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防災評論 第77号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第77号)【平成28年12月号】

 

【目次】
〔政治行政の動向概観〕
〔個別の動き〕
01、「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)
02、1000年に1度の豪雨 浸水域公表(国土交通省)
03、避難準備情報 首相が改善検討(内閣)
04、熊本地震被害額 県全体は3.7兆円(熊本県)
05、竜巻を予測せよ(気象庁)
06、災害時、妊産婦の命守れ(厚生労働省)
07、浸水予測 素早く配信(国土交通省)
08、災害時の事業継続計画「BCP」見直し(ソニー)
09、避難情報だけで命守れず(岩手県)
10、高齢者ら利用施設 浸水想定域 避難計画2%(国土交通省)
11、津波避難所 管理者待たず自ら解錠(地方自治体)
12、首都圏巨大地震 ビルの揺れ幅50センチ超も(地震調査委員会)
13、地震保険料 地域細かく(損保ジャパン)
14、家屋被害認定 不服3割(内閣府・熊本県市町村)
15、強い台風、20世紀前半にも(横浜国大)
16、防災無線 機能しない恐れ(会計検査院)
17、水害恐れ、市町村長に伝達(国土交通省)
18、津波被害 管理者責任 割れる司法(裁判所)
19、救急車を効率配置(総務省・消防庁)
20、「福祉避難所」を知らなかった(鳥取・倉吉)
21、長期使用の点検制度 対象給湯器など事故800件(NITE)
22、業務継続計画 6割の自治体 未策定(消防庁)
23、AEDで救命率2倍に(京大)
24、台風へ備え 意識、7割変化(ウェザーニューズ)
25、震災関連死 11人車中泊(熊本市)
26、津波見ても避難ためらう(気象庁)
27、火山噴火時避難計画、1割のみ(内閣府)
28、緊急地震速報 誤報減らせ(気象庁)

〔政治行政の動向概観〕
 東北地方に昨年8月、上陸した台風10号の豪雨で高齢者施設に多くの犠牲者が出たことを受け、再発防止策を話し合っていた内閣府は、避難情報は対象者を明示し、分かりやすく具体的に呼び掛けるべきだとの報告書をまとめた。意味が分かりにくいと指摘が出ていた「避難準備情報」の名称は「避難準備・高齢者避難開始」と変更した。
 台風10号では、岩手県岩泉町の施設が高齢者の移動開始を求める避難準備情報の意味を理解せず、避難が遅れた。
 しかし、問題は、単に分かりやすいか、分かりにくいかではない。災害時に一人ひとりがどういう行動を取るべきかということが大事だ。例えば、1時間に30~50mmの雨量を「バケツをひっくり返したように」と表現することが多い。だが、大変な雨が降るのだな、ということはイメージで分かっても、具体的な防災行動には結びつかない。
 現在の防災用語は、河川の水位、雨量、地震の回数など、まず自然界の観測結果や予測結果が出される。だが、それに対応して数学物理のように個々の住民や地域の危険性が確定することにはならない。
 大事なのは、警報が出たときに、何するべきかを明確にすることだ。例えば、地下街から避難しなくてはならないのは、1時間あたり雨量でどれくらいなのか、などが関係者に理解できるようにする必要がある。また、火山噴火の「4」の場合は居住者に避難の準備を呼び掛ける。一方、同じ4でも、土砂災害では、急いで避難するよう求める。しかし、災害の種類によってその決め方が多種多様であることも問題を難しくしている。
 情報の受け手にとって、災害の種類に係わらず、同一の物差しで危険性を判断できるようにしていかなければならない。
 そこで考えられるのは、防災用語を体系化し、共通した簡素な枠組みで伝えることだ。例えば、災害の種類に係わらず「2」は注意、「3」は避難準備、「4」は避難、「5」は緊急避難、というように共通数値化することも一案である。
 もっとも、現在の用語を一朝一夕に体系化はできない。防災士は、当面これら防災用語の意味を正確に理解し、それを地域住民に的確に伝達するという使命を持っている。

〔個別の動き〕
1、「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)
 中央防災会議は、大都市で洪水が発生した場合の住民避難の方法を検討するワーキンググループの初会合を開いた。首都圏や中部、近畿地方の海抜ゼロメートル地帯の住民は400万人に上る。集中豪雨による河川の氾濫が多発していることを踏まえ、避難計画や自治体の連携などについて議論を進める。
 東京、名古屋、大阪などの大都市圏が洪水被害に見舞われた場合、避難場所確保などのために、行政区域をまたいだ自治体間の連携が欠かせない。市区町村がどのように連絡、調整を進めるべきかなどが主要な論点になる。
 通行止めの発生により、幹線道路が大混雑することも想定。鉄道やバスなどの公共交通機関を避難に活用する方法も議論する。初会合では移動手段が失われた場合には「浸水域内であっても民間の高層ビルを積極的に避難場所にすべきだ」とする意見も出た。
 2015年9月の関東・東北豪雨では、自治体が避難勧告を発令するタイミングや区域を事前に定めておらず、多くの人が避難できずに孤立する原因となった。
 海抜ゼロメートル地帯を含む東京・江東区など荒川流域の5自治体では、1959年の伊勢湾台風と同規模の台風で、堤防の決壊や東京湾の高潮が発生し、ほぼ全域が浸水する恐れがある。大規模な浸水が予測された際に、より多くの住民を域外に避難させるため、避難を呼びかけるタイミングなども議題にする見通しだ。

2、1000年に1度の豪雨 浸水域公表(国土交通省)
 国土交通省は2016年から、頻度は低いが、より大きな被害が出る可能性がある「1千年に1回」の豪雨を想定した「洪水浸水想定区域」の公表を始めた。これまでより被害想定が大幅に拡大する地域も少なくなく、地元住民や企業からは「現実味がない」と困惑の声も上がる。
 国交省関東地方整備局によると、これまでは豪雨の浸水想定区域を「200年に1回」の大雨の想定で指定していた。しかし、2013年の伊豆大島や2014年の広島市など、各地で想定を上回る豪雨による大規模土砂災害が発生したため、2015年に水防法を改正。これまでより想定条件を厳しくし、1千年に1回の豪雨を前提にした浸水想定区域を設定した。
 国土交通省はこれまでに全国で60を超える水系について新しい浸水想定区域を公表している。1千年に1回というのはあくまで統計上の話だが、この規模の豪雨がいつ来てもおかしくないという心構えを持って避難経路や避難所をよく確認してほしい。

