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防災評論 第81号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第81号)【平成29年4月号】

 

【目次】
〔政治行政の動向概観〕
〔個別の動き〕
01、被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)
02、高齢者住宅に登録制度(国土交通省)
03、水道救援隊を創設(東京都)
04、避難所で過ごせない「在宅被災者」 公的支援受けにくく(仙台弁護士会)
05、「震災いじめ」防止明記(文部科学省)
06、原発など浸水対策不足(原子力規制委)
07、消防の広域連携支援(消防庁)
08、主要活動断層帯16か所を追加(地震調査研究推進本部)
09、防火設備違反 是正37%のみ(国土交通省)
10、災害情報 訪日客も安心(総務省)
11、液状化対策 断念相次ぐ(千葉・茨城の自治体)
12、南海トラフ、液状化全壊被害想定 34都道府県で11~13万戸(内閣府・国土交通省)
13、東北沿岸 沈んだ地盤隆起(国土交通省)
14、防火設備の「定期報告制度」が変更に(国土交通省)
15、消防団 自主防災組織を充実・強化(消防庁)
16、局地豪雨20分前に予測 新レーダー実験へ(情報通信研究機構)
17、身近な製品での事故死903人(NITE)

〔政治行政の動向概観〕
 4月26日、復興大臣が辞任した。このポストは度々問題発言等により更迭される例が相次いでいる。内閣の表面的な基本方針とは裏腹に、復興大臣が現実には政治家の処遇ポストと化していることが、不祥事につながるとの見方も出ているが、より深刻なのは東北に対する蔑視観であろう。古くはサントリー(大阪)のトップが「東北は熊襲(正確には蝦夷の誤り)の地」と放言して物議をかもしたこともある。
 その東北地方東日本大震災において、釜石市(岩手県)の「防災センター」に避難していたある女性がセンターを襲った津波で死亡した事故をめぐり、市を訴えていた遺族が敗訴した(4月21日盛岡地裁判決)。争点は「防災センター」が緊急時に逃げるための「一時避難場所」でないにも係わらず、そこに避難したことが市の過失によるかどうかであった。このセンターは市が被災後に生活するための「拠点避難所」であったが、この女性も含めそこへ緊急避難した住民の多くが(196人避難、162人死亡等)避難場所と認識していたという。しかし判決では、「市は震災前から、本来の避難場所の名称や場所を周知していた。防災センターを避難場所と住民に誤解させたとは言えない」と指摘した。市側は本来の避難場所はセンターから500m離れた神社であると広報誌などで繰り返し周知していたと主張、これが認められる形となった。
 防災行政的に見れば妥当な判決と言えるかもしれない。しかし、普段あまり行政慣れしていない一般住民から見れば、「避難場所」と「避難所」をはっきりと区別して理解し、災害発生時に理路整然と行動することまで求めることは酷である。また、「防災センター」という呼称も漠然と安全な場所であるかのようなイメージを植えつけてしまう危険がある。ビルの「防災センター」(警備保安室のこと)と同じ言葉で紛らわしく曖昧である。
 先の東北豪雨の際の「避難準備情報」発令を知っていたにも係わらず、その意味が分からなかったため多くの入居者が死に至った福祉施設の例もあった(その後呼称変更)。防災用語は役人の造語が多く一般人には正しく判断できないものが多い。例えば今回の事件を契機に「避難所」は「災害後仮居住所」に改めるなど、誰でもすぐ分かる用語に改めていく努力が行政に一層求められる。また防災士も当座、さまざまな防災専門用語を正しく理解して的確に解りやすく住民に周知啓蒙していくことが肝要である。

〔個別の動き〕
1、被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)
 復興庁は、東日本大震災の被災地で、人口減少や産業再生といった課題の解決に向けて取り組む計20の個人や民間団体を顕彰すると発表した。
 対象は民家に宿泊して復興の現状を学ぶ教育ツーリズムを企画し、企業や大学・高校から300人以上を受け入れた「一般社団法人マルゴト陸前高田」(岩手県陸前高田市)など。
 震災から5年以上が経った被災地で地道な活動に取り組む人や団体を全国に紹介し、風化防止や支援の継続につなげる狙い。復興庁が昨年11月に創設した。自薦他薦を含め延べ283件の応募があったという。

