高知県 自主防災組織の活性化を図り、地域防災力を向上
高知県の自主防災組織
高知県の自主防災組織率は、平成22年度には64.6%でしたが、東日本大震災を契機に住民の防災意識が向上し、平成27年度には92・7%まで上昇しました。
こうして組織された自主防災組織では、家具の固定、世帯ごとの家族構成や見取り図等を記載したカルテの作成、夜間の避難訓練など、活発な活動が行われています。その一方で、具体的にどんな活動を行えば良いか分からない組織や、活発に活動していた組織でも参加者の高齢化や固定化、参加人数が年々減少してくるなど、活動を行ううえでリーダーとなる人材不足が課題として明らかになってきました。
この課題に対するリーダー養成の一環として、本県主催の防災士養成講座を平成25年度に開始し、平成26年度までの2年間で374名の防災士が誕生し、地域や職場で活躍しています。
防災士資格取得者の活動状況
高知県では、本県主催の養成講座で資格を取得された方々の、日ごろの防災活動を把握するため、平成27年8月にアンケート調査を行いました。
その結果、8割以上の方々が地域や職場などで積極的に防災活動に取り組んでいただいていました。さらに、子どもを対象に防災に関する紙芝居の作成、自主防災組織での訓練指導や職場での防災講習の企画など、資格を取得された方々が様々な場面で活躍されていることも分かりました。
また、防災活動を充実させていくためには、地域の自主防災組織・企業・行政との交流、学習会の充実が必要との意見が多くあり、資格取得者が身近な範囲での活動に加えて、地域での活動に参加するためのきっかけを求めていることが明らかになりました。
防災士と地域の連携
高知県では、避難所を地域の方々が主体となって運営していただくよう、「避難所運営マニュアル」の作成を進めています。
作成にあたっては、地域の自主防災組織の方々と行政が協議を重ね、個々の避難所ごとにマニュアルを作成しています。この協議に、防災士の方々にも参加いただき、防災士としての視点から意見をいただくなど、防災士と自主防災組織や行政との交流のきっかけにも繋がっています。
また、本県がこれまで自主防災組織を対象として実施してきた各種の防災研修を防災士の方々にもお知らせし、自主防災組織との交流や学習会の充実を図っています。
地震対策に取り組む事業者の社員教育
高知県は、事業者の災害に対する事業継続力と、地域住民との災害時の連携を評価する全国初の認定制度を平成25年度から実施しています。この制度は、事業継続、社員教育、地域貢献の3つの視点から、それぞれ評価項目を設け、基準を満たした事業者を「高知県南海トラフ地震対策優良取組事業所」として認定しています。
社員教育の視点では、「防災士資格を社員が有していること」を評価項目の一つとしており、事業者の災害対応力の向上への、防災士の活用を図っています。
また、地域貢献の視点は、事業者が地域と連携する取り組みを評価項目としており、認定事業者が増えることで防災士の活動の充実にも寄与できると考えています。
防災活動からの地域コミュニティ強化
これまで紹介させていただいたとおり、高知県が主催する防災士養成講座により防災士資格を取得された方々は、日々の生活の中で、様々な防災活動に取り組んでいただいています。
地域の自主防災組織や企業が連携し、地域防災力の強化に取り組むことは、平時における地域コミュニティの強化にも繋がります。また、地域コミュニティを強化することは、いざという時に互いに支え合うためにも重要です。
本県は、南海トラフ地震に備えるために「高知県南海トラフ地震対策行動計画」を作成し、被害の軽減や地震発生後の応急、復旧・復興のための事前の準備などを計画的に進めています。防災士の養成は、この行動計画において、地域における防災力の向上を図る取り組みとして位置づけており、今後は毎年
300名を養成する予定です。南海トラフ地震に備えるため、防災士の皆様と共に地域防災力の強化に向けて、引き続き取り組んでいきます。
(「防災士REPORT2016」より)