3、避難準備情報 首相が改善検討(内閣)
 首相は衆議院本会議で、台風による甚大な被害が予想される際、高齢者らの避難開始を求める避難準備情報について「情報を受け取った方が的確な行動を取れるよう、名称変更も含め、年内をめどに改善を検討する」と述べた。
 岩手県岩泉町の高齢者グループホームで8月、台風10号により入所者が死亡した災害では、避難準備情報の意味をグループホーム側が知らなかった。
首相は「都道府県などと連携し、社会福祉施設の避難計画を再点検する」と強調した。

4、熊本地震被害額 県全体は3.7兆円(熊本県)
 熊本県は、熊本地震による被害額を試算し、9月14日時点で3兆7850億円に上ると発表した。県全体の被害額を公表するのは初めて。被害の内訳は住宅関連が最も多く、2兆377億円と半分以上を占めた。全壊約8千棟、一部損壊を含めた被害は計約17万棟に及び、宅地の崩壊なども深刻なことから総額が膨らんだ。
 県は復旧・復興プランの改定案も公表。おおむね4年後までに仮設住宅を解消し、自宅の再建や災害公営住宅への入居を進めるとしている。

5、竜巻を予測せよ(気象庁)
 突然現れて大きな被害をもたらし、姿を消す強風の渦である、竜巻は予測が難しく、気象庁の「竜巻注意情報」の的中率はわずか数%。研究者たちは短時間で積乱雲の全容を映せる高性能レーダーなどを使い、高精度の予測を可能にしようと知恵を絞っている。
2016年6月21日、岩手県奥州市。プレハブ小屋など約20棟の建物がめちゃくちゃに壊れた。気象台は突風を推定風速45メートルの「竜巻」と認定した。
 発生時、「竜巻注意情報」は出ていなかった。
 積乱雲が急速に発達すると竜巻が起きやすいが、詳細なメカニズムはわかっていない。早いときには数分で消滅し、範囲も直径数百メートル以下と狭い。気象衛星やレーダーでは兆候はおろか、発生した後も捕捉するのは難しい。
 2005年、山形県庄内町で列車が脱線転覆し5人が死亡。2013年には千葉、埼玉両県で建物2千棟が損壊――。気象庁によると、竜巻を含む突風被害は年50件前後確認されている。同庁は被害を未然に防ぐために2008年、竜巻注意情報の運用を始めた。
 ただ精度は低く、2015年は402回出して実際に竜巻が起きたのはわずか4%の17回。突風被害の6割は注意情報がない状況で起きている。
 茨城県つくば市の気象研究所に、高さ40メートルの鉄塔、上部のドームの中では「フェーズドアレイレーダー」が回っている。このレーダーを使えば高さ数キロに及ぶ積乱雲の全体像を30秒前後で把握できる。従来型の10分の1の時間だ。
 気象研はJR東日本と組み、竜巻を自動認識すると即座に鉄道の運行を止めるシステムの開発にも取り組んでいる。
 カギを握るのは判別の精度と時間。今後フェーズドアレイのような高性能レーダーが常時観測で用いられると、データは膨大になる。短時間で処理し、予測につなげなければ、精密な観測が無駄になってしまう。
 人工知能(AI)などを使えば、データをもっと効率的に処理できる。将来は緊急地震速報のように、国民全体で利用できるシステムを作る方向だ。

6、災害時、妊産婦の命守れ(厚生労働省)
 厚生労働省は大規模な災害が起きた際、治療や搬送が必要な妊産婦や乳幼児の情報を集め、適切な医療機関につなぐ調整役「小児周産期災害リエゾン」の養成を始める。都道府県ごとに少なくとも2人、計100人を配置する方針。東日本大震災で妊産婦らが病院をたらい回しにされる事態が問題化したことを教訓に、災害時に母子の命を守る仕組みを整える。
 厚労省の想定では、小児周産期災害リエゾンは都道府県の災害対策本部などに詰め、被災地の医療機関や保健所などから搬送が必要な妊産婦の情報を把握。受け入れ可能な被災地内外の医療機関に搬送するための調整をする。
 被災地の医療機関で小児科医や産婦人科医が不足した場合は、医師を派遣するよう学会や行政に要請・調整する。妊産婦や乳児に必要な医薬品や物資を避難所などに割り振る役割も担う。
 リエゾンの候補者は小児科や産婦人科の医師、看護師、助産師ら。
 東日本大震災では、地震や津波被害で多くの医療機関が機能不全に陥り、他の病院に搬送された妊婦がたらい回しになったり、ミルクやおむつなど赤ちゃんに必要な物資が届かないといった事態が発生した。
 今年4月の熊本地震では、熊本県の新生児医療の中核を担う「総合周産期母子医療センター」に指定されている熊本市民病院が損傷し、使えなくなったが、東日本大震災を教訓に、県外から駆けつけた医師4人がリエゾンの役割を担い、新生児を県外の病院に搬送するなどの活動を続けた。

7、浸水予測 素早く配信(国土交通省)
 国土交通省はゲリラ豪雨対策として、小型の気象レーダーで積乱雲を感知し、地区や道路がどの程度浸水するかを素早く予測するシステムを導入する。自治体が活用し、インターネットを通じて感知から5分以内に予想される降雨量や浸水域を住民に配信。迅速な避難などに役立ててもらう。
 新たなシステムでは、直径1メートル程度の小型レーダーを使って半径数十キロの範囲にある局地的な豪雨をもたらす積乱雲を感知する。地区ごとの降雨量がどの程度になるかを計算、それをもとに下水道の水位変動を加味し、住宅街や道路などでの浸水状況を予測する仕組みだ。
 国交省や気象庁は山頂などの大型レーダーで雨雲を観測している。広範囲に観測できる半面、急速に発達する積乱雲を把握し、ゲリラ豪雨を予測するのは難しかった。小型レーダーを市町村が整備すれば、それぞれの地域の状況をおおむねカバーできるようになる。
 自治体は予測した降雨量や浸水域について、10分刻みで最大30分後までの状況をそれぞれのサイトで地図上に表示。浸水域はその程度に応じて3段階に色分けする。道路冠水にとどまる浸水15センチ未満は水色、15センチ以上45センチ未満で床下浸水が想定される場合は黄色、45センチ以上で床上浸水が見込まれる場合は赤色で示す。
 近年は都市部を中心に予測が難しい集中豪雨が多発している。既存下水道管の多くは1時間あたり50~60ミリ程度の降雨量まで対応できるが、それを上回る雨が降って地上にあふれ出すことも少なくない。