2、高齢者住宅に登録制度(国土交通省)
 政府は、空き家を高齢者や子育て世帯向け賃貸住宅として登録する制度創設と、こうした住宅の改修に対する支援を盛り込んだ「住宅セーフティーネット法」の改正案を閣議決定した。国土交通省は成立後、今秋にも制度を始める。
 人口減で公営住宅の増加が見込めない中、単身の高齢者や、所得面で広い家に住めない子育て世帯などを支援する。国交省は2020年度までに17万5千戸の登録を目指す。
 改正案によると、登録制度は空き家の持ち主が、高齢者らの入居を拒まない賃貸住宅として都道府県などに届ける。都道府県は登録物件の情報を広く周知する。
 高齢者らが暮らしやすいよう、耐震改修やバリアフリー化をすることを想定し、住宅金融支援機構から融資を受けられるとした。
 住宅セーフティーネット法は高齢者らが入居しやすい住宅を増やすため、国に基本方針作成を義務づけている。改正案は都道府県や市町村が登録促進の計画を作ることも新たに盛り込んだ。住宅の供給目標や支援策を示す。国交省は登録物件の改修費用について、一定の条件を満たせば200万円を上限に国と自治体が補助する方針を既に決めている。
高齢者の良質な住宅確保は平常時からの防災活動にも極めて重要である。

3、水道救援隊を創設(東京都)
 東京都は、国内での大規模災害発生時に被災地の水道事業を支援する応援隊を創設する。職員を現地派遣する水道事業所を当番制であらかじめ決めておくとともに、派遣希望職員を事前に登録し、迅速に対応できるようにする。都によると、全国初の取り組みという。
 常設の応援隊は「東京水道災害救援隊」。大規模災害発生時に、都は公益社団法人日本水道協会を通じて被災地から応援要請を受けると、当番事業所から応急給水要員10人と漏水の復旧要員24人を派遣する。これとは別に事前登録職員は派遣先で設備の復旧などに当たる。事前登録職員には研修で災害応援活動のノウハウを学んでもらう。
 都は2016年の熊本地震で全国の都道府県で最大規模の累計111人を派遣し、応急復旧などを支援した。ただ、派遣チームの編成に時間がかかったため、応援要員を迅速に送り出せる仕組みを設けた。水道管補修工事の4団体とも連携する。

4、避難所で過ごせない「在宅被災者」 公的支援受けにくく(仙台弁護士会)
 仙台弁護士会などは、東日本大震災で住まいが深刻な被害に遭いながら避難所で過ごせず、損壊した自宅に住み続けて公的な支援制度から外れる「在宅被災者」の実態を訪問調査を踏まえて報告した。震災初期から支援物資を受けられなかったことや、損壊した自宅について災害救助法の応急修理制度を利用したことで法律上の「被災者」でなくなり、支援の枠組みから外れている実態が浮き彫りになった。
 損壊した家に住み続ける人のうち、46%が震災発生当初から避難所に行かなかったと回答。「避難所が満杯で入れなかった」「要介護者や障害者が家族にいて集団行動に問題があった」などの理由をあげた。
 避難所に行った人でも、50%が滞在期間が2週間以下で退去し、震災の初期段階でも食料などの支援物資を支給されなかった人が目立った。生活再建の公的支援金を利用できても人件費や資機材費の高騰、欠陥工事により、住宅の再建が困難になっているケースも報告された。
 調査対象者の平均年齢は70.5歳、低所得で自立再建が困難な世帯が大半という。在宅被災者の実態を知ることによって、災害弱者対策が具体化できる。

