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防災評論 第74号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第74号)【平成28年9月号】

 

【目次】
〔政治行政の動向概観〕
〔個別の動き〕

01、震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)
02、昨年の山岳遭難 過去最多の3,043人(警察庁)
03、空き家対策で連絡組織(町田市)
04、復興ファンド創設へ(地域経済活性化支援機構)
05、ウイルス研究「レベル4」施設 災害時の手引、地元了承(武蔵村山市)
06、長周期地震対策を強化(国土交通省)
07、高齢者 なぜ救急車頼み(東京消防庁)
08、家屋の公費解体に遅れ(熊本市等)
09、被災地のツイート 感想など氾濫(東北大)
10、災害時 刑務所に避難(法務省)
11、台風の進路予測「予報円」小さく(気象庁)
12、新幹線放火で安全委報告書(運輸安全委員会)
13、行政書士と空き家対策(東京都)
14、東海地震対策 抜本見直し(気象庁・内閣府)
15、防災計画、住民も参画を(内閣府)
16、防災力、企業経営を左右(内閣府)
17、17火山、避難計画策定へ(内閣府)
18、渇水対策うたい現金要求(国土交通省)
19、熊本地震 震災関連死、申請74件(熊本県市町村)
20、熊本地震 半数が大破・倒壊(国土交通省)
21、「大災害債」企業も発行(損害保険会社)
22、熊本被災企業を支援(政投銀)
23、「防災庁」創設へ研究会(関西広域連合)
24、帰還困難区域 一部解除へ(復興庁・福島7市町村)
25、「震度6強で倒壊」なお397棟 公立小中、耐震化率98.1%(文部科学省)
26、地震の原発への影響 発表震度基準引き下げ(原子力規制委員会)
27、津波検知 最大20分早く(気象庁)
28、津波時 消防団の安全確保 89市町村、退避手引なし(消防庁)
29、熊本地震教訓に支援策を見直し(内閣府)

〔政治行政の動向概観〕
 従来、あまり見たこともない極めて変則的な動きを示して迷走した台風10号は、南西諸島からUターンして本土を襲い、東北、北海道に大きな被害をもたらして日本海に抜けた。海を挟んだロシア沿海州では、ちょうど日露の首脳会談が行われており、北方領土問題でなんとか現首相の在任中にケリをつけたい日本側とロシア大統領が議論していた最中であったが、そのお膝元でも台風被害があり、大統領はモスクワでは経験したことのない台風被害対策にウラジオストクで対応もしなければならなかった。この奇妙な台風10号の挙動は、地球の気象変動の弊害を示す1つとして、より詳細に分析・検証しなければならない例になるのではないか。
 この台風10号の豪雨で9人もの死者を出した岩手県岩泉町の高齢者福祉施設の大事故では、避難情報のあり方を巡って大きな課題が突きつけられた。避難措置の1つである「避難準備情報」の意味認識を巡る問題である。この措置は平成16年に発生した新潟県での豪雨災害による惨事が契機となって創設された。このとき、同県三条市山間部では、避難勧告発令の暇もないうちに大雨により河川が氾濫し、多くのお年寄りが自宅内で溺れて即死した。この反省から災害発生の恐れが未確定なうちからその危険を除去するための避難準備情報の発令とともに、災害時要配慮者とされる人は、避難準備ではなく、ただちに安全な場所に避難を開始することとされた。岩手県岩泉町の被害現場では、この考えに基づき発災の9時間も前から避難準備情報が発令されていたが、この施設の管理者はその意味が分からず、何も対応していなかった。避難勧告が出ればその時点から入居者を避難させようと思っていたという。
 この事件は改めて防災用語の意味を正確に理解する必要性を社会に示したものであり、防災士にとってはこの事件を貴重な教訓として自らの防災知識レベルをより一層高めるとともに、地域社会一般の方々に対してその知識をしっかりと伝播していく努力を期待させるものとなった。また、民間人に防災士教育のさらなる普及が望ましいことも分かった。なお、後日この施設を訪れた政府高官(国会議員)が現場の水たまりで長靴を持参していないことを理由に政府職員におんぶさせて視察するという一幕があった。前後の事情から見てなぜそのような行動に出たのか、一般には不可解な面が多いが、人前で明らかにされた不適切な行動こそが政治行政への評価のすべてである。SNS・ネット時代の現代にあって政治家のみならず防災士等防災専門家はその行動の1つひとつを丁寧に心してかからなければならないという証左を端的に示したものといえよう。

〔個別の動き〕
1、震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)
 政府の地震調査委員会は、全国各地で今後30年以内に震度6弱以上の大地震に見舞われる確率を示した2016年版の予測地図を発表した。千葉市の85%など関東から四国にかけての太平洋側で軒並み高い値となった。南海トラフ沿いでは前回より確率が上昇した。断層の評価法を変えたことで長野県の一部でも上がった。
 全体の傾向は2014年12月公表の前回から変わっていない。千葉市や水戸市、横浜市が80%を超えたほか、静岡市、徳島市、高知市なども70%前後だった。太平洋側では海と陸のプレート(岩板)が接する相模トラフや南海トラフが連なり、数十~数百年間隔で大きな地震が発生することなどが影響している。
 長野県北部から山梨県南部に延びる糸魚川―静岡構造線断層帯については評価を見直した。この結果、長野県安曇野市が前回と比べて10.4ポイント上昇し、29.5%となった。
 日本海側や内陸部は10%を下回る地域も多い。内陸の活断層がずれて大きな地震を起こす頻度は1千~数万年に1度と、プレート境界の地震に比べて少ない。このため30年以内の発生確率も低くなる。
 ただ、数値が小さくても大きな地震が起こるリスクはある。4月に起きた熊本地震では活断層である布田川(ふたがわ)断層帯と日奈久(ひなぐ)断層帯の一部がずれ、最大震度7を2回記録した。
 地震調査委の今回の発表は2016年1月時点を基準としており、熊本地震の影響は加味されていない。熊本市の発生確率は7.6%。全国的にみて高いとはいえないが、実際に地震が起き、大きな被害が出た。
 今後は、数値の伝え方などを改善する考え。熊本地震の影響も断層の再調査を踏まえて反映していく予定だ。