国交省が導入するゲリラ豪雨予測システム

①レーダーで豪雨をもたらす積乱雲を感知

②積乱雲感知から5分以内に浸水状況を予測し配信

 

8、災害時の事業継続計画「BCP」見直し(ソニー)
 ソニーは災害時の事業継続計画(BCP)を見直す。カメラに使われる画像センサーの主力拠点である熊本工場が熊本地震で被災した経験を受け、今後は工場付近で地震が起きた場合、約2か月で震災前の生産体制を回復できるようにする。熊本地震での復旧ノウハウを今後の教訓として生かしたい考えだ。
 早期に新しいBCPで訓練を行う計画だ。

9、避難情報だけで命守れず(岩手県)
 台風10号の豪雨による河川氾濫で、20人を超える死者行方不明者を出した岩手県岩泉町。犠牲の多くは高齢者だった。
 小本川氾濫で入所者9人が亡くなった岩泉町の高齢者グループホーム。午前9時、町は全域に避難準備情報を出した。しかし同ホームは避難せず、入所者らは濁流にのみ込まれた。
 国の指針で、同情報は「高齢者や障害者など避難に時間がかかる災害弱者に避難行動の開始を求める」ものだが、施設運営者は意味を知らなかった。
 国は、犠牲者の約6割が65歳以上だった東日本大震災を踏まえ、2013年に災害対策基本法を改正。全国の市町村に対して、避難行動で助けが必要な人(要支援者)の名簿を作成し、消防や民生委員など避難支援者が情報を共有、個別の避難計画を策定することを求めた。
 消防庁の調査では、要支援者名簿は2016年3月末時点で全国1,734市町村の98%が作成または作成見込みだ。
 岩泉町も名簿を作成。高齢者や障害者など約1,500人の要支援者の居住形態などの情報を支援者らが共有する仕組みも整えていた。
 しかし東京23区より面積が広い山林に集落が点在する人口9,900人の町の高齢化率は全国平均(26.7%)を上回る4割で、100%の地区もある。
 過疎・高齢化が進み、役場職員も減る地方の実情をみると、法律や国の指示に基づく対応だけでは、住民の命を守ることはできない。岩泉町の災害を踏まえ、地域を挙げての避難支援体制を築き、空振りでも構わない避難行動が重要と感じる。

10、高齢者ら利用施設 浸水想定域 避難計画2%(国土交通省)
 大規模な洪水などの際に浸水する恐れがある地域内の、高齢者や障害者、乳幼児ら「要配慮者」が利用する施設のうち、避難計画をもつ施設は2%にとどまっていることが国土交通省の調査で分かった。岩手県の高齢者施設で9人が死亡した豪雨災害を受けて国交省は、避難計画作りを促す説明会を全国の要配慮者利用施設を対象に始める。
 水防法は、最大規模の降雨による洪水や雨水を川に排出できなくなる内水氾濫などの際の「浸水想定区域」を指定するよう、国や都道府県に求めている。3年前の改正で、同区域にある特別養護老人ホームなど高齢者施設や障害者施設などの要配慮者利用施設に対し、避難計画を作る「努力義務」が課せられた。
 だが、国交省が各都道府県を通じて調べると、3万1,208施設(2016年3月末現在)のうち、作成済みだったのは716だった。作成済みの割合が最も高かったのは山口県で20.4%。愛媛県10.0%、栃木県9.8%、東京都9.2%などと続いた。山口県では2009年に特別養護老人ホームで7人が死亡した災害を受け、対策を進めてきたという。
 一方、山形、富山、三重、滋賀、兵庫、奈良、鳥取、島根、広島、徳島、福岡、長崎、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の16県は作成済みの施設がゼロだった。
 国交省は計画作成の手引を作成。洪水注意報発表や河川の氾濫注意情報の発令段階で「注意体制」を敷いて洪水予報等の情報収集を行う▽避難準備情報発令や洪水警報発表の段階で「警戒体制」とし周辺住民への事前協力を依頼▽避難勧告の発令や河川の氾濫危険情報の発表で「非常体制」を敷き避難誘導を図る、などと定めた。
 台風10号の豪雨による浸水被害で9人が亡くなった岩手県岩泉町の高齢者グループホームでは水防法に基づく避難計画が策定されていなかった。施設の地区は浸水想定区域に指定されていなかった。要配慮者利用施設の避難計画の作成では、津波に対しては、津波防災地域づくり法に基づく警戒区域内の施設に作成が義務づけられている。
 水防法に基づく浸水想定区域内の要配慮者利用施設の避難計画作りには津波災害と違って強制力はないが、今後は努力義務から義務へという流れになっていく。高齢者施設には職員10人以下の小規模のところも多く、避難開始の判断基準をどうするかなど、計画を作るのが難しい側面がある。