5、「震災いじめ」防止明記(文部科学省)
 国のいじめ防止対策協議会は、国の基本方針に「東日本大震災で被災した児童生徒に対するいじめの未然防止・早期発見に取り組む」などの項目を新たに盛り込んだ改定案を大筋で了承した。いじめ防止対策推進法は、基本方針の策定を国と学校に求めており、国の見直しは初めて。
 震災いじめの項目は、基本方針のうち特に学校での対策をまとめた別添資料に加えた。被災した児童生徒が受けた心身への影響や、慣れない環境への不安感を教職員が十分に理解し、心のケアを適切に行うとした。
 改定案ではいじめが「解消された」と判断できる要件として、加害行為が相当の期間なくなった上で、被害者本人が心身の苦痛を感じていないと認められる場合と提示。相当期間は3か月を目安とし、この間にも注視を続けることが不可欠だとした。
また、福島復興再生特別措置法の改正案に、東京電力福島第1原発事故で福島県から避難した子供へのいじめ防止を明記する方針を決めた。自民党東日本大震災復興加速化本部で案を示し、了承された。
 横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒が名前に「菌」を付けて呼ばれるなど、各地でのいじめ発覚を受けた対応。いじめの防止や早期発見、心のケアに当たる学校や教職員の取り組みを後押しする。
 特措法のうち避難した子供の教育機会確保を定めた条項に、「いじめ防止のための対策の実施」を追記する。

6、原発など浸水対策不足(原子力規制委)
 原子力規制委員会は、東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)など10施設で、建屋に雨水が流れ込むのを防ぐ対策が不十分だとの見解を示した。原子炉の冷却などに使う重要設備が浸水で使えなくなる恐れがあるため、建屋の貫通部をふさぐ対策を1年以内に終えるよう電力会社などに指示した。
 昨年9月に北陸電力志賀原発(石川県)で原子炉建屋に6.6トンの雨水が流入したトラブルが起きたのを受け、規制委が電力会社などに浸水対策の状況を調査するよう求めていた。
 対策を指示したのは柏崎刈羽と志賀のほかに、東北電力女川(宮城県)、東電福島第2、中部電力浜岡(静岡県)、中国電力島根、日本原子力発電敦賀(福井県)の各原発。廃炉を決めた高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)や青森県六ケ所村と茨城県東海村にある使用済み核燃料の再処理施設も対象だ。
 これらの施設では、配管などが通る建屋の貫通部の一部で、隙間をふさぐ浸水対策が取られていない場所があった。規制委の審査に合格して再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県)、四国電力伊方原発(愛媛県)などは対策を終えており、問題ないという。
 新規制基準では雨水や津波が建屋内に浸水しても、原子炉の冷却など重要な機能を保つよう求めている。水をポンプで排出する対策を取っている場所もあるが、規制委は安全性を高めるには貫通部を根本的にふさぐ対策が必要と判断した。

7、消防の広域連携支援(消防庁)
 消防庁は2017年度から、複数の消防本部による業務協力を後押しするため、119番通報を受け付ける通信指令や消火車両などを共同運用する本部に対し財政支援に乗り出す。人口減少が進む中、効率的に消防体制を維持していくには本部間の広域的な連携が不可欠だと判断した。
 新たな財政支援は119番通報を一括受信するシステムの整備費や、共同利用する高性能はしご車の購入費が対象。こうした費用の自治体負担を国が一部肩代わりする方針だ。業務連携を進めることで費用負担を抑えるとともに、災害時に本部間の応援を整えやすくする効果も期待する。
 消防庁はこれまで、近隣の本部同士が統合する形の本格化を呼び掛けてきた。ただ職員の給与水準や本部の設置場所の調整が難しく、実現したケースは一部にとどまる。
 消防審議会は統合が難しい場合でも部分的に業務協力を進めることが望ましいとの意見をまとめる。