2、昨年の山岳遭難 過去最多の3,043人(警察庁)
 2015年1年間に全国の山で遭難したのは3,043人で、うち死者・行方不明者は335人に上り、いずれも統計の残る1961年以降最多となった。高齢者が目立ち、遭難者の約半数、死者・行方不明者の約7割を60歳以上が占めた。「体力や経験に見合った山を選び、十分に下調べして安全な計画を立てて」と呼びかけている。
 これまで最多だった年と比べると、遭難者数は2014年より249人、死者・行方不明者は2013年より15人増えた。遭難件数も2014年より215件多い2,508件で、過去最多だった。
 都道府県別では、長野が遭難者300人、死者・行方不明者62人でいずれも最も多かった。遭難者は北海道(235人)、富山(156人)、死者・行方不明者は山梨(26人)、新潟(23人)と続いた。
遭難者の入山目的は、ハイキングなども含む「登山」が75%、「山菜・キノコ採り」が12.8%。スキー場で管理区域外の場所を滑る「スキー」は1.9%だった。
 遭難原因のトップは「道迷い」で、39.5%に上った。

3、空き家対策で連絡組織(町田市)
 東京都町田市は空き家の不動産での流通促進などに向けた総合的な対策に乗り出す。不動産業者や弁護士、税理士など関係9団体との間で連絡組織を9月に発足、情報の共有や相談体制の強化を目指す。広範な各種関係団体を結集し空き家対策を講じるのは都内の自治体では初めてという。
 同市はこのほど、空き家対策特別措置法に基づく空き家対策計画「町田市空家0(ゼロ)計画」を策定した。計画期間は2016年度から5年間で、市内全域の一戸建て未活用空き家が対象。総合的な対策は同計画の中で打ち出した。
9月に設置するのは「空き家対策連絡会」。構成メンバーは都宅地建物取引協会町田支部、町田弁護士クラブ、東京税理士会町田支部など計9団体。市が事務局となり、空き家の発生予防や不動産流通の促進に向けて情報の共有や相談体制の強化につなげる。
これら取り組みと並行して、市は市内の一戸建て住宅(約9万7千戸)を対象にした空き家実態調査に着手する。まず外観の目視により未活用空き家を特定。その上で所有者から処分の意向などを聞くアンケート調査を実施する。この調査結果を連絡会での取り組みなどに役立てる。
 今後、このような自治体が全国に広がることが予想され、防災士会も「協議会」に防災上の観点から参画することが望まれる。

4、復興ファンド創設へ(地域経済活性化支援機構)
 政府系ファンドの地域経済活性化支援機構は、熊本地震で被災した事業者をサポートする「九州広域復旧・復興支援ファンド」を創設する。ファンドの規模は100億円、期間は10年程度を想定している。熊本県など九州各県の地方銀行が出資に参加する見通しで、“オール九州”で復興へ向けた金融支援に取り組む。
 支援対象は熊本、大分両県で工場などが被災した中小企業。製造業や観光、農業など幅広い業種となる。ファンドは被災企業に出資をしたり、被災企業の債権を金融機関から買い取ったりする。被災後、新たな債務をかかえる「二重ローン」にも対応して被災企業の負担軽減を目指す。
 また、被災企業にファンドから公認会計士などの企業再建の専門家の派遣も予定している。このため、熊本市に事務所を開設し、地元金融機関と連携して被災企業の再建に取り組んでいる。

5、ウイルス研究「レベル4」施設 災害時の手引、地元了承(武蔵村山市)
 エボラウイルスなど致死率が高い危険な病原体を扱える施設を持つ国立感染症研究所の村山庁舎は、地震や火災などの発生に備えたマニュアルの案を地元自治会などに示し、了承を得た。病原体が敷地の外に漏れ出す恐れがある場合は、同庁舎の屋外放送設備を使うなどして住民に避難を呼びかける。
 村山庁舎は、国内初となる「BSL(バイオ・セーフティー・レベル)―4」施設の指定を受けた。同研究所の脇田隆字副所長は「地震で建物が崩壊したとしても、病原体が敷地外に漏れることはまずない」としつつも、「万が一の事態への備えは必要だ」と話している。
 マニュアルでは、災害・事故が発生した場合、村山庁舎の建物や設備の異常の有無のほか、BSL―4施設の被害状況を同研究所のホームページで公表するとした。病原体が敷地外に漏れる恐れがある場合は武蔵村山市や警察、消防に加え、地元自治会に連絡する。

6、長周期地震対策を強化(国土交通省)
 国土交通省は、南海トラフ巨大地震に伴う長周期地震動により超高層ビルに被害が出る可能性が高いとして、太平洋側の大都市圏を中心とする11都府県を対策強化地域に指定すると関係自治体に通知した。2017年4月以降に申請する高さ60メートル超(おおむね20階以上)の新築物件について、1秒間の揺れ幅が最大で現行基準の2倍となる160センチの長周期地震動に耐えられる設計を義務づける。
 ゆっくりとした大きな揺れの長周期地震動に備え、超高層ビルやタワーマンションの安全性を高める狙い。
 対策を強化するのは、東京地域(東京、埼玉、千葉、神奈川)、静岡地域(静岡、山梨、愛知)、中部地域(愛知、岐阜、三重)、大阪地域(大阪、兵庫)。愛知は2地域にまたがっている。マグニチュード9級の地震が起きた場合、超高層ビルが2~3メートルの横揺れに見舞われると想定されている。
 強化地域で超高層ビルなどを新築する場合、南海トラフ地震の揺れを想定して設計。揺れ幅のほか、約60秒としていた揺れの継続時間を最長約500秒に厳しくする。家具の転倒や移動を防ぐ装置を設置することなども求める。
 既存のビルやマンションに関しては、自治体を通じて耐震補強や、家具の転倒防止策を取るよう促す。マンションを改修する場合、区分所有者の合意を得やすくするため、国が詳細な診断や改修設計費の30%強、工事費の10%強を補助する。
南海トラフ巨大地震に伴う長周期地震動への対策強化を求めた国土交通省の通知を受け、関係自治体は高層マンションの住民らに大きな揺れへの備えや食料備蓄を呼び掛ける方針だ。一方、2020年東京五輪に向けた建設特需を見込む建築、不動産業界からは、ビル新築のコスト増やマンション販売への影響を懸念する声が上がった。
 東日本大震災の発生時、大阪市住之江区にある55階建ての大阪府咲洲庁舎(高さ256メートル)は長周期地震動のため防火扉や壁などが損傷した。
 今回の対策強化により、新築物件では鉄骨部材の強度の向上などが求められる可能性がある。
 一方、既存のタワーマンションや高層オフィスビルでは、大半に大型ゴムやばねなどを使って地震の揺れを吸収する免震装置が設置されている。

