例えば、糸魚川―静岡構造線断層帯中北部区間の地震の発生間隔は600~800年程度、最新の活動時期は800~1,200年前と推定され、今後30年以内にM7.6程度の地震が起きる確率は13~30%である(2018年1月1日)。また、平山―松田北断層帯の地震の発生間隔は4,000~5,000年程度であり、今後30年以内のM6.8程度の地震発生確率は0.09~0.6%である(2018年1月1日)。なお、国府津―松田断層帯は、相模トラフの海溝型地震と同時に活動と推定されている。これらの地震は地震発生の緊迫度の高い地震として注目されているが、こうした小さな発生確率からは危険意識を喚起することは難しい。
 ちなみに1995年兵庫県南部地震を起こした野島断層の地震の30年発生確率を地震の直前にさかのぼって調べると0.02%~8%という数字になる。このような小さな確率から兵庫県南部地震の危険性を意識できたかどうか疑わしい。長期評価で示される内陸型地震の発生確率は、海溝型地震よりずっと小さくなることを理解し、仮に数%の確率でも発生の危険度が高いことを認識しなければいけない。
 日本には少なくとも2,000本の活断層があり、このうち長期評価が行われたのは113本にすぎない。近年の内陸型地震の多くはこれ以外の断層で起きており、地中に活断層は無数にある。長期評価の結果だけにとらわれず、M7規模の内陸型地震はどこでも起きると考える必要がある。

〈関連記事〉
司令塔なき地震研究
裏かかれる予測、対策に偏り

 6月に大阪北部、9月に北海道南西部と地震が相次ぐなか、地震研究を束ねる政府の地震調査委員会の存在感が薄い。同委は活断層などを調べて地震の発生確率を予測してきたが、多くの地震が「想定外」の断層で起こり、メカニズムについても曖昧な説明に終始している。「研究が防災に役立っていない」と、国の防災研究全体のあり方を問う声が強まっている。
 今月6日に北海道で起きた地震は、震源近くに「石狩低地東縁断層帯」という活断層が延び、関連が注目されている。調査委はこの断層帯について、国内に2千以上ある活断層の中で要注意の「主要活断層帯」とし、「南部でマグニチュード7.7程度の地震の恐れがある」と予測していた。
 だが地震後の説明は歯切れが悪い。発生当日の会合後、平田直委員長(東大教授)は「断層帯と直接の関連はない」と説明した。ところが5日後に「断層帯の深部が動いた可能性は否定できない」と翻し、「断層帯の活動が続く可能性もある」と警戒を呼び掛けた。(後略)
(2018年9月20日付日本経済新聞)



2、避難勧告 避難指示(緊急)〈西日本豪雨〉

〈解説〉
 西日本豪雨での人的被害は土砂災害によるものが多く、また過去の災害同様、高齢者に被害が多かった。さらに「屋内」犠牲者の比率が高かったと見られている。そこでまたも避難勧告、避難指示の発令とその伝達、避難誘導の重要性が広範囲に議論されている。
 災害時の避難勧告・避難指示(緊急)は、災害対策基本法第60条第1項に基づいて行われる。この法律では、「災害が発生し、または発生するおそれがあって、人の生命・身体を保護し災害の拡大を防止することが必要な場合、市町村長が住民などに避難勧告・指示をできる」と定めている。
 しかし、市町村が避難勧告・避難指示を出したとしても、避難行動を起こさない人が多いのも事実である。避難勧告等は発令されたものの、結果として被害が発生しない場合も当然ある。しかし、「被害がなかった、避難勧告ははずれた」などと、自らを避難させたことに対して行政に責任を追及する状況は、自らの命を守ることに対して過剰に行政依存の状態になっているといわざるを得ない。たとえ空振りに終わったとしても、「被害がなくてよかった、避難勧告がはずれてよかった」とポジティブに捉えられるようになるだろう。

