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防災評論 第86号

山口明の「防災・安全 ~国・地方の動き~」

防災評論家 山口 明氏の執筆による、「防災・安全 ~国・地方の動き~」を掲載致します。防災対策を中心に、防災士の皆様や防災・安全に関心を持たれている方々のために、最新の国・地方の動きをタイムリーにお知らせすることにより、防災士はじめ防災関係者の方々の自己啓発や業務遂行にお役立てて頂こうとするものです。今後の「防災・安全 ~国・地方の動き~」にご期待下さい。

 

 

防災評論(第86号)【平成29年9月号】

 

【目次】
〔政治行政の動向概観〕
〔個別の動き〕

01、支援物資の輸送を改善(中央防災会議)
02、避難計画51市町村どまり(内閣府)
03、災害時の避難情報 多言語で(総務省ほか)
04、避難訓練は脅威あおる?(内閣府・消防庁)
05、企業の地震保険 地域でメリハリ(東京海上)
06、自治体を災害に強く データベース整備 専門家を派遣(気象庁)
07、災害時、CATVで表示 個人別に避難情報(総務省)
08、大雨、30年前より3割増(気象庁)
09、森林火災を早期検知(NEC・住友林業)
10、広島土砂災害から3年、防災マップ作り支援・受信機貸与(広島市)
11、危険箇所指定の完了 16府県にとどまる(国土交通省)
12、プレートの動き解明へ(東大地震研ほか)
13、岐阜の中央道土砂崩れ 私有地の産廃 盲点(国土交通省・厚生労働省)
14、GPSで水蒸気量観測(気象庁)
15、ネット寄付で復興支援(復興庁)

 

〔政治行政の動向概観〕
 自陣営にとって最もタイミングの良い時機を見計らっていた首相は、9月28日召集した臨時国会の冒頭、所信表明演説も質疑もなく解散に踏み切った。野党の第一党が足元からグラついている今こそが絶好のチャンスと思ったのだが、与党にかつては所属しながら冷遇され続けた小池都知事が一気に新党を立ち上げ、台風の眼となった。本稿中(掲出時まで)にどのような推移をたどったか全く予測できない政局だが、いずれにしても10月22日に総選挙投開票の結果が出る。
 いずれの選挙時にもそうだが、防災が主要な争点とならないのは今回も同様のようである。北朝鮮からのミサイル飛来への対処についてはとかく各党から発言・公約が出るが、台風等による豪雨対策、南海トラフ等地震防災対策など全く話題にならない。これは今、目に見える国民の関心事を取り上げて得点を稼ぐという選挙戦術から差し迫った被害(予測)もないことにはいちいち構っていられないというものであろう。
 しかし多くの国民にとって自らの命や財産を守る防災・安全は最も大切な政策課題である。9月にまとめられた中央防災会議における「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応のあり方」についての報告は、東海地震予知に偏った現行地震防災対策の転換を促すものとはなったが、「大震法」をどうするかなど具体策は政治の役割である。派手なパフォーマンスや疑惑攻撃ばかりではなく、国民生活上重要と思われる政策の議論にもっと時間を割かなければならず、マスコミのその方向への視点誘導に注力しなければならない。

 

〔個別の動き〕
1、支援物資の輸送を改善(中央防災会議)
 政府の中央防災会議の幹事会は、南海トラフ地震の発生に備えた救助部隊や物資輸送の応急対策活動計画を改定した。昨年4月の熊本地震で明らかになった課題を踏まえ、輸送体制などを改善。被災地の避難所などに効率的に物資を行き渡らせる体制を目指す。国土交通省の救援部隊を最大で約1,300人派遣することも盛り込んだ。
 政府は南海トラフ地震で最悪32万人の死者が出ると想定。愛知や静岡など10県を重点支援の対象とする応急対策活動計画を2015年3月にまとめた。計画の改定は今回が初めて。
 物資調達の計画は、被災地の要請を待たずに生活必需品を送る「プッシュ型支援」の品目を従来の6品目から8品目に拡大。熊本地震で発生直後から要望の多かったトイレットペーパーと生理用品を新たに追加した。
 物資輸送については、孤立地域などは、警察や自衛隊など関係機関が輸送手段を優先的に確保するとした。輸送拠点が被災して使えなくなる事態も想定、代替拠点をあらかじめ選定することも定めた。国交省の緊急災害対策派遣隊「TEC-FORCE」(テックフォース)を約1,360人派遣することも盛り込んだ。