7、高齢者 なぜ救急車頼み(東京消防庁)
 高齢者の救急搬送が増えている。高齢化の進行に加え、一人暮らしや夫婦2人の世帯で身近に頼れる人がおらず、比較的軽い症状でも救急車を呼ぶ例が少なくないとみられるからだ。消防は対応に追われ、医療機関などからは本来必要な緊急搬送に影響しかねないと懸念する声も出ている。一方で、重篤に陥る危険性が高い高齢者は、ためらわずに救急車を呼ぶことも求められる。
 119番する際にはどこに注意すればいいのか。東京消防庁によると、最も大事なのは「まず通報者がいま居る場所を知らせること」だ。現在地が分からないと救急車が出動できない。
 屋外の路上などで場所が分からないときは、周囲に目印になる建物がないかを確認する。交差点の表示なども役立つ。自分では困難なときは周囲の人に頼んで、代わりに居場所を伝えてもらう。気が動転すると知っている事柄も出てこなくなる。自宅から救急車を呼ぶときに備え、電話機の近くなどに自宅の住所を書いておくことも大切だ。
 高齢者が緊急か否かを自分だけで判断するのは危険だ。単なる体調不良と判断し、救急車を呼ばずに、心筋梗塞や脳卒中などの治療が遅れてしまうこともある。救命救急医らは「めまいやふらつき、不整脈など脳や心臓の病気の可能性がある時は、我慢せず、一刻も早く救急車を呼んでほしい」と口をそろえる。
 高齢者や、寝たきりで動けない人など、緊急性を伴わなくとも、救急車に頼らざるを得ない場合がある。同消防庁は、「高齢者や持病がある人は、かかりつけ医、治療、服薬の状況など医療情報が救急隊や医師に分かるよう、メモなどにまとめておくといい」と勧める。
 気兼ねして救急車を呼ぶのを迷う人もいるかもしれない。そうした際には、専用ダイヤルを利用する手もある。同消防庁は救急車を呼ぶべきかなどの相談に24時間体制で応じる「救急相談センター」を運営。「#7119」に電話すると救急相談通信員、救急相談看護師が対応する。横浜市消防局も「市救急相談センター」(#7119)で同様なサービスを実施している。

8、家屋の公費解体に遅れ(熊本市等)
 熊本地震で被災した家屋の解体が滞る見通しが強まっている。条件を満たせば自己負担なしで解体できる制度が導入され、各自治体が受け付けを始めた。ただ、家屋の数に対して建設業者などの人手は不足気味。早期の着工が難しくなっており、しびれを切らして自費で取り壊す住民も出始めた。
 熊本市は、罹災(りさい)証明書で「半壊」以上と認定された家屋を公費で解体・撤去する制度の予約受け付けを始めた。ただ対象物件は1万2千棟超(6月13日時点)。申請が殺到すれば遅延は避けられない。
 南阿蘇村では、がれきの量などを調査できる専門職員がおらず、外注できる業者を探すしかない。村職員は「とにかく人材が足りない。必要な手続きも多く、いつ着工できるかはまだ分からない」と頭を抱える。
 自費で解体に踏み切る被災者もいる。後で公費補助を受けられるが、一部は持ち出しになる。
 益城町の担当者は「がれきの仮置き場が足りない」と焦りを募らせている。2か所の仮置き場はすでに満杯に近い。解体工事が本格化すれば、新たな仮置き場が必要となる。災害で出る廃棄物は家具やコンクリート片、瓦など分別が細かい。搬出入に広いスペースも必要で、敷地の確保は容易ではない。

9、被災地のツイート 感想など氾濫(東北大)
 東北大は、東日本大震災の発生直後に被災地からツイッターで発信された情報約4,400件を抽出して分析したところ「水没した車に閉じ込められた」「食料がない」など救援を求めるツイート(書き込み)は約2%で、消防など支援者側が把握するのが難しい状況だったとする調査結果を明らかにした。個人の感想などが多くを占め、切実な訴えが埋没した形だ。
 ネットでの情報氾濫は熊本地震でも確認されており、調査担当者は「大量の情報を選別する仕組みが必要」としている。
 震災発生後の1週間に国内から投稿された書き込みは1億件を超すと推定される。調査は約32万件分のデータを入手。分析システムで宮城県内の被災者が発信した可能性が高いと判定された震災関連の約2,600件を抽出し内容別に分類した。
 「救援要請」と「感想」など複数の内容を含む書き込みは、それぞれに分類したため、書き込み数は延べ4,402件。うち場所や状況を詳しく記して救援を求めており、支援者側が気付けば対応できた可能性があるのは約2%の69件だった。