11、津波避難所 管理者待たず自ら解錠(地方自治体)
 南海トラフ巨大地震による津波被害が想定される地域で、避難所に鍵を常備させる動きが広がっている。発生時への不安を少しでも解消することが目的で、施錠されたボックス内に鍵を保管し、地震を感知すると自動的に解錠される仕組みを導入するなど方法はさまざま。
 南海トラフ巨大地震で最大で高さ17メートルの津波が想定されている和歌山県美浜町では昨年度、小学校など町内12か所の避難所などに指定されている施設に、鍵を納めた「地震解錠ボックス」を取り付けた。長い海岸線を抱える同町は、南海トラフ巨大地震の津波で住宅地の9割、町全体の4割以上が浸水すると想定。津波到達までは16分とされており、近くの施設に逃げ込んで上階に避難するよう呼びかけている。
 同ボックスは各施設のドア付近に設置されている。普段は施錠しているが、震度5以上の地震で内蔵された分銅が揺れてワイヤが外れ、自動的に解錠される仕組みになっている。
これまで施設の鍵は自治会長や教員らが管理してきたが、夜間の災害などは特に鍵を持つ担当者を待っていられない。避難者の安全を確保するためにも、緊急時の避難場所に鍵を設置することは必須だ。
 また、南海トラフ巨大地震の津波被害が想定される徳島市も、同様の設備を導入。一時避難場所となる津波避難ビルなど50か所以上に設置済みだ。このほか三重県津市などでも取り入れている。
 また、東日本大震災の被災地でも、同様の対策を進める自治体もある。このうち、宮城県南三陸町は、高台の小中学校など町内3か所の避難所で、ボタンを押すと、いつでも箱から鍵を取り出せるシステムを導入。防犯上、同時にサイレンが鳴り、警備会社に通報される仕組みになっている。

12、首都圏巨大地震 ビルの揺れ幅50センチ超も(地震調査委員会)
 政府の地震調査委員会は、過去に関東大震災などを引き起こした相模トラフで再び巨大地震が起きた場合、各地の高層ビルが長周期地震動によってどれくらい揺れるかをまとめた地図を公表した。東京湾岸沿いを中心に、東京都や千葉県、神奈川県のほか群馬県の一部で、高層階は立っていられないほどの揺れに見舞われるという。
 長周期地震動は、高層ビルなどを大きく長時間揺らすタイプの地震動。調査委は、1923年の関東大震災(マグニチュード=M=7.9)と、同地域の過去最大級の地震である1703年の元禄地震(M8.2)が再来したと想定し、コンピューターを使って高層建築物の揺れを計算した。
 揺れの強さは建物によって異なるが、20階程度の高層ビルは、東京都や神奈川県の東部、千葉県の中南部の広い範囲で1秒当たりの揺れ幅が50センチを超え、立っていられない状態になることが分かった。東京都八王子市、神奈川県小田原市などでは特に強く揺れ、1秒当たりの揺れ幅が2メートル程度になるとみられる。
 ただし1990年以降に建てられた建物であれば、倒壊には至らないとみている。
 2003年の十勝沖地震では震源から250キロ離れた北海道苫小牧市の石油タンクが大きく揺れて火災を起こした。石油タンクや橋などの大型建築物は、千葉県中部や神奈川県北部で特に大きく揺れると推定される。

13、地震保険料 地域細かく(損保ジャパン)
 損害保険ジャパン日本興亜は企業向け地震保険を大きく見直す。現在は都道府県別に設定している保険料率の区分を地震のリスクに応じて948地域に細分化する。噴火の被害も補償対象とするとともに、多くの地域で保険金の限度額を引き上げる。地域ごとにきめ細かく損害を補償する狙いで、津波被害などを受けやすい沿岸部の保険料率は上がり、内陸部は下がる公算が大きい。
 見直しの最大のポイントは地震リスクを反映した保険料率を地域ごとに細かく設定することだ。今は都道府県ごとに47地域に区分しているが地震による倒壊や火災、津波といったリスクを正確に織り込めていなかった。郵便番号に対応する948地域に分け、それぞれのリスクを判定した。
 防災科学技術研究所などと共同で地震リスクを評価する独自のモデルを開発。津波であれば発生場所から津波がどのくらいの高さや速さで建物に被害をもたらすかを試算できるようになった。
 建物の構造による損害の違いも保険料率に加味する。補修費用がかさむ鉄筋コンクリート造の建物を平均20%程度引き上げる一方、鉄骨造や木造の建物は平均15%程度引き下げる。立地地域と構造の両方を反映すると、4割の企業では保険料は上昇し、6割が低下する見込みだという。
 例えば、南海トラフ地震で見込まれる被害をより精緻に分析すると、太平洋側の内陸部は保険料が下がり、沿岸部は上昇しやすい傾向があったという。また、首都圏で大地震が起きると保険金の支払いが大きく膨らむ。こうしたリスクを保険料率に反映した。
 見直しのもう一つのポイントは補償内容の拡充だ。噴火に関連した火災や爆発事故で被る損害も補償の対象にする。これまで1970年以前に造られた工場や事業所は地震保険に加入できなかったが、新たに補償対象とする。建物や設備だけでなく生産中の商品や製品も補償する。
 なお、家庭向けの地震保険は、損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構が算出する基準価格に従って保険料や補償を決める仕組み。一方、企業向けは各社共通の基準価格がない。政府が南海トラフ地震が起きた場合の被害想定を引き上げたことを受け、東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険は2014年に保険料を引き上げた。両社は当面保険料率を動かす予定はないという。

14、家屋被害認定 不服3割(内閣府・熊本県市町村)
 熊本地震では、熊本、大分両県がまとめた家屋被害は約18万棟に上る。被害程度の認定調査が続いていて、今後さらに増える見込みで、1次調査の結果を不服として2次調査を依頼した被災者は熊本県で約27%に上る。
 認定調査は、罹災証明書の交付のために実施される。1次調査は建物の外観で見るが、2次は内部も含めて詳しく調べるため、被害程度が重くなることが多いとされる。熊本県が内閣府の方針を受け、条件付きで半壊でも応急仮設住宅への入居対象としたことも、2次に進む人が増えたことに影響しているとみられる。
 熊本県では市町村が18万7,869件(一部住宅以外も含む)の1次調査をしたが、そのうち2次調査を依頼したケースは4万9,698件。うち約3,500件はまだ調査を終えておらず、「3次」以降の再調査の依頼も2,651件あった。
 1995年の阪神・淡路大震災で被害を受けた神戸市では、2次調査に進んだ割合は1割程度だった。