 

2、避難計画51市町村どまり(内閣府)
 火山の警戒地域に指定されている23都道県の延べ155市町村のうち、住民や登山者向けの具体的な避難計画を策定したのは6月23日時点で51市町村にとどまることが、内閣府の調査で分かった。長期間噴火がない火山で対策の検討資料が不足するなどして、全体の3分の2が策定途上となっており、内閣府は火山の専門家らを派遣して計画策定を加速させる。
 2014年9月の御嶽山(長野、岐阜両県)の噴火を教訓に、活動火山対策特別措置法が改正。全国49の活火山周辺にある自治体に対し、火山防災協議会を設置し、噴火警戒レベルに応じて住民や登山者への情報伝達方法や避難ルートなどの対策を地域防災計画に盛り込むよう義務づけた。
 内閣府によると、策定済みの市町村数は昨年4月の前回調査から29増えた。周辺市町村全てで計画策定を終えたのは、箱根山(神奈川県)や桜島(鹿児島県)など12火山で、前回より9火山増えた。内閣府は専門家の派遣のほか、昨年12月に避難計画策定の手引を改定して後押ししている。

 

3、災害時の避難情報 多言語で(総務省ほか)
 政府は、国内にいる外国人向けに、災害時に役立つ具体的な情報を伝えるための多言語マニュアルを今年度中に作る。災害情報が届きにくい外国人の安全対策を強化する狙いがある。
 これまでにも緊急地震速報や津波警報の多言語化の取り組みは進んできたが、伝える内容は、災害発生の事実や発生時の安全確保の呼び掛け程度にとどまっている。
そこで、災害時に避難の指示や勧告が出た場合を想定し、近くの避難所情報のほか、避難するタイミングや安全な避難経路など、被災直後に必要となる具体的な情報を多言語化することにした。
 政府は、総務省を中心に内閣府や気象庁、観光庁、民間事業者でつくる実務者チームで取り組みを始めている。英、中、韓、ポルトガル、スペインの5か国語に対応できるようにする。行政の防災無線や携帯電話のエリアメール、テレビやインターネットを通じた緊急速報などを使って提供したい考えだ。外国人旅行者が多く利用する交通機関や宿泊施設、観光施設に電子看板を設けることも検討している。

 

4、避難訓練は脅威あおる?(内閣府・消防庁)
 北朝鮮によるミサイル発射が相次ぐ中、内閣府と自治体合同の住民避難訓練が各地で実施されている。7月29日には茨城県龍ケ崎市で8回目となる訓練があり、今後も三重県などで予定されている。「訓練はいたずらに脅威をあおる」といった実施に否定的な声も一部で聞かれるが、危機管理の専門家や自治体関係者は日頃の準備の必要性を訴えるとともに、国内の危機感の低さに警鐘を鳴らしている。
 ミサイルが日本に落下する恐れがある場合、全国瞬時警報システム「Jアラート」などを通じて情報が伝えられるが、発射から着弾までは10分以内と想定されている。内閣官房はインターネットの「国民保護ポータルサイト」で「できるだけ頑丈な建物や地下に避難する」「物陰に身を隠すか地面に伏し頭部を守る」など非常時に取るべき行動を説明。6、7月には新聞広告やテレビコマーシャルも使って国民に周知した。
 訓練では、参加者に避難時の適切な行動の指導などを行っているが、今月20日に訓練を予定していた県では市民団体などが「政府は県民の不安をあおり、軍事力強化を実現しようとしている」として、県や国などに中止を申し入れた。
こうした団体は「(ミサイル発射の)目的は米国を交渉のテーブルに着かせることだ。『武力攻撃』の想定は現実性がない」と外交努力での問題解決を訴える。
 横須賀市では、国民保護法に基づくテロなどを想定した訓練を県や消防庁など関連機関と実施。電力をはじめとする生活インフラに関する企業にも意見を求め、非常時の情報収集や伝達方法などの確認を行ってきた。「10年かかって行政関係者には危機管理意識が定着してきた。一般市民とも連携し、平時から備えていきたい」という。

弾道ミサイル落下時の行動について

□速やかな避難行動

□正確かつ迅速な情報収集

→「Jアラート」からメッセージが流れたらどうすべき?