10、災害時 刑務所に避難(法務省)
 全国の刑務所や拘置所が自治体と防災協定を結ぶ動きが広がっている。災害時に施設の一部を避難所や物資の集積拠点として提供する。刑務所は収容者や刑務官の非常用食料を独自に備蓄し、自家発電などの設備もそろう。法務省は「刑務官を避難所の運営にあたらせるなど、人材面でも貢献できる」と話している。
 刑務所は災害時も受刑者の収容などの業務を継続する必要があることから、一般的に関連施設を含めて頑丈な建物が多いとされる。
 今回の熊本地震でも同刑務所に大きな被害はなく、受刑者らに混乱も起きなかった。本震直後の4月16日に近隣の住民が相次いで助けを求めてきたことから、刑務官が使う道場を急きょ避難所として開放した。
 刑務所に収容されている受刑者らは、自治体に住民の安全確保などを義務づけた災害救助法が適用されない。自治体の支援を受けられないことから、刑務所は普段から災害時用の食料を備蓄し、自家発電装置も整う。
 刑務所や拘置所などの刑事施設と防災協定を結ぶ自治体は全国で12か所に上る。東日本大震災後の2011年6月、山口県美祢市の美祢社会復帰促進センターが全国で初めて同市と締結したのが始まりだ。
 今年4月までに府中刑務所(東京都府中市)や大阪刑務所(堺市)、高知刑務所(高知市)など12か所が立地自治体と協定を結んだ。刑事施設や職員を災害時に活用する発想は東日本大震災の経験から生まれた。宮城県などの避難所へ応援に行った刑務官が救援物資の在庫状況を正確に管理、混乱の中でも平等な配布を徹底できた。
 法務省は、刑務所では受刑者の食事の量が違うだけで不満の声が上がる。刑務官にはルールづくりや管理のノウハウがあり、避難所の運営にも役立つことが分かった。熊本地震でも生かせたと考えている、としている。

11、台風の進路予測「予報円」小さく(気象庁)
 台風の進路を予測する「予報円」のサイズが20~40%小さくなる。気象衛星ひまわり8号の最新鋭機器による観測やプログラムの改良で精度が向上した。気象庁は「危険な地域が絞られ、ピンポイントで防災が可能になる」と期待している。
予報円は台風の中心が70%の確率で到達すると予想される範囲。24時間刻みで最大5日先までを示している。
 2015年、運用を始めたひまわり8号は最新鋭の赤外線カメラなどを使って太平洋上の雨雲や風の動きを観測している。8号のデータを分析するスーパーコンピューターの予報プログラムも改良が進み、予報円(48時間)と実際の進路の年間平均誤差は2010年の206キロから2015年は119キロに改善した。

12、新幹線放火で安全委報告書(運輸安全委員会)
 2015年6月に東海道新幹線の先頭車両で男が焼身自殺し、乗客ら29人が死傷した放火事件で、運輸安全委員会は調査報告書を公表した。男がガソリンをまいた際、乗客が様子を見ようと立ち止まってデッキに滞留したことが被害拡大につながったと指摘。鉄道各社に車内での火災時に乗客へ迅速な避難を呼びかける啓発活動をするよう求めた。
 事件後、JR各社は車両内の防犯カメラ増設や常時録画などの取り組みを進めている。
 事件は2015年6月30日午前11時半ごろ、新横浜―小田原間を走行していたのぞみ225号(16両編成、乗客約900人)の先頭、1号車で発生。乗客の男がガソリンをかぶって火をつけ、巻き込まれた乗客の女性(当時52)が死亡。乗客と乗員28人が煙を吸うなど重軽傷を負った。
 報告書によると、車内の防犯カメラを解析した結果、男が1号車の前方でガソリンをまき始めた際、乗客は男から離れて避難をはじめた。だが複数の乗客が2号車との間にあるデッキに滞留し、1号車の様子をスマートフォンで撮影したり、様子を見たりする状況が映っていた。
 男が火をつけて、車内に爆風と煙が押し寄せると乗客らは慌てて後方の車両に避難を再開。2号車まで煙が充満し、乗客らは煙を吸うことになった。死亡した女性は1号車後部のデッキに倒れていた。
 車掌は当時4号車におり、乗客から男がガソリンをまいていることを知らされたが、「出火まで1分ほどしかなく避難誘導する時間はなかった」とした。運転士は非常ブザーが鳴ったため1度ブレーキをかけたが、爆発音から火災と判断。再加速してトンネルを抜けた時点で停止しており、報告書はこの対応を「適切だった」と評価した。

13、行政書士と空き家対策(東京都)
 東京都は、空き家対策で連携する協定を東京都行政書士会と結んだ。空き家の所有者らを対象とした相談窓口を設置し、区市町村からの依頼に応じて専門家を派遣する。
 行政書士会は協定に基づき、電話相談窓口を開設する。空き家の所有者や相続人の調査や確認、資産の有効活用などについて専門的な知識を生かして相談に乗る。
 都は3月に東京弁護士会やみずほ銀行など11社・団体と同様の協定を締結している。

14、東海地震対策 抜本見直し(気象庁・内閣府)
 政府は東海地震を想定した大規模地震対策特別措置法(大震法)を抜本的に見直す検討に入る。対策の対象地域を南海トラフ巨大地震の想定域と同程度に拡大するほか、事前予知が可能としていた運用の前提を見直す。中央防災会議で有識者会議を設置し、今年度中に提言をまとめる。
 大震法は駿河湾周辺を震源とする東海地震に備えて1978年に制定された。大地震の前に起こるとされる異常な地殻変動が観測されると、気象庁の予知情報に基づき首相が警戒宣言を発令。静岡県など8都県157市町村の「地震防災対策強化地域」では、事前対策として鉄道やバスの運行停止、銀行や百貨店の営業停止、学校閉校などの規制を実施する。
 ただ、東日本大震災では多くの研究者が想定していなかった三陸沖で複数の震源域が一気にずれ動く巨大地震が発生。専門家からは「東海地震が単独で起きる可能性は低い」「地震の正確な予知は困難」など、大震法の見直しを求める声が上がっていた。
 有識者会議では、大震法の対策の対象地域を、南海トラフ巨大地震の防災対策推進地域となっている29都府県程度まで広げることなどを検討。大地震の予測可能性を踏まえ、規制の緩和も視野に議論し、必要な法改正などについてまとめる。
 政府の中央防災会議の調査部会は2013年5月、南海トラフ巨大地震について「現在の科学的知見からは確度の高い予測は難しい」と結論づけた。(大震法制定の)当時は予測できるとして法律を作っただろうが、予知の精度が上がっていない現実がある。
 政府は東日本大震災以降、東海地震について同地震の震源域を含む静岡から九州沖までの震源域が連動する南海トラフの巨大地震に備える方針に転換。発生後の被害を抑える減災に重点を置き、2013年に同地震に向けた高台移転や津波避難施設の整備など、自治体の対策を支援する特措法を施行した。