15、強い台風、20世紀前半にも(横浜国大)
 横浜国立大学は、気象庁が統計を取り始める前の20世紀前半に、強い台風が何度も日本に上陸していたことを独自の手法で明らかにした。当時は海面水温が現在より低かったため、台風の強さと海面水温の関係がそれほど深くない可能性が出てきた。
 20世紀で上陸個数が最も多かった年は1950年の10個で、気象庁統計による2004年と同数だった。1973年以降は上陸しなかった年が4回あったのに対し、1900~1972年までは毎年台風が上陸していた。
 台風の強さで分けると、上陸時の気圧が970ヘクトパスカル未満の強い台風の割合は、20世紀後半以降の方が前半より大きかった。しかし、930ヘクトパスカル未満の非常に強い台風は室戸(1934年)、枕崎(1945年)、伊勢湾(1959年)の3個だけで、最近は50年以上も上陸していない。
 2016年は10月9日までに20個の台風が発生し、うち6個が上陸している。地球温暖化で海面水温が上昇すると水蒸気量が増えて台風が強くなるといわれるが、100年前は現在より約1度低かった。その当時でも強い台風が上陸していたとすれば、台風の発生・成長で海水温以外の要因をさぐる必要がありそうだ。

16、防災無線 機能しない恐れ(会計検査院)
 災害時に住民へ避難などを呼び掛ける防災行政無線のうち、15都道府県の27市区町が設置した計819基が地震発生時に機能しない恐れのあることが、会計検査院の調べで分かった。設置した建物の耐震性が確保されていないことなどが理由。検査院は、設置のための交付金を支給する国土交通省に自治体への指導などを求めた。
 2008~2015年度に20都道府県の95市区町村が設置した計1万4,093基を調査。福島県相馬市と高知県香南市では、情報発信元となる親局計2基が建築基準法上、地震での倒壊の危険性が高いなどと判定され耐震性が確保されていない建物に設置されていた。11市区は同様の建物に、情報を拡声放送する子局計23基を設けていた。
また20市区町は、旧耐震基準に基づいて建設されたのに耐震診断を受けておらず、必要な耐震性が確認できていない建物に親局計2基、子局計60基を設置していた。さらに、問題を指摘された親局計4基から情報を受信する子局が計732基あった。

17、水害恐れ、市町村長に伝達(国土交通省)
 台風10号で岩手県岩泉町の小本(おもと)川が氾濫し多数の死者が出た被害で、県と町の情報共有体制の不備が明らかになり、国土交通省は、都道府県が管理する河川で氾濫の恐れがある場合、都道府県の担当者が市町村の首長に直接連絡する「ホットライン」を全国で整備する方針を決めた。住民の早期避難につなげる狙い。
 国交省は今年度中にホットラインの運用方法の指針をつくり、都道府県に配布する方針。
 国が管理する河川では、豪雨で水位が上がり河川が危険な状態になった場合、国の担当者が市町村の首長に電話で水位の状態を直接連絡している。一方、都道府県が管理する河川では、都道府県の担当者が市町村の首長に直接連絡しているのは千葉や栃木など11県にとどまっている。
 台風10号の豪雨で、岩手県が管理する小本川が氾濫した岩泉町では、グループホームの入所者9人を含む計21人が犠牲になった。当時、小本川の水位は避難勧告の発表基準を超えており、県は町に情報を伝えたという。しかし、避難勧告の発表を判断する町長には伝わらず、グループホーム周辺に勧告は出なかった。
 小本川など都道府県が管理する2級河川は、1級河川に比べ流域が狭く、激しい雨で水位が急上昇しやすい。1級河川でも都道府県が管理する区間は約7万7千キロメートルあり、国が管理する区間の7倍に相当する。台風10号の被害を教訓に住民の迅速な避難につなげるため、国交省は都道府県が管理する河川でも市町村の首長に直接情報が伝わるようホットラインの導入を決めた。

18、津波被害 管理者責任 割れる司法(裁判所)
 東日本大震災では、津波で家族を失った遺族が、学校や企業の責任を追及する訴訟が相次いだ。大川小学校の判決は学校側に注意義務違反があったことを認めたが、これまでの裁判所の判断は割れている。「想定外」の災害で管理者の責任を問うことの難しさが表れている。
 東日本大震災の津波被害者遺族が管理者側を訴えた訴訟は10件以上ある。うち初めて賠償責任を認めたのは、送迎バスが流されて園児が死亡した私立日和幼稚園(宮城県石巻市)のケース。一審判決は「幼稚園が情報収集を怠った」と判断し、園児4人の遺族が勝訴。二審では和解が成立した。
 一方、七十七銀行女川支店(宮城県女川町)の従業員の遺族が同行に賠償を求めた訴訟では「屋上の高さを超える20メートル近い高さの津波の予見は困難だった」とされた。最高裁で遺族敗訴が確定した。
 一審で遺族が勝訴し、二審で和解した常磐山元自動車学校(宮城県山元町)をめぐる訴訟では、裁判長が和解を求める際に「学校長らが津波で死亡しており、予見可能性の判断に困難が伴う」と説明したという。
 大川小のケースでは、市のハザードマップで大川小が避難場所に指定されていたことなどから、地震発生直後に津波の到来を予測するのは難しいと指摘した。
 ただ津波が到来する7分前までに市の広報車が高台への避難を呼びかけた時点では危険を把握でき、高さがある裏山に避難しなかった点を過失とした。子供たちの命を守るべき教職員に対し、最善の努力を求めた内容といえる。
 大川小のほかに、一審で遺族側が勝訴したのは日和幼稚園、常磐山元自動車学校、東松島市立野蒜小学校=控訴審で係争中=をめぐる訴訟の3件。勝訴判決が確定したケースはない。

 

東日本大震災の津波被害をめぐる主な訴訟

被害内容

裁判結果

私立日和幼稚園(石巻市)

送迎バスが流され園児5人が死亡

一審は遺族勝訴→二審で和解

七十七銀行女川支店(女川町)

屋上に避難した12人が死亡・行方不明

遺族敗訴が確定

町立東保育所(山元町)

町が待機を指示し園児3人が死亡

遺族敗訴が確定(一部和解)

常磐山元自動車学校(山元町)

教習生25人と従業員が死亡

一審は遺族勝訴→二審で和解

市立野蒜小学校(東松島市)

体育館に避難後に女児らが死亡

一審で一部遺族が勝訴

(注)施設はいずれも宮城県。裁判はいずれも一審が仙台地裁、二審が仙台高裁

 