屋外にいる場合

できる限り頑丈な建物や地下街、地下駅舎など地下施設に避難する

建物がない場合

物陰に身を隠すか、地面に伏して頭部を守る

屋内にいる場合

窓から離れるか、窓のない部屋に移動する

車を運転している場合

速やかに車を止め、近くの頑丈な建物に避難する。避難時間がなければ、停車後そのまま車中で身をかがめて備える

→万が一、近くにミサイル落下・・・

屋外にいる場合

鼻と口をハンカチで覆い、現場からただちに離れ、密閉性の高い屋内または風上に避難

屋内にいる場合

換気扇を止め、窓を閉め、目張りして室内を密閉

※内閣官房HPと福田充教授の研究を基に作成

 

5、企業の地震保険 地域でメリハリ(東京海上)
 東京海上日動火災保険は2018年1月から、企業向け地震保険の保険料を一部地域で見直す。南海トラフ地震などのリスクが高まっている四国や近畿の一部地域を中心に保険料を引き上げ、東北や日本海側などは引き下げる。全体の平均は据え置くものの、巨大地震の予測を反映し、リスクを踏まえて保険料にメリハリを付ける。
 企業の地震保険はオフィスビルや工場、店舗などの設備が地震で損壊した際に損害額を補償する保険。火災保険と組み合わせて加入する。
 政府が南海トラフ地震や相模トラフ地震のリスク試算をまとめたのを受け、東京海上は地震によるリスクを改めて算出、保険料を一部地域で見直すことにした。
 具体的には徳島と高知の全素材の建物のほか、茨城や三重、和歌山、愛媛で鉄骨コンクリート(耐火素材含む)を使った建物を対象に20~50%引き上げる。また静岡や香川で鉄骨コンクリート(同)造の建物などを対象に最大20%まで引き上げる。
 一方、青森・秋田などの東北や、新潟・富山・石川などの北陸、鳥取・島根や福岡・佐賀・長崎などの中国・九州といった広い範囲で10%引き下げる。引き下げるのは木造の建物が多い傾向だ。全都道府県を素材別に144区分に分類した場合、今回の見直しで値上げの対象となるのは全体の15%。値下げは36%。残る約半数の地域は据え置きで、東京や大阪など企業が集まる都心部はこれに該当する。
 地震保険はコスト負担などを理由になかなか普及が進まず、加入率は企業が国内に保有する物件の評価額でみて3割程度にとどまる。

 

6、自治体を災害に強く データベース整備 専門家を派遣(気象庁)
 気象庁は自治体の防災力向上の支援に乗り出す。専門知識を持った職員が少なく、防災のノウハウが乏しい自治体は多い。地域ごとに起きやすい災害などをまとめたデータベースをつくるほか、災害時に専門家を派遣して気象情報などをアドバイスする体制も整備する。自治体職員向けの研修にも力を入れる方針だ。
 災害対策基本法は、避難指示・勧告の発令は市町村長が判断すると規定。ただ詳しい職員がおらず、首長が判断に迷うケースも少なくない。昨年8月の台風10号では、避難指示や勧告を適切なタイミングで出せなかった自治体もあった。
 このほか、災害時の連携を円滑にするため、気象台長が頻繁に市町村長を訪問して防災に関する情報を共有するなど、普段から「顔の見える関係」を築いておくことも盛り込んだ。災害後、警報発表のタイミングや気象台の解説が適切だったかなどを気象台と自治体が共同で評価し、対応の改善につなげる。

 

7、災害時、CATVで表示 個人別に避難情報(総務省)
 総務省とケーブルテレビ(CATV)各社が共同で災害時の被災者救援に乗り出す。2018年12月からテレビの画面上に個人別の避難情報を表示。市町村はマイナンバーで対象の視聴者を特定し、避難場所や避難勧告の内容などを配信する。最近の豪雨は土砂崩れなど思わぬ二次災害を招く面があり、きめ細かい情報発信で避難誘導と安否確認を素早く済ませる。
「セットトップボックス」と呼ばれるCATVの受信機とマイナンバーを連動させ、リモコンで住所や氏名などマイナンバーカードの情報をセットトップボックスに送信する。テレビをつければ、通常の番組に割り込む形で市町村から個人宛ての避難情報をみられる。
 CATV加入世帯は2016年9月末で2,959万世帯。総務省は個人に的確に情報を伝えられる手段とみる。2019年8月末までに対応可能なセットトップボックスを10万台とする計画だ。個人宅と自治体が双方向でつながれば、災害時の安否確認もやりやすくなる。