15、防災計画、住民も参画を(内閣府)
 内閣府は、集中豪雨や台風といった気象災害に備えるため、自治体の防災計画づくりなどに地域住民の参画を求める提言をまとめた。主体的に防災活動に取り組み、住民に「自助・共助」の意識を高めてもらう。地球温暖化などの影響で今後、大規模な水害が起こりやすくなるとして、自治体や企業にも非常時の備えを厚くするよう求めた。
 検討会は死者8人と住宅被害約2万棟を出した2015年9月の東北・関東豪雨を受けて発足。大規模水害への備えについて議論してきた。提言は今後、集中豪雨や強い台風による大規模水害の発生頻度が高まると指摘。人口が密集する都市の住民や高齢者が増えるなど社会環境面で災害への耐性が弱まっており、個々の防災意識を高める必要があるとした。
 地方自治体に対しては、地域の事情に合わせた防災計画づくりや情報発信、避難勧告発令などに職員がより主体的に取り組む必要があるとした。住民による地区防災計画の作成なども自治体に促し、住民間のつながりを強めるよう求めた。
 地域の企業の被害低減と早期復旧には、事業継続計画(BCP)づくりや保険、デリバティブ(金融派生商品)などリスクを分散する金融の仕組みが有効と説明。ドローンを使った情報収集や、交流サイト(SNS)による地域の情報網整備など、最新の情報通信技術の活用も提言した。
 提言を受け、内閣府は自治体に防災に関する住民協議会を設けるモデル事業を浜松市で始める。
 防災士会や防災士の積極的参加が待たれる。

16、防災力、企業経営を左右(内閣府)
 熊本地震は地方企業の被災が国内のサプライチェーン(供給網)を滞らせることを、東日本大震災に続いて露呈した。影響が長引く企業の中には、災害への備えが手薄だったところもある。
 東京商工会議所が4月に実施した調査によると、防災や復旧対策などの事業継続計画(BCP)を策定しているのは、回答のあった1,570社の26%。零細企業ほど割合が低く、従業員30人未満では1割強にとどまる。
 災害への備えは、企業の資金調達力の指標でもある。大阪府と銀行は、中小企業庁の指針に基づいてBCPを策定した府内の中小企業に、防災資金を融資する制度を設けた。また、「事業継続評価融資制度」に基づき関東鉄道に1億5,000万円を融資した。関東鉄道は東日本大震災後に専門家の助言を受けてBCPを整備。2015年9月の関東・東北豪雨では常総線が浸水したが、1か月後には全線で運行を再開した。
 国も企業の備えを後押しする。政府はBCP策定や物資備蓄といった事前準備、社員教育など9項目を満たす企業を認証する制度を始めた。同様の認証として国際規格「ISO22301」があるが、審査要件が多く費用もかかる。中小企業向けに独自制度を設ける。
 認証企業は公共工事の入札や政府系金融機関からの借り入れなどで優遇することも検討。すでに約20社が申請し、5月の説明会には約500社が参加した。第1弾として60社程度を認証する。

企業規模が小さいほどBCPの策定割合が低い
従業員10~29人
30~49人
50~99人
100~299人
300人以上
(注)東商の会員企業向け防災対策アンケートより
0 10 20 30 40 50% 60
 


17、17火山、避難計画策定へ(内閣府)
 内閣府は、雲仙岳(長崎県)や浅間山(群馬・長野両県)など17の火山について、関係自治体と協力して避難計画をつくると発表した。国が専門家を派遣し、ノウハウの乏しい自治体でも避難ルートや避難所設置などを含む避難計画を作れるよう支援する。2016年度中に計画作成を目指す。
 17火山の関係自治体は12道県、51市町村。17火山は①登山者・観光客が多い②都市に近く被害が広範囲に及ぶ③1つの山に火口が複数ある④離島にある――と4つに分類。それぞれの課題を検討、避難計画に反映する。
 例えば、観光客が多い八甲田山(青森県)など5火山は遊歩道を閉鎖する判断基準を避難計画に盛り込む。離島にある口永良部島(鹿児島県)など3火山は港への避難施設設置などを検討する。
 政府は2014年の御嶽山(長野・岐阜両県)噴火を受けて成立した改正活動火山対策特別措置法(活火山法)に基づいて今年2月、全国49火山周辺の23都道県と140市町村を「警戒地域」に指定。指定自治体に避難計画作成を義務づけた。
 ただ、ノウハウや人材の不足も指摘されたことから、計画作成の支援を受ける自治体を募集。今回の17火山の周辺自治体から応募があった。内閣府はほかの火山での取り組みも後押しするため今後、計画作成の手引などをまとめる方針。

18、渇水対策うたい現金要求(国土交通省)
 国土交通省の職員をかたって自宅を訪問し現金を要求されるケースが相次いでいることが分かった。今月に入り、岐阜県で3件、静岡・愛知の両県で1件ずつ発生。職員を名乗る人物は渇水対策やダム見学会名目などで現金をだまし取ろうとしたという。
 同省によると、岐阜県在住の30代男性の自宅に同省職員を名乗る男女2人が訪問。「岐阜県が渇水になった場合に50万円を支払えば水を自由に使えるようになる」と勧誘された。
また、同県で同省職員を名乗る2人組が「子供向けにダムや橋の見学を実施している。15万円で参加できる」と勧誘していた。同省の名刺を持っており、省内に実在する電話番号が記載されていたという。
 関東地方などでダムの貯水率が低下し、同省が渇水対策本部を設置したことを受けた手口とみられる。国交省はホームページで「職員が戸別に自宅を訪ねて勧誘することはない」と注意を呼びかけている。

19、熊本地震 震災関連死、申請74件(熊本県市町村)
 熊本地震の避難生活に伴う体調悪化などで死亡したのは「震災関連死」に当たるとして、熊本市を中心とした少なくとも4市町の計74人の遺族が災害弔慰金を申請したことが分かった。うち10人は既に熊本市が関連死と認めた。申請には至らない相談、問い合わせも約200件に上り、建物倒壊、土砂崩れなどによる「直接死」の49人を上回る可能性がある。
 関連死かどうかは、医師らで構成する審査会が調べ、市町村が認定。認められると、遺族に弔慰金最大500万円が支給される。
 熊本県は当初、「車中泊」後に肺梗塞と診断された人など計20人を関連死の「疑い」として公表。審査を進めている熊本市はこれまで、県が公表した疑い例3人を含む10人を関連死と認めている。
 弔慰金の申請は熊本市で71件、八代市と益城町、高森町各1件だった。「関連死に当たるのではないか」といった相談、申請方法に関する問い合わせは計約200件あった。