〈関連記事〉「避難基準見直し、年内に新指針 災害発生前に」
 政府は、西日本豪雨で河川の氾濫後に避難指示が発令されたり、発令後も住民が逃げ遅れて被害が拡大したりしたことを踏まえ、避難指示や避難勧告に関するガイドラインを見直す方針を固めた。有識者や関係省庁の防災担当者などで作る検討会を設置し、自治体が災害発生前からちゅうちょせず避難指示・勧告を発令できるよう判断基準の見直しを図る。年内に新ガイドラインを策定する方針だ。
 菅義偉官房長官は11日の記者会見で、「従来とは桁違いの豪雨被害が繰り返し発生している。気象庁が発表する防災気象情報と自治体の避難情報の連携なども含め、検証していく必要がある」と述べ、災害時の住民避難や特別警報など気象情報提供のあり方を見直す考えを示した。(後略)
 (2018年7月12日付 毎日新聞)



3、台風の進路と被害〈台風21号VS台風24号〉

〈解説〉
 7月に襲来した台風12号は、日本列島を東から西へ通過する「逆走」コースをたどり、国民を驚かせた。朝鮮半島から北日本方面にかけて夏の高気圧が強い勢力を維持してため、これに阻まれる形で異例のコースをたどったのである。また、台風21号は徳島県に上陸した後、近畿地方を縦断。大阪府内で8人の犠牲者が出るなど、被害をもたらした。さらに台風24号は和歌山県田辺市付近に上陸した後、 急速に加速しながら東日本から北日本を縦断するコースをたどった。近年の台風は、コース、雨量、風速とも、従来とは異なった様相を示すことがあり、注意を要する。
 熱帯低気圧の中心付近では強い風が吹いていて、これが風速17.2m/sを超えると、「熱帯低気圧」から「台風」へと名称が変わる。台風の中心が九州、四国、本州、北海道の海岸線を横切ったときをもって、台風の上陸とする。島や岬などは上陸とはいわず、通過とする。
 台風進路予想図では、台風の現在位置は×印で示され、今後進むと思われる範囲を白い実線と点線で囲んで示す。日時とともに示される点線の円はそのときに台風の中心が70%の確率で存在する可能性を持つ範囲で、これが「予報円」である。さらに風速25m/s以上の暴風が予想される範囲は赤い実線で示され、これが「暴風警戒域」である。大切なことは避難が必要かどうか、また必要ならばそのタイミングはいつ頃になるのかを、台風情報から読み取ることである。
 また、台風進路予想の精度向上に伴い、2016年には予報円の半径をこれまでより約20~40%小さくすることとなった。これにより台風への備えについて以前より早く判断することが可能になった。
 さらに台風の接近に伴い、次第に風や雨が強まり、波も高まる。台風の中心には活発な積乱雲の集まりが帯状に連なり、台風を上空から見ると時計の針の回転方向とは反対の渦を巻いている。
 気象庁では、台風予報円の大きさを数年間の予報成績を踏まえて随時見直している。2016年6月にも、2011~2015年の5年間の予報成績を反映して改善し、半径をそれまでと比べて約20~40%小さくすると発表した。この発表以降発生した台風では、改善された予報円、それに伴ってより絞り込まれた暴風警戒域で進路予報がなされている。