 

8、大雨、30年前より3割増(気象庁)
 1時間に50ミリ以上の大雨が降る頻度が、1970~80年代に比べ3割程度増えていることが、気象庁の統計で明らかになった。地球温暖化との関連が指摘されており、短時間で一気に降る大雨は災害を引き起こす危険性がある。
 気象庁の統計では、降水量が1時間に50ミリ以上だった回数はアメダス千地点あたり、1976~85年の10年間は年110~230回で、平均すると173.8回だった。2007~16年は年169~282回、平均は232.1回と33.5%増加していた。
 アメダスは1970年代後半から本格的に全国で運用が始まった自動観測所。統計が始まった1976年の約800地点から現在は約1,300地点に増加しているため、気象庁は千地点当たりに換算してまとめている。
 同庁は1時間に50ミリ以上80ミリ未満を「非常に激しい雨」、80ミリ以上を「猛烈な雨」としている。滝のように降り、傘が役に立たなかったり、水しぶきで視界が悪くなったりする雨の強さだ。土砂災害のリスクが高まり、都市部ではマンホールから水があふれる浸水害が発生しやすくなる。
 温暖化と大雨の関係は完全には解明されていないが、平均気温が上がると、飽和水蒸気量という大気が蓄えることができる水分の量が多くなる。雨が降る回数は少なくなるが、ひとたび雨になると、大雨になりやすいとも言われている。

 

9、森林火災を早期検知(NEC・住友林業)
 NECと住友林業は、海外で森林火災を防ぐ監視システムの販売を始める。赤外線カメラで火元を早期に発見して現地の消防署と連携するシステムを開発した。第1弾の納入先となるインドネシアは、森林火災による温暖化ガス排出量が、日本の総排出量を超える。温暖化の国際枠組み「パリ協定」を批准した東南アジアや中南米の国々に売り込む。
 開発したシステムは森林を一望できる場所に赤外線カメラを設置して、一定値を超える熱が発生している場所を検知する。消防隊員の携帯端末に検知場所を知らせて駆けつけさせる仕組みだ。
 インドネシアの森林火災による温暖化ガス排出量は年15億トン(2015年)とされる。工場や家庭、自動車を含めた日本の総排出量(約13億トン)を超えた。
 人災による火事が大半で、焼き畑農業による飛び火が多いとされる。小規模な焼き畑農業は合法だが飛び火を防ぐために、畑が焼かれる段階でシステムが検知して、消防員が現地に駆けつけることが森林火災防止に有効だとみている。

 

10、広島土砂災害から3年、防災マップ作り支援・受信機貸与(広島市)
 77人が亡くなった広島市の土砂災害から8月20日で3年を迎えた。被災地では犠牲を無駄にしまいと、教訓を生かし、地域を守ろうとする動きが広がっている。
 行政の取り組みも進んだ。広島市は避難情報を適切に発信できなかった教訓から、必要な情報を早く確実に届けるとともに、住民の意識改革に乗り出した。
 2014年8月20日午前3時半すぎ、「3人が生き埋めになった」などと119番通報が100件以上殺到した。しかし、市が出した避難勧告は最も早い地域で午前4時15分だった。
 従来の市の基準では住民は守れなかった。市は避難勧告などを出す際の判断基準を全体的に見直し、参照する気象データは土砂災害の危険度を5キロ四方で細かく示す県と気象庁の情報に絞った。
 情報伝達の方法も課題のひとつだ。市が避難勧告などを出した場合、地区の消防団員らがサイレンのある場所に行き、電源を入れていたが、遠隔操作できるようにした。さらに消防団員らが持つ防災行政無線の受信機を要支援者にも貸与した。
 住民の危機意識の希薄さも問題になった。市が被災地の住民約1千人に行ったアンケートでは、回答者の半数近くが自分の住む地域が「がけ崩れ・土石流」に対し、「安全」「まあ安全」と答えた。7割以上は避難しなかった。そのため、市は住民が中心となって避難経路や危険箇所を書き込む防災マップの作成を支援する事業を開始した。

 