8、主要活動断層帯16か所を追加(地震調査研究推進本部)
 政府の地震調査研究推進本部は、大地震を起こす恐れがあり優先的に調査する「主要活断層帯」に、中国電力島根原発近くを走る「宍道(鹿島)断層」など、関東、中国、九州地域の16か所を追加することを決めた。従来の97か所と合わせて計113か所となる。
 ただし、活動度が不明の6断層も加えられており、今後の調査で活動度が低いと判明すれば主要活断層帯から外れる可能性がある。

9、防火設備違反 是正37%のみ(国土交通省)
 国土交通省は、防火設備の不備など建築基準法違反がこれまでに判明したホテル・旅館1,034施設のうち、是正したのは2016年10月末時点で37.5%に当たる388施設にとどまっているとの調査結果を発表した。
 前回調査の2015年10月末時点では、違反が判明した846施設のうち、是正済みが31.1%だった。工事の費用負担などを理由に、対策が大きく進んでいない状況が続いている。
 調査は、2012年の広島県福山市のホテル火災などを受け、1971年以前に建てられた3階以上の建物を対象として、地方自治体が実施している。
 その他の建物の是正割合は、病院や診療所が72.6%、個室ビデオ店やカラオケボックスなどで64.5%だった。

10、災害情報 訪日客も安心(総務省)
 総務省は2020年東京五輪・パラリンピックに備え、来日中の外国人に災害情報を伝達しやすい仕組みづくりに乗り出す。外国人向けに情報を伝えるスマートフォン(スマホ)アプリ配信や電話通訳を介して救急隊と意思疎通ができる体制整備などが柱だ。2017年度予算に関連経費約70億円を盛り込んでおり、研究開発や実証試験を進める。
 スマホアプリは電車や徒歩での移動中に災害に遭遇した際の利用を想定する。例えば入国時にダウンロードするよう案内し、地震や津波が発生したときにリアルタイムの災害情報や、滞在地の近くの避難所情報などを多言語で同時に配信する。外国人に直接情報を伝えられるようにして逃げ遅れを防ぐ。
 現在は総務省や気象庁がホームページで英語の災害情報を流している。NTTドコモなどの携帯事業者も気象庁が発信する緊急地震速報と津波警報を多言語で提供するサービスを用意している。ただ実際に災害に遭遇した際に必要な地方自治体が提供する避難情報などは多言語化や個別発信サービスの整備が不十分との指摘があった。
 開発中のアプリでは災害の状況や避難場所への経路などを英語、中国語、韓国語などで提供する内容になる見通し。さまざまな国から観光客が来ることを想定し、言語以外にもピクトグラムと呼ばれる視覚的な図などを使った伝達手法も活用する。
 災害発生後、事故などでけがをした際、119番通報で言葉が通じないケースも想定し、消防本部と外国人、通訳者の3者が同時に通話できる救急用音声翻訳の仕組みも研究する。東京消防庁では英語と中国語での対応が整備されているが、現状では他の言語には対応できない。電話通訳センターを整備し、緊急時に通訳者が間に入って通話できる技術を開発する。
 避難所での過ごし方など日本の習慣が分からないことにも配慮し、避難所に外国語ができる「情報コーディネーター」を配備する体制も自治体と共同で検討する。食事の支給やトイレの使い方など日本人なら経験的に理解している慣習が分からない外国人に配慮する。コーディネーターを通じて外国人の要望を自治体に伝えることもできる。
 訪日外国人は2016年に初めて2,000万人を突破し、政府は2020年に4,000万人に倍増させる計画。一方で、昨年は熊本地震や岩手県で豪雨災害が発生するなど、毎年のように滞在者の生命に関わる災害が発生している。
 総務省はこうした状況下では、特に外国人と高齢者が災害情報の取得の面で遅れがちだとみる。東日本大震災など大規模災害時の経験も分析し、あらゆる場面を想定して「情報難民」をなくす体制を目指す。