19、救急車を効率配置(総務省・消防庁)
 総務省は2018年度までに、ビッグデータを使って救急車の出動要請を予測し、効率的に配置するシステムを導入する。過去の出動事例を分析し、出動が増えそうな地域や時間に機動的に救急車を配備できるようにする。救急車の出動件数や患者の病院収容までの時間は延び続けており、短縮につなげる。
 消防庁が蓄積した救急車出動時のデータを自動で分析し、各地の救急車の需要予測をつくる。現在は救急車は消防署ごとに配置台数が決まっているが、新システム稼働後は、地域の消防本部が需要予測に応じて、各消防署に最適な配置台数を指示する。
 例えば東京都内で出動件数が多いのは昼間は高齢者が多い住宅街、夜間は飲食店が多い繁華街。住宅地に近い消防署の救急車の一部を夜間は繁華街に近い消防署に移動したり、雨や雪が降った際に交通事故が増えそうな地域にある消防署に救急車を増やすことなどが可能になる。
 高齢化に伴い救急車の需要は逼迫。2014年の救急車の出動件数は約598万件で過去最高を更新した。一方、救急車の台数は約6,100台で20年前から2割しか増えておらず、効率的な活用が課題となっていた。

20、「福祉避難所」を知らなかった(鳥取・倉吉)
 災害が起きた際、通常の避難所での生活が困難な障害者や高齢者らのために設けられる「福祉避難所」。震度6弱の地震に見舞われた鳥取県倉吉市でも2か所開設された。ただ、「存在を初めて知った」という被災者もおり、周知に課題が見えた。
 倉吉市によると、市は16の医療法人や社会福祉法人と協定を結び、災害時の福祉避難所に指定していた。だが、想定していた避難者は、それらの法人の施設でサービスを受けている人たちだった。施設も被災して受け入れ態勢が整わないことも予想され、積極的に周知していなかったという。
 今回の地震では、避難所を巡回した保健師の指摘を受け、市所有ですぐに対応できる障害者用トイレなどの設備が整った2施設を急きょ選び、3日目の23日に開設した。
 福祉避難所は、倉吉市のように自治体が協定を結んだ福祉施設などを指定する例が多く、全国に7,647か所がある(2014年10月時点)。1997年に災害救助法に基づく応急救助の指針で初めて位置づけられたが、事前の指定や周知の徹底が全国的な課題となっている。

21、長期使用の点検制度 対象給湯器など事故800件(NITE)
 ガス風呂がまや石油給湯器など、購入時に住所を登録すれば点検の通知が届く「長期使用製品安全点検制度」の対象となっている9製品を巡る事故が、2016年3月までの5年間に834件あった。火災が目立ち、死亡事故は5件あった。
 同制度は経年劣化などで事故が発生する恐れが高い製品を対象に2009年から始まったが、所有者の登録率は累計で38%にとどまる。
 NITEによると、10年以上使い続けた製品の事故は499件に上った。製品別では給湯器など石油機器3品目で計255件、風呂がまや瞬間湯沸かし器などガス機器4品目で計217件、食器洗い機と浴室用乾燥機の電気機器2品目で計27件。

22、業務継続計画 6割の自治体 未策定(消防庁)
 6割の自治体が大災害に備えた業務継続計画を策定しておらず、1割は非常用電源なしの結果が出た。消防庁が1,700余りの全国の市区町村を対象にした調査で、行政の災害対策が不十分な現状が明らかになった。
 災害が起きても行政機能の不全を防ぐための業務継続計画を巡り、1,741市区町村のうち、策定済みは730自治体(41.9%)だった。2015年12月時点から95自治体増えた。未策定の自治体のうち、2016年度中に策定するとしたのは303自治体。
 策定率は都道府県ごとのばらつきが大きかった。上位は鳥取(100%)、北海道(93.3%)、徳島(87.5%)。佐賀(5.0%)、島根(5.3%)、岡山(7.4%)の順に低かった。
 一方、非常用電源を未設置の市区町村は207自治体(11.9%)に上り、今後も設置予定がないのが103自治体だった。

23、AEDで救命率2倍に(京大)
 公共施設などに置かれている自動体外式除細動器(AED)を一般市民が使い、救った命は9年間に約800人に上るとの研究結果を京大がまとめ、米医学誌に発表した。AEDを使わない場合に比べ、救命率は約2倍だった。AED普及の効果が実証的に裏づけられたのは初めて。
 研究は消防庁が国際的な基準に基づく救急搬送の統計を取り始めた2005年から2013年までの記録を活用。病院以外で心停止し救急搬送された約100万件から、AEDが有効とされる心疾患「心室細動」で突然倒れたことが確認できる約4万3千人を抽出し、発症と応急処置の状況の記録を分析した。
 AEDと同時に行われることが多い心臓マッサージなど他の救命措置の効果を統計学的に排除。偶然居合わせた市民が、心臓マッサージなど他の救命措置ではなくAEDによって命を救い、社会復帰に至ったのは計835人と推計した。
 助かる人は年々増え、2013年は約200人だった。現場でAEDが使われなかった場合と比べた社会復帰率は1.99倍に上った。

24、台風へ備え 意識、7割変化(ウェザーニューズ)
 北日本に相次いで直接上陸するなど異例ずくめだった2016年の台風シーズンに関する意識調査で、北海道や岩手、宮城両県の7割超の回答者が「台風への防災意識が変わった」と答えたことが分かった。
 被害に遭った自治体の防災意識の高まりが読み取れる。
 「台風への防災意識は変わったか」との問いに対し「変わった」と「少し変わった」と答えた人の割合は、全国で北海道が最多の79.2%、2位は岩手県72.8%、3位は宮城県70.4%だった。全国平均は52.9%だった。
 また台風の接近時に対策を取ったと答えたのは鹿児島県で92.2%、宮崎県90.6%、沖縄県で88.2%と、毎年のように台風が近づく地域で高かった。一方で、台風の経験が浅い北海道は49.8%と最下位だった。
 具体的な対策を複数回答で聞いた結果、「飛びやすいものをしまった」が83.7%と最多で、「外出を控えた」(46.3%)、「雨戸を閉める」(35.8%)と続いた。