11、危険箇所指定の完了 16府県にとどまる(国土交通省)
 2014年8月の広島市北部の土砂災害では、現場の多くが危険箇所と認識されながら「土砂災害警戒区域」として未指定のままだったことが問題となった。広島県以外も指定は遅れており、国土交通省によると、今年7月末時点で区域の指定を終えたのは青森、山形、群馬、山梨、長野、大阪、福岡など16府県にとどまる。
 一方、昨年8月に岩手県で豪雨による洪水で高齢者施設の9人が死亡した災害を受けて河川の氾濫対策を強化する改正水防法も今年6月に施行。自治体は中小の河川も過去の水害の発生状況を調べ、氾濫の危険性を住民に周知することになったが、河川の調査は始まったばかりだ。国交省は「住民による危険性の的確な認識が減災への第一歩。対策が速やかに進むよう後押ししたい」としている。
 大雨などによる土石流や地滑りの発生の恐れがある「土砂災害警戒区域」の指定は遅れている。犠牲者が出た広島市の地区人口は災害前に比べ千人以上減少。高齢化が進む地域コミュニティーの再生が課題となっている。
 県によると、被害が大きかった広島市安佐北区と安佐南区の被災地では、土砂の崩落が拡大する危険性がある場所に、国と県が砂防ダムなど35か所、治山ダムなど22か所の計57か所を設置した。
 航空レーザー測量などの結果、土砂災害防止法に基づき県が「土砂災害警戒区域」に指定すべき地点は、県内で約4万9,500か所と推計される。しかし、現在の指定は約2万か所と4割にとどまる。

 

12、プレートの動き解明へ(東大地震研ほか)
 地震の発生や大陸の移動に深くかかわる「プレートテクトニクス」の仕組みの解明に向け、日米韓台などによる国際的な研究が2018年にも始まる。太平洋の海底に広域の観測網を設け、深さ約200キロメートルまでの地下の連続的な構造を調べる計画だ。地球表面を覆う巨大なプレート(岩板)を動かす力の正体に迫る。
プレートは地球表面を覆う十数枚の固い岩板だ。太平洋プレートなどの海洋プレートは海底の「中央海嶺」と呼ぶ場所で生まれ、年間に数センチ~10センチメートルの速度で移動した後、別のプレートと接する境界で深部へ沈み込む。こうした地球規模のプレートの動きをプレートテクトニクスと呼ぶ。
 調査はアジア、オセアニア、北米、南米にまたがる太平洋のほぼ全域を対象とし、海底に大がかりな観測網を築く。東京大学地震研究所が主導し、米国のコロンビア大学やブラウン大学、韓国のソウル大学、台湾の研究機関・台湾海洋科技研究中心などが参加する。
 日本は複数のプレートの境界に位置し、沈み込むプレートの力によって東日本大震災のような巨大地震・津波が発生する。地震のメカニズムなどをより詳しく知る手掛かりが得られる可能性もある。
 調査では太平洋全域に15か所程度の観測網を築き、地震波の伝わり方などからアセノスフェアの状態や性質を探る。1か所あたり数百キロ~1千キロメートル四方の広さがあり、それぞれ10~20個の地震計などを置く。1~2年かけて観測した後、船で機器を回収してデータを分析する。2018年4月にも始動し、全体が完了するまでに5~10年かかる見通し。調査費用は参加国・地域が分担する。
 プレートテクトニクスは地球内部の岩石の動きの影響を受けているが、なぜこうした現象が存在しどういった力が作用しているのか分からないことも多い。アセノスフェアの流動性が重要な役割を果たしているとされ、調査で知見が集まれば、その仕組みの解明につながると期待している。

 