11、液状化対策 断念相次ぐ(千葉・茨城の自治体)
 東日本大震災で深刻な液状化被害が出た千葉県や茨城県で、地盤改良工事を断念したり縮小したりする自治体が目立ち始めた。住民の自己負担の大きさや、工事に伴う地盤沈下の危険などが背景にある。国の復興交付金を使った補助事業の期限が迫るなか、各自治体は難しい対応を迫られている。
 東京湾に面し、埋め立て地が8割以上を占める浦安市は地盤が弱く、震災では全国で最も多い8,700戸が液状化の被害に遭った。
 液状化現象は地震などで地面から地下水や土砂が噴き出し、建物が傾いたり沈んだりする現象。市は昨年12月、2018年春までの計画でようやく対策工事に着手したが、合意にこぎ着けたのは工事対象の16地区4,103戸の1割にあたる3区471戸のみ。
 合意形成を難しくしたのは高額な自己負担だ。住宅と周辺の道路を一体で整備する場合、国の復興交付金が活用できるが、敷地面積に応じて住民負担も100万~400万円程度発生する。市は住民全員の合意を着工条件とし、2013年以降約450回の説明会を行ったが高齢者を中心に理解が得られなかった。
 市は「復興交付金を使った液状化対策事業は来年度が期限。残る地区では工事を諦めざるを得ない」と話す。

12、南海トラフ、液状化全壊被害想定 34都道府県で11~13万戸(内閣府・国土交通省)
 内閣府によると、南海トラフ地震が発生した場合、液状化による全壊被害の想定は34都府県で約11万~13万戸に上る。国は2013年度から地盤調査や地盤改良工事にかかる費用の補助対象を被災地以外にも広げたが、被災地以外で制度を利用して地盤調査を行ったのは大津市と熊本市、熊本県甲佐町の3自治体だけ。
 地盤改良工事の費用は国の補助だけでは賄えず住民負担も高額になるため、及び腰の自治体が多い。国土交通省は「家が傾けば深刻な健康被害が起き、被災者にかかるストレスも大きい。事前に対策をした方が被災後にするより安く済むが、制度の周知が進んでいない」と話す。

13、東北沿岸 沈んだ地盤隆起(国土交通省)
 東北地方の太平洋側の一部で、沈んだ地盤の隆起が続いている。従来の地震学では説明しきれず、地下の奥深くにあるマントルの関与が取り沙汰されている。マントルにかかっていた力が地震によって変わり、ゆっくりと地盤を押し上げているという。巨大地震後の地盤の変動は謎が多く、研究者らはその影響の解明を急いでいる。
 宮城県北東部の牡鹿半島の漁港で、岸壁がじわじわと上昇している。国土地理院によると、震災時に牡鹿半島は約1メートル沈んだ。海面より低くなって水浸しになった漁港を再生させようと、岸壁が新たに整備された。
 その後、隆起に転じ、上昇幅は40センチメートルを超えた。一部で岸壁が高くなり過ぎ、岸壁を低くする計画もある。
 震災前、東北地方が乗る陸のプレート(岩板)は沈み込む海のプレートに引きずられ、太平洋側の沿岸部は少しずつ沈んでいた。巨大地震のときに陸のプレートが跳ね上がって隆起するとみられていたが、逆に広い地域で大きく沈んだ。プレート境界部が大きく滑った影響で、プレートの表層部の地盤が変形したためと考えられている。
 隆起が始まった原因は当初、「余効すべり」の影響と考えられた。体に感じる地震を伴わない形でプレート境界がゆっくりとずれる現象だ。ただ隆起は収まらず、余効すべりだけでは説明できなくなってきた。
 研究者はプレートの下にあるマントルに注目する。跳ね上がりに遅れる形で、徐々に滑った方向に動く「粘弾性緩和」が起きている。
 現在、牡鹿半島などの下にマントルが流れ込んでおり、その影響で地盤が隆起しているとみられる。影響は長く続くだろう。
 マントルの動きは今後の地震活動を予測するうえで重要な意味を持つ。プレート境界の固着が復活していれば、次の巨大地震に向けた準備が始まったと考えられる。
 東北地方の太平洋側では震災前、30~40年おきにマグニチュード(M)7級の宮城県沖地震が起きてきた。大震災の影響でこの周期が変化するのかわかっていない。
 海洋研究開発機構によると、次の宮城県沖地震は通常の周期の半分以下で発生する可能性が高いと分かった。