20、熊本地震 半数が大破・倒壊(国土交通省)
 熊本地震で震度7を2度記録した熊本県益城町の建物のうち、1981年6月以前の旧耐震基準で建てられた建物の約半数が大破するか倒壊していたことが、国土交通省の調査で分かった。木造建築は現行耐震基準でも99棟が倒壊したことも判明。調査を踏まえ、同委は倒壊原因の分析や対策について報告をまとめる。
 益城町でも特に被害が激しかった地区の建物2,328棟(うち木造1,940棟)について、建築時期ごとの被害状況を調査。旧耐震基準で建てられた766棟のうち129棟(16.8%)が大破、230棟(30.0%)が倒壊していた。現行基準で建てられた建物は1,276棟で、倒壊は87棟(6.8%)だった。
 対象地区外も含めた町全体では、現行基準の木造建築99棟が倒壊。建築時期別の内訳は、現行基準が導入された1981年6月~2000年5月が92棟、阪神大震災を踏まえて柱の接合方法に関する規定が強化された2000年6月以降が7棟だった。
 99棟の中で柱の土台部分などの接合方法が確認できた94棟のうち、2000年6月の改定基準を満たしているものは4棟にとどまった。接合が不十分なため震動で接合部が破壊され、倒壊につながった可能性がある。
 今後、耐震基準の見直しなども含めて議論し、倒壊原因や防止策について最終報告をとりまとめる。

21、「大災害債」企業も発行(損害保険会社)
 「大災害債」と呼ぶ債券を企業が実質的に発行できるようにするサービスが始まった。大災害の発生時に元本が毀損する仕組みで、企業にはその分の資金が渡されるため「保険」のように使える。損害額の確定が必要なく、復旧の早い段階から資金を手にできるのも特徴だ。大災害債は利回りが高く、投資家の需要も強い。
 マグニチュード7を超える大地震や巨大台風など、あらかじめ決めた基準を超える災害が発生した際に元本の一部か全額が減額になる。1回あたりの発行額は100億~200億円で、主に鉄道や電力・ガス、広域な生産拠点を持つ製造業の活用を想定している。実損が発生しなくても資金を手にできるため、サプライチェーンの普及費用などに活用できるという。
 災害のレベル設定などで高度なノウハウが必要なため、金融機関が発行するケースはあったが事業会社には困難だった。企業とデリバティブ契約を結び、特別目的会社が発行する形で実質的に企業が発行できる仕組みを整えた。
 大災害債の市場はハリケーンの多い米国を中心に近年拡大を続け、2015年末の残高は240億ドル(2兆4千億円程度)。利回りが年4~5%と高いため、世界的な低金利を背景に海外の機関投資家などがファンドを通じて購入している。

22、熊本被災企業を支援(政投銀)
 日本政策投資銀行は、熊本地震の被災企業を支援するファンドを月内にも立ち上げる。規模は100億円程度。劣後ローンなど資本の性格を持つ資金を供給して企業の事業再生を後押しする。
 ファンドには九州フィナンシャルグループも出資を検討する。当初数年間で被災地の中堅・中小企業への投資を進め、10年程度の運営期間中に資金を回収する。
 政府系の地域経済活性化支援機構(REVIC)も月内をめどに2つの復興支援ファンドを立ち上げる。九州地域の地銀などから資金を募り、ゆうちょ銀行も出資を検討している。観光産業など被災地域の企業を投融資で支えたり、金融機関から貸付債権を買い取ることで「二重ローン」を防いだりする。
被災地の経済再生を担うファンドが相次ぎ誕生するが、有効活用に向け、ファンド間の連携や役割分担が必要になるとの指摘もある。

23、「防災庁」創設へ研究会(関西広域連合)
 近畿など8府県4政令指定都市でつくる関西広域連合は、国に新しい政府機関「防災庁」(仮称)の創設を提案する。
 広域連合の専門部会が昨秋、内閣府の防災担当部局を独立させ、東京と関西に拠点を置くように提案していた。複数の官庁に分かれる国の担当部署を統合し、防災対策を強化する目的だ。

24、帰還困難区域 一部解除へ(復興庁・福島7市町村)
 東京電力福島第一原発の事故で放射線量が最も高い地域に指定された帰還困難区域(対象約9千世帯、約2万4千人)について、政府は一部の地域を解除する方針を固めた。線量が下がってきたことから、住民の帰還が見込める町の中心部や主要道路などの除染を来年度から本格的に進め、5年後の2021年をめどに徐々に解除する考えだ。
 帰還困難区域は放射線量が年50ミリシーベルトを超え、立ち入りは原則禁止されている。面積は琵琶湖の約半分の計337平方キロ。この解除方針が決まるのは初めて。大半の地域は立ち入り制限を続け、除染作業も最低限にとどめる方針だ。
 政府・与党の方針では、除染で放射線量が居住できる水準(年20ミリ以下)に下がりそうな区画のうち、住民や廃炉関係者が住める場所を「復興拠点」として整備する。拠点につながる道路も除染し、費用は来年度予算に盛り込む。復興拠点の具体的な候補には、大熊町の役場周辺▽双葉町のJR双葉駅西側▽富岡町の夜ノ森地区▽浪江町の常磐道浪江インター周辺などが挙がっている。
 帰還困難区域の放射線量は、放射性物質が雨風で流されたり、自然に減衰したりして下がっている。大熊町中心部の県原子力センター付近では年約9ミリと、5年前の約5分の1だ。
 ただ、復興庁が毎年実施している避難者への意向調査では、帰還困難区域の世帯主のうち、戻ることを希望するのは原発周辺4町では1割強。このため、解除する地域は一部にとどめる。解除対象から外れた避難者からは反発も予想される。