13、岐阜の中央道土砂崩れ 私有地の産廃 盲点(国土交通省・厚生労働省)
 岐阜県瑞浪市の中央自動車道で起きた土砂崩れは、道路脇の斜面に無許可で野積みされた窯業原料製造会社の産業廃棄物が崩落して発生した。斜面は同社の所有で行政や高速道路会社のチェックが及ばない。高速道に私有地が隣接する場所は多く、今回の土砂崩れは安全管理上の新たな課題を浮かび上がらせた。
 8月18日夜、約700立方メートルもの土砂が中央道に押し寄せ、車4台が巻き込まれ6人が重軽傷を負った。付近を流れる御湯川を伝って住宅街にも流入し、発生から6日目の23日も川は白く濁り、周辺道路も乾燥した汚泥がこびりついたままだ。
 多治見労働基準監督署によると、汚泥には微小な「シリカパウダー」が含まれている。半導体の絶縁材料に使われ、長期間、大量に吸い込むとがんやじん肺などを起こす恐れがあるという。
岐阜県は崩れ落ちた土砂の大半が、窯業原料製造会社の産業廃棄物と特定した。工場の敷地斜面に、袋に入れて野積みしていた。同社は県に「原料の製造過程で出た規格外のもの。約40年前から保管していた」と説明。最大で月約3トンを廃棄したという。
 同社は廃棄物処理法に基づく産廃処理業の許可を得ておらず、県はずさんな管理が土砂崩れの要因とみる。
 さらに、岐阜県の中央自動車道で起きた土砂崩れで、県警は23日、崩落した山肌付近に不要となった窯業原料を不法投棄したとして、廃棄物処理法違反容疑で丸釜釜戸陶料を24日に家宅捜索すると明らかにした。
 瑞浪市は23日、早期撤去を求める通知文を同社に交付。住民に粉じんを防ぐマスクを配布した。

 

14、GPSで水蒸気量観測(気象庁)
 気象庁は、全地球測位システム(GPS)を使い、海上の大気中にある水蒸気量を観測する体制を整備することを目指し、9,600万円を2018年度予算の概算要求に計上した。積乱雲のもととなる水蒸気の流れを捉えることで大雨の予測に役立てる。
 今年7月の九州北部の豪雨では、九州の南西側から大量の水蒸気を含んだ空気が流れ込み、積乱雲が連続発生して線状降水帯を形成。福岡県や大分県で記録的な大雨を降らせた。
 現在は海上で定期的に水蒸気の量を測定する観測地点はない。定期運航する船舶でデータを収集、風向きと合わせてどこに水蒸気が流れ込み積乱雲が発生するかの予報精度向上を目指す。

 

15、ネット寄付で復興支援(復興庁)
 東日本大震災の被災者による商品開発やイベント開催を後押しするため、復興庁は2018年度、インターネットで寄付を呼びかける「クラウドファンディング(CF)」を利用した資金調達を支援する取り組みを始める。
 経営やウェブ制作の専門家が指導と助言を行うことにしており、同庁ではこうした専門家の派遣や助言などに対して資金を提供する。「熱意はあるが金がない」として日の目を見ずにいるアイデアや技術を復興の現場に生かす考えだ。
 同庁によると、支援対象は企業やNPO法人、学生団体などを想定。企画の内容次第では、地域の町内会や個人への支援も可能だという。事業内容は「衰退事業の再興」「にぎわい創出」など被災地の復興に貢献するものに限定する。
 支援の対象を選定する日程や方法は未定だが、計約60件が選ばれる見通しだ。
 同庁は「CFが浸透すれば、資金調達で苦労している人も復興への挑戦が可能になる。荒削りなアイデアの原石を専門家の力で『商品』として磨き上げていければ」としている。
 復興庁は31日、2018年度予算の概算要求を発表した。要求額は2017年度当初予算比10.4%減の1兆6,273億円。今回のCF支援には1億円を計上した。

 

 

 

[防災短信]
01、南相馬 帰還まだ2割
 ~高い高齢者率・福祉サービス停滞~ 2017年7月14日付 読売新聞
02、もしもに備え、いつも使おう
 ~防災グッズ おしゃれに変化~ 2017年8月31日付 日本経済新聞
03、米ハリケーン 避難者30,000人
 ~被害5兆円超 テキサス州ほか“ハービー”で~ 2017年8月31日付

 日本経済新聞(夕刊)
04、防災訓練 いつでも、どこでも
 ~演奏会中や今いる場所で~ 2017年8月26日付 日本経済新聞
05、沖合の津波観測 誤差5センチメートル
 ~東大・航空機使い低コスト~ 2017年8月19日付 日本経済新聞
06、御嶽山 警戒レベル1に
 ~気象庁 噴火から3年~ 2017年8月22日付 日本経済新聞
07、福島漁業 遠い再生
 ~風評不安 減る担い手~ 2017年7月16日付 読売新聞
08、ネパール南部で洪水 
 ~死者50人超す~ 2017年8月14日付 日本経済新聞(夕刊)
09、四川地震 176,000人被災
 ~中国政府発表によると死者僅か25人 捜索終了~ 2017年8月15日付 日本経済新聞
10、三陸のホヤ 産廃処分防げ
 ~韓国輸入禁止 60% 7,600tを焼却~ 2017年7月17日付 日本経済新聞
11、不在伴うゴミ処分に難渋
 ~環境省引き取り打ち切り 南相馬市~ 2017年7月17日付 日本経済新聞
12、英高層住宅火災 火元は冷蔵庫
 ~外壁に耐火性なし 刑事責任追及へ~ 2017年6月24日付 日本経済新聞
13、釜石の追悼公園 議論紛糾
 ~釜石市 震災遺族が合意撤回 修正案でも結着せず~ 2017年6月24日付