14、防火設備の「定期報告制度」が変更に(国土交通省)
 防火シャッターや防火扉などの防火設備は、資格者による「定期点検」が必要となる。
2013年に発生した福岡市の診療所火災事故で、火災時に自動閉鎖するはずの防火扉が正常に作動しなかったことから、多くの犠牲者が出た。こうした事故を防ぐ再発防止策として、防火設備の点検に関する規定が強化された。
 防火設備の専門的な検査基準と資格者の規定はこれまではなく、また、国の関与も間接的だったが、火災による被害を防ぐためには、消防設備の点検だけでなく、防火設備の点検も必要との観点から、建築基準法改正により、防火設備も専門的な定期点検・報告が義務づけられるようになった。
 具体的には、防火設備検査員が3種煙感知器、熱感知器、ヒューズ装置、防火・防煙シャッター、耐火クロス製防火防煙スクリーン、防火扉、連動制御器(受信機)について、①防火設備の駆動部分、②感知器と連動させた動作確認、③危害防止装置について、検査・報告を行う。

15、消防団 自主防災組織を充実・強化(消防庁)
 消防庁は2017年度消防予算をまとめた。一般会計予算は138.8億円で、前年度比で実質1.2%の増となっている。同予算は“国民の生命・生活を守る”をキャッチフレーズにしていることで明らかなように、防災に力を入れているのが特徴である。主な事業として、①緊急消防援助隊の強化、②常備消防力等の強化、③消防団等の充実強化、④防災情報の伝達体制の整備――などが挙げられている。
 なかでも、消防団関連予算は6.7億円と前年比2.6%の増となっているのが注目される。近年、人口減による消防団員の不足が目につく。1956年には183万人の団員を擁していたが、2016年は85万6,278人と大幅に減少。また、団員の高齢化も深刻だ。1965年には20代が全体の42.7%を占めていたが、2016年は14.1%に減少。逆に60歳以上は1.7%から5.4%と増えている。
 消防庁では、こうした現状を踏まえて、女性や若者などの消防団加入を促進するため、地方公共団体による先進的な加入促進策を積極的に支援。このための予算として4.3億円を計上している。
 さらに、新規事業として「消防団の装備・訓練の充実強化」に2.4億円を計上している。これは、災害現場の状況を速やかに把握するため、ドローンやオフロードバイクなどを配備するものである。また、女性や学生の消防団員の消火訓練用資機材を、消防学校に無償で貸し付け、教育訓練を実施することで、消防団の災害対応能力の向上を図る。
 消防庁ではこのほか、火災予防対策の推進、東京五輪開催に向けた安心・安全対策の推進などを図っていくことにしている。

16、局地豪雨20分前に予測 新レーダー実験へ(情報通信研究機構)
 情報通信研究機構をはじめ、東芝、大阪大などの研究チームは、首都圏で発生する局地豪雨を最大20分前に予測する新レーダーの実証実験に乗り出す。この新レーダーを使えば、3年後の東京五輪・パラリンピックの会場予定地をほとんどカバーできるため、研究チームは「安全に競技を行えるかどうかを判断するのにも役立つ」と期待している。
 研究チームは、局地豪雨をもたらす積乱雲に発達しそうな雲を即時に捉える最新型の「フェーズドアレイ」と呼ばれるレーダーを埼玉大(さいたま市)に新設。波の向きを変えた2種類の電波が発信できるように改良、半径約60キロの範囲の雲をきめ細かく観測できるように。その結果、観測時間が従来型レーダーの約10分の1の約30秒で、変化する積乱雲をいち早く見つけられるものである。