〈関連情報〉
平成30年台風第21号に係る被害状況等について(平成30年10月2日内閣府)<抜粋>

1 気象状況(気象庁情報)
(1) 気象の概況 ・台風第21号は9月4日12時頃、非常に強い勢力で徳島県に上陸した後、速度を上げながら近畿地方を縦断した。その後、日本海を北上し、9月5日9時に間宮海峡で温帯 低気圧に変わった。
・台風の接近・通過に伴って、西日本から北日本にかけて非常に強い風が吹き、非常に激しい雨が降った。特に、四国や近畿地方では、猛烈な風が吹き、猛烈な雨が降ったほか、これまでの観測記録を更新する記録的な高潮となったところがある。
(2) 大雨等の状況(9月3日00時~9月5日24時)
・主な1時間降水量(アメダス観測値)
 高知県 安芸郡田野町 田野 92.0ミリ 9月4日10時01分まで
 兵庫県 淡路市 郡家 85.5ミリ 9月4日13時12分まで
 三重県 伊勢市 小俣 81.0ミリ 9月4日22時40分まで
・主な24時間降水量(アメダス観測値)
 愛知県 北設楽郡豊根村 茶臼山 354.0ミリ 9月5日4時00分まで
 静岡県 静岡市葵区 井川 349.0ミリ 9月5日2時00分まで
 高知県 安芸郡馬路村 魚梁瀬 318.5ミリ 9月4日22時00分まで
 奈良県 吉野郡十津川村 風屋 312.5ミリ 9月5日0時50分まで
 和歌山県 田辺市 護摩壇山 301.0ミリ 9月5日2時20分まで
(3) 強風の状況(9月3日00時~9月5日24時)
・主な風速(アメダス観測値)
 高知県 室戸市 室戸岬 48.2m/s (西) 9月4日11時53分
 大阪府 泉南郡田尻町 関空島 46.5m/s (南南西) 9月4日13時47分
 和歌山県 和歌山市 友ケ島 42.9m/s (南) 9月4日13時18分
・主な瞬間風速(アメダス観測値)
 大阪府 泉南郡田尻町 関空島 58.1m/s (南南西) 9月4日13時38分
 和歌山県 和歌山市 和歌山 57.4m/s (南南西) 9月4日13時19分
 高知県 室戸市 室戸岬 55.3m/s (西) 9月4日11時53分
 和歌山県 和歌山市 友ケ島 51.8m/s (南) 9月4日13時14分
 大阪府 泉南郡熊取町 熊取 51.2m/s (南) 9月4日13時40分
 徳島県 海部郡美波町 日和佐 50.3m/s (東) 9月4日11時05分

2 人的・物的被害の状況(消防庁情報:10月2日17:00現在)
 死者14人
 《死者の内訳》 【愛知県】 北名古屋市1人、愛西市1人 【三重県】 四日市市1人 【滋賀県】 東近江市2人 【大阪府】 大阪市3人、堺市1人、河内長野市1人、門真市1人、豊中市1人、吹田市1人 【和歌山県】湯浅町1人
(以上、内閣府発表数値の抜粋)

平成30年台風第24号に係る被害状況等について(平成30年10月2日14時00分現在、内閣府)<抜粋>

1 気象状況
(1) 気象の概況
○台風第24号は、9月29日から30日明け方にかけて、非常に強い勢力で沖縄地方に接近し、勢力を保ったまま、30日20時頃に和歌山県田辺市付近に上陸した。その後、急速に加速しながら東日本から北日本を縦断し、10月1日12時に日本の東で温帯低 気圧に変わった。
○台風第24号の接近・通過に伴い、広い範囲で暴風、大雨、高波、高潮となり、特に南西諸島及び西日本・東日本の太平洋側を中心に、これまでの観測記録を更新する猛烈な風の吹いた所があったほか、紀伊半島などで過去の高潮位を超える高潮を観測した所があった。
(2) 大雨等の状況(9月28日00時~10月1日24時)
・主な1時間降水量(アメダス観測値)
 宮崎県 児湯郡高鍋町 高鍋 96.0ミリ 9月30日11時52分まで
 和歌山県 新宮市 新宮 93.5ミリ 9月29日13時54分まで
 和歌山県 東牟婁郡串本町 潮岬 82.5ミリ 9月29日13時04分まで
・主な24時間降水量(アメダス観測値)
 高知県 吾川郡仁淀川町 鳥形山 444.0ミリ 9月30日19時10分まで
 愛媛県 西条市 成就社 434.0ミリ 9月30日19時30分まで
 宮崎県 東臼杵郡美郷町 神門 414.5ミリ 9月30日16時00分まで
(3) 強風の状況(9月28日00時~10月1日24時)
・主な風速(アメダス観測値)
 鹿児島県 奄美市 笠利 40.0m/s (南南東) 9月30日0時34分
 鹿児島県 大島郡与論町 与論島 39.8m/s (西) 9月29日23時13分
 高知県 室戸市 室戸岬 39.2m/s (東南東) 9月30日15時52分
 沖縄県 島尻郡座間味村 慶良間 38.4m/s (東南東) 9月29日9時05分
・主な瞬間風速(アメダス観測値)
 鹿児島県 大島郡与論町 与論島 56.6m/s (西南西) 9月29日23時10分
 沖縄県 南城市 糸数 56.2m/s (南東) 9月29日9時55分
 鹿児島県 鹿児島郡十島村 中之島 54.6m/s (西) 9月30日7時28分