 日本経済新聞
14、九州豪雨 激甚指定へ
 ~死者30人に迫る 内閣府・国土交通省~ 2017年7月12日付 毎日新聞
15、自主避難者 窮状あらわ
 ~家賃補助申請2,000件 福島県~ 2017年7月02日付 読売新聞






【参考文献】

1、 2017年6月23日付 日本経済新聞
2、 2017年6月24日付 日本経済新聞
3、 2017年7月16日付 日本経済新聞
4、 2017年7月30日付 産経新聞
5、 2017年8月11日付 日本経済新聞
6、 2017年8月11日付 日本経済新聞
7、 2017年8月12日付 日本経済新聞
8、 2017年8月14日付 日本経済新聞(夕刊)
9、 2017年8月18日付 日本経済新聞
10、 2017年8月19日付 朝日新聞
11、 2017年8月21日付 日本経済新聞、2017年8月20日付 日本経済新聞
12、 2017年8月21日付 日本経済新聞
13、 2017年8月24日付 日本経済新聞
14、 2017年8月31日付 日本経済新聞(夕刊)
15、 2017年8月31日付 読売新聞(夕刊)

 

 

 

山口明の防災評論 一覧

ナンバー年月題名
第86号平成29年9月号支援物資の輸送を改善(中央防災会議)他
第85号平成29年8月号惨事ストレスケア2,700人(消防庁)他
第84号平成29年7月号ドクターヘリ 基準緩和(国土交通省)他
第83号平成29年6月号災害派遣職員、地元優先で(中央防災会議)他
第82号平成29年5月号山岳ヘリ救助 有料に(埼玉県)他
第81号平成29年4月号被災地の活動で20個人・団体顕彰(復興庁)他
第80号平成29年3月号家屋被害認定 兵庫に学べ(兵庫県)他
第79号平成29年2月号噴火警戒レベル低くても対策(内閣府)他
第78号平成29年1月号普及急げ 救急相談電話(消防庁)他
第77号平成28年12月号「海抜ゼロ」避難計画検討へ(中央防災会議)他
第76号平成28年11月号全国17火山の避難計画を策定へ(内閣府)他
第75号平成28年10月号「東海」南西側にひずみ蓄積(海上保安庁)他
第74号平成28年9月号震度6弱以上30年以内の確率 南海トラフ沿い上昇(文部科学省)他
第73号平成28年8月号熊本地震 九州で文化財被害300件超(文化庁)他
第72号平成28年7月号危険踏切58か所 初指定(国土交通省)他
第71号平成28年6月号災害時の業務継続計画 市区の66%未整備(地方公共団体)他
第70号平成28年5月号長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で(気象庁)他
第69号平成28年4月号帰宅困難者対策進まず(地方公共団体)他
第68号平成28年3月号市民標的テロ対策強化(警察庁)他
第67号平成28年2月号火山3割が携帯通信に「不安」(気象庁)他
第66号平成28年1月号火山列島ニッポン、活動期に(京都大学・気象庁)他
第65号平成27年12月号水害被災地に物資提供 都内自治体、連携の輪(東京都)他
第64号平成27年11月号震災避難20万人以下に(復興庁)他
第63号平成27年10月号マンション管理組合を防災組織と位置づけ(総務省)他
第62号平成27年9月号「6強で倒壊」814棟(文部科学省)他
第61号平成27年8月号復興事業4分類 一部地元負担へ(復興庁)他
第60号平成27年7月号救急隊、外国語で対応へ(消防庁)他
第59号平成27年6月号医療拠点 8割近く耐震化(厚生労働省)他
第58号平成27年5月号学校に避難 ルール課題(文部科学省)他
第57号平成27年4月号「使い捨て」観測衛星(内閣府、文部科学省、防衛省)他
第56号平成27年3月号高潮マップ8割超が「未作成」(国土交通省)他
第55号平成27年2月号住宅用火災警報器の設置率79.6%(総務省消防庁)他
第54号平成27年1月号被災者に家賃給付を(内閣府)他
第53号平成26年12月号緊急避難場所 指定31%(読売新聞社)他