17、身近な製品での事故死903人(NITE)
 ストーブや介護用品といった暮らしの中の身近な製品を使って起きた死亡事故がこの10年間で少なくとも770件発生し、死者は計903人に上ることが、製品評価技術基盤機構(NITE)の調べで分かった。
 製品別の事故件数は、石油ストーブが最も多く169人となっており、高齢者の事故も目立っている。次いで、電気ストーブ99人、ガスこんろ90人となっている。高齢化にともない、介護用ベッドなど介護用具54人、電動車いす47件などの事故も目立つ。
 石油ストーブの事故では、2016年に大分県で8棟が延焼し、男性1人が死亡したが、これは給油タンクのふたが十分閉まっていなかったことが原因とみられる。電気ストーブやガスこんろでは、服などに火が燃え移るケースが目につく。
 NITEでは、事故を防ぐには、家族ら周囲の人が使用者に注意を促すのも有効で、身近な製品といえども誤った使い方をすれば命に関わることを認識し、正しい使い方を徹底してほしい、としている。

[防災短信]
01、避難区域の歴史資料守れ
 ~福島県原発避難区域、筑波大学が協力~ 2017年2月09日付 日本経済新聞(夕刊)
02、利根川決壊、カスリーン台風70年
 ~国と40自治体 巡回展示や映像資料作成~ 2017年2月17日付 日本経済新聞
 (カスリーン台風 1947年9月発生 死者1,100人)
03、泊原発で冬季訓練
 ~暴風雨時の避難計画検証~ 2017年2月04日付 日本経済新聞(夕刊)
04、消防現場のパワハラ調査
 ~消防庁 2016年1~9月で12件の報告~ 2017年2月07日付 日本経済新(夕刊)
05、秋葉原の街 災害に強く
 ~JR駅前大規模再開発着工~ 2017年2月08日付 日本経済新聞
06、災害時の避難者 ドローンで誘導
 ~新宿ビル街、官民で実験~ 2017年2月03日付 日本経済新聞
07、福島の4町村、解除時期決まる
 ~浪江町 政府案受け入れ~ 2017年2月27日付 日本経済新聞
08、ペットと避難 日ごろから備え
 ~薬・一週間分の水、迷子札で身元確認~ 2017年2月22日付 日本経済新聞(夕刊)
09、民泊新法案 注文相次ぐ
 ~自民党 了承持ち越し~ 2017年2月23日付 日本経済新聞
10、石化コンビナート 地盤強化で液状化抑制
 ~港湾空港技研など 巨大模型(E-ディフェンス)で実施~ 2017年2月24日付 
 日本経済新聞
11、帰れぬ800万人 どう収容
 ~「3日待機」足りぬ滞在先~ 2017年2月28日付 日本経済新聞
12、ホテル 耐震性公表の荒波
 ~安全優先 淘汰始まる 自治体が公表開始~ 2017年2月26日付 日本経済新聞

 

 

 

【参考文献】

1、 2017年2月03日付 日本経済新聞(夕刊)
2、 2017年2月03日付 日本経済新聞(夕刊)
3、 2017年2月04日付 日本経済新聞
4、 2017年2月06日付 日本経済新聞
5、 2017年2月08日付 日本経済新聞(夕刊)+2月02日付 日本経済新聞(夕刊)
6、 2017年2月09日付 日本経済新聞
7、 2017年2月18日付 日本経済新聞(夕刊)
8、 2017年2月22日付 日本経済新聞(夕刊)
9、 2017年2月23日付 日本経済新聞
10、 2017年2月25日付 日本経済新聞(夕刊)
11、 2017年2月27日付 日本経済新聞(夕刊)
12、 2017年2月27日付 日本経済新聞(夕刊)
13、 2017年2月27日付 日本経済新聞
14、 2017年3月 UGMニュース
15、 2017年3月 UGMニュース
16、 2017年3月 UGMニュース
17、 2017年3月 UGMニュース

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第86号平成29年9月号支援物資の輸送を改善(中央防災会議)他
第85号平成29年8月号惨事ストレスケア2,700人(消防庁)他
第84号平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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