25、「震度6強で倒壊」なお397棟 公立小中、耐震化率98.1%(文部科学省)
 文部科学省は、全国の公立学校の耐震状況について調査結果を発表した。公立小中学校の校舎や体育館のうち、「震度6強の地震で倒壊する危険性が高い」建物は397棟だった。これらを含む「耐震性がない建物」は全体で2,228棟で、耐震化率は前年に比べ2.5ポイント増の98.1%だった。
 2,228棟のうち、「震度6強の地震で倒壊する危険性が高い」が397棟、「震度6強の地震で倒壊する危険性がある」が1,270棟、「耐震診断が未実施」が561棟。
 政府は2013年6月に閣議決定した第2期教育振興基本計画で、2015年度までにすべての公立学校を耐震化する目標を明記。毎年通知を出すなど教育委員会に促してきたが、達成できなかった。自治体の財政事情が厳しかったり、学校の統廃合を控え耐震工事を見送ったりしているケースがあるという。
 2017年度末までに2,228棟のうち約半数は耐震化を完了する予定だが、残りの施設は完了時期が未定のままとなっている。
 都道府県別では、福井県と岐阜県が100%を達成した一方で、沖縄県は87.5%と全国で唯一90%を下回った。耐震性がない建物の棟数は北海道が357棟と最も多く、沖縄県が203棟、福島県が198棟、広島県が190棟、愛媛県が124棟と続いた。
 小中学校以外の公立学校の耐震化率は幼稚園が前年比4.3ポイント増の91.0%、高校が同2.7ポイント増の96.4%、特別支援学校が同1ポイント増の97.6%だった。体育館などのつり天井の落下防止対策については、小中学校で実施率は同9.5ポイント増の95%だった。

26、地震の原発への影響 発表震度基準引き下げ(原子力規制委員会)
 原子力規制委員会は、地震による原子力施設への影響を発表する震度の基準を引き下げたと発表した。
 原子力発電所など原子力施設が立地する市町村では、これまでの「震度5弱以上」を「震度4以上」に、立地都道府県では「震度6弱以上」を「震度5弱以上」にそれぞれ変えた。情報発信を強化し、国民の不安の声にこたえるのが狙い。
 規制委は原発などへの地震の影響について、ホームページ(HP)や短文投稿サイト「ツイッター」、登録制の電子メールなどで情報を発信している。今年4月の熊本地震以降、九州地域などで震度の基準を一時的に引き下げたが、これをきっかけに基準を見直した。

27、津波検知 最大20分早く(気象庁)
 気象庁は、東北・関東地方の太平洋側や四国・紀伊半島沖の海底に設置した津波計156機のデータ運用を始めると発表した。同庁が運用する海底津波計は従来の約4倍となる。より沖合で測る体制となり、最大20分程度早く津波を検知できる。南海トラフ巨大地震などに備えて津波予測の精度を高めるのが狙いだ。
 新たな津波計は千葉県房総沖から北海道東方沖の125地点と、和歌山から高知県南方沖の海底31地点で沖合約200キロ以内に設けた。防災科学技術研究所などが海底ケーブルを敷き、津波計と地震計を配備。観測データを気象庁が受信する。
 海底津波計は水圧の変化で津波を検知する。従来は太平洋側を中心に点在していたが、集中して沖合にも配備することで、早く正確に津波高を予測できるようになる。

28、津波時 消防団の安全確保 89市町村、退避手引なし(消防庁)
 消防庁は、津波被害の恐れのある全国656市区町村のうち、89市町村が災害対応に当たる消防団員の退避のタイミングなどを定めた手引を作成していなかったと発表した。
 このうち、長崎など6府県の12市町は作成作業に入っていなかった。「被害想定が軽い」「人員、予算不足」「地域防災計画やマニュアルを策定、見直し中」などを理由に挙げた。
 未作成の市町村は前年同時期の181からほぼ半減したが、なお全体の14%に上った。東日本大震災では、住民の避難誘導や水門の閉鎖などに当たった多くの消防団員が犠牲になっており、消防庁は早急な作成を促すため、今回初めて未作成の市町村名を公表した。
 未作成の89市町村のうち、作成予定は「10月1日まで」27市町村、「本年度中」38市町村、「来年度以降」12市町村だった。

29、熊本地震教訓に支援策を見直し(内閣府)
 内閣府は、熊本地震を教訓に大規模地震の応急対策や生活支援策について検討するワーキンググループの初会合を開いた。被災した自治体への支援や避難生活、支援物資輸送の改善策などについて年内に答申をまとめる。
 熊本地震では政府が支援物資を自治体の要望を待たずに送る「プッシュ型支援」を展開したが、一部の避難所に行き届かなかった。車の中で寝泊まりするなど指定避難所以外で生活する人も想定以上に多く、避難者全体の状況を把握しづらかった。

[防災短信]
01、森林火災防止日本と連携
 ~京大・北大とインドネシア 泥炭地の乾燥予防~ 2016年5月31日付

 日本経済新聞(夕刊)
02、マンション9割被害
 ~熊本地震、572棟中~ 2016年6月21日付 読売新聞
03、課徴金14億命令
 ~公正取引委員会 震災復旧談合で11社に~ 2016年6月14日付 日本経済新聞(夕刊)
04、復興議論 住民交流加速
 ~熊本地震 西原村集団移転制度を説明~ 2016年6月02日付 日本経済新聞(夕刊)
05、クマ被害 入山自粛要請
 ~秋田県警 50人で巡回・検問~ 2016年6月18日付 日本経済新聞(夕刊)
06、「救急機動部隊」スタンバイ
 ~東京消防庁、東京駅などで対応~ 2016年6月17日付 日本経済新聞(夕刊)
07、防災、近所で助け合い
 ~品川区 5地区に分け講座~ 2016年6月26日付 日本経済新聞
08、改正風俗営業法施行
 ~明るさの基準内でダンスクラブ夜通しOK~ 2016年6月23日付 日本経済新聞(夕刊)
09、災害時、校舎を避難所
 ~外国人も支援 文京区~ 2016年6月22日付 日本経済新聞
10、海底活断層の動き 岩石を調べ予測
 ~阪大、海洋研究開発機構~ 2016年6月22日付 日本経済新聞
11、トレーラハウスに避難
 ~熊本地震、障害者や妊産婦ら~ 2016年6月20日付 日本経済新聞(夕刊)
12、もろい地震 被害拡大
 ~耐震基準 施設の重要度で~ 2016年6月20日付 日本経済新聞
13、直下地震に備え1,000億円
 ~港区、インフラ復旧へ基金~ 2016年7月07日付 日本経済新聞
14、白河の象徴 城守る
 ~小峰城(白河市)震災越え石垣修復 ノウハウ熊本へ~ 2016年7月04日付