第52号平成26年11月号被災地に職員「応援計画」都道府県66%作らず(総務省)他
第51号平成26年10月号救急車と救命士、病院常駐で威力(消防庁)他
第50号平成26年9月号政府が国土強靭化計画東京一極集中を脱却(内閣府)他
第49号平成26年8月号違法貸しルーム、火災防止へ(国土交通省、消防庁)他
第48号平成26年7月号避難勧告、自治体向け新指針決定(内閣府・消防庁)他
第47号平成26年6月号倒壊家屋5割減目標(内閣府)他
第46号平成26年5月号防災リーダー育成支援(内閣府)他
第45号平成26年4月号橋・トンネル点検義務に(国土交通省)他
第44号平成26年3月号首都直下型地震「死者23000人」(中央防災会議)他
第43号平成26年2月号復興予算、22%が未使用(会計検査院)他
第42号平成26年1月号地震時「危険」23区に集中(東京都)他
第41号平成25年12月号火災避難にエレベーター(東京消防庁)他
第40号平成25年11月号局地豪雨が激増(東京は昨年の3倍)(ウェザーニュース)他
第39号平成25年10月号津波予報、民間へ開放(気象庁)他
第38号平成25年9月号東海地震予知「困難」(内閣府調査部会)他
第37号平成25年8月号災害弱者名簿の掲載率(地方公共団体)他
第36号平成25年7月号水、食料備蓄学校の「3割」(文部科学省)他
第35号平成25年6月号南海トラフM8以上「60~70%」(地震調査委員会)他
第34号平成25年5月号「被災者の自殺者対策」(警察庁、地方公共団体)他
第33号「南海トラフ海底調査へ(文部科学省)」他
第32号「津波「巨大」すぐに避難を~新警報7日開始~(気象庁)」他
第31号「救急搬送の増加(総務省消防庁)」他
第30号「平成25〔2013〕年度予算の概算要求(防災・安全) 」他
第29号「災害関連死66歳以上9割(復興庁)」他
第28号「南海トラフ」集団移転対策、「首都直下」地方に拠点(中央防災会議)」他
第27号「災害対策基本法の改正~災害時 国・都道府県の役割強化(内閣府)」他
第26号「南海トラフ巨大地震の評価(内閣府)他
第25号「防災士養成数5万人を突破、小・中学校教職員に防災士資格取得義務化(日本防災士機構、松山市)他
第24号「首都直下型地震の発生確率(地震調査委員会)他
第23号「津波警報 表現に切迫性(気象庁)他
第22号「津波防災地域づくり法」が成立(国土交通省)他
第21号「東日本大震災関連第3次補正予算(内閣、財務相)他
第20号「台風12号の被害と避難勧告(地方公共団体)他
第19号「原発の津波対策とコスト(原子力安全委員会、原子力委員会)他
第18号「復興構想会議の答申(内閣官房)」他
第17号「東日本大震災関連専門調査会設置(中央防災会議)」他
第16号「震災関連第1次補正予算の成立(首相官邸)」他
第15号「震災復興関連の補正予算(財務省他)」他
第14号「原子力災害に関する正確な情報把握と行動(首相官邸。文部科学省)」他
第13号「大雪による死者、13道県で81人に(総務省消防庁)」他
第12号「東海地震観測情報」の新たな名称等(気象庁)」他
第11号「新しい公共」に関するNPO優遇税制(財務省、国税庁、地方公共団体)」他
第10号「猛暑による熱中症死者の激増(総務省消防庁)」他
第9号「熱中症による搬送状況(総務省消防庁)」他
第8号「グループホームの防災対策(総務省消防庁、国土交通省、厚生労働省)他
第7号「消防団の充実強化対策(総務省消防庁)」他
第6号「大気中の二酸化炭素濃度について(気象庁)」他
第5号「水防月間(国土交通省)」他
第4号「新しい公共」・NPO法人への寄付(内閣官房)」他
第3号「新しい公共」の具体化(内閣官房)」他
第2号「消防職員の団結権(総務省消防庁)」他
第1号「平成22年度消防庁予算(総務省消防庁)」他
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