25、震災関連死 11人車中泊(熊本市)
 熊本地震で熊本市が震災関連死と認定した51人のうち、少なくとも11人が被災後に車中泊をしていたことが分かった。そのうち9人が持病や既往症があった。また51人のうち11人が病院や福祉施設の損壊などで転院や移動を余儀なくされ、体調が悪化したことも分かった。災害弱者の厳しい実態が浮き彫りになり、識者は災害発生時の対策拡充の重要性を指摘している。
 熊本県の市町村が関連死と認定したのは82人(2016年11月11日現在)で、熊本市が最多で51人。11月14日で地震発生から7か月となるのを前に毎日新聞は同市へ情報公開請求し、判定理由や死因、死亡経過が記された「答申結果一覧」などの開示を受けた。51人の年代は▽80代18人▽70代11人▽90代10人▽60代6人▽30、50代各2人▽100歳以上と新生児各1人。性別は男26人、女25人。
 開示文書によると、心臓病の持病があった1人は4月14日の前震後に車中泊をし明け方に自宅に戻ったが、16日の本震後に再び車に避難。車中泊を続けて体調が悪化し、死亡した。審査委は「避難中の身体・精神的ストレスで持病が悪化した」と判定した。肺の炎症があった別の人は14日から車中泊をし、16日にたんを出せずに窒息死した。

26、津波見ても避難ためらう(気象庁)
 福島県沖を震源とする地震では、東日本大震災の教訓を生かした迅速な避難行動が見られた一方、避難をためらう人々がいた。
 その人は砂押川の間近にある平屋の仮設住宅に住む。11月22日午前6時ごろ、グラグラと長く続く揺れを感じた。「揺れは強くない。あとは津波に気をつけないと」と感じてはいた。
 午前7時すぎ、最初の津波が川を逆流した。約30分後には第2波が「ゴー」という音を響かせて来た。その後も20~30分おきに逆流するのが見えた。しかし浸水の気配はなく、避難するのは「正直、おっくうだった」。
 避難を決断したのは地震発生から3時間半が経過した9時半ごろ。水面がいつもより1メートルほど上昇しているのに気づき「これはまずい」と判断し、川から離れた弟の家に向かった。
 大震災で自宅が流され、津波の威力は身にしみている。「空振りでもいいから逃げるべきだと頭では分かっているが、どうしても人間はためらう」
 「家にある財産はどうしようか、何を持って行くべきか、火の元は大丈夫か、などと考えて時間が過ぎてしまう。自分ならどう行動するか、日ごろから考えることが重要だろう」と語った。

27、火山噴火時避難計画、1割のみ(内閣府)
 火山噴火時の避難計画について、策定が義務づけられている全国49火山周辺の延べ155市町村のうち策定済みの自治体は1割強にとどまることが内閣府のまとめで分かった。内閣府は周辺住民だけでなく、登山者など観光客の安全対策を強化し、突発的な噴火にも備えることなどを盛り込んだ避難計画作成の手引きを改定しており、関係自治体に早期策定を促す。
 内閣府によると、2016年4月末時点で策定していたのは、火山周辺で策定が義務づけられている「警戒地域」の延べ155市町村(23都道県140市町村)のうち、延べ22市町村(14.2%)。関係自治体が避難計画を策定済みだったのは、秋田駒ケ岳(秋田、岩手両県)、桜島(鹿児島県)、箱根山(神奈川県)の3火山だった。
 このほか噴火による危険区域を示して避難を円滑に進めるために周辺自治体などが作成する「火山ハザードマップ」は39火山(79.6%)で整備されていたが、避難計画の遅れが目立った。
 避難計画の策定義務は2015年7月に成立した改正活動火山対策特別措置法(活火山法)で盛り込まれた。49火山ごとに自治体や自衛隊、警察などで構成する「火山防災協議会」の避難計画を基に、各市町村は具体的な避難計画を策定する義務があるが、火山に関する知識や人材の不足が課題になっている。
 2014年9月に噴火し58人が死亡した御嶽山(長野、岐阜両県)周辺では、5自治体が策定する義務を負っているが、1自治体しか策定していなかった。
 御嶽山では最も低い警戒レベル1で突然噴火したため、多くの登山者が犠牲になった。
 内閣府はこうした教訓から火山防災協議会が避難計画を策定する際の「手引き」を改定、住民や登山者らが噴石などから身を守るため、付近の山小屋などを避難場所として整備することなども盛り込んだ。
 さらに御嶽山噴火以前に作成されていた避難計画作成の手引きでは、最も低い警戒レベル1での規制を求めていなかったが、火山活動に何らかの異常が見られた場合、自治体が気象庁の噴火警戒レベル引き上げを待たずに立ち入り規制を行うことを求めた。

28、緊急地震速報 誤報減らせ(気象庁)
 気象庁は、「緊急地震速報」の精度を向上させる。ほぼ同時に発生した2つの地震を1つの大きな地震とみなす誤報が相次いだため。震源地の特定や規模の計算に使うデータの種類を増やし複数の地震を区別する。落雷などで地震計が異常な数値を検知した時に自動的に修正するシステムも導入する。
緊急地震速報は、地震発生時に起きる波をとらえ、大きな揺れが来る前に警報を流す仕組み。一般向けには震度5弱以上が予測される際、震度4以上の揺れが想定される地域に出す。
 2011年の東日本大震災以降、複数の地震がほぼ同時発生するケースが多発。複数の観測点が地震波をとらえて1つの大きな地震とみなし、震度を過大に予測することが相次いだ。
 東日本大震災があった2011年3月から同年4月末までに71回の緊急地震速報があり、うち21回が誤報だった。2016年4月の熊本地震でも発生から約2週間で19回中3回の誤報が確認された。今回の精度向上策でこうした誤報はほとんど防ぐことができるという。
 緊急地震速報の誤報を巡っては、2016年8月に千葉県富津市の観測点で地震計の電源装置が故障し、気象庁は誤ったデータを基に「マグニチュード(M)9.1の大きさの地震が起きた」とする速報を出した。
 1か所のみの観測点のデータに基づいてM7.0を超えると推定される場合は、過大な震度の予測をしないため、全て7.0に引き下げて発表する。

 

 

[防災短信]