2 人的・物的被害の状況(消防庁情報:10 月 2 日 14:00 現在)
 死者1名(鳥取県)


4、「災害ごみ」対策〈西日本豪雨〉

〈解説〉
 阪神・淡路大震災以来、大規模災害が発生すると災害廃棄物(いわゆる災害ごみ)の処理が大きな課題となっている。地方自治体は廃棄物の収集、仮置き場や最終処分場の確保に多大な支出と労力を強いられ、復興への道のりを険しくさせられるのである。被災した家庭においては数トンにのぼる廃棄物を前に茫然自失となる人も多く、災害ボランティアの活躍が大きく期待される課題でもある。メディアなどは「災害ごみ」と表記することが多いが、もとは被災した人々の大切な生活物資である。復興や衛生の観点からは速やかな処理が望まれるが、思い出の品々も少なくない。東日本大震災では、写真を洗い出して持ち主に返却するという新しいボランティア活動も生まれた。
 環境省は、今年3月「災害廃棄物対策指針」を改定したところだ(平成30年3月29日)。 http://kouikishori.env.go.jp/action/guidance/guideline/pdf/position_of_pointer_overview.pdf

〈関連記事〉「災害ごみ処理難航 長期化必須、広域対応も」
 西日本豪雨で生じた大量の災害ごみは被災自治体の処理能力を超えており、問題解決の長期化は避けられない見通しとなっている。路上や学校、公園に山積みになったままの地域もあり、環境省も全容を把握できていない。2年かけて県外で処理した2016年4月の熊本地震などと同様に、環境省は自治体の枠を超えた広域処理を検討する。
 岡山県倉敷市真備町地区では、地区の27%にあたる約12平方キロが浸水し、泥水につかった家具や家電、生活用品、異臭を放つ生ごみなど、あらゆるごみが空き地や道路脇に積み上げられた。総量は7万~10万トンと推定され、同市の伊東香織市長は記者会見で「市全体の1年分の家庭ごみに匹敵する」と表現した。(後略)
(2018年7月25日付 毎日新聞)



5、高潮のメカニズム〈台風21号〉

〈解説〉
 風水害のなかで忘れられがちなのが高潮災害だ。海に囲まれている日本は高潮の被害を受けやすい状況にある。特に、南に開いている三大湾(東京湾、伊勢湾、大阪湾)は海抜ゼロメートル地帯が広がり、人口・資産も集積しており、高潮による浸水が起これば、家屋・建物の水没に加えて、長期にわたって水が引かないこともあり、深刻な被害が予想される。
 過去最大級の高潮被害が発生したのは1959年の伊勢湾台風であるが、今年の台風21号では伊勢湾台風級の高潮災害が発生する恐れがあると警告された。
 高潮の発生原因としては台風や熱帯低気圧がある。台風の中心付近は気圧が低く、1hPa(ヘクトパスカル)下がると海面が1cm上昇する。台風による「吸い上げ効果」である。さらに台風の東側では南風が強く、海水を陸地側に運ぶ。これが「吹き寄せ効果」である。こうして、海面の水位が護岸より高くなることなどにより高潮が発生する。
 加えて、大潮のタイミングと台風の接近が重なると高潮の発生する確率が高まる。ただし、必ずしも満潮の時刻と高波は一致しないので、満潮時刻にとらわれることはかえって危険である。
 台風21号による主な潮位は次のように過去最大級となった。
・主な高潮位(波浪の影響による短周期変動を除去した値)
【気象庁所管】
大阪府 大阪 標高 3.3m 9月4日14時18分
和歌山県 御坊 標高 3.2m 9月4日12時48分
兵庫県 神戸 標高 2.3m 9 月4日14時09分
和歌山県 和歌山 標高 2.0m 9月4日13時05分
徳島県 阿波由岐 標高 2.0m 9月4日12時08分
静岡県 石廊崎 標高 1.5m 9月4日19時29分