 日本経済新聞(夕刊)
15、「制振装置」安価に
 ~第一工業大など 住宅の揺れ半減~ 2016年7月04日付 日本経済新聞(夕刊)
16、巨大噴火の海底火山調査
 ~神戸大、薩摩半島南方で~ 2016年7月04日付 日本経済新聞
17、地震訓練 列車横転など想定
 ~江戸川河川敷 警視庁、住民ら900人参加~ 2016年7月15日付 日本経済新聞
18、富士山噴火想定 スマホ使い訓練
 ~静岡県、アプリで情報伝達~ 2016年7月15日付 日本経済新聞(夕刊)
19、M6.8以上 中国地方50%
 ~文部科学省 活断層地震、30年以内に~ 2016年7月02日付 日本経済新聞
20、避難所生活、なお4,675人
 ~熊本県 罹災証明書の発行は約80%~ 2016年7月15日付 日本経済新聞
21、熊本被災宅地「危険」2,700件
 ~“中越”の5倍、長さ5km液状化地盤の帯~ 2016年7月16日付 朝日新聞
22、ボランティア足りず
 ~熊本地震 ピーク時の5分の1~ 2016年7月17日付 朝日新聞
23、熊本地震の応急仮設
 ~土砂災害警戒区域に60戸~ 2016年7月17日付 朝日新聞
24、ゲリラ豪雨予測へ新技術
 ~京大 TV電波で水蒸気把握、愛媛大 太陽光発電量で雲推定~ 2016年7月18日付

 日本経済新聞
25、防災連携 鍛える住民
 ~熊本・東北 大地震が教訓~ 2016年7月18日付 日本経済新聞
26、防災にビッグデータ活用
 ~SAPジャパン、揺れ解析で倒壊予測~ 2016年7月27日付 日本経済新聞
27、国が抜き打ち検査
 ~地盤改良工事 データ改ざん受け~ 2016年7月06日付 日本経済新聞
28、明石歩道橋事故 15年
 ~人の密集防ぐ 花火大会継ぐ教訓~ 2016年7月21日付 日本経済新聞(夕刊)
29、大飯の揺れ想定 見直しは不要
 ~原子力規制委見解 島崎氏の主張退け~ 2016年7月20日付 日本経済新聞
30、民泊、無許可営業の疑い
 ~許可政令施行後 東京都内で初摘発~ 2016年7月13日付 日本経済新聞
31、災害にらみ輸送協定
 ~江東区、タクシー組合と~ 2016年7月20日付 日本経済新聞
32、安全マップ 小学生が作成
 ~荒川区 タブレット駆使~ 2016年7月20日付 日本経済新聞
33、ゴルフ場の風評被害認定
 ~東京地裁、東電に賠償命令~ 2016年7月21日付 日本経済新聞
34、水道耐震化に財政の壁
 ~地方自治体 事業費捻出へ広域連携~ 2016年7月22日付 日本経済新聞
35、夏休み 親子で防災体験
 ~泊りがけで“避難生活”など~ 2016年7月22日付 日本経済新聞(夕刊)
36、被災者の自治会発足に支援
 ~石巻市の大規模移転地~ 2016年7月24日付 日本経済新聞
37、「山の日」前に安全登山を
 ~遭難減へ山岳県アタック~ 2016年7月25日付 日本経済新聞
38、東海大生死亡のアパート 公費解体に着手
 ~熊本・南阿蘇村 全村で800棟解体必要 最大2年~ 2016年7月27日付

 日本経済新聞(夕刊)
39、マンション保存工事開始
 ~JR西日本 尼崎事故現場、一部に反対も~ 2016年7月27日付 日本経済新聞(夕刊)
40、被災者に疲労、ストレス
 ~イタリア地震 防災体制に批判も~ 2016年8月27日付 読売新聞

 

 

 

【参考文献】

1、 2016年6月11日付 日本経済新聞
2、 2016年6月16日付 朝日新聞(夕刊)
3、 2016年6月24日付 日本経済新聞(首都圏)
4、 2016年6月04日付 毎日新聞
5、 2016年6月21日付 日本経済新聞
6、 2016年6月25日付 日本経済新聞
7、 2016年6月15日付 日本経済新聞(夕刊)
8、 2016年6月15日付 日本経済新聞
9、 2016年6月04日付 日本経済新聞(夕刊)
10、 2016年6月03日付 日本経済新聞
11、 2016年6月19日付 日本経済新聞
12、 2016年6月30日付 日本経済新聞(夕刊)
13、 2016年6月29日付 日本経済新聞
14、 2016年6月26日付 日本経済新聞(夕刊)
15、 2016年6月21日付 日本経済新聞
16、 2016年6月21日付 日本経済新聞
17、 2016年7月07日付 日本経済新聞
18、 2016年7月07日付 日本経済新聞(夕刊)
19、 2016年7月16日付 日本経済新聞(夕刊)
20、 2016年7月01日付 日本経済新聞
21、 2016年7月02日付 日本経済新聞
22、 2016年7月11日付 日本経済新聞
23、 2016年7月27日付 日本経済新聞
24、 2016年7月17日付 朝日新聞
25、 2016年7月25日付 日本経済新聞
26、 2016年7月14日付 読売新聞
27、 2016年7月22日付 日本経済新聞
28、 2016年7月30日付 日本経済新聞
29、 2016年7月30日付 日本経済新聞

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第86号平成29年9月号支援物資の輸送を改善(中央防災会議)他
第85号平成29年8月号惨事ストレスケア2,700人(消防庁)他
第84号平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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