 01、大地震予測なぜ「確率」乱立?
 ~低くても備えは必要 熊本0.9%に批判~ 2016年8月19日付 日本経済新聞
02、全棟建て替えを決議
 ~横浜傾斜マンション 2017年から解体~ 2016年9月20日付 日本経済新聞
03、韓国で最大規模の地震
 ~基準守らず。安全軽視再び~ 2016年9月22日付 日本経済新聞
04、原子力避難区域の動物4~5倍
 ~福島大調査 住民帰還妨げのおそれ~ 2016年9月23日付 日本経済新聞(夕刊)
05、仮設住宅300戸必要
 ~台風10号被害の岩手県岩泉町~ 2016年9月25日付 日本経済新聞
06、「御嶽」生還者の教訓を本に
 ~女性山岳ガイド出版~ 2016年9月26日付 読売新聞
07、東・名・阪で職員を募集
 ~任期3年 震災被害の宮城県5市町~ 2016年9月26日付 日本経済新聞(夕刊)
08、噴石対策で山小屋補強
 ~富士山・御嶽山 補助金の増額必要に~ 2016年10月01日付 日本経済新聞
09、阿蘇山噴火 地元先行きに不安
 ~300km先の高松市でも降灰~ 2016年10月09日付 日本経済新聞
10、防災 企業格差なお
 ~大企業 帰宅困難者向けに力 中小企業「場所ない」備蓄進まず~ 2016年10月13日付 日本経済新聞
11、震災スロープ崩落死傷 建築士に逆転無罪
 ~東京地裁判決~ 2016年10月14日付 日本経済新聞
12、被災家屋 雨漏りから守れ
 ~NPO、熊本で屋根補修~ 2016年10月15日付 日本経済新聞
13、防護板の一部未設置
 ~警視庁 鉄パイプ落下隙間から~ 2016年10月15日付 日本経済新聞
14、大地震、湾岸で「体験」
 ~そなエリア東京 発生後3日、どう生き抜くかを学ぶ~ 2016年10月18日付

   日本経済新聞
15、過去の災害、ひと目で
 ~防災科研、ウェブに約1600年分~ 2016年10月19日付 日本経済新聞
16、台風の中を航空機で観測、センサー投下
 ~名古屋大チーム 2017年から~ 2016年10月20日付 読売新聞(夕刊)
17、西之島に初上陸
 ~東大、火山活動や生物調査~ 2016年10月20日付 日本経済新聞
18、災害時の物資供給 連携
 ~中野区とセブン 協定締結~ 2016年10月21日付 日本経済新聞
19、無人船で常時海洋観測
 ~海上保安庁 波高・風速 サイトで公開~ 2016年10月21日付 日本経済新聞(夕刊)
20、7火山の観測データ送信装置、定期点検怠る
 ~気象庁~ 2016年10月21日付 日本経済新聞(夕刊)
21、大規模災害に備え、東証を大阪から遠隔操作
 ~日本取引所要員25%増~ 2016年10月21日付 日本経済新聞
22、中央省庁 危機管理を強化
 ~サイバー攻撃、五輪に備え~ 2016年10月27日付 日本経済新聞(夕刊)
23、大川小訴訟で過失認定
 ~仙台地裁判決 石巻市、被災家族とも控訴~ 2016年10月29日付 日本経済新聞
24、桜島 大噴火「数十年内に」
 ~京大調査 地下にマグマ蓄積~ 2016年11月05日付 日本経済新聞(夕刊)
25、作品燃え5歳児死亡
 ~警視庁・東京消防庁 明治神宮外苑イベント作品~ 2016年11月07日付 日本経済新聞
26、ニュージーランドで地震「復旧に数か月」
 ~被災地に非常事態宣言~ 2016年11月15日付 日本経済新聞
27、防災冊子 電話帳とコンビ
 ~自治体とNTT、同時配布でくまなく~ 2016年11月19日付 日本経済新聞
28、「ペットと避難」80%
 ~訓練済みのペットを連れていく人は4% 民間損保調査~ 2016年11月21日付

   日本経済新聞(夕刊)
29、鳥取中部地震1か月 役所の業務継続に課題
 ~仕事量増え、人手足りず~ 2016年11月21日付 日本経済新聞(夕刊)
30、断層、従来と異なるズレ
 ~気象庁、震災影響し地殻の力に変化~ 2016年11月23日付 日本経済新聞
31、災害対応見直し活発
 ~九州・関連企業 地域巻き込む~ 2016年11月24日付 日本経済新聞
32、「世界津波の日」各地で避難訓練
 ~和歌山県など~ 2016年11月25日付 日本経済新聞(夕刊)
33、地震や津波脅威知って
 ~高知で高校生サミット30か国360人参加~ 2016年11月26日付 日本経済新聞
34、冬用タイヤ使用車 雪道で立ち往生
 ~国土交通省「装着徹底を」~ 2016年12月17日付 日本経済新聞

 

【参考文献】

1、 2016年09月14日付 日本経済新聞
2、 2016年09月22日付 日本経済新聞
3、 2016年09月28日付 日本経済新聞
4、 2016年09月29日付 日本経済新聞(夕刊)
5、 2016年10月03日付 日本経済新聞
6、 2016年10月03日付 日本経済新聞
7、 2016年10月07日付 日本経済新聞
8、 2016年10月08日付 日本経済新聞
9、 2016年10月10日付 日本経済新聞
10、 2016年10月10日付 朝日新聞
11、 2016年10月10日付 産経新聞
12、 2016年10月13日付 日本経済新聞
13、 2016年10月14日付 日本経済新聞
14、 2016年10月16日付 朝日新聞
15、 2016年10月18日付 日本経済新聞
16、 2016年10月21日付 日本経済新聞
17、 2016年10月22日付 日本経済新聞
18、 2016年10月27日付 日本経済新聞
19、 2016年10月28日付 日本経済新聞
20、 2016年10月29日付 朝日新聞
21、 2016年10月30日付 日本経済新聞
22、 2016年11月04日付 日本経済新聞
23、 2016年11月07日付 日本経済新聞
24、 2016年11月07日付 日本経済新聞
25、 2016年11月15日付 毎日新聞
26、 2016年11月24日付 日本経済新聞
27、 2016年12月12日付 日本経済新聞(夕刊)
28、 2016年12月14日付 日本経済新聞

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第84号1平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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