〈関連記事〉「高潮329センチ「第2室戸」超す」
 台風21号に伴い、近畿地方の沿岸部を中心に各地で高潮が発生し、6地点で過去最高を一時的に超過した。関西国際空港がある大阪府では潮位329センチを観測し、死者194人を出した第2室戸台風(1961年)時の過去最高潮位293センチを超えた。気象庁によると、記録を超えたのは、第2室戸台風で230センチを観測した神戸市の233センチなど。
 高潮は複数の要因が重なって発生する。気圧が周辺より低い台風の中心付近では、大気が海面を押さえる力が弱まり、海面は吸い上げられるようにして上昇する。気圧が1ヘクトパスカル低くなると海面は1センチ上昇するとされる。強風が海水を海岸に吹き寄せ、さらに、波で運ばれた大量の海水が沖に戻れなくなることも重なり、海面が上昇する。風速が2倍になると、海面上昇は4倍になるとされる。
 高潮は地形の影響も受け、V字形の湾で高くなりやすい。大阪湾は国内でも高潮が起こりやすい条件を備える危険な地域の1つとされる。4日の大阪市は満潮時刻が午後5時10分で、大阪管区気象台は「満潮に向かって潮位が高まってきたところに台風が重なり、大阪湾近辺で高潮が高くなる要因がそろっていた」と分析した。(後略)
(2018年9月07日付 読売新聞)



6、マグニチュードと避難〈南海トラフ地震〉

〈解説〉
 中央防災会議は「南海トラフ震源域の一部で巨大地震の前震とみられるマグニチュード(M)7級の揺れを観測した場合、住民に一斉避難を求めない方針を有識者会合で示した。」(日経9.25)。
 「マグニチュード」(Magnitude)は、地震の規模そのものを表す尺度で、頭文字をとってMで表現する。マグニチュードが1.0上がると、エネルギーは約30倍になるので、M8クラスの巨大地震は、M7クラスの地震のおよそ30発分のエネルギーを持っていることになる。1923年の関東地震はM7.9、いわばM8クラスの巨大地震であった。また、駿河湾から遠州灘にかけて起きるとされる東海地震も、M8クラスである。一般的にM7.8以上の地震を「巨大地震」という。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、M9.0と、日本で近代的な地震観測が始まってからは、最大の超巨大地震であった。歴史的にも、最大規模の海溝型巨大地震だったと考えられる。

〈関連記事〉
「M7、一斉避難求めず」
 政府の中央防災会議は25日、南海トラフ震源域の一部で巨大地震の前震とみられるマグニチュード(M)7級の揺れを観測した場合、住民に一斉避難を求めない方針を有識者会合で示した。1週間以内に巨大地震が発生する頻度が数百回に1回程度と著しく低いためで、地震への備えの再確認を呼び掛けるにとどめ、被害想定に応じて自主避難の検討も促す。 前回の会合では、震源域の東側か西側の半分でM8級の揺れが襲う「半割れケース」を検討。被災を免れた残り半分の津波が想定される地域などでは、国や自治体の呼び掛けに応じて一斉に避難し、1週間程度の避難継続を求める方針を示していた。今後の議論は半割れへの対応が中心となる見通しだ。(後略)〔共同〕
(2018年9月25日付 日本経済新聞(夕刊))



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